gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

打海文三『愚者と愚者』

2009-03-21 14:41:00 | ノンジャンル
 打海文三さんの'06年作品「愚者と愚者」上下巻を読みました。
 内戦状態の近未来の日本。戦争孤児の部隊を率いる海人は、外人部隊と、女性の部隊でギャングでもあるパンプキン・ガールズらとともに、女性の白川少将率いる常陸軍に組し、民主主義的な政治体制を確立しようとします。右翼のテロ集団〈我らの祖国〉の妨害にもかかわらず、関東地方において外国人も投票できる選挙を実施し、成功しますが、そこへ今度はレズビアン蔑視の軍隊「黒い旅団」が攻め込んできて、再び激しい戦闘が繰り広げられます。それらを何とか撃退したところに、今度は外国人排斥を唱える、社会正義党を名乗る部隊が〈我らの祖国〉の残党とともに首都圏に攻め込み、また激しい戦闘になります。
 とここまで読んだところで、先を読む気力がなくなってしまいました。これまでの作品に比べればまだいいと思いましたが、それでもまだ人物のリアリティがなく、会話も稚拙で、読んでいて恥ずかしくなるようなキャラクターばかりでした。特に登場する女性は、皆異常に好色で、戦争のストレスからそうなるのかもしれませんが、どうも付いていけませんでした。暴力に次ぐ暴力、安易な処刑や銃殺の嵐、策略と陰謀、やはりこう書いてみると従来の作品と同じ流れの中にある作品であることが分かります。しかし、従来の作品とは違ってかなりの分量(上巻すべてと下巻の最初まで)を読むことができたのは、戦争に次ぐ戦争という話にすることによって、饒舌さが物語の持つ情報量の多さで相殺されていることによっていると思いました。そういった点では、打海さんの作品の中ではまだ読みやすいのでは、と思います。
 戦争ものの小説が好きな方にはオススメかも。