すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】ゴールでなくパスをめざす国、ニッポン

2017-01-23 12:25:52 | サッカー日本代表
勝てない理由はパスサッカーの神格化にある

 あるメディアが昨年引退したばかりの元日本代表選手について、こんなふうに評していた。

「若いころ天才ドリブラーと言われた彼は、その後、巧みなパスでチャンスを作る玄人好みのスタイルに変身した」(要旨)

 1対1で勝負するサッカーをあたかも未成熟なスタイルであるかのように位置づけ、逆にパスサッカーを一段高いレベルと評価する。ゴールを目指すのでなく、パスがつながるその過程をこそ重視するーー。

 ボールを激しく競り合う「個の戦い」でなく、ショートパスやワンツーが連続して繋がるパスサッカーが「正しい」とされる日本では、メディアの認識もこんなふうに偏っている。ふたこと目には、組織でありパスだ。

 だがテレビカメラを引いてフィールド全景を見れば組織戦術であったとしても、カメラをうんと近寄り局面をアップで見ればサッカーは究極的には1対1だ。

「日本人の個の弱さを組織でカバーするんだ」などといっても、結局、個々の局面における1対1に勝てなければ先に進めない。まず前提として強い個があり、その強い個が集積した結果としての組織戦術でなければ世界に勝てない。

 1対1のデュエルを唱えるハリルが個の重要性を布教し世の中を変えるには、まずパスサッカーを過剰に神格化する日本人の価値観自体を変えて行く必要があるだろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【サッカー日本代表】柴崎岳と斎藤学は海外へ行くべきだ

2017-01-18 09:24:13 | サッカー日本代表
「Jリーグ・クオリティ」から脱出せよ

 鹿島アントラーズの柴崎岳と横浜F・マリノスの斎藤学が、海外移籍かどうかで揺れているようだ。

 もし海外へ行ける条件・環境にあるのなら、絶対行ったほうがいい。

 日本人選手はJリーグにいる限り、一生「Jリーグ・クオリティ」で終わってしまう可能性が高い。だが斎藤はシュート精度を高めればもっともっと点が取れるはずだし、柴崎はヨーロッパ・レベルのデュエルを身につければ日本代表にまた選ばれるはずだ。

 柴崎はレアル・マドリードと決勝を戦ったクラブW杯で学んだだろう。上には上がいることを。と同時に自分は将来、「その世界」で通用する可能性があることを。そのためには移籍あるのみだ。

 彼らの浮沈は日本代表の命運を左右する。

 絶対、ヨーロッパへ行くべきだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【サッカー日本代表】どこまでボールを大事にするか?

2017-01-14 07:06:04 | サッカー日本代表
ボールロストをこわがるな

 ハリルはポゼッションにまったくこだわらない。逆に本田はポゼッション志向が強い。おもしろい対比だが、結局どちらが正しいか結論を出すことなどできない。ことは正邪でなく、スタイルの違いにすぎないからだ。哲学の違いに結論は出ない。それでもただひとつ、言えることはある。

 それは結局、サッカーはどこかで勝負しなければ始まらない、ということだ。

 パスサッカーが好きな日本人は、とかくポゼッションにこだわりがちだ。ゴールすることでなく「パスをつなぐこと」が自己目的化してしまう。だがポゼッション率を極端に重視し、勝負を避けてばかりいては勝てる試合も勝てない。

 例えばちょっと寄せられ苦しくなっただけで「バックパスしようか?」との思いが頭をもたげる。だが例え安全策を取りバックパスしても、パスの受け手が敵に寄せられていたらピンチを招く。あるいはバックパスの受け手が不十分な体勢だったら結局ボールを失う。しかも、より低いゾーンでのボールロストという「より悪い形」で。

 それなら前にいる自分が少しでも有利な体勢のうちに勝負したほうがいい。逃げのパスをせず勝負に出る局面も作らなければ、相手との競り合いに勝てない。

 パスに逃げる思考がかすめても自分で行くこと。そこでの思い切りが最後はサッカーの勝敗を決める。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【高校サッカー決勝】サッカーは決定力で決まる 〜青森山田5-0前橋育英

2017-01-10 08:34:05 | サッカー日本代表
GKが「ラストパス」を出す未来型サッカー?

 高校サッカーの決勝戦は、まったく考えさせられた試合だった。ポイントは3つだ。

 まず試合の立ち上がりは前橋育英がポゼッションしゲームを支配した。だがこの試合はポゼッション率では決まらなかった。これがまず第1点だ。

 では何が試合を決めたのかといえば、青森山田の圧倒的な決定力である。シュートがことごとくワクへ行く。日本代表に爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだった。だが一方の前橋育英はシュートがさっぱりワクへ飛ばない。あまりにも鮮やかな対比である。いくら芸術的にパスをつなごうが、「サッカーはここで決まるんだな」と実感させられた試合だった。

 最後の第3点は、青森山田のGK、広末陸のフィード力である。彼は強く正確なロングボールを蹴れる。下手するとゴールキックがことごとく「ラストパス」になりそうな勢いだった。

 GKにあんなキックが可能だとなると……例えば守備を固めてリスクを犯さずGKにバックパスし、敵ゴール前に上がったロングボールを競ってこぼれ球を詰める、という攻撃が可能になる。戦術も何も関係ない。まさにデュエルだ。単にフィジカルでボールを競り、こぼれたところをゴールに押し込むサッカーになる。確かに効率的だが、果たしてそれでいいのだろうか?

 いろいろと考えさせられた試合だった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【サッカー日本代表】「ポゼッションか? カウンターか?」は不毛な二元論だ

2017-01-07 04:22:31 | サッカー日本代表
状況に応じて戦い方を変えろ

 日本のサッカー界では「個か? 組織か?」のような不毛な二元論がなされやすいことは、過去に何度か書いてきた。ハリルが代表監督に就任して以来、にわかに湧き起こっている「ポゼッション・サッカーか? カウンター・サッカーか?」という二元論もそのひとつだ。

 ポゼッションサッカーは、日本ではかなり誤解されている。ポゼッションを謳ったザックジャパンの「悪い時のイメージ」が強いからだ。

 例えばポゼッションサッカーを標榜するチームは、悪い時にはついラクをするパターンに陥りがちだ。ボールを持つと、前が空いているのにわざわざバックパスして最終ラインでボールを回す。とにかくいったんバックパスしてからモノを考えるクセがついてしまう。そのほうが体力も温存できるし、なによりラクだからだ。

 かくてゴールすることではなく、ボールを回すこと自体が自己目的化する。で、前にスペースも人もいるのに縦にチャレンジせず、ダラダラと自陣でボールをこねくり回すーー。

 これでは勝てる試合も勝てなくなる。

 だがポゼッションサッカーはそもそも足元の技術がある日本人に向いているし、うまくやれば大きな武器になる。よくいわれるように自分たちがボールを握っている限り失点する可能性はない。前述したような「ラクをするサッカー」に陥りさえしなければ使える戦術だ。

 例えば失点リスクの少ない相手陣内でポゼッションし、ボールを失ったらすぐ敵陣でプレッシングして奪い返す。で、ショートカウンターをかけるーー。

 ハリルジャパンが縦に速い攻めだけでなく、ポゼッション・スタイルとショートカウンターの融合ができるようになれば勝率はグンとアップするはずだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【サッカー日本代表】秘密兵器・FW小林悠を積極的に使うべきだ

2017-01-03 07:21:13 | サッカー日本代表
技術とスピード、キレが一級品

 鹿島アントラーズと川崎フロンターレが戦った天皇杯決勝を見て、FW小林悠(川崎)のキレっぷりに驚いた。日本代表におけるプレイとのあまりの落差にビックリしたのだ。

 まあ小林は代表ではロシアW杯最終予選・オーストラリア戦でスタメンを取ったくらいで、あとは試合終了間際に交代出場する程度だからあまりインパクトがないのも当然だ。なんせ代表で同じ右サイドを争うのは本田だから、出場機会が少ないのも仕方ない。

 だが本田は所属チームで試合に出ておらず、もうずっとコンディションが悪い。ならば今年は小林を積極的に使ってもいいのではないか? 右サイドからカットインしてFW的にシュートも期待できる彼は非常に魅力的だからである。

 あの天皇杯決勝。小林はチーム唯一の得点を叩き出したが、シュートに行くまでの「仕込み」が秀逸だった。

 後半8分、ゴール前で小林の足元に縦パスが出てきた。小林がトラップすると判断した鹿島のCB昌子は前に出てプレスをかけに行く。それを見た小林はとっさに縦パスをスルーした。すると昌子が前へ出たぶん、鹿島の最終ラインにはSBとCB植田の間にぽっかりスペースができている。つまり小林は昌子を食いつかせ、ゾーンに穴を空けさせたのだ。

 で、小林はスルーした次の瞬間、すかさず体をかわして昌子がもといたゾーンの穴に飛び込む(このとき昌子は前に出たまま完全に取り残されている)。そこへ途中出場した三好がポストプレイからラストパスを出し、受けた小林は矢のようなシュートをゴール左スミに決めた。

 縦パスをトラップすると見せかけて昌子を食いつかせ、スルーするや瞬時に昌子が空けたゾーンのギャップに入り込んだプレーはすばらしかった。絵に描いたようなオフ・ザ・ボールの動きだった。

 このほかにも小林は前半にエウシーニョのポストプレイからビッグチャンスをつかんだが、シュート態勢が微妙に崩れて決められなかった。また後半19分にはカウンターから右サイドを縦に抜け出し、寄せてきた敵DFを切り返しでかわし左足で鋭いシュートを放ったが、ポストを直撃した。小林はこの2つの決定機を決めていればハットトリックを達成し、フロンタ−レの優勝に貢献していただろう。まちがいなくMVPである。

 小林はあの2つを決められるようになれば、日本代表でも本田を蹴落としてレギュラー確定だろう。それだけ可能性のある選手だし、将来性豊かだ。スピードがあり、キレもいい。

 代表の右サイドはもうずっと本田が君臨しているが、コンディションの悪い選手がレギュラー安泰というのはありえない。このさいハリルは右サイド要員をゼロベースで見直し、小林をスタメンで使ってもいいのではないか? サイドもできる攻撃的な武藤と右SB内田もケガから復帰したことだし、今年の日本代表はおもしろくなりそうだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【天皇杯・決勝】熟成する鹿島の「逃げ切り芸」 〜鹿島2-1川崎

2017-01-02 11:03:49 | Jリーグ
金崎抜きの「飛車落ち」でも鹿島が勝つ

 相手にボールを持たせてカウンターを狙う4-4-2の鹿島アントラーズと、グラウンダーのボールをつなぐポゼッション型3-4-3の川崎フロンターレが天皇杯決勝で激突した。噛み合わ的には理想的な対戦だ。

 鹿島は前半41分に右コーナーキックから、戻りながらの難しいヘディングシュートを左SB山本脩斗が決めて1点先制。すると川崎は後半頭から3バックを4バックに変え追撃態勢に。その川崎は後半8分、FW小林悠が縦パスをスルーすることで鹿島のCB昌子を食いつかせて作った敵ゾーンの穴に自ら入り込み、きれいなシュートを左スミに決めて1点。両者1-1で譲らず延長戦に突入した。熱戦だ。

 すると鹿島は延長前半にゴール前へのロビングから途中出場のファブリシオが決め2-1とリード。これで勝ちパターンに入った鹿島はすかさず自陣に4-4のブロックを固めて試合を殺した。デキは必ずしもよくないながらも、鹿島には「より1歩」強く寄せる粘りのディフェンスがある。リードするや守備を固めて試合を終わらせる鹿島の「逃げ切り芸」が鮮やかに決まった一戦だった。

川崎は前半に2度のビッグチャンスを逃す

 前半、勢いよく攻める川崎を鹿島は受けて立った。川崎は前半に2度のビッグチャンスがあったが決められず、逆に鹿島はセットプレイからしぶとく先制する。攻められながらも結局しっかり点を取るのは鹿島である。実質的にはこの前半で「勝負あった」といえるだろう。

 1点リードした鹿島は後半頭から自陣にブロックを作り、相手を待ち受けるゾーンディフェンスに変える。後半に追いつき1-1とした川崎は、結局は鹿島を引き立たせるための咬ませ犬になってしまった。川崎は前半に2度もあった決定的なチャンスをものにできなかったのが最後まで響いた。あれを決めていれば川崎にも十分勝つチャンスはあった。だが勝負に「タラレバ」はない。

 この日、川崎のFW小林は非常にキレており、前半にエウシーニョのポストプレイから小林にビッグチャンスが回ってきたが決められなかった。小林は意味もなくシュート態勢が崩れてしまったが、なぜあそこでしっかり打てないのか? あのシーンには、ゴール前でパニックに陥る日本人選手の決定力不足の原因が隠されているように感じた。小林はこの日、決定機をキッチリ決めていれば3点取れたはずだ。

鹿島は堅守速攻・逃げ切り型の試合運びを完成させた

 立ち上がりに両チームの激しい前プレから始まった試合だったが、川崎に1-1とされた後半途中から、相手ボールになると鹿島は全員が自陣に引いた。川崎がボールを握っているように見えるが、実は鹿島のペースだ。かさにかかって攻める川崎を鹿島は粘り強くいなし、延長前半でとどめを刺した。川崎には、延長前半で失った1点を取り返すメンタルがもう残ってなかった。

 鹿島の2点は、セットプレイと縦ポンのロビングからだ。鮮やかな攻めの形を見せたわけでも何でもない。だがそれでも気がつけば最後にお立ち台に立っているのはアントラーズである。結局、最後は逃げ切りパターンに入った鹿島の横綱相撲で幕を閉じた。

 準決勝に引き続き3バックで試合に入り後半4バックに変えるなど、川崎の風間監督は策に溺れた印象だ。逆に鹿島の石井監督は、お家芸である堅守速攻・逃げ切り型のうまい試合運びを熟成させた。Jリーグ・チャンピオンシップからクラブW杯、天皇杯と、狙ったゲームプラン通りに試合をハメる経験を積んだ鹿島はいま、無敵の「王国」を作りつつある。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする