まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
たまにライヴや本の感想、中小企業診断士活動もアップします。

桜並木の満開の下に

2013-08-11 23:53:05 | 日本映画(あ~な行)

「工場(こうば)女子」なんてほんとにいるのか?

フタバから遠く離れて』を撮った舩橋監督の新作。茨城の小さな町工場に勤めるケンジ(高橋洋)としおり(臼田あさ美)の夫婦、ケンジの技術が取引先に評価されて、大きな仕事を受注してこれから、というときに現場の事故でケンジが亡くなってしまう。このあたり、細かな説明が入らず映像に語らせているところが好みの作風です。

事故を起こしたのは同じ会社のケンジの後輩、ケンジが腕を見込んで連れてきたタクミ(三浦貴大)だった。警察の捜査でも事故の原因は会社の現場管理が杜撰だったからでタクミに過失はない、とのことだったが、タクミが戻ってきた小さな町工場には不穏な空気が漂っていた。事故をきっかけにお得意様から取引を打ち切られ、ケンジの技術で取っていた仕事も減りはじめて、町工場の経営は厳しくなっていく。

タクミは黙々とサービス残業で仕事の遅れを挽回し、新しい受注に向けた試作も重ね、何とか町工場は最悪期を脱しつつあった。しかし次第にしおりに惹かれていったタクミは、禁じられた想いを断ち切るために大阪に行くことを決める。。。

サプライチェーンで一番下請けの小さなプレス会社が舞台で、主人公のしおりが「工場女子」かつ「バイク女子」という何ともマニアックな設定。ハンドプレスで一つずつ小物を打ち抜いたり、完成した数センチの小さな板金を全数検査したり、がさ入れの部品箱を運んだり、中小製造業の描写がまさにそのものでいい感じなんだけど、あんな小さな工場のしかも現場に若い女子が2人もいるものかね。バイクもしおりが運転してケンジが後ろに乗ってっていうのは普通逆で、せめて2台並んでだろうと思うけど、しおりに運転させることに何かの意図があったのか。

ケンジが亡くなってからも食卓に2人分の食事を用意する場面は痛々しさが苦しくて、タクミが差し出したお詫びのお金の入った封筒を「ケンジを返して」と言いながら叩きつづけるシーンは少し不自然な狙いを感じたけれど、ケンジが死んだことを許さない強い気持ちが伝わってきます。

そんなしおりの心が揺らぎだしたのは、タクミもケンジと同じく黙々と働き自らの技術を極めようとするタイプの人間だったからではないでしょうか。やがてケンジの食事を準備することもなくなり、タクミが会社を辞めるときにはバイクの後ろに乗せて山間まで行き旅館で一夜を過ごしますが、帰り道に交通事故の現場に遭遇して、2人は加害者と被害者という越えられない一線に直面する。そこでしおりにできたことは、ただ「許す」ということだけでした。このしおりの心の移り変わりは女性からみたらどう思うだろう、と気になります。あり得る話なのか、絶対ないのか、どっちなんでしょう。

中小企業の厳しさが悲しいくらい冷徹に描かれているのも異色です。納期に間に合わせるためにサービス残業をしたり、大きな取引先が突然発注をなくしたり。完成品メーカーが海外に工場を移すと、結局国内のこうした小さな工場の仕事がなくなっていくんだよね。震災前からそういった流れはあったけど、一度震災でサプライチェーンを変えると、特に海外に出した場合は元には戻らないから発注先の状況もわかるし、厳しい限りです。しかし若手の社員はその辺のチンピラみたいな奴と中国人留学生がほとんどで、社員の質という点でもキツイものがありますね。工場内であんなに暴れて社長が怒らないのが不思議です。

津波の跡の瓦礫なんかも少し出てきて、工場の経営も震災をきっかけに悪くなってきたみたいだけど、震災はあくまで背景でしかなくてもっと根深い問題が潜んでいるなと。

最後、満開の夜桜が綺麗でしたね。

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