すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【オランダ遠征まとめ】コートジボワール戦の「サヨナラゴール」に惑わされるな

2020-10-18 12:28:34 | サッカー日本代表
相変わらず見えない攻撃のロジック

 物を書く人間は「炭鉱のカナリアだ」とよく言われる。実際、「ガスだ。毒ガスだ!」と小生などは毎度騒いでばかりいる。昔はともかく、今ではサッカーはもっぱらテレビ観戦しかしていないというのにアレだが。

 で、森保ジャパンが先日行ったオランダ遠征での国際親善試合、カメルーン戦、コートジボワール戦の分析をまとめてみよう。

 まず選手別では、吉田や冨安らディフェンスラインの選手を中心に頼もしさが光った。一方、オフェンスでは、相変わらずチームとして何をやりたいのかが判然としなかった。

 世間はあのコートジボワール戦終了間際の鮮やかな「サヨナラゴール」にすっかり浮かれ、いわば洗脳されて「バンザイ、よかった」と騒いでいる。だが、ここは冷静かつ客観的に事態を見る必要があると思うのだ。

守備陣の健闘が光った

 まず選手別では、あげられるのは守備陣だ。すでに書いた通り吉田と冨安、酒井宏はすばらしいデキだった。

 特に冨安はディフェンスだけでなく、ドリブルでボールを持ちあがり要所にパスをつけるなど戦術眼が光った。

 また中盤の守備に目を移すと、セントラルMF(アンカー)を務めた遠藤航もよかった。敵の攻撃の芽を潰すプレッシングと競り合い。インテンシティが高く、バイタルエリアを埋めるポジショニングもよかった。

 このディフェンスラインとアンカーを結ぶ正三角形のゾーンは重要であり、かつそこを安心して見られたのは大きい。守備の安定はチームの安定。まずはめでたしである。

伊東はレギュラー取りに名乗りを上げた

 また右のWBとSHを務めた伊東も、スピードとドリブルで違いを見せた。右サイドに一本、芯が通り、右の大外のレーンは攻めの拠点になった。

 特に彼を右WBに使った3-4-2-1は重要なオプションになるのではないか? と感じた。ただ注文をつけるとすれば、伊東にはクロスの精度をもっと磨いてほしい。

 かたや、コートジボワール戦でトップ下としてスタメン出場した鎌田もまずまずだった。

 彼は2ライン間で巧みにボールを受け、フィニッシュまでもって行ける。あとはインテンシティの高さがもう少しほしい。攻撃の際はもちろん、守備のときもだ。

森保ジャパンは「何をやりたい」のか?

 さて一方、チーム全体の「かたち」のほうは相変わらず曖昧模糊としている。

 基本になるフォーメーションが4-2-3-1であることはもちろんわかるが、ゲームモデルはよくわからないし、個々のプレー原則もハッキリしない。特に攻撃のときだ。

 これは別に2試合を通しセットプレイの1点しか取れなかったから、そういっているわけじゃない。

 たとえば巧妙なポジショナルプレイでボールを保持し敵を圧倒して勝つのか?

 それとも前線でボールを失えばいっせいに敵に襲いかかり、高い位置でボールを即時奪回してショートカウンターを放つのか?(つまりストーミングだ)。

 森保ジャパンのサッカーは、こんなふうにはっきりカテゴライズできないのである。

ストーミング志向かと思ったが……

 いや森保ジャパンの立ち上げ当時、前でボールロストするとワントップの大迫と2列目の三銃士(中島、南野、堂安)が激しくストーミングを展開していたので、てっきりあれが「森保監督のサッカー」なのだと思っていた。

 だが違ったようだ。なぜなら森保ジャパンは、選手が変わればまったく別のサッカーになるからだ。よくいえば先代の西野ジャパンに学び、選手の自主性を尊重している。

 悪くいえば選手まかせのサッカーだ。

 これは私がそう言っているだけじゃない。

監督がベースを、オプションは選手が

 たとえば10月17日にウェブ配信された「デイリー新潮」の記事で、元「サッカーダイジェスト」編集長の六川亨氏は今回のオランダ遠征について以下のようにいう。

『そんな森保監督が目指すサッカーのコンセプトは、1年ぶりの代表マッチと練習でも「新たに伝えるコンセプトはない」とした上で、「チームにはベースがあってオプションがある。問題を解決、修正能力のあるのが強いチーム」と考え、「ベーシックな部分を伝えたうえで、オプションは選手が話し合った上で変えていって欲しい」と、選手の自己判断を尊重するスタイルである』

 森保監督は「ベースは伝えるが、オプションは選手が自分でアレンジせよ」ということらしい。

 だが上に書いた通り、そもそもその「ベースにしているスタイル」がどんなサッカーなのかがよくわからないのだ。ひょっとしたら「ベースなるものの〇割」まで選手まかせなのではないか? などと思ってしまう。

 六川氏は続けていう。

『ただし不安がないわけでもない。森保監督はスタッフらと共に綿密なスカウティングにより選手を発掘し、A代表と五輪代表のラージグループを広げてきた。それ自体は悪いことではない。気がかりなのは、いつ選手をセレクトする作業に入り、チームとしての完成度を高めていくのか、なかなか見えてこないことである』

 これはチーム作りの工程の話だ。だが私の目には「ベースになるスタイル」自体が見えてこないし、もちろん「工程」も見えてはこない。

監督が大枠を示し、あとは現場判断

 他方、サッカージャーナリストの西部謙司氏も、新著『戦術リストランテⅥ』(ソル・メディア)で、「森保監督のチームは作り込んでいない。理由は何か?」と問われてこういう。

『私はわざとだと思います(中略)。要はやろうと思えばできる監督なんですよ(中略)。今の日本はピッチ上の選手はほぼ欧州組でみんな最先端のサッカーを知っている。大枠の方針だけ示して、あとは現場の判断で柔軟に対処すればいいという考えなのかなと』

 前述の六川氏同様、「監督が大枠だけ示してあとは現場の判断」だと分析する。

 ちなみに両氏とも、あくまで現状を客観的に分析しているのであり、「このやり方に賛成だ」と言ってるわけじゃない(疑問も呈しているが、賛成とも反対とも言ってない)

「現在地」を深刻に考えるべきだ

 監督が骨格を示し、細部は選手が自主的に考えろーー。

 別に悪い考えじゃない。

 だが森保ジャパンの立ち上げから、今回のオランダ遠征までもう「どれぐらいの時間がたった」か?

 そして現在地はどうか?

 つまりオランダ遠征で日本代表が繰り広げた、あのギクシャクしたスムーズさのない攻撃のままで果たしていいのか?

 そう考えれば、おのずと答えは出ているような気がするのだが。

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【森保ジャパン】タナぼたの辛勝をどう考えるか? ~日本1-0コートジボワール

2020-10-14 09:05:36 | サッカー日本代表
安全運転の日本はただ「やってるだけ」

 両チーム無得点での、試合終了間際だった。右からの柴崎岳のファーへとまく美しいFKを、途中出場の植田が豪胆なヘッドで鮮やかに決めて「サヨナラ勝ち」だ。

 電通やサッカー協会首脳はこの勝利に大喜びだろう。だが世の中的に「これで大丈夫だ」となっては終わりだ。大胆に言ってしまえば、この日の日本はただ「やってるだけ」のサッカーだった。前半はそれなりにチャンスを作ったが、特にコートジボワールがシステムを変えてきた後半のデキはいただけない。

 日本はカメルーン戦でチャレンジして失敗したが、ある意味、このコートジボワール戦では単なる安全運転で失敗すらしなかった。カメルーン戦で見せたハイプレスのようなトライ、前からの「攻撃的な守備」がなかった点は物足りない。

 一方、ギクシャクしている攻撃陣の再構築も必須だ。カギはどうポジティブ・トランジションを速くするか? ボールを奪ったら、いかに相手が態勢を崩しているうちに攻めるか? そのプレー原則を明確化させたい。

よくいえば慎重、悪くいえばトライがない

 日本のフォーメーションは4-2-3-1。GKはシュミット・ダニエル。最終ラインは右から室屋、吉田、冨安、中山。セントラルMFはサイドというより攻守で役割分担していたが、主に左が遠藤航、右が柴崎岳だ。2列目は右から伊東、鎌田、久保。ワントップは鈴木武蔵である。

 日本はバタバタしたカメルーン戦の反省からか、全体にじっくりタメながら確実にボールをつないでいる。ただややもすると危機回避一辺倒になり、チャレンジして大きなチャンスをもぎ取るような流れにならない。

 GKを含め後ろからていねいにビルドアップしようとしているが、前が詰まると慎重にボールを後ろへ戻してやり直し。この繰り返しだ。それでも前半はいくつか攻めの形を作ったが、特に後半は立ち上がりから相手に押された。

 セントラルMFのコンビネーションは遠藤のほうがアンカー的で守備レベルの高さを見せ、柴崎はチャンスになると前へ出てからんで行く展開だ。

 一方、コートジボワールは意図のあるボールを的確に2タッチ以内でつないでくる。サイドチェンジも非常に正確だ。レベルが高い。特にアタッカー陣は機敏で鋭くシャープな動きをしている。

ミドルプレスで静観する

 日本は相手ボール時、ミドルプレスだ。(前半の立ち上がりを除き)カメルーン戦のときのようにハイプレスでハメるような動きはなく、歩いてコースだけ切って静観している。

 そのため今日はボールの奪取位置が低く、ミドルサードやアタッキングサードでボールを奪い素早いトランジションからショートカウンターをかけるようなシーンが少ない。遠藤を除き前の半分は激しいデュエルもなく、イーブンボールの競り合いでも負けている。

 一方、日本は攻めにかかると大事を取って横にはつなぐが、縦パスを入れると簡単にボールロストする。縦への推進力がなくセカンドボールも奪えない。

 早くてシャープなクロスを入れているのは久保くらい。その久保もトータルでいえば不満が残るデキだ。日本は受け手の「ここに欲しい」というところにボールが来ず、逆側にボールが来てはパスミスに終わったりしている。

 吉田と冨安の両CBは相変わらず安定しておりチーム全体に守備はいい。だが試合全体として見ればそれだけの話だ。やはり攻撃でもっと違いを見せてほしい。

替えが利かないワントップ

 選手別に見ると、期待の伊東はカメルーン戦のときのようにスルスルと前へ出ながらボールを受けるスムーズな動きがない。前が詰まっているからか。プレイ自体はいいが、カメルーン戦との対比が興味深かった。

 鎌田はライン間でボールを受けてフィニッシュまで行ける。もっとボールが欲しそうだったが、味方との意思の疎通に苦しんでいる印象だ。そこがスムーズにいけばさらにできるはずだが、今はこんなものだろうか。今後に期待である。

 左SBの中山はビルドアップの縦パスが雑だ。もっとボールの受け手が欲しいところに欲しいタイミングで出してほしい。彼は守備の粘りはあるがオフェンスが課題である。個人的には、森保監督がなぜ彼を使うのかよくわからない。

 一方、注目されたワントップの鈴木武蔵は物足りない。前で軸になる動きができていない。むろん大迫と対照的なタイプなのはわかるが、それなら前のスペースでボールをもらいスピードを生かして飛び出すような得意形を作りたい。

結局は「三銃士待ち」なのか?

 日本の選手はボールを持ち、敵と正対したとき全く期待感が湧かない。コートジボワールとは個の力が違いすぎ、「ああ、1人かわして何かやってくれるな」というワクワクするような予感がしない。結局は連係で見せるしかないのだ。

 チーム全体としてもカメルーン戦のときのように、失敗してもいいから激しいガッツでボールを奪おうといった「気持ち」がない。特に相手ボールのとき、リトリートしながら「見る」だけでプレスをかけず淡々と待ち受ける受動的な守備をしている。この受け身の地点から、どうポジティブ・トランジションを経てアグレッシブな攻撃の局面を作るのか?

 熱いプレイをする南野あたりが頭から出ればムードも変わるのだろうが、それでは結局、絶不調の堂安や中島が復活すれば……みたいな「三銃士待ち」でしかない。そう考えると今日のところは暗澹たる気持ちになった。

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【森保ジャパン】伊東の走りに代表の未来を見た

2020-10-13 08:02:47 | サッカー日本代表
右サイドを支配する絶対的な韋駄天

 9日に行われた親善試合のカメルーン戦。伊東純也は後半の頭から途中出場し、右サイドを疾走した。攻撃陣では、明らかにチームでいちばんのデキだった。以下、そんな伊東のタッチ集を拾ってみよう。

【46秒】

 ファーストタッチ。引いてきてCB酒井宏からボールをもらうと、いったん左のサポート者にボールを預け、そのリターンをもらって右サイドを完全に縦へ抜け出す。

【3分】

 すごいスピードでルーズボールに追いつき、短く縦にドリブルしてから完璧なクロスを入れる。ゴール前では大迫がヘディングシュートしたが、ミスに終わる。これは決めないといけない。

【15分】

 伊東は柴崎岳からパスをもらうと、いったんサイドで敵DFと正対したが、サポートについた堂安を壁に使ってリターンをもらう。このあとセンタリングしたがゴール右にそれた。

【25分】

 最終ラインからビルドアップされたボールを中盤に下がった久保が受け、右サイドの伊東にパス。伊東は彼の内側を縦に走り込んだ久保の前にパスを出したがタッチアウトした。これも完全な形だった。

【26分】

 左サイドからサイドチェンジされた長いパスを右サイドの伊東が受け、縦にドリブルしてマーカーをかわし、低いクロスを入れる。これは敵DFに弾かれた。

【28分】

 伊東は右に開いてボールをもらい、グラウンダーの弾丸クロスを入れるが中と合わなかった。

【35分】

 CB酒井宏から右に開いた伊東に縦パスが通る。伊東は2タッチで右前に開いた鎌田にパス。鎌田は完璧なグラウンダーのクロスを入れ、ゴール前の原口がダイレクトでシュートするが敵GKに止められた。決めないといけないチャンスだった。

【37分】

 敵CBがキープしたボールに対し伊東が下がりながらプレスをかけ、最後は並走しながらボールを奪う。

【47分】

 CB酒井宏からボールをもらい、伊東は右サイドを疾走する。マーカーを完全にかわしてドリブルし、ペナルティーエリア付近で倒されあわやPKに。

あのスピードと突破力は魅力だ

 いかがだろうか? 後半の45分だけで、伊東はこれだけのチャンスを作っている。

 相手ボールになれば最終ラインに入ってカバーリングし、チャンスになれば最前線まで駆け上がる。まったく息が上がった様子も見せない。

 そんな伊東の走りには代表の未来が見えた。13日のコートジボワール戦では、ぜひスタメンで使うべきだろう。

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【森保ジャパン】コートジボワール戦のスタメンは誰だ?

2020-10-12 07:52:28 | サッカー日本代表
久保と伊東は頭から使いたい

 9日に行われたカメルーン戦では、3バックの有効性が確認された。そこで13日にオランダ・ユトレヒトで行われる国際親善試合、コートジボワール戦では、裏と表を逆にして頭から3-4-2-1でやってみてはどうか?

 以下、メンバーの選考基準は、(1)久保と伊東を必ずスタメンで使う、(2)2試合トータルでなるべく全員の選手を使うーーをベースにしてみた。で、以下の2つの図はいずれも前半のスタートを想定した布陣だ。


   【3-4-2-1】

      〇
     鈴木武蔵
   〇     〇     
   三好    久保

〇   〇   〇   〇
室屋 柴崎岳 遠藤航  伊東
      (板倉)

  〇   〇   〇
  吉田  冨安 酒井宏

      〇
  シュミット・ダニエル


  【4-2-3-1】

     〇
   鈴木武蔵  〇
〇        久保   〇
三好            伊東

    〇    〇   
   柴崎岳  遠藤航  
       (板倉)

〇   〇    〇    〇
室屋  吉田   冨安  酒井宏

      〇
  シュミット・ダニエル


鈴木武蔵と鎌田は一皮むける活躍を

 まずGKはビルドアップが得意で、将来性のあるシュミット・ダニエルを選んだ。DF陣は安定のメンバーでいじりようがない。ただ左サイドには、カメルーン戦で出番がなかった室屋を置いた。

 攻撃陣は、大迫がクラブの事情でカメルーン戦後に代表を離脱したため鈴木武蔵をワントップにし、久保と三好を絡ませる。三好にはコパ・アメリカでのあの活躍を期待している。

 板倉もできればスタメンで使いたいが、まかせるポジションが悩ましい。

 セントラルMFで使うなら遠藤航と板倉は、柴崎岳との組み合わせにするのが自然だが……思い切って遠藤航と板倉の2人をスタメンで使うのもアリか?

 あるいは板倉をCBで使うテもあるが、中央は絶対安定の布陣なのでいじりにくい。あとは鎌田ももっと見たいが、セカンドトップあたりで交代出場だろうか?

 いずれにしろコートジボワール戦では、若い選手に代表の未来を見せてほしい。

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【森保ジャパン】前からハメる組織的なハイプレス ~日本0-0カメルーン

2020-10-10 08:51:16 | サッカー日本代表
素早いネガティブ・トランジション

 日本の久々の国際親善試合は、双方無得点の引き分けに終わった。

 日本は立ち上がりから、前線でボールを失うと素早いネガティブ・トランジションからリトリートせずその場でゲーゲンプレスをかけた。即時奪回する狙いだ。

 またカメルーンの最終ラインからのビルドアップに対しても、複数の選手がハイプレスをかけてハメに行こうとしていた。高い位置からプレッシングする意識が顕著だった。

 一方、ボール保持時には2タッチでつなごうとするボールの流れがスムーズとはいえないものの、逆に守備も含めて致命的な欠陥もなかった。課題は攻撃だ。

 全体に沈滞した試合だったが、久しぶりの招集である。今後もメンバーを固めて強化を続けて行けばモノになる手ごたえはあった。

前半は手慣れた4-2-3-1で

 コロナ禍のなかでの強化試合だ。日本のメンバーはすべて欧州組である。まず前半はいつもの4-2-3-1で立ち上げた。

 日本のスタメンはGKが権田修一(ポルティモネンセ/ポルトガル)、最終ラインは右から酒井宏樹(マルセイユ/フランス)、吉田麻也(サンプドリア/イタリア)、冨安健洋(ボローニャ/イタリア)、安西幸輝(ポルティモネンセ/ポルトガル)だ。

 2人のセントラルMFは右に中山雄太(ズウォーレ/オランダ)、左に柴崎岳(レガネス/スペイン)。

 2列目は右から堂安律(ビーレフェルト/ドイツ)、南野拓実(リバプール/イングランド)、原口元気(ハノーファー/ドイツ)、ワントップは大迫勇也(ブレーメン/ドイツ)である。

日本はボールがつながらない

 日本は守備では速い切り替えからの組織的なプレス。攻撃は少ないタッチ数でパスをつなぐサッカーをする。均一な力の総合力で戦う。

 最終ラインからていねいなビルドアップを心がけ、ボールサイドに人数をかけるボールオリエンテッドなサッカーである。

 だが思ったようにボールがつながらない。ポストプレイを身上とする大迫が前でポイントを作れず、堂安、南野、原口の2列目も期待通りには機能しない。

 対するカメルーンは日本と対照的なチームと言える。

 元ポルトガル代表のトニ・コンセイソン監督が指揮する彼らはアフリカのチームの割に規律があり組織的だ。しかもボールを保持すれば圧倒的なスピードとパワーで簡単にフィニッシュの形を作る。

 日本はなかなか攻めの形が作れず、やられている感じはないものの敵の決定機のインパクトのほうが強かった。前半、南野が2度のシュートチャンスを作ったが決まらず。両者0-0のまま後半に入った。

後半の日本はフォーメーションを3-4-2-1に変えた

 後半、スタートから日本は左SBの安西に替えて伊東純也(ヘンク/ベルギー)を投入し、右のウイングバックにする。

 これで右SBだった酒井宏をCBにしてフォーメーションを3-4-2-1に変え、左のウイングバックはそのまま原口が務めた。2シャドーは右が堂安、左が南野だ。

 3バックにした日本は後半のほうがデキがいい。サイドに開いたWBへのパスの角度ができ、右の伊東がスピードを生かして何度となく惜しいチャンスを作った。この日、伊東は最も違いを作った選手だった。

 これで守備に転じれば5バックに変化し、日本は前半にぽっかり開いていた左サイドのウラのスペースを埋めた。補修は完了だ。

守備は安定、課題は攻撃だ

 後半になってもカメルーンはパスをつないだ。日本はいったんはボールを保持しても、カメルーンの選手にボールを足に引っかけられて攻めが止まる。アフリカの選手の特有の間合いは要注意だろう。

 日本は後半19分には堂安に替え、期待の若い久保建英(ビジャレアル/スペイン)を入れた。だが彼は思ったようには形を作れず、試合終了間際には直接FKから敵GKの手をはじく惜しい一撃を見せたが次回に期待となった。

 日本は酒井宏樹が強さと粘りで大きな成長を見せたほか、吉田と冨安のCBも安定していた。あとは物足りなさの残る攻撃だ。ボール奪取から素速いポジティヴ・トランジションでパスコースを作って攻めたい。

 なお3バックはこの日のデキからすれば貴重なオプションと言える。今後もずっと継続してほしい形だ。このまま熟成させれば、右サイドの伊東を生かす3-4-2-1は大きな武器になるかもしれない。

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デフレ下で生産性を上げようとするトンチンカンな菅「逆噴射」内閣を止めろ

2020-10-06 08:45:58 | 政治経済
混乱するベーシックインカムの議論

 いま世の中では、ベーシックインカム(以下、BI)の是非を問う議論が高まっている。火付け役は「月7万円支給し、そのかわり生活保護や年金は廃止」するBIを提案した竹中平蔵氏だ。

 だが議論は混迷を極めている。BIの定義が明確でなく、その状態でBI支持者と否定論者が意味のない罵り合いをしているためだ。まるで生産的じゃない。

ベーシックインカムは2種類ある

 では議論を整理しよう。

 まず押さえておくべきことは、ベーシックインカムにはザックリ2種類あることだ。

 それは(1)竹中氏が提唱したような社会保障を削減するための「ネオリベ型BI」と、(2)生活保護や年金など従来の社会保障は維持したまま、その上にBIを支給する「福祉型BI」ーーの2種類である。

「ネオリベ型BI」はアドバルーンだ

 まず竹中氏が主張する「ネオリベ型BI」はわかりやすい。狙いは社会保障の削減だ。しかも竹中氏は菅首相の片腕ともいうべき存在であり、この「ネオリベ型BI」の提言はいわゆるアドバルーン(観測気球)の機能を果たしている。

 つまり竹中氏が厳しいほうのBIを提言し、これに社会がどう反応するか? 「いいじゃないか?」という支持の声が多ければ政府として導入を検討するし、逆に反対が目立てばペンディングにする、てな意図である。

 しかも竹中氏の「ネオリベ型BI」は、菅政権が今後推し進めようとしている弱肉強食の新自由主義政策と密接に関係している。というより、その一環だ。

「生産性の向上」は最優先課題か?

 たとえば菅政権はコロナ禍で経営が持たない中小企業を救わず、逆にコロナ禍を奇貨として中小企業をこの機に再編しようとしている。

 具体的には中小企業基本法を改悪して「中小企業」の定義を狭め、これにより助成をカットして自由競争に晒す。

 同時に企業買収時の法人税などを軽減し、自由競争で持たなくなった中小企業を外資や大企業に買収させる。また最低賃金を上げ、上げられない企業も潰す。

 つまり生命力の弱い中小零細企業をこのさい葬り、競争力のある強い企業だけで経済活動を行い社会全体の生産性を上げようとしているのだ。

 だが「生産性を上げる」といえばなんだかポジティブに聞こえるが、果たしていま行うべき経済政策なのだろうか?

 日本はもう20年以上続くデフレ~低インフレであり、深刻なデフレ不況に見舞われている。そして需要不足にあえいでいる。とすればまずやるべきは需要を拡大させてデフレを解消することであり、生産性の向上などはその次の話だ。

トンチンカンな自公政権の経済政策

 自公政権では長らく、深刻なデフレ下で「消費税を何度も上げる=消費を抑制する」という正解とは真逆の政策が取られてきた。逆に消費税を下げて消費を喚起し、需要を伸ばす必要があるにもかかわらず、だ。

 かくて彼らが作ったのは、悪夢のようなデフレ地獄だった。

 にもかかわらずまた今回も菅政権は、中小企業をつぶして「生産性を上げる」というトンチンカンな新自由主義政策を取ろうとしている。

 おそらく竹中氏が提案した「ネオリベ型BI」も、菅政権がやろうとしている中小企業政策と同じ穴のムジナだ。「月7万円のBI以外に収入や貯蓄がなく、老後の生活ができない弱い人間はとっとと死ね。そうすれば強者ばかりが生き残り、社会全体の生産性が上がるぞ」という狙いなのだろう。

 デフレ下で真逆のネオリベ政策を取ろうとする菅「逆噴射」内閣。彼らの見当はずれな策謀を、なんとしてでも阻止しなければならない。

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