すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯展望】守備からのカウンターで「格上」を倒す

2017-12-23 06:12:34 | サッカー戦術論
日本はW杯でジャイアント・キリングを狙う

 来日当初、ハリルは4-2-3-1を採用し、トップ下に香川らゲームを作るタイプを置いた。その意図はハッキリしていた。

 だが次第にトップ下を置かない4-1-4-1をひんぱんに採用するようになり、中央に守備が得意な長谷部や山口蛍、井手口らによる3センターを配置。ディフェンスを重視した戦い方をするようになった。こちらの狙いも明確だ。

 またそれと同時に4-2-3-1を使う場合でも、トップ下の位置に井手口や倉田など守備のタスクをこなせる選手を置き、トップ下も含めたチーム全体の制圧力で全域プレスをかける方向性を取るようになった。

 アジア予選で試合によって4-2-3-1のトップ下に原口を置いたりしたので「いったい何を意図しているのか?」と不思議に思ったが、あれはトップ下に守備を期待した布陣だったのだ。

 こんなふうにハリルのサッカーは、「相手ボールのときにどうふるまうか?」をメインに考えるスタイルだ。守備からのショートカウンターで「格上」の相手を沈める。

 武士らしく正々堂々、まっすぐ戦うのを好む日本人には「リアクションサッカー」なる蔑称を与えられて評判が悪いが、それは日本人の常識が単にガラパゴス化しているだけだ。スキあらばジャイアント・キリングを狙うヨーロッパや南米の2流国、3流国の間では極めてポピュラーなスタイルである。

 特に格上ばかりと戦うワールドカップでは、恐らくこの戦い方が強い相手とかみ合い結果を出す。0-1で負けたが粘り強く食い下がったベルギー戦のように、ヨーロッパの一流国とやっても試合になる。

 攻撃的なトップ下を置く布陣から、「守備的なトップ下」を使う戦い方へ。また、そもそもトップ下を置かない3センターによる戦術転換へ。すべては格上ばかりと当たるW杯での、インテンシティの高い守備的な戦い方を見据えたモードチェンジだろう。

 であれば、もしハリルが再びトップ下にデュエルがダメで守備のできない香川を置くようなことがあれば、そのとき私は「ハリル解任」の先頭に立って敢然と戦うつもりだ。

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【サッカー日本代表】日本が世界で勝つには? 結論なら出ている

2017-12-22 06:25:19 | サッカー戦術論
まずはカウンタースタイルで「負けないサッカー」を極める

 日本人てのは、何度失敗しても学ばない民族である。

 ジーコジャパンとザックジャパンは「攻撃的なサッカーを」「自らが主導権を握るアクション・サッカーを」と理想主義を高く掲げた。そしてW杯で見るも無残に玉砕した。

 いまハリルジャパンを盛んに叩き「我らにパスサッカーを!」と高邁な理想主義を訴える人たちは、いったい何度失敗したら気がすむのか? 「たとえW杯で負けても、理想を貫き前向きに倒れて死ねば本望だ」とでも言うのだろうか? まったく驚きを通り越して呆れてしまう。

 じゃあ日本が世界で勝てるサッカーとは、どんなスタイルなのか? その結論は、2010年南アフリカW杯で16強の岡田ジャパンがすでに出している。守備に重心を置くカウンタースタイルである。

4流国の日本がW杯で勝つ方法は1つしかない

 この記事で書いた通り、日本は世界レベルで見れば2流国ですらない。3流や4流だ。そんな底辺の国がW杯という世界の檜舞台で下克上を起こすには、方法はたったひとつしかない。そう、CWCで格上のレアルマドリーに対したグレミオ方式である。

 だって日本がロシアW杯で戦うのは、ポーランドやコロンビアなんですよ?

 いや別に守備的なカウンタースタイルが日本の「究極の目標=ゴール」だ、などと言うつもりは毛頭ない。私だってこの記事で書いたように、本来、日本人にはアジリティを生かした軽快なパスサッカーが向いていると思っている。長期的な方向性でいえば、そっちに芽がある。

 日本だって10年や20年(いや100年か?)ぐらい経験を積めば、試合の状況に応じて変幻自在にカウンターとポゼッションを使い分ける戦い方ぐらいできるようになるだろう。そのころには理想主義者のみなさんが訴えるように、2タッチ以内でワンツーを絡めて強くて速いパスをテンポよくつなぐ華麗なパスサッカーが日本もできるようになるかもしれない。

 だが「いま」すぐに、W杯でそれをやろうとするのはあまりにも無謀だ。その末路がどうなるかは目に見えている。このブログで何度も指摘している通り、すでにジーコジャパンとザックジャパンが身を以て証明したじゃないか?

 いやもちろん今の日本にだって、パスサッカーならできる。だがそれはアジア限定、Jリーグ限定での話だ。弱いショートパスばかりで狭い展開に陥る今の日本の小さいサッカーは、アジアやJリーグでしか通用しない。W杯ではたちどころに粉砕される。そんなことは欧州強豪クラブとJリーグのレベル差を見れば一目瞭然じゃないか。

 ヨーロッパの一流国のように、まるでシュートのようなボールスピードでカッ飛ぶ強いパスと、それをたったワントラップで止めて次のプレイへ移行しやすい位置にボールを置くワンタッチコントロール。最低限、これらを身につけなければ日本人はW杯で勝てるパスサッカーなどできない。

日本は進化の「過程」にある

 いま日本は山の五合目にいる。進化の過程だ。頂上はまだ遠い。いまは耐える時期だ。まずは守備である。ひとまずカウンタースタイルで、「負けないサッカー」を極める。0-1で負けたベルギー戦のように粘り強くしぶといサッカーをし、強いメンタルとハードワークで格上の強者に食い下がる。そして負けないようになる。

 話はそれからだ。

 そんな力強い粘りのスタイルを極めて五合目をクリアしたあと、その土台の上にパスサッカーを植え付ける。そのときやっと日本は、山の頂上めざしてアタックを開始する挑戦権を得るのだ。(それは「ハリル後」の重要なテーマになるだろう)

 まだ山の五合目にいるというのに、身の程知らずな理想論をぶちあげる人々はいつの時代にもいる。彼らはゲームでいえば、まだ1面や2面をクリアするかどうかの力しかないのに、いきなりボスキャラと戦おうとしているのと同じだ。

 そういえば今の状況はあのときの岡田ジャパンに酷似してきている。当時もW杯直前の強化試合で4連敗を喫し、世間の大バッシングを浴びて辞任騒動に発展した。そんななか岡田監督は大会直前に戦術をガラリと変え、自慢のパスサッカーをかなぐり捨てて守備重視に転換した。

