まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
たまにライヴや本の感想、中小企業診断士活動もアップします。

ヒトラーの忘れもの UNDER SANDET

2017-01-29 22:09:30 | その他の映画(は~わ行)

1945年、ナチスドイツが降伏した後のデンマーク。デンマークを占領していたナチスドイツは連合国軍の上陸を阻止するため海岸に無数の地雷を敷設していた。その地雷の除去に駆り出されたのが、降伏したナチスドイツの兵士たち。デンマーク軍の軍曹の元に送り込まれたのは、年端もいかぬ少年兵たちだった。

満足いく食料もなく、連日砂浜で地雷の撤去を行う日々。空腹で家畜の飼料を食べたらネズミの糞だらけで全員が腹を下す。撤去作業中、最初の犠牲者は両腕を吹き飛ばされて後方の救急テントに搬送されたが、軍曹が様子を見に行った時にはすでに亡くなっていた。

少年兵たちに食料を持っていき、軍曹は地雷撤去を続けさせる。作業に慣れてきたころ、2つ繋がった地雷があり、少年兵たちはお互いに声をかけて注意しあうが、強風で声が届かず双子のうち一人が木っ端微塵になる。隣で作業していた双子のもう一人は情緒不安定になり、軍曹がモルヒネで眠らせる。

少年たちが兵士として危険な地雷除去に従事させられることに憐みを覚え、少し情も移ってきたのか、作業が休みの日に少年兵と軍曹は地雷撤去が済んだ砂浜でサッカーに興じていた。リラックスしたひと時が過ぎ、軍曹が愛犬にボールを追いかけさせると、安全なはずの砂浜で爆発が起き愛犬が死んでしまう。

家族同然に可愛がっていた愛犬の死に、軍曹は自らの甘さと失敗を悟り、撤去が済んだ砂浜を少年兵にくまなく行進させる。この「死の行進」で脱走を企てる少年兵もいたが、「撤去が終わったら祖国に帰す」という軍曹の言葉を信じた将兵は脱走を許さなかった。

ある日、軍曹が後方の基地へ行っている時に、小さな女の子がまだ地雷の撤去が済んでいない砂浜に出てしまう。母親の救いを求める声に、少年兵たちは地雷を確認しながら進み、女の子を無事保護するが、情緒不安定だった双子の片割れは砂浜を歩いて爆発の犠牲となる。

地雷の撤去が終了し、信管を外した地雷をトラックに積んでいる時、粗雑な扱いをして全部の地雷に火がつく大爆発が起きた。結局この現場で生き残った少年兵は4名だけ。しかし他の海岸線の地雷撤去はまだ途上であり、4名は数少ない経験者として次の現場の貴重な要員となる。「作業が終わったら祖国へ帰す」と約束していた軍曹は。。。


軍曹の最初の態度や、少年兵たちの寝る小屋を提供した女性、わざわざ後方の陣地からやってきて少年兵たちをいたぶる兵士たちを見ていると、デンマークの兵士にせよ民間人にせよ、ナチスドイツに対する憎しみ、恨みは相当強いものがありそうです。ナチスも相当ひどいことをしたのでしょう。ただ兵士があまりに幼すぎる、この一点が軍曹の心に引っ掛かります。恐らく兵士らしい年頃の青年、壮年であったならば、軍曹がサッカーに興じることはなかっただろうと思います。第二次世界大戦の終わり頃にはドイツでは兵士不足で徴兵年齢を10代半ばにまで引き下げたそうで、日本の学徒動員よりも若いことに驚きです。

正面からぶつかり合う戦争が終わっても、平和な生活に戻るまでには後処理が必要で、その時にも犠牲が出てしまいます。日本でもまだたまに不発弾処理とかあるし、地雷処理のPKOでカンボジアにも行っていたような。地雷のような非人道的な兵器の危険さも特筆ものです。敷設するのは勢いがありみんな前向きに取り組むけれど、撤去となると時間がかかり、しかも敗戦処理、残務処理のような感じが拭えない。まるで原発の建設と廃炉処理の関係のようです。

現代では戦争犯罪にもなりかねない、敵国の少年兵を使った地雷撤去、こうした自国の負の側面をしっかりと見据えて語れるデンマークは、国として成熟していますね。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (ここなつ)
2017-01-31 13:41:03
こんにちは。TBをありがとうございました。
この作品は力作ですよね。私は、東京国際映画祭のコンペ作品として鑑賞したのですが、その時の監督のお話しで、
「自国をよく見せようと装うデンマークに嫌気がさしていた」というのがあり、前は、国自体はこの、敵国の少年兵に地雷処理をさせていた事実をつまびらかにはしていなかったようなんですよ。
だから、国として成熟しているというよりも、監督個人のおおいなる勇気と潔癖な心が産み出した作品のような気がします。
もっとも、それを許す土壌の「お国柄」というのもあるかと思いますので、…あっ、ニワトリが先かタマゴが先か、になってしまいました(笑)。
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ここなつさんへ (まてぃ)
2017-02-04 23:11:40
コメントありがとうございます。
東京国際映画祭、監督のティーチインがあったんですね。興味深い!
「臭い物に蓋をする」のは万国共通だと思いますが、そうしたものを堂々と(?)世に出せる、というのもお国柄だと思います。
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おひさしぶりですー (rose_chocolat)
2017-02-25 00:05:04
まてぃさんお元気ですか?
私はすっかりブログ頻度減ってしまいまして・・・。

これは、とても考えるべき、また多くの人が観るべき作品ですよね。
少年兵は、世界どこでもそうなんですけど、こうして粗末に扱われ最前線に出され、虫けらのように殺されていって、
生き残っても敗戦国だとこんなに無情な扱いが待っています。
彼らの鎮魂になってほしい作品でした。
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rose_chocolatさんへ (まてぃ)
2017-02-26 21:56:24
コメントありがとうございます。
お久しぶりです~
一般公開されて良かったです。映画祭だけ、という作品も多いですから。
自国の未来を担うべき少年までも前線に駆り出さなければいけない、今でも民族紛争やテロなどで少年兵が使われますが、無慈悲なものですね。
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