すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

古いiPodの圧縮音源を聴いてびっくり

2024-04-29 17:56:45 | 音楽
「音の良さ」は解像度やビットレートの問題じゃない

 もう何年かぶりぐらいで、戸棚の奥から古いiPodクラシックが出てきた。

 分厚い150GBくらい入るやつで、見るとまだ80GBも空きがある。

 昔はCDを買ったらシコシコとマメにリッピングし、圧縮ファイルにしてモバイル環境でも聴いていた。

 だがリッピングがもう面倒になり、このiPodは存在自体、すっかり忘れていた。

 で、久しぶりに首からiPodをぶら下げ、自転車で外へ出てみた(本当はいけません)。

 すると驚いたことに、圧縮音源のはずなのに凄く音がいい。
(ただしイヤホンはデフォルトから交換している)

 なんとまぁ、あふれるようなエネルギー感と躍動感に満ちているのだ。

「なんだこれ? 凄く音がいいなぁ」

 とても驚き、またiPodを聴いてみる気になった。もうずっと音楽ストリーミングで高ビットレートな音しか聴いてないので、圧縮音源なんて久しぶりだ。

 で、1日中、聴いてみると、「音の良さ」って実は解像度とかビットレートの問題じゃないんだな、とよく分かった。

 明日からも、この圧縮音源を聴きながら外出しよう。

 外へ出るのが楽しみになりそうだ。

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音質を除けば「Spotify」はなかなかイケる

2024-04-27 12:12:12 | 音楽
ロッシー圧縮の320Kbpsなのは見劣りするが……

 音楽ストリーミング・サービスの「Spotify」(スポティファイ)に、無料体験で入ってもう何日かになる。

 なかなかこのサービスはいい。

 こと音質に関しては、まあロッシー圧縮の320Kbpsなので「Apple Music」や「Amazon music Unlimited」には劣る。

 だがレコメンド機能(おすすめ機能)に関しては、まちがいなくこれらのうちでもトップだ。

 レコメンドとは、例えば自分が好きな曲を何曲か聴いたあと、再生の動作をせずに放置したとしよう。

 するとサービス側がそれらの私の再生履歴などをもとに「このユーザさんはこういう音楽が好きなんだな」と分析し、それらと似たジャンル・似たミュージシャン等を自動的に再生させて「おすすめ」してくれる機能のことだ。

 ストリーミングでは、これが実に便利なのだ。

もう何人も「未知のミュージシャン」を教えてもらった

 つまりサービス側が「あなたはアレを聴いてたんだから、きっとコレも好きですよね?」てな感じで、どんどん私の知らないミュージシャンを自動再生してくれる。

 この機能がすごい。

 もちろん同じ機能がAppleやAmazonにもあるが、明らかにSpotifyは飛び抜けて優れている。

 たとえば私は主に、現代ジャズを聴く。

 で、Spotifyに無料体験で加入してからというもの、もうすでに何人ものまるで知らない海外ジャズメンを教えてもらった。

 しかもそれらはAppleやAmazonでは、まだ一度も「おすすめ」されたことがないミュージシャンばかりなのだ。

「えっ? こんなに自分の知らないミュージシャンがいたの?」てな感じ。

 これに関しちゃ、自分でシコシコ検索して探すのとくらべ、圧倒的に効率がいい。

 で、初めて出会えたミュージシャンがどんどん増えて行く。

 おかげで聴く音楽の幅も広がり、自分で作っている好みのプレイリストの数もみるみる増えた。

 これでもし有料加入したとしても、月1000円ほどなのだから驚かされる。

 まあこれじゃあ、もうCDは売れないよね。

 CDなんて棚からあふれて管理が大変だし、いちいちリッピングするのも面倒だし。

 もう何か聴きたくなったら、ネットにアクセスしてストリーミングで聴く。

 そんな時代になったわけだ。

 まだストリーミングを体験したことがない人は、ぜひ無料で試してみるといい。

 世界が変わりますよ?

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音楽ストリーミングのSpotify Premiumに入ってみた

2024-04-22 01:39:49 | 音楽
「エド・チェリー」というギタリストを発掘できた

 音楽ストリーミング・サービスの「Spotify Premium」が、3か月無料キャンペーンをやっていたので試しに入ってみた。

 私が最近、よく聴くのは(昔のじゃなく)今どきのジャズだ。

 で、Spotifyの公式プレイリストを入れてみたが……居並ぶ楽曲とミュージシャンがかなりイマイチだった。なんだこりゃ。

 それでもしばらくガマンして聴いていたら、突然、超絶的にかっこいいいギター演奏が始まったのでびっくりした。

 誰だろう? と思ってクレジットを見た。すると「Ed Cherry」とある。黒人ギタリストだった。

「Peace」というアルバムだ。

 えっ? ぜんぜん聞いたことない名前だ。そう思い調べてみると、なんと1954年生まれだという。

 なんでも1980年代にディジー・ガレスピーと共演し名をあげたギタリストらしい。

 ええっ? もういい年じゃん。70歳くらいか?

 でもアルバムはいままで、たった7枚しか出してない。

 自分はけっこうジャズを聴いてるのに、なんでこの人を知らなかったんだろう?

 ……と思って彼の写真を探したのだが、これが検索してもなかなか出てこない。うわー、どマイナーな人だな、こりゃ。

 そういえば、すでに加入している「Amazon Music Unlimited」でも「Apple Music」でも、この人を今まで一度もすすめられたことがなかったし。

 でもメッチャかっこいいギターを弾くのだが。

 こういうふうに、売れずに人知れず消えていくミュージシャンって多いのだろう。

 今まで「Spotifyに入ろう」なんて一度も考えたことがなかったが……こういう人を発掘できたりするんだから、世の中、何が起きるかわからない。

 なんでもやってみるもんだなぁ。

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天才ピアニスト、ブラッド・メルドーがまたロッシと演り始めた

2024-04-19 20:02:41 | 音楽
かつて首を切ったが仲直りしたようだ

 最近、YouTubeを観ていると、現代ジャズの超天才ピアニスト、ブラッド・メルドーが、またかつてのように盟友ドラマーのホルヘ・ロッシとともにライブ演奏をし始めたようだ。

 知らない人のためにちょっと説明しておくと…………天才ブラッド・メルドーは、現代ジャズ界で知られた名ピアニストだ。

 彼は以前、このドラマーのホルヘ・ロッシといっしょに、10年以上も「ブラッド・メルドー・トリオ」という自身の人気グループで活動していた。

 ところがあるとき突然メルドーはこの竹馬の友・ロッシの首を切り、「ブラッド・メルドー・トリオ」にこれまた売れっ子ドラマーであるジェフ・バラードを入れたのだ。

 首を切られたロッシのショックは大きく、それはそれは見ていて痛々しいほどだった。

 彼はそのトラウマのあまり、突然、ドラムをやめてしまい、なんと急にピアニストとして活動し始めた。

 どう見ても、自分を切ったメルドーへの当てつけにしか思えなかった。

新ドラマーはうまくいかなかった

 ところが一方、トリオに新しく迎え入れられた新ドラマーのバラードはといえば、演奏がどうもうまく合わない。

 で、ずっとトリオはギクシャクしていた。

 彼のドラミングは悪い意味でうるさくて目立ち、主役であるメルドーのピアノをジャマしてしまうのだ。

 で、私はずっと「ああ、かつてのロッシのほうがずっとよかったのに……」と思っていた。

 案の定、メルドーもそう思っていたらしく、いつしかこの新「ブラッド・メルドー・トリオ」はきれいに雲散霧消してしまった。

 そしてメルドーはロッシにまた声をかけ、最近いっしょに演り始めたようだ。

 いまも私の目の前にあるテレビでは彼らのYouTubeの最新映像が流れ、その新々トリオの演奏が続いている。

 ロッシのドラミングは本当にぴったりメルドーのピアノに影のように寄り添い、完全に一心同体になっている。

「ああ、ロッシ、本当によかったね」

 心からそう思った。

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Appleの「おすすめ機能」も侮れない

2024-04-06 18:34:35 | 音楽
「Apple Music」で私好みの曲がドンピシャで自動再生された

 実は私は音楽ストリーミング・サービスの「Apple Music」と「Amazon Music Unlimited」の両方に入っている。

 だが私などは「自分だけのこだわりプレイリスト」をガッチリ作り込み、もうそればっかり聴くみたいなパターンに陥りがちだ。

 しかしあるときApple Musicで自分のプレイリストを聴いたあと、たまたましばらく放置した状態になったのだ。

 するとすかさず自動的に「ピーター・ザック」という、聞いたこともない名前のピアニストの曲が自動的に再生された。

 これがまた、すごく良いのだ。

 で、それ以来すっかり気に入り、そのピアニストの楽曲も自分のプレイリストに入れるようになった。

自分を広げるために「わざと放置」してみるのもいい

 過去の記事で、Amazon Music Unlimitedについては似たような「おすすめ機能」をさんざん私の体験談で書いた。

 だがApple Musicでは、まったく初めての体験だった。

 いつもApple Musicではすっかり自分の作ったプレイリストばかり聴いているからだ。

 それで思い知ったのだが、やっぱり自分を広げるためには自分のリストを聴いたあと、ときには「わざと放流してみる」のもいいな、と感じた。

 で、私の好みをいつもの再生履歴から十二分に把握しているであろうApple Musicは、あのときテキメンに反応してくれた。

 だから二度あることは三度あるだろう。

 そうやって自分の知らない世界を体験できるのはとても貴重だ。

 何もAmazonだけじゃなく、Appleの「おすすめ機能」も強力なのだ。

 それを享受しないなんて、実にもったいない話である。

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【オルタナティヴロック】ドンピシャで好みの曲を勧める音楽ストリーミングの凄み

2024-03-21 11:59:42 | 音楽
*「Apple Music」では作ったプレイリストが最大10万曲まで、
iCloudミュージック・サーバに自動保存されいつでもApple Musicアプリで聴ける。

ゼロからあなたの好きな音楽を探し出してくれる

 いやはや、前回と前々回にわたり、まるで知らなかったオルタナティヴ・ロックバンドの「トラヴィス」(Travis)を見つけたときには驚いた。

 そのときフル稼働してくれたのが音楽ストリーミング・サービスである。

 つまり「Amazon Music Unlimited」や「Apple Music」だ。

 すでに過去に書いたが、私は70年代も含めそれ以前の音楽しかまったく知らない無知な状態だ。

 そんなドン底から一念発起で新しい音楽の探索活動を初め、たちどころにドンピシャの好みのバンドを探し出せるんだからまったく凄い。

自分が任意の曲を聴けば似た傾向の曲が「おすすめ」される


 なんせ1曲だけ自分が聴いて「いい!」と思ったら、もう安心だ。あとはアマゾンのクラウドサーバーが私の聴いた膨大な過去の音楽履歴と、自社が保有する音楽データを照らし合わせる。

 で、「あなたはきっとこれが好きでしょう?」と勝手におすすめしてくれる。この自動化された「おすすめ機能」が実に強力なのだ。

 豊富な音楽データベースに基づき、それらの私が過去に買ったCDや、ストリーミングで聴いたりしたのと類似した「あなたのお好み」を提案してくる。

 例えば「あなたはアレが好きだから、きっとコレも好きでしょう?」などと、かゆい所に手が届くサジェスチョンをしてくれる。

 で、そんな類似した曲が勝手に自分のリストに載り、それらを片っ端から聴けるのだ。

 だからもう自分じゃ、何も考えなくても自分好みな音楽へ簡単にたどり着ける。いやはや、あの「おすすめ機能」には驚いた。

マニア垂涎のレア盤・発掘もお手のものだ

 音楽ストリーミング・サービスがひときわ放つ凄みとは、まず(1)希少性のある分野に深く突っ込み、発掘してきて「えっ,こんな盤まであるの?」と驚かせる点だ。

 逆に、すでに十分な網羅性がある分野にまで深化して踏み込み、なおその分野ではレアなお宝を探してくるところもすごい。

 誰も開拓してないフロンティアを日夜めざし、さらに珍しく深遠な深みにまで潜行してワイドに音楽を発掘しようとする。

 こんなふうに冒頭で触れたストリーミング・サービス「Amazon Music Unlimited」、「Apple Music」の「おすすめ機能」はすごい。しかもこれは「Spotify」など、今時どこのストリーミングサービスでも備えている機能だ。

 例えばあなたがミュージシャンAの楽曲を聴いたとしよう。するとAと同傾向の楽曲やアーチストがたちまち「おすすめ」に上がってくる。

 これがまた実に正確で驚かされてしまう。なぜ私が好きなそれを知ってるの? てな感じだ。

ストリーミングがあれば面倒なCDの管理もしなくてすむ

 とつぜん話は180度かわるが、みなさんは暦年たまりにたまったCD群をどう整理しているだろうか?

 たとえCDラックの棚別に「Aのつくミュージシャン」「Bのつくミュージシャン」などと細かく分類してあったとしても、もはや「Aのつくミュージシャン自体、膨大だろう。

 ゆえに例えきちんと整理した形で分類してあっても、そのなかから「お目当ての音源」を探し出すにはひと苦労する。

 そんな経験はないだろうか?

 つまり整然と分類してるユーザさんですら難渋するわけだ。だったらそこいらじゅうにCDを積み上げたりしている人は、さぞ苦労しているだろう。

 例えば何らかの法則に基づき恣意的な分類がされてあっても、そのライブラリが膨大になればなるほど、もはや「アウト・オブ・コントロール」な状態に追い込まれてしまう。

 つまり明確なカテゴライズ分けがあったり、巧妙な分類がしてあってさえ、なかなか自分のライブラリの中からそのとき「パッ」と一発で聴きたいCDを選び出すのはしんどい作業だといえる。

思いついた瞬間に検索して聴ける

 だがそこですごいのが、音楽ストリーミング・サービスなのだ。

 ストリーミングなら、ユーザはそのとき「パッ」と瞬間的に思いついた楽曲を検索で手早くモノにできる。で、たちまちモバイル時にすら瞬時に聴ける。

 それにひと役買うのは、強力なプレイリスト機能だ。

 例えばApple Musicなら「自分の好きな楽曲集」とか「元気なときに聴きたい楽曲集」「現代ジャズ」みたいに自分がプレイリストを作った時点で、なんと同時にAppleの「iCloudミュージック・ライブラリ」へ自動保存されるのだ。

 これで最大10万曲までクラウドに保存できる。

 しかも、これらがいつでも好きな時にApple Musicアプリで聴ける。

 10万曲ですよ? 10万曲。もうこれなら半永久的に聴けるに近い。もはや「無限」を意味すると考えてもいい。本当にもうCDなんて買わなくていい時代が来たのだ。

こんな豊富な機能が月額たった1000円で楽しめる


 しかもお値段だってお安い。

 こんな高機能を実現し、かつもうCDを買わなくてすむ生活ができて月額1000円ぽっきりだ。

 逆に個人的には「なぜまだ入らない人がいるんだろう?」とさえ思ってしまう。

 もう昔みたいに音楽雑誌をその都度買い、こまめに情報収集する必要なんてまるでない。

 たとえば世にあふれかえる無料の音楽ブログを読むのもいいし、それらをストリーミングで試し聴きするのもアリだ。

 これでたちどころに最近の音楽の傾向がわかる。で、自分の好みを把握できる。しかもそれをたちまちストリーミングで聴くことが可能なのだ。

 まったくいい世の中になったものである。

 ちなみに私はもうCDを買う必要がなくなったので心配ない。

 リビングを占拠する巨大なあのCDラックも、もう処分するつもりだ。ありゃ、場所取るからなぁ。

 これからは音楽ミニマリストの時代なのである。

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【オルタナティヴロック】名盤2ndとタメを張る「トラヴィス」の3rd盤を聴く

2024-03-05 03:14:50 | 音楽
*トラヴィスの3rd盤『The Invisible Band/インヴィジブル・バンド』(2001年)

3作目が全世界で300万枚を売る大ヒットに

 今回、ネットを駆使し、さんざん90年代以降のロックを聴きまくった。おかげでやっとトラヴィス(Travis)というバンドを見つけることができた。

 彼らはスコットランド・グラスゴー出身の男性4人組ロックバンドだ。

 90年代後半のUKシーンにおいて、レディオヘッドと並ぶ勢いで新しい音楽トレンドを創り出したのは前回の記事『【オルタナティヴロック】なんと大本命の「トラヴィス」を見落としていた』で書いた通りだ。

 彼らは1996年にデビューシングル「オール・アイ・ウォント・トゥ・ドゥ・イズ・ロック」を発表し、スタートを切った。

 続く1999年5月にリリースした2nd盤『ザ・マン・フー』(The Man Who)で一気に火がつき、ビッグバンドへの道をのぼり詰めて行く。

 この盤は発表から3ヵ月目で全英アルバム・チャート1位に輝いた。これが発火点だ。以後、本盤はロングセラーになり、全世界で400万枚を売り上げている。

 以降、彼らは順風満帆の活動ぶりだ。で、前回の記事ではそんなセカンド・アルバム期までを概観した。一方、今回はサードアルバムをサーチしよう。

まずはコトの経緯と経過説明からだ


 ただ、この記事で初めて当ブログをお読みの方もおられるだろう。

 ゆえに「本番」へ突入する前に、ひとつやることがある。初めて今回の案件をお読みになった方向けに、次項以降でこれまでのトラヴィス発掘に至る経緯とさわりをまず簡単に短くやろう。

 そして次に文末では、今回、音を聴くのに駆使したストリーミング・サービス「Amazon Music Unlimited」についてもカンタンに触れる。

 というのも、今回なぜ私はこんなふうに未知の音楽やバンドの音に次々アクセスできたのか? そしてなぜ、あれこれさんざん実際の音を聴くことが可能だったのか?

 まったくハナから存在すら知らなかった、まるで未知のバンドの音をゼロから見つけて聴き、カンタン手軽にお宝を探し出せたのはなぜか?

 それはひとえにネットのおかげ。というか、ストリーミング・サービスをフル活用したからなのだ。

 紆余曲折はあったがあの70年代の音楽だけに囚われた完全無知な状態から、すでにいまは90年代以降の音楽に関しけっこう知識を得た。

 それもネットがあればこそ。だから文末でAmazon Music HDの機能や特徴、つまり「できること」をごくカンタンに短く説明しておきたい。

 もちろん「解説が長いぞ。俺はトラヴィスの記事さえ読めればいいんだ」という方は、どうぞ文末にあるAmazonのストリーミング・サービスの機能解説は読み飛ばしてください。

なぜ私は70年代(を含め)の音楽しか聴かなかったのか?


 さて今回はトラヴィスが出したサードアルバムのお話になるが、まず今まで本シリーズに書いてなかったことを初めて書こう。コトの前提だ。

 なぜ私は70年代の音楽にこだわり続けたのか? である。

 まず昔は音楽を録音する際、全部の楽器をいっぺんに録音する一発どりが主流だった。特に1980年代まではテープで録音されていた。

 私はこれまでそんな70年代を含む(それ以前)の音楽しか聴かなかった。

 なぜなら80年代にあの忌まわしい「打ち込み」が登場し、シーケンサーやリズムボックスが業界標準になったからだ。

 趣味の日曜アマチュアベーシストの身としては、リズム隊(BassとDrums)こそが命だ。

 その相棒になるドラマーが人工的なリズムボックスになるなんてあり得ない。あの音にはどうしても耐え切れなかった。

 また当時、世の中的にもそれらをフル活用した機械的なテクノポップが大流行するわで、すっかり「人工の音」が主流になってしまった。私が大嫌いな世界だ。

 そんなわけでもう私は最新の音楽を追うのをやめた。で、70年代と(それを含む以前の音楽)に完全に引きこもった。

80年代に吉田美奈子や山下達郎、竹内まりやなら聴いた

 まあ確かに70年代末から80年代当時もてはやされ始めた、一流スタジオ・ミュージシャン陣をフル起用した80年代のシティポップあたりなら唯一、聴いていた。

 例えば1979年にリリースされた松原みきの「真夜中のドア」は衝撃的だった。

 現にあれは2020年末にSpotifyの「Viral 50 GLOBAL」チャートで、なんと18日連続・世界1位を記録した。ちなみに私は彼女の「引退さよならコンサート」にも行ったクチだ。

 特にあのバックをつとめた岡沢章のベースプレイには、すっかりノックアウトされた。で、精密にコピーしまくり長時間、練習したものだ。

 特に1979年に彼が加入したフュージョン・バンド「プレイヤーズ」のライヴを六本木のピットインへ観に行き、ライヴが終わったあとステージにまで上がり込んでわざわざ握手してもらった。

 岡沢氏といえば思い出すのは1980年10月に吉田美奈子が楽曲「レッツ・ドゥ・イット」を六本木ピットインで演ったライヴの音源だ。

 あれには強く魅了された。すごい演奏だった。

 そのバージョンの名曲「レッツ・ドゥ・イット」は、その六本木ピット・インで収録した諸ライヴ音源を元にスタジオでの追加録音を加えて制作された最高傑作ライヴ盤『IN MOTION』(1983年)に入っている。

 そこからさかのぼって彼女のアルバム『MONSTERS IN TOWN」(モンスター・イン・タウン)』(1981年11月リリース)にもたどり着いた。

 あとは山下達郎の一連のアルバムあたりだ。きっかけは1978年12月に発表された3rdアルバム『GO AHEAD!』 (ゴー・アヘッド! )収録の楽曲「BOMBER」だった。