 相手が格上ばかりのロシア・ワールドカップで、守備的なカウンター狙いの「グレミオ方式」を取るハリルジャパンのショートカウンターがハマって16強ーー。

 あり得ないことではない。

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​【サッカー日本代表】勝負強さの正体

2017-12-21 05:38:44 | サッカー戦術論
1歩の寄せが「有利」をたぐり寄せる

 サッカーでは「勝負強い」という言葉がよく使われる。抽象的でわかったようでわからないが、おそらく「それ」はディフェンス時、オフェンス時のそれぞれであらわれる。

 たとえば守備のとき。

 たとえ苦しくても、ボールをキープした敵に1歩でも寄せる。カラダをつける。仮にそのときもしボールに触れなくても、相手の身体に少しでも圧力をかけて体勢を崩す。それにより敵のミスを誘発し、局面を有利な展開に持ってくるーー。

 そんな1歩の寄せの集積こそが「勝負強さ」を生む。

 あるいは攻撃時。自分にはシュート・チャンスが3度しか回ってこなかったが、そのうちの2回をしっかり決めた。そんなアタッカーがいるチームは勝負強い。

 攻めにしろ守りにしろ少ないチャンスを確実にものにし、苦しい時間帯をしっかり耐えて有利をたぐり寄せる。それが勝負強さの正体である。

 ひるがえってハリルジャパンは、先日のベルギー戦などを見る限りディフェンス時の勝負強さは身についてきた。だがオフェンス時においては、まだまだ足りない。勝負弱い。

 トラップミスする。クロスが合わない。パスのボールスピードがない。パスがつながらない。シュートが決まらない。シュートで終われない。堅守速攻がハマるはずの格上のチームと戦っても、思ったようにはカウンター攻撃が決まらないーー。

 結論としては、ロシアW杯本番までにどこまでオフェンスの「勝負強さ」を上げられるか? ハリルジャパンの成否はそこにかかっている。

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【サッカー日本代表】戦術は自分たちの欠点を修正するためにある

2017-12-20 05:00:00 | サッカー戦術論
よさを伸ばすと同時に「悪いところ」を直す

 サッカージャーナリストの小宮良之氏が、「戦術は自分たちの優位を生かすためにある」と唱える記事を興味深く読んだ。小宮氏はタテにボールを入れるハリルの戦術を「ただ蹴り込むだけ」と批判し、日本代表は自分たちのよさを生かして「ボールを持てる選手を主軸にせよ」と結論づけている。

 戦術は自分たちの優位を生かすためにある?

 なるほど確かに、一面では真実だ。だが物事には両面ある。他方では「戦術は自分たちの課題を修正するためにある」ともいえる。氏は、この別の面をそっくり見落としている。

 タテに速く大きな展開を狙うハリルの戦術は、ややもすると1〜2メートルの弱々しいショートパス一辺倒になりがちな日本人の「小さいサッカー症候群」(意味はこの記事を参照のこと)を修正するための処方箋になっている、ってことだ。

 日本人のパスにはボールスピードがない。川崎フロンターレのMF大島あたりが典型だが、日本人のパスは弱く、しかもショートパスばかりだ。強くて速いパスが出せない。

 一方、現代サッカーでは守備戦術がますます高度化している。そのため特に中盤にはスペースがない。そんな現代サッカーにおいては、日本人のような弱いパスは通用しない。敵にすぐカットされてボールを失う。スペースのない密集地帯でパスを通すには、強くて速いパスが絶対的に必要なのだ。

 裏を返せば日本人の弱くて短いパスはJリーグ限定である。フィジカルコンタクトの少ないJリーグでしか通用しない。完全にガラパゴス化している。世界で勝てない。それが日本人の「パスサッカー」なるものの正体だ。

日本人はフィニッシュで終われない

 加えて日本人の最大の欠点は「ゴールではなく、パスをつなぐこと」をめざす点だ。たとえば東アジアE-1サッカー選手権の日韓戦を見ればよくわかる。韓国は攻撃に移ると必ずシュートで終わるが、日本はほとんどフィニッシュに行けない。

 いや、「行けない」のではなく「行かない」のだ。

 本来、パスをつなぐのは最後にゴールし試合に勝つためだ。パスは勝つための手段にすぎない。だがパスサッカーが大好きな日本人は、パスをつなぐこと自体が目的化してしまっている。

 日本人はパスサッカー信仰が強いため、ゴール前でシュートできる局面でも、まだパスできる味方をさがす。自分でゴールを決めて落とし前をつけようとせず、だれかにボールを預けようとする。責任回避する。だからフィニッシュで終われない。これは致命的な欠点だ。

 またボールをもらったとき、まず自分で「前を向こう」としない。少しでも敵のプレッシャーを受けたらバックパスに逃げる。結果、バックパスばかりで、ボールは一向に敵のゴールへ向かわない。この点も日本人にシュートが少ない一因だ。

 結論として日本人の歪んだパスサッカー信仰は、消極的で後ろ向きな日本人特有のサッカースタイルを生む原因になってしまっている。

ハリルは日本サッカーを変える「破壊者」だ

 こんなふうに日本人は弱くて短いパスばかりつなぐ。しかもボールを持ちすぎたり、ひんぱんにバックパスする。そんな日本人の「小さいサッカー」を見て、ハリルは「タッチ数を少なく」「ボールをタテに入れろ」「ダイアゴナルな長いサイドチェンジを使って大きく展開しろ」と言い始めた。

 ハリルは相手チームの弱点を分析し、戦略を練るのが得意な監督だ。もちろんその分析能力は自分自身のチームにも向かう。

 つまり彼は日本代表を分析し、日本人のパスサッカーが抱える問題点を把握した。で、「大きく、強く、速く」と提言し始めた。加えてボディコンタクトを避ける日本人の欠点も見抜き、「デュエルだ。激しく競れ」とも言い出した。すなわちハリルは日本サッカーが抱える課題を修正するための方策を打ち出しているわけだ。

 おわかりだろうか?

 確かに戦術は「自分たちのよさを生かす」ためにある。だが反面、「自分たちの欠点を修正する」ための処方箋にもなる。物事には両面あることを忘れてはいけない。

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【サッカー日本代表】イタリアのコーチが伊東、川又の台頭を予言か?

2017-12-19 08:49:18 | サッカー日本代表
1対1に強いWGとクロスのターゲットになるCF

 この記事は非常におもしろい。イタリアのコーチであり戦術分析アナリストのレナート・バルディ氏が、ハリルジャパンのブラジル戦、ベルギー戦の2試合を分析し、ハリル戦術を丸裸にしている。

『現役セリエAコーチが徹底分析! 偏見なしにハリル戦術を評価する』(footballista)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171215-00010000-fballista-socc&p=1

 特にビルドアップに関する分析は興味深い。ハリルジャパンは主にサイドを使ってビルドアップする。真ん中は経由しない。これについて「それがチーム戦術なのか、それともスマルカメント(マークを外す動き)のような個人戦術が身に付いていないからなのかは判断できない」としている。

 またそのビルドアップは「グラウンダーの縦パスで2ライン間に引いてきた味方をターゲットにする形が多いが、一気に最終ラインの頭越しに裏のスペースにボールを送り込むというダイレクトな選択肢も用意されている」「その縦パスのコースが塞がれている時には、逆サイドへの大きなサイドチェンジによって一気に敵陣までボールを運ぶという選択肢も用意されている」。

開いた2CBの間にアンカーが落ちてビルドアップを

 そしてバルディ氏は、ハリルジャパンに真ん中を使ったビルドアップを提言している。

「CBの2人はいずれも安定したテクニックを持っており、MF陣もテクニックとモビリティを備えているため、中央のルートを使ったビルドアップを試みる土台は整っているように見える」

「ベルギーの3トップによるプレッシングに対しては、2CBが開いてその間にアンカーを落とし、外でSB、内ではインサイドMFの一方がパス回しに加わることで、GKを含めて6対3の数的優位を作ってビルドアップすることが、理屈の上では十分に可能だった」

「日本のアタッカーの体格と適性からすれば前線にロングボールを送り込むのは決して割のいい選択とは言えない。むしろ常に最終ラインからパスを繋いでのビルドアップを試みる方が、日本の特徴には合っているように思われる」

ブラジル戦とベルギー戦に伊東と川又がいれば?

 そして最後に興味深いのは、ハリルジャパンのアタッカーを分析する以下の発言だ。

「(ハリルジャパンが)サイドの深いところでボールを持ったとしても、その時点で敵の守備陣形がある程度整っている場合、フィニッシュに繋がる形を作るのは簡単ではない。そこから攻め直すにしても、1対1の突破で中に入り込むことができなければ、クロスを入れるかいったん後ろに戻すかという選択肢しか残らないからだ。

 だが日本の場合、1対1の突破力を備えたウイングは、少なくともこの試合に出場した選手の中には見当たらず、またクロスのターゲットとなる体格とパワーを備えたCFもいない」

 1対1の突破力を備えたウイングって……まんま東アジアE-1選手権で頭角を現したレイソルの伊東純也である。かたや「クロスのターゲットとなる体格とパワーを備えたCF」というのはモロ、E-1で光ったジュビロの川又堅碁だ。

 となると伊東と川又は、ブラジル戦とベルギー戦を戦ったA代表にはいない、まったく新しいピースだということになる。つまり氏の分析は図らずも新戦力の台頭を予言した形になっている。

 やっぱりE-1選手権ってムダじゃなかったんだなぁ。

 うんうん。

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【サッカー日本代表】日本の「常識」は世界の非常識

2017-12-18 06:01:02 | サッカー日本代表
W杯は日本が「格上」とやる場だ

 日韓戦が終わり「やれやれ」と思ってCWCを見ると、グレミオがレアルマドリー相手にハリルそっくりのディフェンシブなサッカーをやってて笑ってしまった。要するに「世界標準」の常識ではこうなのだ。

 世界標準では、「格下」のチームがはるか「格上」のチームとやるには大抵こうする。守備を重視し、インテンシティで勝負しようとする。ヨーロッパの2流国や3流国はみんなそうだし、強豪から弱小まで序列があるクラブチームの世界だって同じだ。

 さて、じゃあ日本がW杯で戦うのは自分たちより格下ですか? 格上ですか? って話だ。

 きっと世界で唯一、日本人だけが相手はレアルマドリーだっていうのに「ハリルジャパンには創造性が足りない。美しくない。もっとショートパスを丁寧につなぎ、バックパスも多用しながらポゼッションを高めて行かなきゃダメだ」みたいなことを言うんだろうなぁ(呆)

 いえ、相手はレアルマドリードなんですよ?

 グレミオはなんでああいうやり方してるか、日本人は意味わかってますかぁ? 

 わかりやすくいえば、W杯での日本の相手はコロンビアやポーランドなのだ。中国や北朝鮮じゃない。コロンビア相手に、Jリーグでやってるみたいな1〜2メートルの死んだような弱いショートパスをチマチマつなぐ小さいサッカーで勝てるわけがない。

 じゃあW杯で格上と戦う日本はどんな戦い方をすべきなのか? グレミオ方式に決まってる。それが世界の常識なの。

 日本の常識は、世界の非常識。逆に世界の常識は、日本の非常識。わが親愛なる日本人はみんなハリルがやってることの「意味」すらわからず、ただわめくだけ。

 やれやれ。

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【サッカー日本代表】E-1なんてハリルにとっちゃ実験にすぎない

2017-12-17 23:04:26 | サッカー日本代表
テストマッチに負けて大騒ぎの日本人

 外国人のハリルから見たら日韓戦の意味なんてどうでもいいし、「いったい何を騒いでるんだ?」って感じだろうなぁ。

 彼にとってはE-1なんて単なるテストの場。「選手選考」にすぎない。ハナから勝とうなんて気はなかっただろう(たまたま第1戦と2戦で勝ったから選手を煽っていたが)

 そもそも海外組重視のハリルはJリーグなんてバカにしてるし、そんな国内組ばかりを集めたチームで何ができるんだ? と彼は考えていただろう(前回大会は最下位だったし)

 ハリルから見たらE-1なんて国内組などという「低レベルな連中」を押し付けられ、「こいつらで戦え」と無理やり強制される迷惑な場だ、程度の認識だろう。

 W杯本番まで、なんせハリルには時間がない。

 逆にGK中村航輔と2人のFW、小林悠と川又堅碁を発掘できただけでも「儲け物だ」くらいに思っているだろう。

 いや、実際その通りなのだが。

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【E-1韓国戦・分析】消極的なリトリート策が裏目に出た

2017-12-17 14:44:06 | サッカー日本代表
引いて守ってカウンターのはずがプッシュアップできず

 この試合、日本は相手ボールになればスルスルと自陣にリトリートして4-5のローブロックを作るゲームプランで臨んだ。おそらくハリルは引き分けでも優勝できるアドバンテージを生かし、引いて守ってカウンター狙いを選択したのだろう。

 だがライン設定があまりにも低すぎ、CBが簡単に自陣ペナルティエリア近くまで下がってしまう。そのためボールを奪ってもそこからのプッシュアップが利かず、カウンター攻撃できない。これで日本は自滅した。韓国が強かったというより、策士が策に溺れた作戦負けだ。

 象徴的なシーンがある。前半5分だ。韓国がGKの短いフィードで自陣からビルドアップしてきたのに対し、日本の前の4人はためらいなく敵陣から自陣へ戻るリトリート対応をした。さらに同13分にも韓国が自陣ペナリティエリアからビルドアップしてきたのに対し、また日本の選手は全員が自陣までリトリートした。

 この2つのシーンから、明らかにローブロックで戦う日本の意図が見えている。だが肝心のライン設定はほぼ自陣ペナリティエリアの近く。あまりにも低すぎる。これでは中盤で韓国に自由にやらせてしまう。ここが敗因だ。

リトリート策が選手を消極的にした

 自陣に後退する作戦は、選手のメンタルをすっかり消極的にした。

 たとえば試合開始33秒。左SBの車屋は高いポジショニングから縦に突破していいクロスを入れた。あれを90分間続けなければいけない。だが(北朝鮮戦でもそうだったが)それ以降の彼はあまりにも消極的だった。やればできるのになぜやらないのか?

