マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

起業(女性社長を4倍に)

2011年01月05日 | カ行
       コラボラボ社長、横田響子(きょうこ)

 女性社長を4倍に増やす。完全失業率5%台にあえぐ日本で、これは100万人以上の雇用創出につながると思うんです。

 いま、女性社長の数は約6万7000人。民間調査機関、帝国データバンクによると、全社長の6%に過ぎません。それを4倍に増やせるのか。

 なぜ女性社長なのか。男性だと、会社の規模や収益にこだわりがち。独立する際は、家族など周囲の説得にも時間がかかります。でも女性には固定観念やしがらみが、そんなにない。思いついたアイデアを起業に結びつけやすいのです。実際、起業したいと思っている人の中から起業する人の割合は、男性より女性の方がずっと高い。これは厚生労働省の調査でも明らかになっています。

 私自身、起業しました。東京都内のマンションの一室に、私を含めて5人。あとはアルバイトや研修生が7人前後という規模です。

 6年近く大企業のリクルートで働くうちに、女性社長の支援事業を専門にやりたくなり、飛び出しました。これまで1500人以上の女性社長に出会ったと思います。

 私たちが企画するイベントに来てくれた女性社長の約300人から聞くと、従業員数は平均5人強。大半がミニ企業です。現在、女性社長と共に働く人が計算上、約40万人だとすると、女性社長を4倍にすることで120万人の雇用を新たに生み出せる可能性があります。

 女性社長の中には育児サークルを発展させ、主婦たちによるマーケティング会社を起こした人もいれば、商品パッケージや宣伝方法の刷新で、祖父がつくった老舗飲料メーカーを低迷から再生させた人もいる。授乳服の製造・販売、化粧品の輸入・小物の商品開発など、女性の身の回りに新事業のヒントは多く隠されています。

 育児や介護などのハンディがあることが逆に「都合のいい時間に、好きな場所で、得意な仕事を」「小規模でいいから着実に」などと、柔軟な企業の姿や働き方にもっながっています。

 ただ、問題もあります。起業しやすい半面、女性社長は途中で挫折しやすい。廃業率でも、男性社長を大きく上回るのです。

 何が問題なのか。やはり育児や介護の負担が直接の引き金になるようですが、結局は経営ノウハウや人脈の不足が要因になっている。つまり孤立から、資金調達や宣伝、販路開拓などに行き詰まってしまうのです。

 私たちは、孤立しがちな女性社長たちのネットワークをつくれないかと考えました。女性の会社に関する多彩な情報を捷供するウェブサイト「女性社長.net」を立上げたのは、そういう思いからです。それぞれ専門性をもつミニ企業の情報、経営ノウハウを交換し、コラボ(コラボレーション=協力・協業)することで、弱みを補い、伸びてほしい。

 ミニ企業のコラボが広がれば、閉塞感の漂う日本経済にも新しい波が訪れると期待します。「共創」という潮流です。小回りのきくミニ企業同士がコラボし、さらに大企業とも連携し、斬新な発想による新事業をスピーディーにこなしていく。そこに競争社会の一歩先を行く共創社会の姿があります。

 カギを握るのが女性社長です。私たちが毎年春、東京都内で開くイベント「J300」には女性社長が300人集まります。名刺交換だけで、すごい熱気。圧倒されます。

 この女性社長たちの情熱を官民双方で支え、広げるべきです。事業支援セミナーを開き、助言者を紹介し、ミニ企業が国や自治体の契約を受注しやすくなる制度を導入する。こうした手だてを充実させれば、私の言う「女性社長4倍」は遠い夢なんかではありません。

(朝日、2011年01月03日。聞き手・山本晴美)