 ご多分に漏れずあの田中章弘(bass)が演るかっこいいスラップ奏法のトリコになり、これまた毎日練習したものだ。

 そのほか80年代に青山純(dr)と伊藤広規(b)がリズム隊を組んだ一連の山下達郎の作品群なら聴いた。

 あとは1978年作の1stアルバム『Beginning』でデビューを飾った竹内まりやの80年代作品もそこそこ聴いた。

 ほかは80年代に全盛を誇った内外のフュージョンだ。

 あれらなら実際ライヴハウスに何度も行ったし、アルバムもけっこう買った。キリがないからもうアーチスト名はもう上げない。

 つまり80年代といえば、上記のシティポップとフュージョンのみ。あとはまったく聴かなかった。

 その流れで特に今回、90年代以降の音楽となるとまったく聴いたことがないし、ぜんぜん知らない。無知の極みだ。で、今回の音源発掘行動に出たわけだ。

世評と違いトラヴィスの3rd盤は2nd盤とタメを張るデキだ

 やっと本題に来た。

 この記事では前回(すでに前出)や前々回の記事『【オルタナ探訪】ロックは「70年代で死んだ」のか?』と同じように、だが前よりさらに突っ込んで発掘したロックバンド「トラヴィス」(Travis)の動向を深掘りしよう。

 もちろんすでにサード・アルバム以降の各盤の音は全部聴いたし、ツボはつかんでいる。

 彼らはスコットランド・グラスゴー出身で、90年代後半のUKシーンにおいてレディオヘッドと並ぶ勢いで新しい音楽トレンドを創り出した。

 この点については前回、書いた通りだ。

 で、前の記事ではセカンド・アルバム期までを概観した。今回はサードアルバムをサーチしてみよう。

 2001年6月にリリースされた3rd盤『The Invisible Band』(インヴィジブル・バンド)は、セカンド・アルバムのテイストを発展的に継承している。

 で、よりアコースティックな仕上がりが快調な美しいアルバムに仕上がっている。

 本作はレディオヘッドやベックのアルバム等も手がけたナイジェル・ゴッドリッチがプロデュースしている。彼は前作『ザ・マン・フー』でも同じくプロデュースを担当した。

 ちなみにこのゴッドリッチは、あのレディオヘッドの誰でも持ってる超名盤『OK COMPUTER』(1997年)を成功させた敏腕プロデューサーだ。

 実は音楽のアルバム制作にはプロデューサーの力がとても大きい。

 2nd盤と3rd盤におけるトラヴィスの大ブレイクの陰には、ナイジェル・ゴッドリッチあり。彼の力が強く作用しトラヴィスを大きく押し上げただろうことはたやすく想像できる。

 そんな力添えもあり本盤は、全英アルバム・チャートでいきなり初登場1位を記録した逸品に仕上がっている。

 セールスも英国内だけでミリオン超え、かたや全世界では300万枚を売り上げた。

 また当時イギリスの公共放送局「BBC」で放送されていた生放送音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」でも、年間最優秀賞を受賞している。

 さらにシングルの「Sing」(シング)は、その年の上半期で最も多くラジオで流れた曲となり、バンド最大のヒット曲になった。

 このシングル「Sing」はドラマティックなノリをベースに、その上に美しくキャッチーなメロディーラインがしんしんと乗っている。

「OH!,sing,sing,sing〜」と繰り返される覚えやすい歌メロが、限りなく美しいキラーチューンだ。

 背景にストリングスをさりげなく使った盛り上げ方にもうまく成功している。

 もちろん本アルバムには、それと同等の好楽曲がたんまり収録されている。例えば2曲めの「Dear Diary」(ディアー・ダイアリー)は非常に静かなナンバーだ。

 この楽曲はアコギとピアノ、ストリングスの3者を中心に切々と訴えかけてくるヴォーカルが切ない。鎮静的な心地いいサウンドだ。

 続く3曲め「Side」(サイド)はキャッチーなメロディが特徴である。

 すばらしいテイストであり、しかも山場でしっかり盛り上げるところもツボだ。的(マト)を射ぬいたアレンジが利いている。

 まさに「売るセオリー」に乗っ取った名曲だ。このナンバーは本盤でひときわ光を放っている。

 そして4曲めの「Pipe Dreams」(パイプ・ドリームズ)もそう。覚えやすい歌のメロディラインが印象的なナンバーだ。

 彼らの場合、この歌いやすさ、覚えやすさが最大のキモになる。また要所で流れるギターのリフレインがキラキラ感をうまく演出している。

 この4曲めまでですでに「勝負あった」だ。

 アルバム冒頭の4曲で、リスナーの心をがっちりつかむことに成功している。あとはもう「どうにでもしてください」というしかない。

後半の山場は歌メロ抜群の11曲め「Indefinitely」だ

 さてアルバムは後半に入り、5曲め「Flowers in The Window」(フラワーズ・イン・ザ・ウィンドウ)が始まる。ひときわキャッチーを極めた逸品だ。

「これビートルズの曲じゃないのか?」と思わされるデキである。上で評した「歌いやすい、覚えやすい」の典型だ。

 6曲めの「The Cage」(ザ・ケイジ)も同じ傾向にある。

 こちらはアコギが効いており、ポップな歌のメロディーラインが何度もリフレインされる。もうリスナーの脳にぐいぐいねじ込まれてくる。ああ、気持ちよかった。そんな感じだ。

 7曲めは6曲めと似たテイストで、きれいな歌メロが何度も反芻される。

 これまたアコギが効いており、楽器の音と音との間にある空間をうまく活かしたテイストだ。

 つまり音数が多くスペースをぎっしり埋めてしまわない音作りをしている。ここがツボである。途中でドラムが入り、盛り上げて大団円を迎える。

 そして後半の山場は11曲め「Indefinitely」(インディフィニトリー)で極まる。味のいいアコギのイントロで幕が開き、切々と歌い上げるヴォーカルが主役を張る。

 歌のメロディーラインが抜群によく、もう「ごちそうさま」のひとことだ。

 ここでも同じく美メロのリフレインがカギを握る。

 途中、絶妙なタイミングでエレクトリック・ギターを「ガン」と効かせるところもうまい。ストリングスを入れる箇所も絶妙だ。

 このナンバーは本盤収録のシングル「Sing」(シング)といい勝負になる名曲といえる。

 締めの12曲めはギターのストロークで入り、最初は歌とギター、パーカッションの3者だけ(バックに機械的な効果音が入っているが)。

 で、途中ストリングスが嫌味にならない程度に利かされ、徐々に曲を盛り上げて行く。

 そして楽曲の半ば、そのストリングスが極まった頂点でエレキギターとドラムが同時に入り、一気に盛り上げる。

 だがわざと意表をつき、途中でいったん音数を減らしてまた静的な演奏に戻る。絶妙なアレンジだ。

 そして最後は全楽器をいっせいに投入し大団円へと向かう。ラストは強いストリングスが大音量で鳴り響き、そして静かに幕が降りる。

 なんともはや。

 やっぱりこれはプロデューサーの力が大きいなと感じた。

 例えがちょっと古いがあのサディスティック・ミカ・バンドの歴史的名作『黒船』(1974年)は、ロキシー・ミュージックやピンクフロイド等を手がけた敏腕プロデューサー、クリス・トーマスが務めた。

 彼の存在があったからこそ、『黒船』はあの個性的なテイストと構成になったのだ。だから成功した。そういうことである。

 しかしまだまだトラヴィス探訪の旅は続く。今回はもうすでに長大な記事になってしまったので次回以降にゆずろう。

 機を見て4作め以降もぜひレビューしたい(次回もやるかも?)。

 いやはや、それにしてもおじさんは参りましたよ、もう。まさか90年代以降の音にこんなに感動するなんて想像もしなかった。

「これじゃあダメだ」と意識的に新しい音楽を聴いてみた

 さて最後だ。繰り返しになるが、今回初めてこのトラヴィス・シリーズをお読みになる方もおられるだろう。

 で、ごくカンタンに私はなぜこんなふうに次々といろんな音楽を見つけて自由自在に試聴し、未知のアルバムを容易に探し出せるのか? それを短くシンプルにご説明しておこう。

 実はごく最近になってふと、このまま70年代だけにこだわってていいのか? そんな気分になったのだ。

 もっと「進取の気性」がないとダメなんじゃないか? 探せば新しくてもいいのもあるかもしれないぞ? そう思い立った。

 で、まず「オルタナティヴロック バンド名」とか「90年代以降のロック 種類」などのおバカなキーワードであれこれネット検索してみたのだ。

 その結果、1回目の記事では「やっぱりダメだ。ロクなのがない」と失望した。だがあきらめず探索活動を続け、やっと2回目の記事でトラヴィスにたどり着いた。

 それ以降はコツをつかみ、おかげで続々と90代以降の有望なバンドを大量にゲットできた。もちろんすべて実際の音を聴いた上でだ。

 まさかこんなことが実現するなんて……。そんな思いだ。

 で、それを具現化してくれたのが、ストリーミング・サービスなのだ。

Amazonがあなたの嗜好を勝手に分析して自動的に提案してくれる

 それもこれも自分が加入しているストリーミング・サービス「Amazon Music Unlimited(HD)」を使ったおかげだ。

 こやつで手当たり次第に実際の音を聴きまくった結果なのだ。

 もしこれがなかったら、いまだに私は70年代にかじりついていただろう。

 つまり(後述するが)このサービスはおそらくユーザー個別の再生履歴をもとに、まず自動的に各ユーザーそれぞれの好みや傾向をAmazonが自動的に分析するのだ。

 そしてAmazon側からわざわざ勝手に、「あなた、これ聴いてみたら?」と自動で提案してくれる機能がある。例えばAmazonで何かを一度でも買ったことがある人ならわかるだろう。

 Amazonで自分が買ったCDや本、観た映画などの履歴データに基づき、Amazonが「これって、あなたの好みでしょう?」といろんなCDや本を自動的に表示してくる。

 あれとまったく同じことを、Amazonは音楽配信サービスでもやってるわけだ。

 しかもこのサービスはたった月額1000円定額で、楽曲が(一部ではなく)全部聴ける。

 しかも無限にいろんなバンドをアプリ上で探していくらでも完全試聴することができる。

 何度でも無限に音楽が聴け、自分が好きなアーチストやアルバム、楽曲をネット経由で自由に検索サーチできる。

 そしてあれこれ楽曲やアーチストを組み合わせ、自分だけの独自プレイリストを作る機能がある。

 例えば私は「2000年代以降の現代ジャズドラマー」とか、あるいは「アーチスト名別」でも自分でプレイリストを独自に作ったり、あるいはAmazonが作った既成のプレイリストも借りている。

 もちろん曲数制限なんてまったくない。

 しかも「iTunes」時代みたいに楽曲の1部だけでなく、全部まるまる無制限に聴ける。つまりもうCDは買わなくていい時代になったのだ。

再生履歴で個人の嗜好を自動分析しAmazonが「おすすめ」する

 こやつのそんな「おすすめ機能」は実に強力だ。

 Aさんがこのサービスで過去に聴いてる音楽の傾向を、おそらくネット経由でAmazonのサーバ側がまず履歴として検知する。

 で、「あなたはアレ聴いてるから、きっとコレも好みですよね?」てな具合いにサジェスチョンしてくれる。

 だから「ロックは70年代で死んだのか?」などと、てっきり思い込んでいたバカな私でも一聴に値する未知の音楽をカンタン手軽に探し出せた。しかも何も考えずに。

 このサービスはおそらく、加入ユーザの試聴履歴等のデータをたんまり溜め込んだAmazonのクラウドにでも繋がっているんだろう。

 いわば自宅のルータを超えてネット全世界へオープンに繋がった無限の「自家製ハードディスク(いや、この例えならNASか?)」みたいなものだ。

 つまりこのサービスはざっくりいえば、(おそらく)Amazonのクラウド上に「自分だけの音楽スペース」があると考えれば話はわかりやすい。

 そのクラウドがすべてを自動検知し、「これなんかどう?」とやってくるわけだ。

私は好みにピッタリのオルタナバンド「ペイヴメント」を勧められた

 そのAmazonの「提案」が、これまた精密にピッタリ当たって本当に驚かされる。

 例えば私の場合、繰り返しトラヴィスを聴いていたら……。

 まず1990年代に活動していたUSオルタナティヴ・ロックバンドの「ペイヴメント」の通算4作目に当たるアルバム「Brighten the Corners」(1997年)が自動的におすすめとして表示された。

 試しにそのアルバムを同サービス上で検索してぜんぶ聴いてみると、これがもうファンキーでパンキーな2つの味が絶妙にミックスされた超絶カッコいい音だった。

 私には、どストライクだ。

 ノリが重くて切れ味鋭く、それに花を添えるファニー(奇妙)なテイストがもう応えられない。特にヴォーカルのスティーヴン・マルクマスがものすごく味がある。

 不良っぽくてまさに「悪ガキ」って感じ。ワザと音を外し、悪ぶって見せる。「どう? そんな俺ってカッコいいでしょ?」みたいな。

 イメージとしては薄汚れたジーンズを履き崩し、そのへんをウネウネのたうち回ってる、みたいな感じかな?

 いやもう私が絶対「大好き」な音なのだ。超ドンピシャ。

 当然、自分で作った「オルタナティヴロック」プレイリストに速攻でアルバムごとブチ込んだ。文句なしでイイ! 大満足だ。

 このバンドに関しては、時間を見てぜひほかのアルバムもぜんぶ聴くつもりでいる。

 彼らの音楽性はいわゆる「ローファイ」(Lo-Fi)と呼ばれる。つまり「ハイファイ」の真逆だ。

 どういう意味か? これはオーディオ的には「音質が良くない状態」を指す。

 つまりわざと悪質なフリをして見せるヤツらなのだ。

 この概念に相当する具体的なバンド名を挙げると、彼らのほかに典型例なのはソニック・ユースやベックなんかだ。

 特にこのテイストはノイズロックやグランジ(「薄汚い」という意味)など、ヘヴィメタルに反発する流れにあるオルタナティヴ・ロックにおいて重要な価値観のひとつだとされる。

 歴史を思い切りさかのぼれば、その祖先のひとつはセックス・ピストルズだ。

アメリカの初期オルタナバンド「ピクシーズ」も勧められた

 一方、1986年にアメリカで結成され、初期オルタナティヴ・ロックシーンで活躍したバンド「ピクシーズ」の楽曲「Broken Face」(1988年)も勝手におすすめされた。

 これも同サービス上で検索しアルバムごとそっくりぜんぶ聴いてみた。

 するとまたまた前者のバンド「ペイヴメント」と同じくファンキー&パンキーでもうカッコいい。びっくりだ。

 どちらかといえば彼らのほうがよりセックス・ピストルズに近い。

「なぜ私はそれが好きだとあなたは=Amazonさんはわかるの?」とじっくり3時間くらい問い詰めたい気がする。

 こっちのバンドは思い切り歪んだ超絶的な轟音ギターに合わせ、ボーカルのブラック・フランシスが絶叫する。

 もう破れかぶれでとうてい1人じゃ、世の中を生きていけない、きっとそのうちに必ずのたれ死ぬだろう、みたいな路線である。

 ちなみにこの勧められた楽曲「Broken Face」は、アルバム『SURFER ROSA/サーファー・ローザ』(1988年)に収録されている。

 もちろん全曲聴き、また彼らの別のアルバムもあれこれ聴いてみたが、かなりいい。超おすすめだ。

月額たった「1000円」で無制限に聴き放題だ

 それだけじゃない。このおすすめ機能は実に多彩だ。

 たとえばこのサービスのホーム画面には、まず個別のユーザーそれぞれの好みにピッタリはまるユーザーごとに別々の「お客様におすすめのプレイリスト」がある。

 つまりあなた好みの複数アーチストの楽曲を、Amazon側が自動的にバラバラに集めた任意のプレイリストがあるわけだ。

 すなわち私好みの同じ音楽性をもつ複数アーチストの楽曲やアルバムを、自動収集したリストがまず新しく生まれる。

 で、Amazonに勧められたそのリストを自分で自由に登録してまとめ聴きできる。

 そのリストさえ登録すれば、あとは再生ボタンを押すだけだ。アルバムごとや楽曲ごと、あるいはアーチスト別に自由自在に聴ける。

 つまり繰り返しになるが、この「おすすめ」というのはAmazon側が勝手に自動検知してやってくれてることなのだ。

 このほか同様に(おそらく)私の再生履歴をもとに、「お客様へのおすすめ」コーナーもある。

 また「お客様におすすめのアルバム」コーナーや、「お客様におすすめの楽曲」、「おすすめのニュー・リリース集」などもある。

 あれあり、これありだ。

 おまけにこんな豊富なサービスが手取り足取り受けられて、月額たった1000円払えば無限にいくらでも何でも聴ける。もうびっくりである。

 例えば「DAZN」なんて月額4200円もかかり、たとえ解約を申し出ても「それから1ヶ月後にしか解約が有効にならない」というクソ仕様だ。

 まったくあれにはやられた。

 つまりもう観もしないのに、最後は余分に1ヶ月分まるまる払わされるのだ。

「いいえ。その後、規約が改正されてちゃんと今の規約には乗ってます」なんて先方さんは寝ぼけたことを言ってたけど……そんないつ変わったか? もわからない改悪された新規約になんて、いったい誰が気づくって言うんだ?

 まったく「DAZN」は、人をバカにしている。

 あんなサギまがいの「DAZN」なんかに入ることを考えれば、こっちはぜんぜん安いもんだ。おまけに手取り足取り、うんとサービスがてんこ盛りだし。

 だって例えばAmazon Music HDと、それと同種のサービスである「Apple Music」の両方に入ったとしても、たった「月2000円」しかかからないんですよ?

 あの「DAZN」に入ることを考えれば、なんと両方に加入したってまだ2200円もお釣りが来るのだ。ホントにバカバカしい話だわ、まったく。

どんなバカにもわかるよう「トラヴィスを聴いたお客様へのおすすめ」まで表示された

 果ては私の場合、「トラヴィスを聴いたお客様へのおすすめ」なんて、極めて個人的なコーナーも勝手に自動生成されてきた。

 もうびっくりだ。

 しかも例えば自分が能動的に選んだ任意のアルバムや楽曲を聴き終えたあとには、なんとそれらと似た音楽性のアーチストの作品が自動的に再生されるんだ。

 つまり自分で任意の楽曲やアルバムを選んで聴いたあと、黙って放置しておくとあっちが勝手に「あなただけの自分好みな音はこれですね?」とばかりに、エンエンとぐるぐる自然に何枚ものアルバムや楽曲を無制限に自動で流すのだ。

 もう私がまったく何も考えなくても、Amazon側が自動的にサーチ・判断した上でこれまた自動的にアレコレ教えてくれる。

 これならどんなバカ(例えば私)でも、自分好みの未知の音楽を実際の音源つきで知ることができる。こんなラクな話はない。

 なんだかSFみたいだが、もはやこんなサービス・システムが世の中には立ち上がっているわけだ。

 つまりひとことで言えば、ユーザー個々がリアルタイムでネット上から自分好みの音楽を探し(あるいはあっちから提案されて)しかも無制限に聴ける。

 おまけに自分だけのお気に入りアルバムや楽曲なんかを驚きの安さで楽しめるおトクなサービスなのである。

いや別に「Apple Music」や「Spotify」でもいい

 なんだかAmazonの宣伝マンみたいになっちゃったが、もちろんそのほかのストリーミング・サービスでもいい。

 例えば「Apple Music」や「Spotify」あたりのどこかに加入しておけば、もうCDなんて買う必要がないんだ。

 しかも音質は明らかにCDよりいい。ハッキリ上だ。私の耳が保証しよう。

 おまけに品揃えが圧倒的に豊富だ。ちなみに私はAmazon Music Unlimited(HD)の他にも、Apple MusicとSpotifyにも入っている。

 これでも3000円しかかからないんだ。(もちろん無料コースまである)

 で、そんな感じで「もうCDを買わなくていい生活」を堪能してるわけだ。

各社サービス別に音質レベルや音の傾向が違う

 もちろん各サービス別に音質レベルはちがう。また音質の傾向や特徴もぜんぜんちがう。

 機会を見てこのブログでは、そんなふうに各サービス別の(音質の違いも含めた)比較企画を記事にすることも考えている。

 これ(音質の違い)含みの比較は、まだぜったいに誰もやってないはずだ。現に私は今までまったく一度も読んだことがない。

 なんせこれら各サービス別の「ほんのわずかにごく微妙な音質の違い」を正確に聴き分けるには、まず絶対的な「耳のよさ」が求められる。

 傲慢なように聞こえるかもしれないが、私には人には絶対ない「そのレベルの耳がある」のだ。

 いや個人的にただ言い張ってるだけじゃない。これは客観的事実である。

 まあその話はともかくおいといて……しかしいい時代になったもんだ。

 おじさんが若い頃なんて、音楽の情報を集めようと思ったらもうレコードを物理的に買うしかなかった。次にCDの時代になっても、安く上がってせいぜいレンタルだった。

 そう考えれば今なんて上記3サービスのうちどれかに入れば、もうぜんぜんCDを買わなくてすむはずだ。

 自分の聴きたいアルバムや楽曲を集め、自分だけのプレイリストをいくらでも無限に作れる。

 だから同じ作品を何度でも聴き続けられる。つまりCDを所有しているのと何も変わりない。かつ音質は確実にCDよりいい。

 いやホントにこれはおすすめですよ? マジな話です。

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【オルタナティヴロック】なんと大本命の「トラヴィス」を見落としていた

2024-03-03 05:29:14 | 音楽
*オルタナティヴ・ロックバンド「トラヴィス」(Travis)が1999年に
リリースした最高傑作の2nd盤『ザ・マン・フー』(The Man Who)

ストリーミングの「Amazon Music HD」で片っ端から聴いた

 前回、「【オルタナ探訪】ロックは「70年代で死んだ」のか?」の記事で、オルタナティヴロックをかたっぱしから探索した。

 さがす方法は、まず「オルタナティヴロック」等のキーワードでどんなミュージシャンやアルバム、楽曲が存在するのか? ネット検索で目星をつける。

 次に見つけたバンド名や曲名をキーワードにし、それらをかたっぱしから私が加入しているストリーミング・サービス「Amazon Music Unlimited(HD)」の専用アプリ上でネット検索する。すると目当てのミュージシャンの作品がズラリと残らず表示される。

 そこで同サービス上で全てストリーミング試聴するのだ。ただし「試聴」といっても「iTunes」の時代みたいに、曲の一部だけしか聴けないわけじゃない。楽曲全体がすべて残らず聴ける。

トラヴィスはキャッチーでメロディアスな超絶バンドだ

 しかも「Amazon Music HD」での試聴は、CDのような固体をフィジカルに所有してないってだけだ。いつでも本サービスにネット経由でアクセスすれば、何回でも無制限でちがう音楽だって何でも聴ける。

 もちろん「曲数制限」なんてない。本当に無限にいくらでも聴けるのだ。これで月1000円ポッキリなんだから笑ってしまう。もうCDは買わなくていい時代が来たんだ。

(ただしミュージシャンにとっては災難だろう……。彼らには著作権料等、しっかり各種の支払いが十分に行われることを希望したい)

 さて、そんなわけで本企画では前回に引き続きこの作業を繰り返し、実際の音を聴いて行った。とはいえなんせ、聴く作業は人力なので限界がある。もちろん存在する全てのミュージシャンを聴くなんてできない。

 で、本企画の前回では致命的な見落としをしていたことが発覚した。音源探訪の結果、とうとう決定的な有力候補を見つけたのだ。そのバンドこそが、今回ご紹介する「トラヴィス」 (Travis)である。

2nd盤から彼らはキャッチーに生まれ変わった

 トラヴィスは、スコットランド・グラスゴー出身のロックバンドだ。デビュー当時は(オアシスっぽい激しい曲調で)なんだかイマイチなバンドだったと言う人もいる。(私は実際に1st盤をこの耳で聴いたが、それは微妙にまちがいだ)。

 一方、リリースから3ヶ月目にして、全英アルバム・チャートの1位になった2nd盤『ザ・マン・フー(The Man Who)』(1999年) 以降はどこか哀愁を帯び始めた。そしてメロディアスでキャッチーなバンドに大変身した。本盤はその後も長くヒットし、全世界で400万枚を売った。

 そんな魅力を備えた彼らは90年代後半に来たブリットポップ後のUKシーンで、レディオヘッドと肩を並べるように新しい音楽トレンドを生み出している。

 ちなみにバンド名の由来は、ヴィム・ヴェンダースが監督した映画『パリ、テキサス』(1984年)からヒントを得たもの。この映画の主人公の名前を取り、バンド名をそれまでの名称から「トラヴィス」に変えたのだ。

 彼らのデビューのきっかけはラジオだった。もともと1995年にラジオで流れた彼らのセッションがレコード会社に「発見」され、それでチャンスをつかんで翌年にソニーと契約した。

 そしてデビュー・シングルの「オール・アイ・ウォント・トゥ・ドゥ・イズ・ロック」を1996年にリリースしたのがすべての始まりだ。

トラヴィスは1st盤からなかなかのデキだ

 続く2000年には、世界的な才能あるソングライターに送られる賞「アイヴァ・ノヴェロ・アウォーズ」の「ソングライター・オブ・ザ・イヤー」に、メンバーのフラン・ヒーリィ(ボーカル、ギター)が選ばれた。

 また英国レコード産業協会(BPI)が毎年イギリスで開いている音楽の祭典「ブリット・アワード」(Brit Awards)で、「ベスト・バンド」「ベスト・アルバム」の2つの賞を受賞した。このへんからUKシーンをリードするトップ・オブ・トップの座を築いた。

 さて実際に私が音を聴いた体感では、オアシス路線で音が激しいとされている1st盤『グッド・フィーリング(Good Feeling)』(1997年)は思ったほど過激じゃない。しかも、なかなかのデキだ。

 特に8曲めの「アイ・ラブ・ユー・エニウェイズ」と10曲め「More Than Us」、11曲め「フィーリング・ダウン」、13曲め「More Than Us」がひときわ目を(いや耳を)引いた。

 加えて12曲めの「ファニーシング」は、ドラマティックのひとことだ。後半にやや音が歪むがそれが見事に味付けになっている。これら4曲だけはアコースティック系のとても美しい作品だ。まさにメロディアスの限界に挑戦している。

 つまり本1st盤における位置付けとすれば、これら5曲は以降の彼らの新しい作風のいわば走りに当たると見た。あとの曲はまあ、まずまずだ。なんせニルヴァーナみたいにヘビメタばりの歪み方をしてるのかと警戒していたので、かえって拍子抜けしたくらいだ。

2nd盤を聴いて速攻でトラヴィス単独のプレイリストを作った

 さて続いて1999年5月に発表されたセカンド・アルバム『ザ・マン・フー』(The Man Who)へ行こう。こやつはのっけからもうスゴかった。1曲めの「ライティング・トゥ・リーチ・ユー」(Writing to Reach You)でいきなり美メロが極まる。もう全開だ。

 あまりにも美しすぎて、まさにトップバッターに満塁ホームランを食らった感じ。そしてこの体感は2曲めでも続き、3曲めも超絶的にいい。さらに4、5、6曲めと同水準のハイレベルな均衡が継続する。

 で、1回目の頂点が8曲め「luv」で極まった。まじめな話、ジンジンに鳥肌が立った。このアルバムはまちがいなくロック史に残る名作だ。

 ちなみに本盤からシングル・カットされているのは、1曲目の「ライティング・トゥ・リーチ・ユー」のほか、「ホワイ・ダズ・イット・オールウェイズ・レイン・オン・ミー?」、「ターン」の3曲だ。すべて連続ヒットしている。

 だが実感としては「なんで3曲だけなの?」って感じがする。

 なお私が聴いたのは「20th Anniversary Edition」で、なんと全29曲が収録されている。それらすべてがまるで宝石のように光り輝いている。文字通り全曲、捨て曲なし。もう「参りました」というしかない。

 よって速攻で「Amazon Music HD」のアプリ上に「トラヴィス」と名付けた単独のプレイリストを作った。こいつらなら間違いないぞ、という期待感が確実にある。いやはや、こんな体験ができるとは夢にも思わなかった。

このオルタナ・シリーズは長くなりそうだ

 あー、思わず力が入って記事が長くなりすぎた。なのでトラヴィス関連は、2〜3回(またはそれ以上)に分けることにした。いったんこのへんで一度切ろう。

 しかし彼らを発見できた今となっては、前回の記事で「ロックは70年代に死んだのでは?」なんて、したり顔で書いていたのが恥ずかしくなってくる。

 もちろんトラヴィス探索は本シリーズの次回でも続けるつもりだ。すでに2nd盤以降、3作目、4作目、さらにその先へ、と連なる新音源はもう聴き終えた。次の原稿もほぼ完成している。

 おまけにトラヴィス以外にも、期待できそうな90年代以降の新たなバンドも続々と見つかった。このオルタナ・シリーズはいい意味で長くなりそうだ。

 乞うご期待を。

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【インタビュー特出し】ドラマー・村上“ポンタ”秀一さんとの思い出

2024-03-02 06:00:07 | 音楽
*「PONTA BOX 〜Live At Montreux Jazz Festival」収録曲の「ネフェルティティ」(CDは1995年10月21日リリース)

偉大なプレイヤーに敬意を表して

 冒頭に挙げた動画は、村上“ポンタ”秀一さんが結成した自身初のリーダーバンド「PONTA BOX」ライヴのひとコマだ。

 彼らのセカンド・アルバム「PONTA BOX~Dessert in the Desert~」発売直後の1995年7月21日に、スイスの第29回モントルー・ジャズ・フェスティバル(Montreux Jazz Festival)に出演した際の音源である。

 もう圧巻だ。

 メンバーは村上秀一(drums)、佐山雅弘(piano)、水野正敏(electric-bass)。だが詰めかけたヨーロッパの観衆はもちろんこのバンドを全く知らない。

 そんな「PONTA BOX」初体験の観衆が演奏の進行とともにすっかり魅了され、次第に地鳴りのような大声援に変わり激しく渦を巻いて行くサマが克明に記録されている。これだけ客の反応が手に取るようにわかる音源も珍しい。もう大ウケ。大喝采なのだ。

 特に10曲め「コンクリート/Concrete」(佐山雅弘・作)後の声援がすごい。また12曲め「ストーム・オブ・アプローズ/Storm of Applause」終演後には、やんやの大コールがかかる。

 明らかに観衆は初めて観たこのバンドに熱狂している。大成功の遠征だったといえる。その証拠に本公演のCDとビデオが日本でリリースされると同時に、彼らの1st.アルバムが即座にヨーロッパで発売されている。

ずっしり重く沈み込み「地を這う」がピッチは速い

 本公演でのポンタさんのドラミングは、まず太くて重い。タメを効かせたノリでずっしり沈み込み、地を這うかのようだ。

 だがそんなふうにグルーヴは重いけれどすごく速いピッチで多くのタムを回し、音の起伏を作りながらオーディオ用語でいえば「音場が広い」演奏をしている。

 つまり低い打音から高い打音まで叩き出す音域が広いため、必然的に聴き手からすれば音場がワイドで立体的に聴こえる。要所でリズムの変化を加えながら起伏を作り、非常にテクニカルな演奏をしている。ドラムソロともなれば、もうお客さんから大喝采だ。

 一方、ベースギターはまるでジャコ・パストリアスを思わせるタイム感と音色で高い技術を見せつける。ドラムと共にリズムの大きなうねりを生み出し、音数の多い複雑なプレイをこなしている。もうブンブンだ。

 かたやピアノはまるでハービー・ハンコックを思わせる。他のメンバーに劣らずテクニシャンで、これまた音数の多いプレイぶりで相棒2人にグイグイ刺し込んで行く。

 またスローな楽曲の聴かせ方もいい。特に8曲めの「ドーン/Dawn」(村上秀一・作)では、ゆったりたおやかなピアノ演奏を聴かせている。

2021年に亡くなったポンタさんを偲んで 

 あれはいつだったか、もうすでに「PONTA BOX」は結成されていたので、恐らく少なくともご本人にお会いしたのは1993年以降の話だ。

 当時、マガジンハウスの雑誌「ブルータス」で「バンドやろうぜ」的な企画が上がり、あのころの副編集長さんから複数のミュージシャンへのインタビューのご依頼を頂いた。

「人選は松岡さんにお任せします」というので、その場で即座にリズム隊はポンタさん(ds)と高橋ゲタ夫さん(b)に決めた。で、まずポンタさんと某スタジオでお会いし、お話を聞いたのだ。

 残念ながらポンタさんはもう亡くなられた。そのポンタさんのご冥福を祈って、そのときせっかくお話は聞いたが、当時のインタビュー記事には「あえて書かなかった裏話」を今回は書こう。もう時効だろう。

大上留利子さんの2nd盤で「初ポンタ体験」をする

 ちなみに私は当時も今もアレサ・フランクリンが大好きで、ゆえにその昔から「浪花のアレサ・フランクリン」と言われた元スターキング・デリシャスのリード・ボーカル、大上留利子さんにハマっていた。

 その証拠に彼女の当時のアルバムは和モノ・レアグルーヴの名作として、リリースから40年以上たった今でも評価されている。

 そんな大上さんの1st盤、2nd盤がリリースされた当時は、ポンタさんみたいなプレイヤーを称して「スタジオミュージシャン」なる呼び方が初めて生まれ、ちょうど世間から脚光を浴び始めていた頃だ。

 そのころは世の中に出る盤、出る盤が超豪華なメンバーを揃え、「こんなにスゴ腕のミュージシャンを集めたぞ」みたいな売り方が盛んにされていた。

 実際、私がポンタさんに質問した彼女の2ndアルバム(1978年発売)では、ポンタさん(dr)や佐藤博(key)、林立夫(dr)、松原正樹(g)、山岸潤史(g)、斎藤ノブ(per)など、一流のスタジオ・ミュージシャンがアルバム制作に関わっていた。

 で、彼女のアルバムで演奏した時のことをまず聞いた。

私『私がポンタさんのドラムを初めて聴いたのは、1978年にリリースされた大上留利子さんの2ndアルバム「Dreamer From West」でした。3曲目に「プレイボーイ」っていうかっこいい曲が入ってて。

 その曲のユニットはベースが高水健司さんで、リズム隊がもう超絶的にかっこよかった。で、「これ、いったい誰がドラム叩いてんのかなぁ?」と思ってクレジットを見たら「村上秀一」って書いてあって。それがポンタさんとのファーストコンタクトでした」

 まあ自己紹介代わりだ。ポンタさんは笑いながら聞いていた。

アルバム「黒船」での変則的なオカズの入れ方って?

私『あと今までに「すごい」と思ったドラマーを挙げると……高橋幸宏さん。サディスティック・ミカ・バンドの「黒船」(1974年)が出て、あれ初めて聴いた時はホントに衝撃的でした。特に高橋さんのドラムが。

 だって「ダラ、タカ、タン、タタッ!(休符)」って、途中でヘンなところでオカズが止まっちゃう。あれ聴いて「何これ? めちゃカッコいいじゃん」って感心しました』

 すると黙って私の話を聞いていたポンタさんがひとこと。

ポンタさん「実はあれ、俺が叩いてたんだよ」という。

私『ええっ、ホントですか? トラで?』

 衝撃的な発言だった。なんだかもう、いままで20年以上信じてきた絶対的な宗教がボロボロと崩壊して行くかのような。そんな感じだった。(もちろんこのことは当時のインタビュー記事には書かなかった)

 ちなみにその後、同じくマガジンハウスのまったく別の取材で高橋幸宏さんにもお会いする機会があったが、当然このお話はご本人にもお聞きしていない。

「いかすバンド天国」と当時のバンドブームについて

 それからポンタさんには、自身が出演し大ブームを巻き起こしたテレビ番組「いかすバンド天国」(TBS)の裏側についても聞いた。1989年2月11日に放映が始まり、たくさんのバンドを輩出しながら1990年12月29日に終わった超人気番組だ。

 ただポンタさんはあんまり浮かない顔で、テレビじゃ決して言えないネガティヴ面にも言及した。

ポンタさん『まあ、世の中にああいう空気(つまり仲のいい「お仲間同志」だけでくっつく内輪のノリ)ができたのは……ある意味、かえって良くなかったかなぁ、とは思ったな』

 そもそもポンタさんは「スティック片手に1人でどこのスタジオにも乗り込んで行く」みたいな、一匹狼のスタジオミュージシャンだった。

 だからイカ天が作ったあの「ナァナァの乗り」にだけは、どこか抵抗があったようだ。アマチュアバンドの人たちにそんな内輪ノリを植え付けちゃったことには反省している、みたいなことをおっしゃっていた。

 もちろんこれも当時の記事には書かなかった話だ。

インタビューしても全部書くワケじゃない

 こんなふうに世の中へリリースされて行く出版物の陰には、いったん明かされはしたが、あえて伏せられている実話がたくさん隠されている。もちろん墓場へ持って行くネタもある。

 みなさんもそのへんを想像しながら出版物を読むと、10倍楽しめるかもしれない。

 なお、ポンタさんは親分肌で大きな人でした。

 ちなみに本アルバム全曲を聴きたい人はYouTubeの「PONTA BOX - トピック」ページへ行き、下段の「アルバムとシングル 」の中から「PONTA BOX Live At Montreux Jazz Festival」を選択して下さい。収録された全13曲が続けてすべて聴けます。一聴の価値アリです。気に入った人はぜひCDを買って下さい。

 またストリーミング・サービスの「Amazon Music Unlimited(HD)」に加入している人は「ここから」全曲聴けます。

ジョン・ウェットン氏(bass)へのインタビューもそうだった

 なおこのインタビューと同じように「お話は聞いたが書かなかったことの方が多い」という意味で似たようなインタビューの例は、以下の、私がジョン・ウェットン氏(キングクリムゾンの初代ベーシスト)にインタビューした際のこぼれ話がある。

 ジョン・ウェットン氏ご本人から話は聞いたが「その雑誌」のインタビュー記事には当時書けなかったエピソードを、以下の本ブログのジョンへのインタビュー・番外編の記事にもれなく書いた。

 ちなみにこの記事は20年前に当ブログを立ち上げ、いちばん最初に書いた思い出深いおすすめの記事だ。ご興味があればぜひ以下をどうぞ。

ありし日のジョン・ウェットンに捧げるオマージュ」(すちゃかな日常 松岡美樹)

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【オルタナ探訪】ロックは「70年代で死んだ」のか?

2024-01-31 15:56:19 | 音楽
レディオヘッドは確かに飛び抜けているが……

 私がふだん書いている記事を読めばわかると思うが、私の脳内は音楽的には70年代で完全に時間が止まってしまっている。

 80年代に入り、あの大嫌いな「打ち込み」なるものが登場してからというもの、すっかり以後の音楽を聴かなくなった。なので私の脳には、70年代を含めそれ以前の音楽こそが「最高のもの」としてしっかりと刻まれている。

 で、「これではいかん」「進取の気性がなければ」と思い立ち、最近、「90年代のロック 種類」とか「オルタナティヴロック」のようなバカみたいなキーワードで検索しては、出てきたバンドの音を片っ端から聴いてみたのだ。

 ちなみに私はストリーミング・サービスの「Amazon Music Unlimited(HD)」に加入している。これを使えば「iTunes時代」みたいに曲の一部だけじゃなく、全部すべて聴けるのだ。例えば特定アーチストがリリースした彼らの全アルバムを全曲すべて聴ける。

 仕組みは、まずネットにつながった「Amazon Music HD」のアプリ上でネット検索し、お目当てのアーチストを探し出す。するとそこには彼らの全作品がズラリと並んでる。

 つまり片っ端からそれらを全部聴けるわけだ。月額・定額の1000円ぽっちで。もちろん「曲数制限」なんてない。無限にいくら聴いても1000円ですむ。つまりCDはもう買わなくていい時代なのだ。

 で、実際に音を聴いて行くと……さすがにレディオヘッドとかレニー・クラヴィッツあたりは「言うだけのことはあるな」と思わされた。だがそのほかはもうカスばかりで参ってしまった。

一発屋ばかりでロクなのがない

 たとえば世界中でグランジ・ムーブメントを巻き起こした有名なNIRVANA(ニルヴァーナ)だって、結局、アメリカのビルボードでナンバー1になった2ndアルバムの「ネヴァーマインド(Nevermind)」(1991年)ありきだ。

 ぶっちゃけ、端的に言えば「アレだけじゃん」って感じがする。

 しかもあの盤だって大ヒットした楽曲「Smells Like Teen Spirit」(スメルズ・ライク・ティーン・スピリット)が飛び抜けて「いい」だけで、あとはあんまり……。これは好みの問題なのか?

 そもそもニルヴァーナのオリジナル・アルバムは3枚しかない。うち1st盤の「Bleach(ブリーチ)」(1989年)とサード盤の「In Utero(イン・ユーテロ)」(1993年)は、私の体感では「まぁまぁかな?」程度だ。

 つまり彼らのアルバムを順ぐりに聴いて行くと、どうも(ネヴァーマインドを除き)質がそう高くなく「これならブラックサバスの方がぜんぜんカッコいいやん」みたいな印象を受ける。だって実際あのヴォーカルって、まんまオジー・オズボーンじゃない?

オアシスの2nd盤「モーニング・グローリー」は確かにいい

 あと1991年に結成され、2009年に解散したイギリスの有名バンド・オアシスはどうか? 2ndアルバム「モーニング・グローリー」(1995年)に関しては、確かに「さすがなかなかやるな」とは思った。てか私でさえこれ聴いたことあるし。

 実際、本盤はUKチャートで1位になり、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が持っていた英国アルバム売り上げ記録を30年ぶりに破った逸品だ。

 特に3曲目の「ワンダーウォール」と4曲目「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」は、誰が聴いても「いい」って言うよねぇ。これは確かに認めます。はい。

 あと3rdアルバムの「ビィ・ヒア・ナウ」(1997年)は、まあ悪くはないけど……。ううんー、ってところだ。あとの作品はまぁ……察してください。

アラニス・モリセットと「Third Eye Blind」は耳に残ったが……

 そのほかはカナダの女性シンガー・ソングライターのアラニス・モリセットと、1990年代初期に結成されたアメリカのオルタナバンド「Third Eye Blind」が耳に残った。ただ少し掘り下げて各アルバムを聴くと、典型的な一発屋にすぎない。

 前者のアラニス・モリセットは、実質、世界デビューになった大ヒット3rd盤「Jagged Little Pill」が超絶的にいいだけで、あとのアルバムはかなり見劣りする。

 他方、「Third Eye Blind」も歴史的デビューアルバムになったバンド名と同名の1stアルバム「Third Eye Blind」がとんでもなく「いい」だけで、2枚目以降はごく平凡だ。

 結局、検索して特定のアルバムを「いい!」と思っても、こんな結果に終わってしまう。かくて私の脳内音楽ライブラリは、今日もいっこうに広がらない。

 まぁ、こんな短期間で「世のオルタナを全部聴く」なんて物理的に無理だ。よって隠された逸品がまだまだあるかもしれない……。よし、それならひとつ、この企画を継続し捜索作業を続けるとしよう。うんうん。

 では次回をお楽しみに。

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あのころ下北沢でこんなこともあった

2023-12-31 20:17:36 | 音楽
※アレサ・フランクリン「アメイジング・グレイス」1972年(予告編)

「このミュージシャンを当ててみようか?」

 いま手元のApple Musicでアレサ・フランクリンのおよそ50年前のライヴ・アルバム「AMAZING GRACE」が掛かっている。

 史上最も売れたライヴのゴスペル・アルバムだ。

「グルーヴってもんはこれだ」みたいな、超絶的にグルーヴィーな名盤である。ただ聴いてるだけであまりの興奮に涙がじんわり湧いて出る。

 なもんで「えーと、このときのメンバーは誰だったかなぁ?」と考えてもなんと思い出せない(もちろん私はこの盤を所有しているのだが)。

 で、目の前で鳴ってる音だけを聴いて純粋かつ真剣に考えた。

「この音色と奏法は……まずギターがCornell Dupreeだな。で、ベースはChuck Raineyだろう。最後にドラマーはもちろんBernard Purdieだ(あの「タ、ツゥー、ツゥー」の人である)」

 音を聴いただけで、すっかり忘れてしまっていたメンバー構成をピタリと当てた(笑)

 そこでまたひとつ「記憶の扉」が開いた。なんか過去に似たようなことがあったよなぁ? そう、ふと昔の記憶がよみがえってきたのだ。

 ちなみにSF作家の故・小松左京氏によれば、実は人間の脳には全ての過去のデータが格納されている。人はそれを忘れているだけだ。

 で、何かのきっかけさえあれば、しまってあった記憶の引き出しが「ポン」と開く。そんなわけで時間は、はるか学生時代へとタイムスリップした。

「まずギターはコーネル・デュプリ―さ」

 そのとき私は、当時の彼女と下北沢のある喫茶店にいたのだ。確か80年代だった。

 すると超グルーヴィーな曲が掛かった。で、すかさず私が「いま演奏しているミュージシャンを当てて見せようか?」と言った。

「まずギターはコーネル・デュプリ―さ。ピアノはリチャード・ティーだ。で、ドラマーはスティーヴ・ガッド。最後にベーシストはアンソニー・ジャクソンだな」

 すると彼女は速攻で喫茶店の主人に、「ねぇ、いま掛かっている曲のアルバムを見せて下さいな」と言う。ウラを取るつもりだ。

 結果、ベーシストだけはゴードン・エドワーズで違っていたが、ほかは全部、私が言った通り当たっていた。あのころまだミュージシャンをめざしていた彼女は、「すごーい! 私、そういう人が大好きッ!」と来た。

 まあオンナをたらし込むなんてカンタンだ。

 実は私が当てた3人のメンバーは(ベーシストを除き)、ごくわかりやすい独自の奏法や音色で個性を出してるメンツばかりなのだ。

 たとえば超ファンキーなあのコーネル・デュプリ―や、打音が強くハッキリしていて非常にリズミカルなリチャード・ティー。はたまたリズムパターンがとても特徴的なスティーヴ・ガッドなんてまちがえようがない。

 純粋にプレイぶりだけ見れば、せいぜいガッドの奏法を(悪く言えば上手にパクって消化していた)村上ポンタさんあたりと取り違えるくらいだ。

 しかも日本人のポンタさんがコーネル・デュプリ―やリチャード・ティーとしょっちゅう演ってるわけがないから、これも同様にポンタさんと取り違えるはずがない。

 つまりタネ明かしすれば、私は「普段しょっちゅうNYあたりのスタジオで一緒に演ってる」当たる確率が高そうなミュージシャン連中の名前を列挙しただけだ。

 唯一、あの太くて重たいシンプルなゴードン・エドワーズのベースは、独特ではあるが「わかりやすく」はない。だから当てられなかった。

 だがあの音数が少なくシンプルなエドワーズとは対照的に、音数が多くて非常にテクニカルなベースを弾くアンソニー・ジャクソンとをまちがえるなんて「お前は音楽わかってるのか?」てなもんだ。

 つまり1人だけ外したアンソニー・ジャクソンは、的中したほかの3人とくらべて当てるのが比較的むずかしい部類なのだ。

 そんな裏事情をつゆ知らない彼女が私に「大好きだッ!」と直球を投げるのを聞き、店の主人は小さく微笑んでいた。

 なんせ「あのメンツ」のCDをご主人は所有しているわけだから、おおかたそのへんの音楽には詳しいのだろう。ならば目の前でくり広げられた寸劇を見て、せいぜい「やれやれ」とでも思ったはずだ。

 まぁ血気盛んで若かったよなぁ、あのころは私も。

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ニッポンのロック、不朽の名盤。

2023-12-28 17:53:26 | 音楽

※上田正樹とサウス・トゥ・サウス「この熱い魂を伝えたいんや」
(1975年、芦屋ルナ・ホールでのライヴ)

上田正樹とサウス・トゥ・サウス

 上田正樹とサウス・トゥ・サウスの「この熱い魂を伝えたいんや」である。

 こやつを初めて聴いたのはレコードだった。高校生のときだ。してみると、このライヴが行われた1~2年後にレコードで聴いたことになる。

 当時、うちのバンドのド不良ギタリストの遠藤が、「ぜひ松岡にこれを聴かせたい」というのでなんとジャケットに太筆のマジックで「松岡」と大書したレコードを私に手渡してきた。ちょっと引いた。

 で、聴いたが、もう一発でやられた。驚天動地だ。上田正樹の熱いヴォーカルと、正木五朗のファンキーなドラミングにすっかり沈没した。

 それ以来、ソウル一直線。いろんな音源を聴いたが、それはともかく。

 いま思えばそのギタリスト遠藤という男は、勉強はからっきしだったが音楽の情報にはメッキリ敏感で、いち早くチャーの初期音源を引っ張って来たのもヤツだった。彼の情報は的確で速いのだ。

 で、その後レコードは遠藤に返却し、今度は大学生のとき近所の「貸しレコード屋」(なつかしい)でその同じアルバムのレコードを借りてテープに録音し聴いていた。

 だがそれもいつしか喪失し、やっと先日、アマゾンに発注した同盤のCDが手元に届いた。またも「この熱い魂を伝えたいんや」である。ついに上田正樹にしかるべき印税を支払ったわけだ。

 それがいま爆音で鳴っている。

 やっぱりいいなぁ。

 上田正樹の激しい煽りに煽り煽られ、いまにも踊り出しそうだ(恥ずかしい)。

 ちなみにこの盤は最後、観客の「アンコール!」という掛け声で幕を閉じる。それを聴いたかつてのド不良ギタリストの遠藤が、「アンコが凍るかよぉ」てな駄洒落を言っていたのをふと思い出した。

 どうしてるかなぁ、遠藤。

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下北沢と古澤良治郎さんのこと

2023-12-25 19:33:10 | 音楽


まちがいなく日本一だった

 昔、下北沢に「T5」という地下のライブハウスがあった。80年代には連日、そこでフュージョンを演っていた。よく通ったものだ。

 ある日、高橋ゲタ夫が出るというので見に行った。バンドは確か、向井滋春の「オリッサ」じゃなかったかな?

 で、ステージを見ると、ゲタ夫の相方のドラマーは古澤良治郎だった。(うろ覚えだが)ギターは是方博邦だったかな?(うーん、やっぱりオリッサじゃなく、ただのセッションバンドだったかもしれない)

 私はこのとき生まれて初めて古澤のプレイを見たのだが、それはもう凄かった。まさに地を這うようなノリで、グルーヴ感が強烈だった。しかもコンビを組むのが高橋ゲタ夫なんだから演奏が悪いわけがない。

 古澤のドラミングを見たのは後にも先にもあれ一回だけだったが、彼はまちがいなく日本でナンバーワンのドラマーだった。これは自信を持って言える。

 ゲタ夫も演奏しながらすごく楽しそうで、笑顔で演っていた。

 実にいい演奏だった。

昔の下北沢は隠れ家的だった

 あのころは下北沢も(いまのようにメジャーじゃなく)隠れ家的なひっそりした街で、雰囲気がよかった。

 なぜ私がそのころ下北沢に住みついたのか? それは当時まだ学生だった私は、ポスター配りのバイトをやっていたのがきっかけだった。

 ポスターを何枚配っていくら、というアルバイトだ。

 その日に配ったポスターは演劇もので、場所がたまたま下北沢だった。夜、下北の飲み屋へポスターを置きに行くと、店のマスターやお客さんから、

「お前、それ1枚、配っていくらになるんだ? 大変だな。がんばれよ」

 などと励まされた。

 チラシ配りのバイトで食い繋ぎながら演劇をやっているのだと勘違いされ、激励されたのだ。まあそもそも演劇の街だからなぁ。しかも行く店、行く店、すべてそんなふうでまったく同じ厚遇ぶりだった。

 当時、物書きになろうと思っていた学生の私は、

「ああ、この街はカルチャーを育てる日本のグリニッジビレッジなんだ!」

 などといたく感動し、それがきっかけで下北沢に住み着いてしまったわけだ。

叫び声に反応したギタリスト・山岸潤史

 当時、下北沢でライヴを見たミュージシャンは数多い。もちろん古澤良治郎だけじゃなく、たくさんいた。

 同じ「T5」で山岸潤史を見たときも面白かった。たぶんお客さんは素人さんばかりなのだろう、その日の客席は恐ろしいほどシーンと静まり返っていた。

 激しい演奏とは好対照だった。

 で、「これはいかん。盛り上げなければ」と、山岸がギターソロを取ったときに私がタイミングを見て「イェーイ! 行けぇ、山岸ッ!」と大声で叫んだ。客席はえらく静かで、そんなことをやるのは私だけだ。

 すると私の叫び声を聞いた山岸は私のほうを振り返り、激しくノリながらソロを弾き始めた。なにか私に助けを求めるような感じだった。なんせ客席は恐ろしいほど「シーン」と静まり返ってるんだからムリもない。

 で、次の曲の同じくギターソロのとき、山岸はまた私のほうを向きながら弾き始めた。だが静まり返った観客席のなか、さすがに今度は私も気が引けてそれ以上は助太刀する度胸がなくて黙っていた。

「ああ、あのとき叫べばよかったなぁ」

 そんなことをふと思い出した。

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ジェスロ・タルでタイムスリップした渋谷の夜

2005-05-15 03:09:43 | 音楽
 渋谷公会堂でジェスロ・タルを観てきた。1曲目が始まるなり、イアン・アンダーソンの声の枯れ具合にびっくり。んー、かなり張りがなくなってるなあ。でもまあいい年だしなあ。あとドラムが倍テンでごまかしててもどかしいぞ。イクときはイケよ。

 そんなことを考えながら聞いてるうちに、コンサートは中盤にさしかかる。するとじわじわとバンドのボルテージが上がり、前半と同じメンバーが演奏してるとは思えないほど演奏がアグレッシブになった。ライブのよさだな、これは。

 以前のエントリーで書いたように、チケットを買った時点ではいろいろあったがやっぱり観てハマった。この日はアルバム「アクアラング」(1971年)を全曲演奏したのだが、あれを聴いていた高校時代が頭の中でぐるぐる回る約2時間だった。「クロス・アイド・マリー」には泣けました。

 会場にはオールドファンらしき人が多く、特に30~40代くらいの女性が目立ったのがちと意外だった。ジェスロ・タルって案外女性ファン多いのね。サラリーマン風のおじさんたちも程よく出来上がっていて(謎)、たどたどしくリズムを取る姿がほほえましい。なんだか同じ時代を共有してたんだなあ、と熱いものが……。

 しかしジェスロ・タルはもう、アンプラグドに切り替えたほうがいいと思う。アコースティックないい曲をたくさんもってるし。なによりバックがエレクトリックになると、イアンの声が負けてしまうのだ。だがアコースティックならまだまだあの声はいけるし、説得力もある。さて、どうなんだろうか。

 それともうひとつ感じたのは、やっぱりイギリスの音だなあってこと。イギリスのバンドったって音楽性はいろいろなわけだが、どこか共通してるのだ。ちょっと屈折してて、アメリカみたいなノーテンキで大陸性の土地では絶対に生まれないカルチャーというか。

 似たようなことは以前青森へ旅行したとき、地元で有名な津軽三味線のライブハウス「山唄」へ寄って感じた。あの音って、太陽がさんさんと降り注ぐジャマイカじゃ絶対に生まれないよな。やっぱこう、寒くて自然がキビシくて、「つらくないと出てこない音」っていうか(笑)。ちょうどイギリスの音もそんな感じだ。

 コンサートが終わり、ロビーへ出るとTシャツやらCD、DVDが山積みされている。

 さっそくTシャツを買い、CDを物色したがほとんどもってるからなあ。ワイト島のDVDは買いそうになったがグッとがまんした。とにかくほっとくとなんでも買っちゃう勢いなのだ。

 でも帰ってからアマゾンで買うんだろうなあ、わし。いまDVDドライブが壊れてるから、これ買っちゃったらドライブも買わなきゃなんないんだよ。んー、ま、いいか。ドライブはどうせいるし。ってやっぱ、業界に食い物にされてる気が……。

 外へ出ると、なんと渋谷公会堂の真ん前でフルート吹いてるおっさん発見(笑)。いやイアンみたいに片足は上げてなかったが。熱心だねえ。しかもけっこううまくて、ウケてるんだなこれが。しばし鑑賞し、警備員に追い出されて街の通りへ。

 小雨の中を渋谷駅へ歩きながら、「クロス・アイド・マリー」を口ずさむ。また高校時代の自分が蘇ってくる。音楽ってある意味、それを聞いてた時代や場所にタイムスリップさせる空間移動機なんだな、きっと。

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12年ぶりの来日公演~ジェスロ・タルをめぐる音楽業界の魑魅魍魎

2005-04-12 19:31:39 | 音楽

※フルートを吹き狂うイアン・アンダーソン@ジェスロ・タル in ワイト島

 いやはや、すっかりダマされるところだった。何がって、ジェスロ・タルのDVD発売をめぐる音楽業界の巧妙な仕掛けの話だ。

 ジェスロ・タルは、1968年にデビューしたイギリス出身の古参バンドである。イアン・アンダーソンなるおっさんが率いている。日本ではあんまり知名度がないが、好きなやつは思いっきり好き、どちらかといえばマニア受けするバンドだ。

 私は高校1年のとき、1971年にリリースされたアルバム「アクアラング」で彼らの音を初めて聴き、一発でやられた。それからというもの、もう高校時代は毎日ジェスロ・タルのアルバムを聞いてすごしたものだ。

 じゃあいったい、そのジェスロ・タルの何がどうしたのか?

 前回のブログ『「韓流」がいつも1面トップの新聞なんていらない』を書いたとき、ジェスロ・タルについてちょっとだけふれた。で、ついでに何の気なしにちょっと検索してみたのだ。「ジェスロ・タル」とグーグルに入れて。

 そしたらなんたることか。まったくすごい偶然なのだが、なんと彼らが今度12年ぶりに来日し、5月に東京・渋谷公会堂でコンサートをやるという。

 しかもこれまた激しく偶然なんだが、5月12日の公演では、彼らは「あのアクアラング」の収録曲を特別に「全曲」演奏するっていう。前述の通り、「アクアラング」は私の高校時代そのものだ。ユーミンじゃないが、「あ~なたはぁ~、わ~たしのぉ~、青春そのものぉ~♪」である。ええ、私は叫びましたとも。

「おおっ? まじかよぉおい。ぜったいにっ、行かなきゃ」

「イアン・アンターソンはもう爺さんだから、これを逃したら生で見る機会なんてないぞ。なんせあとは寿命で死ぬだけだからなぁ」

 すっかり頭に血がのぼり、速攻でウドー音楽事務所に電話してチケットを取りましたとさ。S席・8000円だ。

 で、有頂天になってさらに検索していると、またもやとんでもない発見をした。ジェスロ・タルが1970年にあのイギリスのワイト島でやったライブが、なんとDVDで発売されるっていうじゃないか。リリースされるのは4月27日らしいから、もうすぐだ。


※ジェスロ・タル in ワイト島

「うわぁー。これも、ぜ・っ・た・い・に・っ、買わなきゃ!」

 1970年のワイト島っていろんなバンドが出てたんだけど、とにかくどのバンドの演奏もとんでもない。全体にえらいテンションが高く、もうサイコーなフェスティバルだった。


※ザ・フー in ワイト島

 ただし私がもってるのはコンサート全体を収めたビデオと、このときの「ザ・フー」のビデオだけだ。ワイト島フェスティバルはミュージシャンの権利関係がややこしく、フィルム自体が長いことお蔵入りしてた。だからそれにちなんだ商品があんまりリリースされてないらしい。

 もしこのコンサートで演奏した「フリー」のDVDが出たら、私はもちろん買う。「マイルス・デイビス」のが出ても買う。もうなんでも買っちゃう「禁治産者状態」である。


※フリー、てかコゾフ in ワイト島


※マイルス in ワイト島

 や、それはともかく。ジェスロ・タルがきっかけで、もう目の前に出てくるモンはなんでも買っちゃうありさまな私。もううれしくてうれしくてしかたがない。

 がっ、しかし。ちょっと時間がたつうちに、だんだん背後に存在する「あるシステム」に気づき始めた。よく考えてみるとDVDの発売が4月27日で、東京公演が5月11日と12日なわけでしょ? てことは彼らが来日したのって……。

 DVDをプロモーションするためじゃんよ。

 で、さらにアマゾンにアクセスし、くだんのDVDについて調べてみると……。驚愕の事実が発覚した。

 日本でリリースされるDVDは4月27日付で、「予約受付中」になっている。人間、「まだ買えない」ってわかると逆に「どうしても欲しくなる」ものだ。で、実際、私も「予約しちゃおかな」とか考えてたわけ。

 ところが笑ったのは、アマゾンが宣伝のためにやってる「仕組み」が私の熱をさましちゃったことだ。どういう意味か? 

 私はアマゾンにユーザ登録してある。だからブラウザでサイトにアクセスすると、(たぶんクッキーを使って)私がアマゾンで最近検索した履歴がぜんぶ出る。

 一方、アマゾンはこれらのデータをもとに「コイツはこういう商品に興味があるんだな」と目星をつけ、類似の商品を「おすすめ商品」として自動的に画面に出して宣伝する仕組みになっている。

 で、例の4月末に日本で発売されるDVDの「類似商品」として、すでに海外では発売されてる「まったく同じDVDの輸入版」まで画面に表示されちゃったんだ。自動的に。いやあ、驚いたねえ、まじで。なんでかって? だってさ、

 日本版は定価が「4,935円」なのに、輸入版はなんと「1,708円なんだぜ(価格は4/12現在)

 しかも輸入版はすでに発売されてるから、中古だと「1,393円」(同)で買えちゃったりするわけだよ。

 俺をなめてんのか? >音楽業界

 音楽業界の流通の仕組みはよく知らないけど、どこをどうやったら「1,708円」で買えるモンが「4,935円」になっちゃうわけ? 日本の消費者をバカにしてるだろおまえら(誰に言ってるんだ?)

 これじゃあさ、「ファイル交換ソフトによる商品の流通は著作権侵害行為だ」とかいくら言っても、ぜんぜん説得力ないじゃん。や、だから著作権侵害してもいいって意味じゃないよ。けど、心情的に「冗談じゃないよ」ってなるでしょ、ふつう。「まあ、ファイル交換するヤツの気持ちもわかるわな」で終わりだ。だって「サギ」じゃんよ、こんな値段は。

 輸入版との差額が、「3,000円以上」もあるんですよ?

 おまけにもうひとつ追加すると(まだあるのか?)

「これを機会に儲けよう」ってんで、東芝EMIが例のアルバム「アクアラング」をどうやらリバイバル発売しようとたくらんでるらしい。で、こっちは「4月13日発売予定」になっている。もうね、みーんな、セットになってるわけ。「アレを買ったら、コレも買わせて」って業界側の仕掛けが。

 業界から見たら、そざかしハマった人を笑ってるんだろうなあ。「またバカが食いついたよ。入れ食い状態で笑いが止まらねえぜ。へっへっへ」とか言って。

 ん? まてよ。

 おいおい、ひょっとしたら5月12日の公演だけ特別に、ジェスロ・タルが「アクアラング」の収録曲を全曲、演奏するのって……。

 ひょっとしたら東芝EMIと、なんかウラ取り引きがあったんじゃないのか?

東芝EMI「イアンさん。いやね、今度ウチで『アクアラング』を売り出そうと思ってるんですがね。へへ。でね、モノは相談なんですが、来日したら1日だけ『アクアラング』DAYみたいな日を作るってのはどうですかねえ? ほら、たとえばその日だけは、このアルバム中心の選曲にするとか。や、もしやってもらえたら、ウチとしては宣伝になっていいんですがねえ、へっへっへ」

アン・アンダーソン「ふむ。それ、僕たちのアルバムの宣伝にもなっていいよね。バンドもトクするし、お宅らもウハウハ、と? 東芝EMIはん、あんさんもごっつうワルでんなあ。ふぉっふぉっふぉっ」

 イアン・アンダーソンがそのとき果たして大阪弁を使ったかどうかは定かじゃない。だがこんな会話を妄想し、すっかりトドメを刺されました私は。業界のどす黒さに。「俺の青春が日本に来る」ってんでせっかく有頂天になってたのに。

 8,000円も出してコンサートのチケット買ったけど、なんかよろこびが半減しちゃったよ。

 どうしてくれるんだ? >ウドー音楽事務所

 前にブログでメディア・リテラシーについてふれたとき、すべての情報には「必ず意図がある」と書いた。要はこういうことなのだ。

 来日公演にはDVDを売ろうって業界側の意図がある。すでに海外じゃ破格値で売られてるDVDを、日本ではバカ高い値段つけて予約受付するのも、プレミアム性をつけて確実に売ろうてな意図だ。

 しかも真偽の程は不明だが、東芝EMIはこの騒ぎに便乗し、CD「アクアラング」をリバイバル発売して儲けようなんて意図をチラチラさせてやがる。

 これってさ、コアなファンの人はみーんな買っちゃうよ、まじで。実際、私も買おうとしてたし。消費者はこういうテで乗せられて搾り取られちゃうんだよねえ、なけなしの金を(まあ好きなモンに使うんだからいいんだけどさ)

 しかし正直なところ、私自身はDVDの輸入版が「1,708円」で売られてるなんて知りたくなかったよ。

 それさえ知らなきゃ、素直に彼らの戦略にハマってすべての商品を買い、ああトクした。幸せだって気分でいられたのに。これについてはアマゾンにすべての責任がある。ぶち壊したのはアマゾンのクッキーだ。

 俺の青春を返せよな >アマゾン

【追記】(4/21付)

今日、渋谷のHMVへ行ったら、なんとワイト島のマイルスのライブがモニターに映し出されてた。DVD、出てたのね(^^; びっくりして店員さんに調べてもらったら、やっぱりワイト島のライブでDVD化されてるのはザ・フーとマイルスだけらしい。ジミヘンは出てたけど、廃盤になったとか。意外だ……。でも出せば売れそうなのになあ。フリーとか(笑)

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