 さらに前半8分。韓国は日本の左サイドを起点に単純なロングボールを放り込む。これに韓国FWが反応し、たちまちCB昌子と1対1の形を作られる。ここでボールを奪い返した昌子は、自陣の非常に低い位置で中途半端なショートパスを出す。これを韓国に見事にかっさらわれ、ペナルティエリアまで侵入された。この日の日本の消極性を象徴するようなシーンだった。

 前半25分には日本はシステムを4-1-4-1から4-2-3-1に変え、今野と井手口のダブルボランチにして左インサイドハーフだった倉田をトップ下に上げた。これによりミドルブロックにして押し上げを図ったが、時すでに遅し。韓国へ行ってしまった試合の流れは戻らなかった。

敵をどフリーにした2つの失点シーン

 では流れから点を取られた2つの失点シーンを振り返ってみよう。まず前半13分。韓国の左サイドからほぼフリーの状態で余裕を持ってクロスを入れられた。ゴール前で昌子がこのボールを完全にかぶり、フリーでヘディングシュートを決められた。

 ボールの出所にプレスがかかってもいなければ、ゴール前でもほぼフリー。これではやられる。昌子の近くには車屋もいたが完全にボールウォッチャーになり、敵のヘディングシュートにまったく競ろうとしなかった。

 もうひとつは前半23分だ。韓国のFWがポストプレイから落としたボールを日本の左サイドに展開され、左前にパスを出されて最後はどフリーでシュートを打たれた。直接的には右SB植田が自分のマークする相手が中央へ絞ったためそれについて行き、右サイドをガラ空きにしたのが原因だ。

 だがそれ以前にプレスが充分かかっていなかった。まず日本の左サイドに展開されたとき、ボールをキープする敵の選手に対し車屋の競りが甘く、ボールを簡単に持ち込まれてしまった。またシュートを打ったフリーの選手には近くにいた井手口がついて行くべきだったが、井手口は足を止めてしまった。

川又ー小林の2トップは機能した

 それでも後半25分にFW川又が途中投入され、小林悠とタテ関係の2トップを組んでからは攻撃が少しは活性化された。後半38分には右サイドから途中投入の阿部がゴール前にいいクロスを入れ、川又が決定的なヘディングシュートを放つ。惜しくも韓国GKの攻守に阻まれたが、川又の高さを生かしたいい攻撃だった。日本は川又をもっと早いタイミングで出し、あのサイドからクロスを入れる形をもっと作りたかった。

 また同47分には韓国のクリアボールを拾った途中投入の三竿が相手ゴール前へクサビのボールを入れ、反応した小林がアクロバチックにボールを後ろへ逸らす。受けた川又が胸トラップから振り向きざまにシュート。これは相手GKの正面を突いた。

 川又が入ってからは前線にターゲットができ、日本はやることがわかりやすくなった。A代表でいつもFW大迫が果たしている機能だ。前でボールを収めて攻めのスイッチを入れる働きである。セカンドトップを務めて川又とコンビを組んだ小林もやりやすそうだった。小林はやはりサイドでなくセンターで、かつ2トップでこそ力を発揮する。「たられば」だが、この川又ー小林の絡みを後半頭から見たかった。

 結論としてこの優勝決定戦では、後半終わりのたった20分間で川又ー小林の組み合わせがよく機能するのを確認できたことだけが収穫だった。右WG伊東には期待したが、ケガのせいか力を発揮できなかった。

 A代表はCFの層が薄い。川又と小林は有力なオプションになるのではないか? 「負けてくやしい」で終わらせるのでは負けた意味がない。この日、唯一得られたCFの選択肢は今後に生かしたい。

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【東アジアE-1選手権】深いライン、消失する中盤のプレス 〜日本1-4韓国

2017-12-16 22:50:35 | サッカー日本代表
思わぬPKによる先制で気持ちが守りに入った

 前半まだ3分。望外のPKによる先制点で日本は気持ちが受けに回った。以降、弱気な日本はずっとラインが低すぎ、その結果、中盤にスペースができる。これで日本は中盤のプレスが消失し、韓国は無人の野を行くがごとく攻め立てる。男女とも同じ優勝決定戦。前を向いて倒れたなでしこの負け方は立派だったが、男子はあまりにも情けない。またイチから出直しだ。

 日本の立ち上がりのシステムは4-1-4-1。GKは初戦でファインセーブをくり返した中村航輔。最終ラインは右から植田直通、三浦弦太、昌子源、車屋紳太郎。アンカーには今野泰幸を置き、右インサイドハーフは井手口陽介、左インサイドハーフは倉田秋。前線は小林悠のワントップに、右が伊東純也、左は土居聖真。

 日本はまるで足枷をつけてサッカーをしているかのようだった。終始、ライン設定が低すぎ、韓国にタテへボールを入れられては、こぼれ球を拾われるとそこはもうゴール前でシュートがくる。深いラインにより中盤にぽっかり空間が空き、日本の中盤は完全にスカスカ。韓国はノープレッシャーのままビルドアップしてくる。

 韓国の得点がどれも会心の一撃だったのが、日本のプレス欠乏を物語っていた。今大会のCB昌子の不調が全体に乗り移ったかのような展開だった。

最終ラインからビルドアップできない

 韓国は前からプレスをかけてこないため、日本はDFラインではボールを持てた。だが、そこから前にビルドアップできない。かといってタテにロングボールを入れようにも、前に人がおらず入れられない。

 左SBの車屋が積極性を出すとタテへ抜けて行けるが、ワンプレイ終わるとまた消極的になる。かたや右SBの植田は少ないタッチ数でいいパスを出すシーンもあったが、ポジショ二ングが高すぎて角度がなくCBからボールをうまく引き出せない。

 だからといって日本は、中央のアンカーやインサイドハーフを経由したビルドアップはもともとやらない。真ん中でボールを失いたくない、リスク回避のためのハリルのやり方なのだろうが、そのため日本は組み立てのテをまるで封じられてしまった。

 結果、ワントップの小林は前線で完全に孤立。期待の右WG伊東もケガのせいかタテに抜け切れない。後半25分に投入されたFW川又がせめて一発かましてくれればガス抜きになったが、決定的なヘディングシュートを始め何度かチャンスはあったものの決め切れなかった。

 緩んだチームを引き締める意味も込め、川又の投入は後半立ち上がりからでもよかったのではないか? 日本はビルドアップ欠乏症なのだから、前でポストになれる川又にまずボールを預ける形が作れれば攻めのパターンができただろう。とにかく彼にもっと時間をやってほしかった。

 結局、日本は新戦力のテストにもならず、かといって勝利どころか4点を食らう惨劇。ほとんど何も得るものがない優勝決定戦だった。川又に時間さえやれば芽を出しそうーー。それだけが救いだ。

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【サッカー日本代表】ハリルは選手がクラブで培った連携力を破壊する

2017-12-16 08:31:08 | サッカー戦術論
彼は「フィロソフィ型」の監督の典型である

 スポナビ・ブログで興味をひく記事があった。「ハリルは選手たちがクラブで培った連携を一度バラバラにしてからでないと起用しない」みたいなお話だ。

 ちょうどつい先日、サッカージャーナリストの西部謙司氏も似たような記事を書いていた。それは「小林悠ら川崎フロンターレの選手を何人も呼んでるんだから、川崎勢の連携力や戦術を使えば勝てるのに」みたいな趣旨である。

 実はどっちの記事もハリルが「セレクター型」の監督であることを前提に書かれている。だがそうじゃなくハリルは「フィロソフィ型」の監督だから、彼らの論法は当てはまらない。で、議論がかみ合っていない。その食い違い方が興味深かった。

 ちなみに「フィロソフィ型」と「セレクター型」の監督のそれぞれの特徴や違いについては、この分析記事この記事あたりを参照してほしい。

 カンタンに説明すると「フィロソフィ型」の監督というのは、自分の内なるフィロソフィ(サッカー哲学)を実現するために監督をやっている人種のことだ。彼は集めた選手を手駒に使い、自分の考えるサッカースタイルを形にすることで自己実現する。達成感を得る。つまり彼にとって選手とは、自分の自己実現のための手段であるわけだ。

 このタイプの場合、自分のサッカー哲学を具現化するためのシステムや戦術がまず先にあり、それに合う選手をあとから集めるようになる。だから往々にしてこっちのタイプは、選んだ選手を自分の鋳型(システムや戦術)にハメ込むようにチームを作る。

 そして選んだ選手がもし鋳型に合わない場合も、無理やり鋳型に合わせるプレイを選手に強要する。なぜなら彼にとって自分のフィロソフィこそが唯一絶対なのだから。

 これに対し「セレクター型」の監督とは、まず能力のある選手を上から順にセレクトする(集める)ことから始める。で、選んだ彼らを生かし、彼らの特徴を引き出すシステムや戦術は何か? をあとから考えるタイプ️である。

 やわらかく言えばフィロソフィ型の監督は「オレはこういうサッカーがやりたいんだ」という自分の哲学に基づきチームを作ることで自分が満たされ、充足するタイプだ。いかにも自己主張が強いハリルらしい。

 ハリルの場合、彼のフィロソフィとは「守備からのショートカウンター」である。で、それを実現するための要素として「タテに速い攻め」があったり、「ハイプレス」があったりする。そういう自分の描くポリシーを選手に求める。わかりやすくいえば自分の理想を選手に押しつける。

 さて冒頭にあげた2本の記事が、ハリルのようなフィロソフィ型の監督には「いかに合わないか?」がわかるだろう。だってハリルにとって「川崎フロンターレの戦術を借りて勝った」としても、ちっとも自分が満たされないのだ。

 いやそれどころか逆に「他人が考えた戦術を使うなんて冗談じゃない。それじゃオレがサッカー監督やってる意味がない」って話になる。つまりハリルが集めた川崎フロンターレの選手たちがクラブで培った「連携力」をそのまま使って勝っても、ハリルはちっとも自己実現できないのだ。

 その意味で冒頭にあげたスポナビ・ブログがいう「ハリルは選手たちがクラブで培った連携を一度バラバラにしてから起用する」というのは的を射た指摘である。

 でもふつう、こういうタイプはあちこちから選んできた選手をコーディネートする代表監督というより、じっくり自分の理想を形にし育成していくクラブチーム向きだと思うのだが。まあフィロソフィ型であろうがセレクション型であろうが、勝てればいいんだけどね。

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【女子E-1】シュートレンジの違いがくっきり 〜日本0-2北朝鮮

2017-12-15 22:03:09 | サッカー日本代表
無得点だが大会3試合の中では一番デキがよかった

 立ち上がり、北朝戦がポゼッションし、なでしこが相手の攻めをクリアして弾き返すシーンが続く。だが前半10分すぎから日本は徐々にボールをキープできるようになり、同20分以降は完全にイーブンな展開に持ち込んだ。今大会、3試合の中では明らかにいちばんいいデキだ。1、2戦で見られた消極性は克服できた。結果的に0-2で負けたが上を向いていい。

 この試合で出た最大の課題は、遠目からでもシュートを打てるようになることだ。シュート数は日本の6に対し、北朝鮮は11。なでしこはシュートの数が圧倒的に少なすぎる。特に前半41分の決定的な先制のチャンスをシュートで終われなかったのが悔やまれる。北朝鮮とはシュートレンジの違いがハッキリ出た。ここがテーマだろう。(なでしこサッカーのようにシュートやパスのレンジが短いことはなぜ問題なのか? についてはこの分析記事を参照のこと)

 なでしこのシステムは4-4-2。スタメンはGKに池田咲紀子。最終ラインは右から高木ひかり、三宅史織、鮫島彩、宇津木瑠美。ボランチは阪口夢穂と隅田凜。右SHに櫨まどか、左SHは籾木結花。2トップは岩渕真奈と田中美南だ。

 前半のなでしこは立ち上がりこそ押されたが、その後はたびたびチャンスを作った。前半21分には左サイドから決定的なクロスが入るが、惜しくも完全なオフサイド。同44分にもオフサイドにはなったが、田中美南がいいタイミングで相手最終ラインの裏のスペースに飛び出した。

 前半の問題点は、チャンスは作ってもフィニッシュまで行けなかった点だ。たとえば41分。ゴール前で決定的な先制のチャンスを作ったが、なぜかシュートしない。おそらくなでしこはシュート可能なレンジが短く、かなりゴール前へ持ち込まなければシュートできないのだろう。「個の力」とも関連するが、ここは修正すべきポイントだ。結局、この差がスコアの違いに出たといえる。

4-4-2同士のミラーゲームが続く

 北朝鮮のシステムは日本と同じ4-4-2だ。日本のボールになれば北朝鮮は自陣にきれいな4-4のブロックを作る。日本とくらべ力強さがあり、フィジカルも強い。だが細かい技術では日本も負けていない。

 後半のなでしこは立ち上がりから盛んにポゼッションし、すっかりペースを握っている。北朝鮮は心なしか足が止まってきたようだ。だがその日本に傾きかけた勝負の流れを断ち切ったのが、後半20分に北朝鮮のキム ユンミがペナルティエリア外から決めた見事なシュートだった。この先制点で完全に試合の流れが決まってしまった。

 前半から何度もチャンスは作るがシュートまで行けない日本と、ペナルティエリア外から平然とシュートを決めてみせた北朝鮮。この好対照は鮮やかだった。

 だが日本は極端に消極的だった大会初戦の韓国戦や、第2戦の中国戦とくらべ、この第3戦で積極性を取り戻し、浮上の兆しは見えた。前半のチャンスで先制できていれば、試合のゆくえはまったくちがったものになっていただろう。

 大会を通じて得た最大の教訓は、消極的にならないことだ。弱くて中途半端なパスをなくし、パスのボールスピードを上げること。強くて速いパスを出す。また後ろ向きなバックパスに安易に逃げる回数を減らし、ボールを持ったらまず「前を向く」クセをつけること。そしてチャンスを作ったら遠目からでも迷わずシュートに行く。これらの課題を改善できれば、「すでに技術ならある」若いなでしこ達の将来は明るい。

 サッカーの目的は「パスをつなぐこと」ではない。シュートを決めて勝つことだ。パスはあくまで試合に勝つための「手段」であり、「目的」ではない。なでしこ達は、パスという手段が目的化しないよう、くれぐれも心してほしい。

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【東アジアE-1選手権】優勝をかけた韓国戦のスタメンはこれだ

2017-12-15 06:24:03 | サッカー日本代表
FW小林悠の爆発に賭けた布陣を組む

 あくまで「予想」ではなく、「もし私が監督だったらこうする」というスタメンの布陣は以下の通りだ。引き分けでも優勝なので、まず立ち上がりの中盤は計算できるメンツによる3センターで固く行く。前線はワントップの小林と右の伊東に期待だ。ただし伊東はケガの状態次第。もし出場不能なら、テストも兼ねてスタメンからCF川又堅碁、右に小林というパターンもある。左サイドは阿部をもう少し見てみたいと感じた。

 CB三浦は中国戦でのパフォーマンスを買った。彼は守備だけでなくフィードもよく強いパスが出せる。日本は三浦や植田くらいの速いボールスピードが標準にならなければダメだ。一方、右SBには同じく中国戦で結果を出した植田を投入。今後の日本は彼や川又のような強いフィジカルを当たり前にしたい(ただし三浦と右SB植田の配置は逆もありえる)。

 左SBは人材難だが、車屋を選んだ。彼は北朝鮮戦ではあまりにも消極的すぎた。また守備時の中央への絞りも甘い。汚名挽回だと思ってFW伊東のようにタテにガツガツ行ってほしい。なおGKは北朝鮮戦で超絶セーブをくり返した中村で決まりだ。

【パターンA】

         ◯小林悠

◯阿部浩之            ◯伊東純也

     ◯倉田秋   ◯井手口陽介

         ◯今野泰幸


◯車屋紳太郎 ◯昌子源 ◯三浦弦太 ◯植田直通

         ◯中村航輔


点が欲しい展開になれば川又、小林の2トップに変える

 試合の途中で韓国に先制されリードされるか、同点になるなど、点がほしい状況になることもあるだろう。そのときには以下の通りシステムを4-4-1-1に変え、CFに川又を投入。アンダートップを小林にする。彼らの2トップもぜひ見てみたい組み合わせだ。その場合、小林はポストプレーヤーである川又の周りを衛星のように動きながらプレイしてほしい。同時に中盤センターは今野と井手口のダブルボランチに変え、計算できる倉田を左インサイドハーフから左SHに移動させる。

【パターンB】

        ◯川又堅碁
        ◯小林悠
◯倉田秋             ◯伊東純也

     ◯井手口陽介 ◯今野泰幸


◯車屋紳太郎 ◯昌子源 ◯三浦弦太 ◯植田直通

         ◯中村航輔


 なお行けるところまで【パターンA】で行き、小林が点を取り結果を出した時点で川又のテスト投入というシナリオもあり得る。いずれにしろ選んだ後ろ半分の守備陣は計算できるので、韓国戦は小林や川又、伊東という前線の選手のデキにかかっている。今大会は今野と井手口を軸にしたセンターラインの安定が光った。今回あまりデキがよくない昌子にも、最後は前回のCWCくらいのパフォーマンスを求めたい。

 さあこれで優勝だ、ニッポン。

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【サッカー日本代表】どこにゾーンのギャップを作るか?

2017-12-14 08:39:13 | サッカー戦術論
大きな展開でゆさぶり「すき間」をあける

 ハリルが考えるサッカーは、敵の陣形にゾーンのギャップを作ることを狙うサッカーだ。ショートパスで強引に中央突破を狙うようなスタイルとは発想がまるで対照的だ。

 ゾーンディフェンスには、選手ひとりひとりの受け持ちエリア(ゾーン)がある。だから敵が平均的に、均等に散らばっている状態では守備が安定している。とすれば、いかに敵の陣形に「偏り」を作らせるかが勝負だ。

 つまりこっちから仕掛けて前後左右にゆさぶりをかけ、ゾーンとゾーンの境目(ギャップ)にスペースを作るのだ。

 例えば縦にロングボールを入れれば敵DFが下がり、相手のブロックをタテ方向に引き延ばすことができる。すると敵の2列目と3列目に間が空き、バイタルエリアにスペースができる。つまりタテ方向にギャップを生み出すことができる。

 一方、フィールドを斜めに横切るダイアゴナルな長いサイドチェンジを入れれば、今度は敵のブロックを横に引き延ばせる。つまり横方向にギャップを作れる。

 こうした大きな展開を駆使して相手にゆさぶりをかけ、敵陣のどこかに「ほころび」を作る。で、そこを狙って攻める。これがハリルの考えるサッカーだ。

ポストプレイでサイドを「空き家」にする

 またハリルが考えるCFは、ポストプレイができることが絶対条件だ。いったいなぜか?

 真ん中で張ったCFにクサビのボールを入れれば、敵ディフェンスラインは中央にスライドし真ん中を締める動きをする。ボールを受けたCFにゴール前で振り返られ、そのままシュートされればひとたまりもないからだ。

 こうしてクサビのボールに反応した敵DFが中央にスライドすれば、サイドが空く。そこでポストプレイから落としたボールをスペースのできたサイドに運べば、今度は敵DFがボールサイドに寄せてプレスをかけてくる。

 すると今度は逆に、肝心の中央が手薄になるのだ。で、サイドからゴール前にクロスを入れれば、空いた中央で仕留めることができる。

 こんなふうにCFによるポストプレイで、敵ディフェンスラインにゆさぶりをかける。相手DFに「中央を締める動き」と「サイドへ開く動き」を反復させ、敵の陣形に「ほころび」を作るわけだ。

 DFは、自分がマークする相手とボールを同時に視野に入れておく必要がある。だが前述したような日本のCFのポストプレイ経由の落としから、その落としたボールをいったんサイドに開いてまた中央にクロスを入れる、という大きく反復するボールの動かし方をされるとどうなるか?

 当然、敵DFは自分がマークする相手とボールを同時に視野に入れておくのがむずかしくなる。つまり日本のように大きなボールの動かし方をすることで、日本のアタッカー陣は敵DFの視界から「消える」ことができるわけだ。

 たとえば池で泳ぐメダカの群れにエサを投げれば、いっせいに群れはエサにスーッと寄る動きをするだろう。このときのエサは「ボール」に相当する。つまりボールをタテ方向やヨコ方向に大きく動かしてエサを投げ、メダカの群れ(敵の陣形)をいかに乱すか? がコツなのだ。

 ハリルのサッカーを見て「ただの縦ポンだ」などと言っている人は、こうしたゾーンのメカニズムを理解してない。ボールをタテに入れることで、そこにどんなメカニズムが働くか? いったいそこで何が起こっているのか?

 それがわからない人はぜひ一度、メダカの群れにエサを投げてみて、観察してみたらどうだろうか?

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【東アジアE-1選手権】タテにボールを入れ合うオープンな展開を制す 〜日本2-1中国

2017-12-13 04:58:38 | サッカー日本代表
FW小林悠とCB昌子が芸術弾を決める

 最後の最後にやっと決めてくれた。大会第2戦を迎えた日本は消極的だった初戦とは対照的に、イタリアの名将リッピ率いる中国と積極的にタテへボールを入れ合う展開になった。中国の選手はフィジカルは強いが小回りが利かない。ならば日本選手のアジリティを生かす展開になれば、と見ていたが、後半39分、その通り俊敏なFW小林悠がカラダをひねりながらのアクロバチックな先制弾を決める。

 続く後半43分には昌子の芸術的なロングシュートまで飛び出し2-0とリード。その後PKからやらずもがなの1点を献上したが、なんとか日本が逃げ切った。さて、いよいよ男女アベック優勝が現実味を帯びてきたーー。

 日本の立ち上がりのシステムは4-1-4-1。GKは東口順昭、最終ラインは右SBにCBが本職の植田直通をコンバートし、CBは昌子源と三浦弦太、左SBは山本脩斗。中盤はアンカーに今野泰幸を置き、右インサイドハーフが大島僚太、左インサイドハーフに倉田秋。最前線のワントップには待望の小林悠を据え、右がスピードスター伊東純也、左に土居聖真という布陣を敷いた。

 日本は消極的なバックパスと横パスに明け暮れた初戦の北朝鮮戦と違い、ロングボールを織り交ぜながら「タテへ」「前へ」の意識が強く、勢いがあった。だいぶハリルにネジを巻かれたのだろう。特に待望のスタメンを射止めた右SB植田は、2タッチ以内でぐいぐい前へ縦パスをつけていた。意欲的だ。

 グラウンダーのショートパスをつなぐ展開にならないので「日本標準」の前線の選手は違和感があるかもしれないが、これでいい(理由はこの記事を参照のこと)。短く、弱いパスばかりでチャレンジがなかった初戦とくらべはるかにマシだ。そんなわけで日本はまったくポゼッションなどするつもりがないのに(笑)、前半は結果的に60%の支配率に。ただし途中から中国にペースを握られ、一進一退の攻防が続いた。

小林が前半だけで3度のヘディングシュートを外す

 3-4-3の中国はあまりコンパクトでなく結構スペースをくれる。だがここぞの場面ではファールもどきのチャージで防がれ、日本はなかなか試合を決められない。なかでもFW小林が前半だけで3度、決定的なヘディングシュートを外したときには思わずバンザイしそうになった。

 だがその小林がどん詰まりの後半39分にやってくれた。中央で倉田がドリブルし、前に張る小林へ縦パスを入れる。ゴールを背にして受けた小林がこのボールを右足インサイドで見事なフリック。ゴール前にいた途中出場のFW川又堅碁に渡す。

 川又は左足でシュートするが、このボールが再び小林にこぼれてくるのだからたまらない。受けた小林の一発目のシュートはGK正面を突いたが、なんと彼はそのリバウンドをカラダをひねりながら反転して無理な体勢のままゴールに叩き込んだ。まるで忍者のような動きだった。

 実はこのゴールには、小林の抜け目ない「仕込み」があった。まずフリックで川又にボールを渡したあと、小林は足を止めずに右前のスペース深くへとさらに侵入。彼のこの献身的な動きが川又のシュートのこぼれ球を呼び込み、自身の決定的なシュートチャンスを作り出した。つまり小林は結果的にフリックで川又とワンツーを咬ましてシュートしたわけだ。

 そして続く後半43分には、CB昌子が代表初ゴールになる40メートルのロングシュートを叩き込み2-0。最後の最後でド派手なゴールショーを演出した。

PKで失った1点はまるで余計だ

 ただし手放しでは喜べない。PKで献上した1点はまったくやる必要のない点だった。

 最後のアディショナルタイム。中盤にいた今野が右前へボールを出せる局面であるにもかかわらず、(2-0で逃げ切るための時間稼ぎの狙いで)並んでいたSB山本に中途半端な横パスを出したのが始まりだった。

 ここに手負いの中国からプレスをかけられ、圧迫を受けた日本は結局GK東口までボールを戻したあげく、自陣で中国に競り合いにされてペナルティエリアに侵入されPKを取られた。

 今野はうまく時間を使おうしたのだろうが、安易な横パスは致命傷になる。結果的に日本は敵のプレスを受けて窮屈な形でボールキープしようとしてしまい、自陣でボールロストした末にPKにされた。ああいうミスは絶対に避けたい。

 一方、この日先発したMF大島は前半27分、シュートした瞬間に自分で足をひねって負傷し退場。井手口と交代し、チームは貴重な交代ワクをみすみすひとつ潰した。

 世間で大島は「テクニシャン」などと持て囃されているが、相変わらずパスが致命的に弱く、しかも中途半端なショートパスばかりを好む傾向がある。チマチマした「小さいサッカー」が大好きな日本が生んだ「筋悪」な選手だ。大島や香川のような10番タイプの選手ばかりが評価される日本のサッカー界はまったくガラパゴス化している(このテの「小さいサッカー」が抱える問題点についてはこの記事を参照のこと)。

 大島といえば、A代表デビューした2016年9月のアジア最終予選初戦、UAE戦で致命的な失点のモトを作ったいわくつきの選手である。その試合でも彼はボールスピードのない弱々しいパスを出していたが、まったく進歩していない。しかもこの日の負傷とあわせ、まるで「持ってない」。香川の「持ってなさぐあい」と似た芳香を放っている。

 Jリーグという狭い世界しか知らない井の中の蛙のこういう選手は、Jリーグでは「その弱いパスが当たり前」だからいつまでたっても直らないし、自分で自分の欠点に気づけない。まさか彼はヨーロッパの選手のボールスピードを一度も見たことがないのだろうか? ハリルはいいかげん、彼にお付き合いするのは最後にしてほしい。

なぜ植田はいままで起用されなかったのか?

 さて最後に選手評をつけておこう。まず良くも悪くもひとり舞台だった小林は、やはり北朝鮮戦で感じた通りCFのほうが持ち味が出る。決定機を3度も逃したのはいただけないが、基礎技術の高さと瞬間的なスピード、俊敏性、ちょっとしたスペースを見つけてそこに潜り込んでいくセンスは買える。残る問題はアジアでなく「世界」に通用するかどうかだ。

 1点目の起点になった倉田は試合から消える時間帯もあったが、シュートの意識が高かった。北朝鮮戦を終えた彼はメディアの取材に「絶対ゴールがほしい。結果を残さなければ生き残れない」とコメントしていたが、言葉通り意欲的だった。飛び抜けた「一芸」に秀でた選手ではないが、各種のプレイがアベレージで出来る。複数のポジションをこなすユーティリティー性やハードワークできる強さはハリル好みだろう。

 中盤の底を務めた今野は運動量豊富で泥臭いプレイが持ち味だ。ピンチの場面には必ず顔を出し、カラダをぐいぐい入れて逞しく敵と競り合う。まるでフィールドに3人くらい今野がいる感じである。正直、W杯アジア最終予選で彼がエントリーされたときには「この年齢の選手を選ぶのか?」と感じたが、この日の働きでグッとアピール度を増した。不動のレギュラー・長谷部との排他起用でロシアがあるかもしれない。

 後半30分に交代出場した川又は、大柄な中国選手に見劣りしないフィジカルでポストプレイをこなした。あの高さと強さは、このチームではDF植田と並び1、2を争うだろう。小林のあげた先制点にも絡んでいる。結果を出せなかった前回大会とくらべ、やはりひと回り成長している。「ここぞ」の場面でややパニックになるきらいはあるが、アグレッシブでワイルドな素材としての魅力は一級品だ。あとは身体能力だけでなく、さらに基礎技術を身につけてほしい。

 対中国の高さ対策で右SBとして起用された植田は、破綻なく「異国のポジション」をこなしていた。初戦に出場した室屋よりはるかに安定感があった。チャンスになれば機敏にオーバーラップする攻撃センスもある。少ないタッチ数で縦パスを繰り出し、ハリルの戦術を高度に理解していた。なぜ彼がいままで起用されなかったのか、まったく理解できない。エクセレントだ。

 一方、右WGとして初先発した期待の伊東純也は、ほろ苦いデビューになってしまった。なぜかプレイに迷いがあるのだ。なんと「パスをしようか?」などとプレイ選択に悩んでいる。「個の力」を生かした縦へのドリブル突破が得意で思い切りのよさが身上であるはずの彼は、いったい何を弱気になっているのか? 中国レベルのディフェンスなんて、軽いはずじゃないか? ただこれで切ってしまうのはあまりにも惜しい。追試が必要だろう。

 さて次は優勝を決める韓国戦だ。

 ぶっちぎろう。

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【女子E-1】なでしこジャパンは実力の半分も出せてない

2017-12-12 07:29:38 | サッカー日本代表
何が彼女たちをそうさせるのか?

 ゆうべの中国戦を見て驚いた。立ち上がりからなでしこジャパンは、2タッチ以内で小気味よくボールを回すハイテンポなパスサッカーをやっていた。

 パススピードも強く速く、全員に「前へ」の積極性がある。すばらしいデキだった。ラインコントロールも申し分なく、プレスの掛け方もよかった。少なくとも先制点を取る前半の20分までは、だ。ところが1点をリードした彼女たちは、それっきりまったく別のチームになってしまった。

 もちろんこれらの要素のうち、すべてが崩壊したわけじゃない。最大の変化はバックパスが増えたことだ。点を取るまではみなぎっていた「前へ」の積極性が激減した。(バックパスの功罪についてはこの記事参照。バックパスを多用すれば必然的に遅攻になり、そのぶん相手チームに守備の体勢を立て直す猶予を与える)

 もう1点はボールスピードだ。パスが急に弱くなり、だれに出そうとしているのか判然としないような中途半端なボールが増えた。大きく変化したのはこの2点だ。そして点を取って以降の残り70分間は、初戦の韓国戦とまったく同じ消極的な状態になってしまった。本当にもったいない。

 まちがいなく立ち上がり20分間の張り詰めたサッカーが、彼女たちの実力なのだ。とすればなでしこジャパンは実力の半分も出せてないことになる。選手にこれだけの変化を起こさせるのは、メンタル要因としか思えない。

メンタルトレーニングの必要性

 想像だが、「20代女性」という時期はもともとむずかしい年代なのだろう。ナイーブで多感。ちょっとした環境の変化や対人関係、また試合の状況によって精神状態が千変万化する。そしてメンタルがネガティブな方向に変われば、プレイの質も激変するーー。

「前半20分に待望の先制点が取れた。ここから試合運びはどうするのか? 攻め4割に落とし安全に行くのか? それともまっすぐ積極的にやるか? いずれにしろリードを守りたい」

 そんな精神状態の変化が「前」を向いていたそれまでの彼女たちを消極的にさせ、「安全に」の意識がバックパスを激増させたのではないか?

 いや、点を取れたのがもし後半30分なら、試合運びを変えるのもわかる。だが前半20分では早すぎる。とすれば彼女たちは自覚的に「そうした」のでなく、無意識のうちに「そうなってしまった」のだとしか思えない。取材してないのでわからないが、女子代表はメンタルトレーニングはやっているのだろうか?

精神的なマイナス要因を「棚に上げて」おく

 たとえば試合中にミスをしたとしよう。そのことが気になり、がっくりプレイの質が落ちてしまう。サッカー選手にはよくあることだ。

 そんなとき、ゲーム中の失敗は「試合中」には考えない。「棚に上げておく」ようにするメンタルコントロールができれば、その選手は常に実力を発揮できるようになる。

 それほどメンタルの影響力は大きい。

 なでしこジャパンのあれだけ大きいプレイの質の浮き沈みが、もしメンタル要因だとすればすべてが頷ける。いわば「足枷をつけて」サッカーをやっているようなものだからだ。

 彼女たちの名誉のために言っておくが、選手個々の技術や戦術レベルは申し分ない。相変わらずFWの田中美南や岩渕真奈は「個の力」を見せつけていたし、アンカーを務めた隅田凜は展開力がすばらしくプレスをかけられた状態でもしっかりプレイできる。左インサイドハーフで出場した猶本光は守備対応が正確だった。

 阪口や鮫島はもっともっと出来ると思うし、なにより韓国戦で「別格の違い」を見せたMF中島はアシストしたきり試合から消えてしまったのは残念だったが。

 なでしこジャパンは持てる実力さえそのまま出せれば、今の段階でもアジアに敵はいないだろう。ではどうすれば実力を出し切れるのか?

 それを考えてほしい。

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