すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【CL 2019/20】アンチェロッティ、してやったり E組・第1節 ~ナポリ 2-0 リバプール

2019-09-18 09:36:22 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
攻守の切り替えが速い好ゲーム

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)は各地でグループリーグが開幕した。E組のナポリ対リバプール戦は内容的には接戦だったが、ナポリがPKとパスカットで2点を上げてラッキーな快勝をした。

 両チームともプレースピードとボールスピード、攻守の切り替えが非常に速く、息もつかせぬスペクタクル劇が展開した。これぞCL、という白熱した極上のエンターテインメントだった。

 ナポリのフォーメーションは守備時4-4-2、攻撃時3-4-3。スタメンはGKがメレト。最終ラインは右からディ・ロレンツォ、マノラス、クリバリ、マリオ・ルイ。セントラルMFはアランとファビアン・ルイス。SHは右がカジェホン、左がインシーニェ。2トップはメルテンスとロサーノだ。

 一方、リバプールのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがアドリアン。最終ラインは右からアレクサンダー・アーノルド、ファン・ダイク、マティプ、ロバートソン。アンカーはファビーニョ。インサイドMFは右がヘンダーソン、左がミルナー。3トップはサラー、フィルミーノ、マネだ。

激しいプレッシングとカウンターの応酬

 ナポリはビルドアップ時に左SBのマリオ・ルイが高い位置を取り、最終ラインの残り3枚が左へスライドして3バックを形成する。両SHのインシーニェとカジェホンは互いにバランスを取るつるべの動きをし、片方が最前線に上がり3トップのWG化すれば、他方が引いてSHを務める。

 特に守備の際インシーニェは、時には最終ラインに入って左SBのカバーリングまでこなす。非常に運動量が多い選手である。また最前線のメルテンスは、攻撃時には適宜、中盤に下りてゲームメイクもする。

 これでナポリは攻撃時には3-4-3に可変し、ショートパスをつなぎながら目まぐるしくボールを動かして攻める。他方、守備時には美しい4-4-2になる。

 一方、リバプールのビルドアップは両SBを高く上げ、2-5-3のような形で攻める。ナポリのビルドアップに対しては、3トップが激しくハイプレスをかけ組み立てを壊そうとする。

 かたやナポリもそれは同じで、時にはインシーニェが1列上がった3トップの形でハイプレスをかけてハメようとする。プレッシングサッカー信者にはこたえられない展開だ。

2つのミスが勝敗を分けた

 試合が動いたのは後半37分。リバプールのロバートソンがボックス内でカジェホンを倒し、ファウルを取られてPKに。キッカーのメルテンスは冷静にゴールへ沈めた。

 続くナポリの2点目は後半47分だった。ファン・ダイクの迂闊なバックパスを途中出場のジョレンテがダイレクトでさらい、右足で鮮やかに決めた。

 かくて激しいカウンターの応酬になったオープンな好ゲームは、2回のミスで2ゴールが決まって終わった。力が拮抗している試合はミスで決着がつく。そんな法則を絵に描いたようなゲームだった。

 アンチェロッティはしてやったり。晩酌の1杯はさぞかし美酒だろう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【プレミアリーグ 19/20 第5節】ノリッジのコレクティブ・カウンターが炸裂する ~ノリッジ 3-2 マンチェスターC

2019-09-16 08:40:32 | イングランド・プレミアリーグ
シティは圧倒的に押し込むが……

 立ち上がりからマンチェスター・シティは圧倒的なポゼッションで、昇格組のノリッジを自陣に押し込んだ。だがいつもと違いスムーズにボールを運べない。

 これでひとたびシティがボールを失うと、前線に次から次へと人が湧き出してくるノリッジのコレクティブ・カウンターが炸裂。3発を叩き込んで王者シティを粉砕した。

 シティのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがエデルソン。最終ラインは右からカイル・ウォーカー、ジョン・ストーンズ、オタメンディ、ジンチェンコ。

 またこの日のアンカーはロドリ。インサイドMFは右がギュンドアン、左がダビド・シルバ。3トップは右からベルナルド・シウバ、アグエロ、スターリングだ。

プレスを受けシティのパスワークが各駅停車に

 シティのビルドアップは左SBのジンチェンコと右SBのウォーカーが、アンカーのロドリの高さまで1列上がって内に絞り、偽SB化して2-3-5で攻める。これでインサイドMFがサイドに開いて内側にスペースを作り、そのスペースにSBがインナーラップしハーフスペースを使う形だ。

 ところがこの日のシティはボールの運びがスムーズじゃない。いつもの縦への速さがない。シティは通常2タッチ以内で流れるようにパスをつなぐが、この日はシティのボールホルダーがマーカーと正対してたっぷり3秒間、考え込んだりしている。

 で、あげくノリッジのプレッシングを受けてひんぱんにバックパスしているのだ。こんな各駅停車のシティは見たことがない。この形でシティは、ノリッジ陣内でボールを失ってはカウンターを食らうことになった。

アグレッシブなノリッジは前へ前へと真っ向勝負

 一方、ノリッジのフォーメーションは2センターの4-4-2だ。彼らはていねいにビルドアップしグラウンダーのパスでポゼッションしようとする。非常にアグレッシブで躍動感があり、前へ前へと真っ向勝負してくる。気持ちで戦う素晴らしいチームである。

 ノリッジは終始シティに攻め込まれ自陣に押し込められているため、自陣でボールを奪うと長い距離を運んでカウンターに移る。その際、ロングボールをトップに当てたりするのでなく、ポジティブ・トランジションで選手が前へ前へと続々湧き出し、グラウンダーのボールを次々につないでコレクティブ・カウンターをかける。

 シティの高い最終ラインの背後にはたっぷりスペースがあり、ノリッジはこのスペースをうまく使っておもしろいようにカウンターを決めた。

シティは守備の崩壊が痛い

 ノリッジは前半28分に2点目を奪って以降、ボールを失うと明確にディフェンディングサードまでリトリートし自陣に4-4-2のブロックを作るようになった。守備固めの逃げ切り策だ。そのため逆にシティがますますノリッジ陣内に押し込み、完全にハーフコートマッチの様相を呈して行く。

 そしてシティは前半45分にアグエロがゴールを奪い反攻の狼煙を上げたが、どうもうまく行かない。特に後半5分の3点目の点の取られ方はひどかった。シティのビルドアップ時にCBのオタメンディがハイプレスを受けてボールを失ない、ノリッジのプッキにゴールを決められたのだ。

 シティはその直前にもライン裏のスペースを狙われ決定機を与えるなど、どうにもリズムがおかしかった。シティは8月31日に行われた第4節のブライトン戦でCBのラポルトが右膝を負傷し、長期離脱したばかり。そのため守備に変調をきたしている。

 さて第5節を終え、首位を走るリバプールは開幕から5戦全勝の勝ち点15。それを追う2位のシティはすでに1分け1敗しており勝ち点10だ。昨季のシティとリバプールの優勝争いは、リバプールがたった1敗しただけで優勝を逃す僅差だった。それだけに今季のシティは早くも雲行きが怪しくなってきたかもしれない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【カタールW杯2次予選】「黄金のカルテット」のスタメン完全固定に反対だ

2019-09-12 06:43:26 | サッカー日本代表
選手層を厚くしながら勝つ

 カタールW杯アジア2次予選で、同組になった国々と日本の間にはかなり力の開きがある。例えばFIFAランキング33位の日本に対し、キルギス95位、タジキスタン119位、ミャンマー135位、モンゴル187位である。ゆえに日本はこの2次予選を突破できるはずだーー。

 これは過信や驕りではなく、客観的な分析である。

 で、この客観的分析に基づき、選手層の厚みを作る目的で「スタメンの入れ替え」という一定の負荷をかけてこの2次予選を戦うべきだと私は考えている。

「予選は内容でなく結果」の正論に隠れた落とし穴

「予選は、内容でなく結果がすべて。ゆえに勝てば内容は問わない」

 むろんこれは正論だ。だが同時に日本代表は海外のチームに所属する選手が圧倒的に増え、いまや代表チームは昔とくらべまとまった強化活動をすっかりしにくくなった。

 であればミャンマー、キルギス、モンゴル、タジキスタンという日本とはるかに力の差がある格好のスパーリング・パートナーを得た2次予選は、「実戦練習の場だ」と考え長期的な視野に立った戦い方をするべきだ。

 つまりスタメンを入れ替えることで有望な選手に次々チャンスを与え、戦力を上積みしながら選手層を厚くして勝って行く。目先の予選のためではなく、すべてはカタールW杯「本大会」のためである。

 このやり方なら予選が終わるころには、だれが試合に出ても一定以上のレベルでプレイできるようになっているはずだ。これによりW杯本大会の戦いがぐっと楽になる。つまり目先の予選だけに囚われるのでなく、W杯本大会から逆算して予選の戦い方を考えるわけである。

2次予選から長期的な視野を持て

 ゆえに私は中島と堂安、南野の3人に大迫を加えた「黄金のカルテット」を機械的に毎試合スタメンで使い、漫然と2次予選を戦うことには反対だ。むしろ2次予選を利用して幅広く選手を育成し、チームに厚みを作るという方向性を取りたい。

 では具体的にどんなやり方が考えられるのか? 一例だが、ひとつにはBチームを作り、中島らのAチームと適宜入れ替えて予選の試合を戦う。例えばBチームには以下のようなメンバーはどうか。このメンバーでも十二分に2次予選を戦えるはずだ。

【Bチーム】

     〇鎌田大地
 〇原口 〇久保 〇伊東
  〇柴崎 〇遠藤航
〇安西〇畠中〇冨安〇室屋
   〇シュミット・ダニエル

 上図で例えば左SHの原口がサイドに開いて幅を取り、その内側を左SBの安西がインナーラップしハーフスペースを使う、というようなポジショナルでロジカルな戦い方をしたい。一方、あるいは以下のような3バックのチームを作り、相手チームとのフォーメーションの噛み合わせに応じてAチームと入れ替えるという方法もある。

【3-4-2-1】

      〇鎌田大地
   〇伊東  〇久保
〇原口〇柴崎〇遠藤航〇安西
  〇畠中〇植田〇冨安
     〇シュミット・ダニエル

 これなら選手層が厚くなるだけでなく、異なるフォーメーションが使えて戦い方そのものにもバリエーションができる。

 繰り返しになるが、日本はスタメン変更という負荷をかけても2次予選を勝ち抜ける。これは過信ではなく客観的な分析だ。ならば日本は2次予選で長期的視野に立ち、随時スタメンを入れ変えて選手層を厚くしながら戦う一手である。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【カタールW杯2次予選】プランBの構築が急務だ ~ミャンマー 0-2 日本

2019-09-11 08:37:16 | サッカー日本代表
プランAの威力はもうわかった

 カタールW杯アジア2次予選がついに始まった。その初戦。どしゃ降りの雨とぬかるむピッチという、どアウェイの悪条件の中、まったくそれを感じさせない強靭な試合運びで森保ジャパンは完勝した。ミャンマーに勝ったというより、悪条件に打ち勝った。

 と同時に、大迫と中島への強い依存がまたも印象付けられるゲームになった。プランAの威力はもうわかった。残るプランBの構築が急がれる。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが権田。最終ラインは右から酒井宏、冨安、吉田、長友。セントラルMFは柴崎岳と橋本拳人。2列目は右から堂安、南野、中島の3人。ワントップは大迫だ。先日のパラグアイ戦とまったく同じメンバーである。

 ミャンマーは前半は自陣に低く構え、後半は最終ラインを高くしてきた。だが日本の攻撃力はまるで相手などいないかのように機能した。ポゼッション率は71%。日本は30本のシュートを放ち、中島と南野が2点を奪った。ミャンマーのゴールキーパーが素晴らしいセーブを繰り返したため2点で終わったが、日本は5~6点を防がれたような印象だった。

ケガ人が出れば終わってしまう

 この試合でハッキリしたことは、中島と堂安、南野の3人に大迫を組み合わせた「黄金のカルテット」の連動性と破壊力はやはり強力だということだ。森保ジャパンが看板にしているプランAの力がまたも証明された。

 だがそれ以外といえば、セントラルMFの橋本がバランス感覚のあるポジショニングと強くて速い縦パス、2本のすばらしいミドルシュートでレギュラー取りが見えたくらい。黄金のカルテットに取って代わる存在が出てこない。

 このままではカタールW杯の本大会でも、ピッチに立っているのは今回と同じスタメンだ。中島か大迫がケガすれば、このチームはたちまち終わってしまう。なぜなら黄金のカルテットの存在そのものが森保ジャパンなのだから。しかも彼らの存在が「戦術」でもある。

 逆にいえば森保監督はチームのコンセプトを策定したり、戦術を組み立てたりする必要はないのだ。黄金のカルテットさえ集めて、「君らのインスピレーションで自由にやってくれ」とさえ言えばいい。あとは気合を入れるだけだ。

スペアのネジがネジ穴にハマらない

 だがこのままバックアッパーが育たないのでは、繰り返しになるがケガ人が出れば終わってしまう。現にパラグアイ戦とこのミャンマー戦では後半に選手交代を入れたが、少しメンバーをいじると途端にチームとしての機能が落ちた。

 このチームは属人性(特定の選手への依存度)が強すぎて、「いつものメンバー」を一部入れ替えただけでまるで別のチームになる。あのアジアカップ2019でも、中島がケガで欠場しただけで森保ジャパンはまったく別のチームと化し、非常に苦しんだ。

 誤解を恐れずにいえば、もうチームは出来上がってしまったのだ。あとはどの選手を途中出場させても、黄金のカルテットが生み出すあの連動性は生まれない。パーツを変えるといい意味での化学反応を起こすのでなく、逆に全体が劣化してしまう。

 まるでねじ穴の規格が違うとネジがハマらないのと同じように、どの控え選手も機能しないのではないか? ネジがほんの1本ちがえば、森保ジャパンという名の精密機械は正常に動かないのではないか? そんな危機感に囚われる。

 プランBの構築。この難題はどうすれば解決できるのだろうか?

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【カタールW杯2次予選】ミャンマー戦は割り切った戦い方を

2019-09-10 06:20:19 | サッカー日本代表
相手がベタ引きで来たらロングボールを

 さて、いよいよカタールW杯アジア2次予選初戦、ミャンマー戦が今夜に迫ってきた。ミャンマーは日本をリスペクトし、自陣に引き込み「引き分けならよし」という戦い方をしてくる可能性がある。アジア2次予選ならではの「引いた相手をどう攻めるのか?」がテーマになる。

 もし相手がベタ引きで来たら割り切って、ロングボールをガンガン放り込むのもテだ。

 ミャンマーの選手は身長が低い。そこでハイボールを競り、こぼれたセカンドボールを拾って二次攻撃したい。ボールを敵陣に放り込んだら、あとは1対1の個の戦いだ。技術のある日本が有利なのは言うまでもない。

 あるいはサイドの選手が高いポジショニングをし、サイドからハイクロスの雨を降らせるのも一案だ。これも原理はロングボールと同じである。

 もしこれでボールを拾われ、攻め込まれたら、「相手を自陣から引っ張り出した」ことになる。こうなれば逆に日本はカウンターのチャンスだ。敵の背後にできたスペースを積極的に狙いたい。

きれいに勝とうとするな

 場は、2次予選。「きれいに攻めよう」などと考えないことだ。見てくれは悪くても、効率的な勝ち方をしたい。1点は1点だ。

 まちがっても、いつぞやのロシアW杯アジア2次予選初戦・シンガポール戦のときのように、グラウンダーのショートパスをきれいに繋いで中央突破を図ろう、などと考えては敵の思うツボだ。敵は自陣に3重の壁を作っているのだから、グラウンダーのボールは足で引っかけられて攻めが完遂できない。

 しかも現地はボールが走らないデコボコのピッチだ。ましてやスコール(雨)などが降ってきたら、泥で滑りが悪いグラウンダーのパスはますます餌食になる可能性が高い。気をつけてほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【森保ジャパン】相手が弱いW杯2次予選、鉄板メンバーの固定は滅びの道だ

