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はとぽっぽ

2015-06-22 14:17:11 | 唱歌
 幼児語で鳩のことを「はとぽっぽ」という。童謡『はとぽっぽ』が先か、幼児語の「はとぽっぽ」が先か、私にはわからない。ところでその童謡『はとぽっぽ』は、作詞は東くめ、作曲は滝廉太郎で、明治34年、『幼稚園唱歌』に発表された、日本最初の口語の童謡である。今日まで歌い継がれているのは、歌の良さもさることながら、口語であることも手伝っているのだろう。

  1、ぽっぽっぽ鳩ぽっぽ  豆がほしいかそらやるぞ  みんなでなかよく食べに来い
  2、ぽっぽっぽ鳩ぽっぽ  豆はうまいか食べたなら  一度にそろって飛んで行け(みんなでなかよく遊ぼうよ)

後に文部省唱歌となり、昭和16年には教科書『ウタノホン』に掲載されて、歌詞の最後の部分が「みんなでなかよく遊ぼうよ」と改められている。個人的には原詩のままの方が実感が出ていると思うが、まあそれは大した問題ではない。私が関心をもったのは、なぜ「ぽっぽ」なのかということである。
 そもそもハトといっても種類があるが、一般に普通に見かけるのは、「山鳩」と通称されるキジバトか、伝書鳩が野生化したドバトのことであろう。鳩の鳴き声を、人はどのように聞いていたのだろうか。ハトは漢字で「鳩」とも「鴿」とも書く。いずれも形声文字で、「ククと鳴く鳥」なので九と鳥を合成して「鳩」、「ゴウゴウと鳴く鳥」なので合と鳥を合成して「鴿」という字となったものである。英語では「COO」と書いて、「クー」と読む。韓国語では「ググ」というそうである。どこの国もまあ似たようなものだ。ただキジバトの鳴き声を注意深く聞くと、「クク」「ゴウゴウ」というような単純な鳴き方ではない。私が親から聞いた聞きなしは、「デデッポウポウ」であった。要するに「で鉄砲ぽう」と聞いているわけで、すぐに「鳩に豆鉄砲」を連想する。いろいろ調べてみると、「デデッポウポウ」という聞きなしは、全国的に広がっているという。それならばいつまで遡ることができるのだろうか。少なくとも私が得意とする上代和歌には見当たらない。それどころか、王朝時代には、鳩の鳴き声は恐ろしげな声であるとして、人々の関心の対象にはなっていない。今となってはどうしようもないのであるが、江戸時代の絵入りの本に、「ててっぽう ねらふ鳩めが 柳ごし」と書いてあるのを記憶しているのに、書名がわからない。鳩が何かを狙って「テテッポウ」と鳴いているということなのであろうが、「デデッポウポウ」が少なくとも江戸時代まで遡ることは確かである。どなたか御存知であれば、是非御教示願います。
 とすると、明治初期には「デデッポウポウ」という聞きなしは既に多くの人に知られていて、作詞者も知っていたと思われる。それを作詞者が子供向けに「ポッポ」の部分を取り出して、「はと」と結び付け、「はとぽっぽ」と表現したのではなかろうか。
 もちろん確かな根拠があるわけではない。あくまでも推量である。もし間違っていたらお許し願いたい。ただ、「デデッポウポウ」と「はとぽっぽ」が無関係とはとうてい思えないのである。






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