2019-09-09 12:12:14 | サッカー日本代表
選手層を厚くしながら勝つ

 いよいよカタールW杯アジア2次予選初戦、ミャンマー戦が明日に迫ってきた。前回の記事でも書いたが、おそらく森保監督はパラグアイ戦のスタメンをミャンマー戦でそのまま出すつもりだろう。中心は中島と堂安、南野の3人に、大迫を組み合わせた鉄板カルテットである。

 だが相手がはるか格下の2次予選の段階から、そんないっぱいいっぱいの戦い方をしていてはチームとしての積み上げが生まれない。

 過去歴代の代表チームを振り返っても、2次予選から「そのときの最強チームで戦う」という近視眼的なパターンにハマり、鉄板メンバーを繰り返し使っては最後に先細りして行った例は枚挙にいとまがない。

 相手が弱い2次予選では、軸になる選手はそのままでも、ふだん出場機会の少ない有望な選手を数人ずつ使いながら選手層を厚くして行くべきだ。で、だれが出ても一定以上の戦い方ができるようにしておきたい。

 でなければ最終予選やW杯本大会になって、主軸にケガ人が出たりするとたちまちお手上げになってしまう。

 以下のメンバー表は「予想」ではない。森保監督はミャンマー戦で前述のメンバーをスタメンに使うのだろうから、それに対するアンチテーゼである。まだ2次予選なんだから長期的視野に立ち、これぐらいのことをした上で勝てないと選手層は厚くなりませんよ、ということだ。

【ミャンマー戦・裏スタメン】

    〇大迫
〇原口 〇久保 〇伊東
  〇柴崎 〇橋本
〇安西〇吉田〇畠中〇冨安
    〇シュミット・ダニエル

 さあ、本番が楽しみである。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【森保ジャパン】W杯アジア2次予選を占う深刻な「2つの論点」とは?

2019-09-07 08:45:52 | サッカー日本代表
メンバー固定は避けるべきだ

 今回、キリンチャレンジ杯のパラグアイ戦に関し、いろんな識者の方からいろんな意見が出たが、重要なものに絞ればおよそ以下の2つの論点に絞ることができるように思う。2つの論点とは以下の通りだ。

【論点1】

 中島翔哉と堂安律、南野拓実の3人と大迫勇也を組み合わせたカルテットが「どれ位できるか?」はすでに分かっていたことであり、今さらパラグアイ戦を見て驚くような話じゃない。

【論点2】

 ゆえにこのままカタールW杯アジア2次予選に前述のカルテットを出し続けてふつうに勝っても、何の発見もないし積み上げもない。ならば相手が格下の2次予選は、いろんな新しいトライや実験をやりながら勝つのでなければ意味がないのではないか?

「三銃士」はチーム立ち上げ時からのメンバーだ

 では、まず【論点1】に関して見て行こう。中島と堂安、南野ら3人の組み合わせについては、森保ジャパン立ち上げのこけら落としになったコスタリカ戦(2018年9月11日)で早々にスタメン出場し、彼らは3-0と大爆発している。

 一方、上記の3人と大迫のユニットに関しては、森保ジャパンの立ち上げから3試合目に当たるウルグアイ戦(2018年10月16日)にスタメン起用され、あの南米の強豪相手に4-3でみごと競り勝っている。

 つまり中島と堂安、南野の3人やそこに大迫を加えたカルテットは、森保ジャパンのスタート当時からすでに試され実績を残してきたユニットである。逆にいえば森保ジャパンは彼らとともに始まった、と言っても過言ではない。

 そしてそのユニットが先日のパラグアイ戦で久々に顔合わせし、目算通り、2-0と結果を出した。なるほど確かに今さら驚くような話ではないと言える。通用するはずのものが、「確かに通用します」と確認できただけの話だ。何かが上積みされたわけでも何でもない。

ではどうやって上積みするか?

 では一方、【論点2】はどうか? そんな上積みはないが最強のカルテットを、対戦相手がかなり格下のW杯アジア2次予選に固定メンバーとして起用し続け、ふつうに勝ち進んだとしていったい何の上積みや進化があるのか? これも甚だ疑問である。

 2次予選の段階からこれでは、最終予選では当然、同じ最強の固定メンバーになるのは目に見えている。となれば「この11人が売り切れたら終わりです」みたいなことになる。これでは2次予選から鉄板の海外組を総動員し、固定メンバーで戦ったハリルジャパンと同じ轍を踏んでしまう。

 とすれば【論点2】で示した通り、たとえメンバーの大枠は変えられなくても、そこに新しいトライや実験を加味しながら上積みを稼いで行くべきだ。

 例えばパラグアイ戦で試したような冨安のSB起用だったり、久保のオプション起用、MF原口やFW永井、SB安西の登用などである。このほかにもGKシュミット・ダニエルやCBの畠中、MF伊東なども見たい。これらの選手は何も途中出場でなくても、スタメン起用してもおかしくない選手たちだ。

 本来ならアジア2次予選には五輪組を当てるような大胆策がほしかったが、それがムリなら上記のようなトライは最低限、必要だろう。そうした実験こそが選手層を厚くし、ワールドカップ本大会での力になる。森保監督にはぜひ考えてほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【森保ジャパン】ユルさが目立った花試合 ~日本2-0パラグアイ

2019-09-06 08:01:13 | サッカー日本代表
体が重いパラグアイは亡霊のようだった

 イングランドのプレミアリーグを見慣れた目には、選手の動きがスローモーションに見えた。プレースピードが遅く、インテンシティが低い。

 ことにピッチを漂うパラグアイの選手はカラダが重く、まるで亡霊のようだった。運動量もない。あれでは2失点するのも当然だろう。あのユルさを見れば、キリンチャレンジ杯はもはや強化にならないことが自明になった試合だった。

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが権田。最終ラインは右から酒井宏、冨安、吉田、長友。セントラルMFは柴崎岳と橋本拳人。2列目は右から堂安、南野、中島。ワントップは大迫だ。

 日本はボールを奪うと縦に速く攻めるいつものリズムで試合をしている。ポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)がいい。ただし問題は逆のパターンだ。

ネガティブ・トランジションの欠如

 例えばミスをして「ああっ!」などと足を止めて天を仰ぐ時間など現代サッカーにはない。だがヘディングシュートをミスった吉田や、パスミスした途中出場の永井は見事にそれをやっていた。ネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)がなってない。

 特に日本のコーナーキックを競った吉田は敵ゴール前でヘディングシュートをミスったあと、天を仰いで動きを完全に止めていた。

 だが、もしあの瞬間にボールをキャッチした敵ゴールキーパーが素早くフィードしてカウンターを食らったら、あのロシア・ワールドカップのベルギー戦とまったく同じ展開になっていた。選手は何も学んでないし、その自覚さえもない。

中島のポジショニングは釈然としない

 また左SHの中島は2ゴールの起点になったが、ただしポジショニングに関しては釈然としない。ハーフスペースを意識しているのかもしれないが、相変わらずサイドに開き幅を取る位置取りをしない。バランスを無視して中へ移動し、トップ下の位置に居座り真ん中に渋滞を招いていた。

 彼はサイドからドリブルしながらカットインしてシュートに行く自分の得意形が敵にすっかり読まれているので、新たなシュート機会を求めて中へ、中へと入ってくるのだろう。「サッカーを楽しみたい」が彼の口癖だ。パラグアイの選手を怒らせたあの意味のないリフティング・ドリブルが典型だが、彼は自分さえ楽しければそれでいいのだろうか?

 一方、もちろん感心させられた選手もいた。例えば大迫と南野の決して動きを止めない献身性とシャープさ、柴崎のゲームコントロールには目を見張った。そして後半から右SHで途中出場した久保である。

久保はどう考えてもレギュラー確定だろう

 データ分析会社の「Opta」によれば、久保はドリブルと被ファウル数でチーム最多を記録した。またシュート数とデュエル数でもチーム最多タイだった。

 彼はボールが足に吸い付いていたし、コンディションがよくカラダもキレキレ。メンタルもアグレッシブで、積極的に仕掛けて5本のシュートを打ちまくった。惜しくもバーを叩く一撃もあり、GKを強襲したシュートもあった。

 もしあのうち1本でも入っていたら、今朝の新聞の見出しは決まっていただろう。相変わらずオフ・ザ・ボールと守備は課題だが、客観的に言って彼はどう考えてもレギュラー確定だ。

 おそらく森保監督は4日後に控えたW杯アジア2次予選初戦のミャンマー戦では、一部を除きこのパラグアイ戦のスタメンをそのまま使うつもりなのだろう。だが、もし久保が出場しないようなことがあれば、それはただの日本的な年功序列にすぎない。森保監督にはよく考えてもらいたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【プレミアリーグ 19/20 第4節】今季のブライトンには注目だ ~マンチェスターC 4-0 ブライトン

2019-09-03 08:10:40 | イングランド・プレミアリーグ
ていねいにビルドアップするブライトン

 マンチェスター・シティが精巧なビルドアップとフィニッシュで、ブライトンを大差で破った。だが、ていねいにビルドアップしポゼッションしようとするブライトンのサッカーにはなかなか見どころがあった。彼らはビッグ6以外との対戦では健闘しそうだ。

 シティのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがエデルソン。最終ラインは右からカイル・ウォーカー、オタメンディ、ラポルト、ジンチェンコ。

 またアンカーにはロドリを置き、インサイドMFは右がデ・ブライネ、左がダビド・シルバ。3トップは右からマフレズ、アグエロ、スターリングだ。

シティは2-3-5に可変する

 立ち上がり、ブライトンは最終ラインからていねいにビルドアップしようとするが、シティはハイプレスで襲いかかり敵のビルドアップを無効化する。

 ブライトンは前線でボールを失うとミドルサードまでリトリートし、5-2-2-1に変化してブロック守備に移行する。ただブライトンはこのあとボールを奪うとパスをつないでポゼッションしようとするが、なかなか最前線のFWにボールが入らない。

 ブライトンの守備ゾーンが低いため、シティは完全に2バックで最終ラインからビルドアップする。両SBのウォーカーとジンチェンコがともに1列上がり、中に絞って偽SB化し2-3-5で攻める形がひとつ。

 あるいはウォーカーだけが偽SB化してロドリと2人でバイタルを埋める。一方、前ではダビド・シルバが左に大きく開いて幅を取り、左SBのジンチェンコがその内側をインナーラップしてハーフスペースをボックス付近まで上がる。これで2-2-3-3の形で圧をかけるパターンもよく見られた。

シティに勝つには2タッチ以内が基本だ

 試合開始2分、まさにその形で早くもシティに1点目が入る。左WGのスターリングが引いてくる動きで作った左前のスペースめがけ、インサイドMFのダビド・シルバがダイアゴナルランして縦パスのコースを作る。

 そして左サイドをブライトン陣内までドリブルで持ち上がったSBジンチェンコがそのダビド・シルバにパス。シルバがマイナスの折り返しを入れ、デ・ブライネがどフリーで楽々シュートを決めた。

 続くシティの2点目は前半42分だ。右SBのウォーカーがマフレズに縦パスを出し、マフレズは2タッチで右に開いたデ・ブライネにパス。そのデ・ブライネが今度は中央に折り返し、受けたアグエロがゴールをぶち抜いた。

 ブライトンは立ち上がりにいきなり失点した後、前半ずっとよくガマンしていただけに痛い2失点目だった。敵への寄せが甘かった。とはいえ彼らはビルドアップの形をもっているし、ただ守っているだけではない。中位のチームとはいい試合をしそうだ。

 ただブライトンはプレースピードがやや遅い。シティはボールホルダーへの寄せが速いため、2タッチ以内でプレーしないと引っかけられてしまう。そこが上位と戦う場合の課題だろう。

 このあと後半にはアグエロと途中出場したベルナルド・シウバが1点づつを決め、終わってみればシティが4-0で大勝した。しかしブライトンも一方的にやられたわけではなく、しっかり自分たちのゲームモデルを貫いた興味深い試合だった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする