すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【女子W杯2023 GL第3節】相手にボールを持たせてスペインに勝つ 〜日本 4-0 スペイン

2023-07-31 19:23:30 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
カウンター攻撃に徹した日本が圧勝する

 女子ワールドカップ「オーストラリア&ニュージーランド2023」は31日にグループC第3節が行われ、なでしこジャパンが強豪スペイン女子代表と対戦した。

 日本は立ち上がりから最終ラインをあえて低く構えて5-4のブロックを敷き、「相手にボールを持たせて勝つサッカー」をして4-0で完勝した。日本のポゼッション率はたったの23%。見事な作戦勝ちだ。加えて恐ろしいほどの決定力である。

 これで日本はC組をダントツの全勝・無失点で首位通過し、なんと合計11点をもぎ取った。8月5日の日本時間午後5時から行なわれる決勝トーナメント1回戦では、A組2位のノルウェーと当たる。NHKが総合テレビで中継する。

 さて、なでしこジャパンの池田太監督が、またしてもカマしてきた。ワントップに初先発の植木理子を、また右CBにも同じく初先発の高橋はなを置いたのをはじめ、前節からスタメンを5人も変えてきたのだ。しかも日本はブロック守備からのカウンター攻撃に徹し、強豪スペインをチンチンにやっつけて見せたのである。

 立ち上がりから日本は自陣に5-4のブロックを構え、相手にボールは持たせるがチャンスになったら速攻するサッカーで戦った。前節、コスタリカ戦の後半にテストした通りの形だ。これで日本が最終ラインでマイボールにすると、スペインがハイプレスをかけてくる展開である。

 日本のフォーメーションは3-4-2-1だ。スタメンはGKが山下杏也加。3バックは右から高橋はな、熊谷紗希、南萌華が構える。右ウイングバックには清水梨紗、左ウイングバックは遠藤純。ダブルボランチは林穂之香と長野風花。2シャドーは右が宮澤ひなた、左が猶本光。ワントップは植木理子だ。

交代出場したFW田中美南が4ゴール目を決める

 日本は前半12分にボールを奪うと最終ラインからきっちり組み立て、カウンター攻撃に成功する。CBの熊谷がボールをいったん左サイドの遠藤に振る。受けた遠藤が敵ライン裏にスルーパスを出し、これに宮澤が前へ飛び出してGKとの1対1をゴール右に決めてみせた。先制点だ。

 続く同29分。またも宮澤がボールを運び、左にいた植木にスルーパスを出す。その植木が持ち込んで放ったシュートは敵DFのパレデスにボールが当たってコースが変わり、GKロドリゲスが伸ばす手の上を抜けてしっかりゴールに収まった。

 さらに同40分だ。日本は中盤で相手ボールをカットし、植木が右にいた宮澤にパス。その宮澤が持ち込んでゴール左に叩き込んだ。なでしこは、わずかシュート3本で3点を奪った。しかも宮澤はこの日、2ゴール1アシストである。

 そしてゲームは後半に入り、日本は立ち上がりから右のシャドーを宮澤から藤野あおばに代えた。また同14分にはCMFの長野を長谷川唯に、右WBの清水を守屋都弥に交代させた。さらに同23分にはワントップの植木を田中美南に代えてきた。池田監督の目まぐるしい采配が冴え渡る。
 
 さあ、とどめの4点目は同37分だ。交代出場したばかりの田中が右サイドのスローインからボールを受けて独走し、最後はゴール左上スミに美しいコントロールショットをお見舞いする。これで4-0だ。

決勝トーナメントもカウンター狙いか?

 驚かされるのは、なでしこジャパンの選手層の厚さである。選手を誰に代えても穴がないばかりか、むしろ出た人が活躍する。後半に出場して測ったような超絶ゴールを決めて見せた田中などは典型だ。この絶妙の選手交代にぶ厚い選手層、そして相手の意表をつく高等戦術である。

 しかも1次リーグを2位通過してしまうと今節以降の会場は移動ばかりになるが、日本は1位通過したため今節と決勝トーナメント1回戦の会場は同じウェリントンだ。また準々決勝と準決勝も同じオークランドで戦える。移動なしだ。

 さらには今節で堅守速攻を一度見せておいたために、今後の対戦相手は「日本はポゼッションで来るのか? それともカウンター狙いか?」と的を絞りにくくなる。事前の準備が非常に難しくなるーー。いよいよ「優勝」のふた文字が現実味を帯びてきた。

 カギになるのは戦術だ。決勝トーナメントに入っても、ずっとこの相手にボールを持たせて勝つサッカーをやり続けるのかどうか? である。

 日本は逆にザンビア戦とコスタリカ戦の前半で見せたようなポゼッションスタイルでも十分勝てると思うが、次のノルウェー戦以降ではこの戦術面をしっかり見極めたい。

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【女子W杯2023】なでしこ、本日31日16時にスペイン戦

2023-07-31 08:29:00 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
勝てば次はノルウェー戦へ

 すでに決勝トーナメントへの進出を決めているなでしこジャパンは、本日31日、16時から1次リーグC組1位をめざしスペイン戦に臨む。試合はNHKが地上波で中継する。

 なでしこはこの試合に勝てば、次の決勝トーナメント1回戦でノルウェーと対戦する。引き分け以下の場合は、スイスと戦うことになる。

 1次リーグの2試合で8点取っているスペインは、最終ラインからのビルドアップやボール保持率が高い点でなでしこと似ている。日本としては、敵が多用してくるサイド攻撃に気をつけたいところだ。

 がんばれ、なでしこ!

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【女子W杯2023】日本がコスタリカ戦後半に見せた戦術的なコクと旨み

2023-07-29 14:12:51 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
押し込まれたのでなく「相手にボールを持たせた」

 女子W杯のC組第2節、あの日本vsコスタリカ戦の後半のことである。

「日本はメンバーを途中交代したせいでコスタリカに押し込まれたぞ」と感じた人が多いのではないだろうか?

 いや、そうじゃない。

 基本フォーメーション3-4-2-1の、後半のなでしこジャパンは5-4-1の美しいブロックを組んでいた。

 つまりあの試合、すでに前半で2点リードした後半の日本は、ブロック守備をテストしたのだ。守備からのカウンターの練習だ。

 コスタリカ戦後半のなでしこジャパンは、あえて「相手にボールを持たせて勝つサッカー」を試したわけである。

 いやはや、このチームの池田太監督は、常に3~4人のメンバーを代えながらのチームメンテナンスといい、戦術的な旨みといい、実にコクのある采配を振るう。

「言葉にしてしまうと実現しない」と世にいうのでどうも言いにくいのだが、この大会、なでしこジャパンは優勝するんじゃないかと密かに思っている。

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【女子W杯2023】スペイン戦はターンオーバーか? ~アメリカ戦を避けるのが正解か

2023-07-27 12:19:15 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
準々決勝で優勝候補のアメリカと当たる?

 なでしこジャパンが女子W杯で、4大会連続の決勝トーナメント進出を決めた。

 C組第2節のコスタリカ戦、彼女たちはW杯初先発のMF猶本光(三菱重工浦和)と連続先発のFW藤野あおば(日テレ東京V)のゴールで快勝した。

 この結果、同組のスペインがザンビアに勝ったため、最終節を残して日本とスペインの1次リーグ突破が同時に決まった。

 さて、悩ましいのは「消化試合」になった第3節のスペイン戦での戦い方だ。

 チームとしては、これまでのように先発メンバーを半分くらい変えながら、戦力を温存しつついろんな選手にチャンスを与えて試したい。

 だが問題は「その先の戦い」だ。

 というのも、第3節のスペイン戦でもし日本が負け、グループCを2位で通過した場合、その先の準々決勝で優勝候補のアメリカと当たる可能性が高いからだ。

 つまり日本はチームとして戦力を温存し2位通過してアメリカと当たる道を選ぶのか、それとも第3節をベストメンバーで戦い1位通過してアメリカ戦を避けるのか? という選択である。

 結論をいえば、ズバリ、前者を選びたい。つまり選手を休ませながら長い目で見て有意義なトライをして行くやり方である。このほうが実りが多いと考える。

日本はスペインに勝てるはずだ

 どのみち勝ち進めば、いつかはアメリカと当たるのだ。しかも仮に第3節のスペイン戦で日本がある程度選手を温存したとしても、別にスペインに「負ける」と決まっているわけではない。

 いやそれどころか日本のこれまでの戦術的な戦いぶりを観た限りでは、もし選手を温存したとしてもスペインには勝つ可能性が高いと考える。

 こうして選手を温存しながらスペインに勝ち、しかもその結果、準々決勝でアメリカとは当たらない、という「いいことずくめ」の道を選ぶのはアリだと考える。

 第3節のスペイン戦、日本はチームとして試すべきことを試しながら思う存分、戦ってほしい。

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【女子W杯2023】課題は球際の激しい粘りのなさ ~日本 5-0 ザンビア

2023-07-23 09:01:39 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
美しく優雅な女子日本代表の舞い

 なでしこジャパンが美しく優雅な舞いを見せた。

 彼女たちは22日、オーストラリアとニュージーランドが共催する女子W杯グループC第1節でザンビアと対戦し、5-0で快勝した。

 なでしこは最終ラインからていねいにパスを繋いでビルドアップするサッカーで、仕上げには華麗なフィニッシュを見せつけ続けた。

 彼女たちは要所でバックパスして組み立て直し、完全に有利な形に組み上げてからフィニッシュする。その意味ではどちらかといえば遅攻のチームで、男子代表より遥かにポゼッションスタイルに近い。

 フォーメーションは3-4-2-1だ。

競り合いに厳しさがほしい

 なでしこの先制点は前半43分だった。宮澤ひなたが右サイドからのクロスをワンタッチでゴールした。続く2点目は後半10分。左サイドの遠藤純からの折り返しに、田中美南が倒れながら右足で流し込んだ。

 そして同17分、右の田中からのクロスを宮澤がワンタッチで押し込む。3-0だ。また同26分には、遠藤が右からパスを受け、ドリブルしてから左足で落ち着いてシュートを決めた。

 仕上げは同56分だ。いったんは日本のPKとなったが、ザンビアGKが先に動いたとしてPKがやり直しに。キッカーは途中出場の植木理子。ゴール右へ右足で冷静に決めた。

 全体になでしこはザンビアを圧倒し、終始、押せ押せで攻め抜いた。特にGKの山下杏也加はビルドアップに優れたいい選手で驚いた。このチームのコンセプトにぴったり合っている。

 ただ、彼女たちは球際の競りに厳しさがないのが気になる。相手のカラダとぶつかりそうになると、すぐボールを諦める。淡白だ。ボディコンタクトをこわがっているように見える。あえて厳しく言うなら「お嬢さんサッカー」だ。

 この先もしなでしこが強豪国に負けるとすれば、厳しい競り合いを含めたフィジカル面での戦いの結果かもしれない。くれぐれもこれで「バンザイ!」ではなく、修正点をしっかり見直したい。

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【移籍】中島翔哉はレッズで再び輝けるか?

2023-07-10 10:21:28 | Jリーグ
「三銃士」デビューが鮮烈だった

 浦和レッズが、元日本代表MF中島翔哉(28)の獲得に動いているらしい。

 中島と言えば、2018年9月に旗揚げした初期・森保ジャパンで堂安律、南野拓実との2列目の組み合わせが「三銃士」と呼ばれ、連戦連勝、勝ちまくった。2018年の5試合で日本代表は計15ゴールと爆発した。

 特に2018年10月16日に行われたキリンチャレンジカップの強豪ウルグアイ戦では、中島は2ゴールして4-3で日本が勝ち、「日本の新しい夜明けだ」と絶賛されたのが記憶に新しい。

トラブル続きの海外移籍

 だがその後、海外移籍した中島はアル・ドゥハイルSC、FCポルト、アル・アインFC、ポルティモネンセSC、アンタルヤスポルと渡り歩いたが、ケガや監督との衝突などでまったく芽が出なかった。

 特にポルトでは監督とぶつかり散々なことになった。

「サッカーは楽しむためにやっているんだ」という中島独特の「意固地」な価値観も、チームや監督とのコミュニケーションに障害を招いた一因かもしれない。

 トータルで言えば、中島は初期森保ジャパンでの活躍は目覚ましかったが、以後の海外移籍ではむしろ逆に「トラブルメイカー」のイメージが着いてしまった。

 そんな中島は浦和レッズで再び輝けるのか?

 それは知性派のマチェイ・スコルジャ監督による「舵取り」いかんだろう。中島のメンタリティを理解し、潜在能力を引き出すようなリードの仕方をすれば道は開ける。スコルジャ監督なら、うまくやってくれそうな期待感がある。

 中島はまだ28歳だ。老け込むには早すぎる。スコルジャ監督を信じて、持てる能力をめいっぱい花咲かせてほしい。

 がんばれ中島!

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【J1 第20節】首位攻防戦に2つのスーパープレイ 〜名古屋 2-2 横浜FM

2023-07-09 10:11:43 | Jリーグ
GK一森のすばらしいパントキック

 J1リーグで第20節が行われ、名古屋グランパスと横浜F・マリノスが対戦した。試合は白熱し、2-2の引き分けに終わった。この試合では2つのスーパープレイが生まれている。

 立ち上がりから名古屋の気合いが異様にすごく、球際の競り合いが激しい。これくらい強度の高い試合を見せてくれるとお客さんも満足だろう。

 先制点はその名古屋。前半8分だった。ユンカーのシュートのこぼれ球を永井謙佑がシュート。守備者に当たってゴールのファーに吸い込まれた。名古屋が先制だ。

 続く28分にはすごいプレーが出る。マテウスのシュートをセーブした横浜FMのGK一森純が、機を逃さず敵最終ラインの背後へ素早く球出しをする。放たれた精度の高いパントキックのワンバウンド目をエウベルが受け、ゴールまで完全独走。GKランゲラックと1対1の状況になり、エウベルはGKをかわして右足でゴールへ流し込んだ。

 GK一森のすばらしいパントキックだった。まるで最後方に位置するゲームメイカーのようだった。

藤田譲瑠チマが1人で起点とフィニッシュ

 そして35分にもスーパープレイが生まれる。横浜FMの藤田譲瑠チマが左前にパスを出し、受けた西村拓真が横パスを出す。すると守備者を背負ったアンデルソン・ロペスはこれをスルー。そこにタイミングよく走り込んだ藤田譲瑠チマが右足でグラウンダーのシュートを放つと、ゴール右にきれいに決まった。勝ち越し弾だ。

 起点になるパスを出し、最後は自分でシュートを決める。独演会のような藤田譲瑠チマのファインプレーだった。

 最後のゴールは後半2分だ。ボックス手前の左から森下龍矢が前方へパスを出す。受けたマテウスは縦に持ち出し、中央へ折り返す。そこに走り込んだユンカーが左足で見事にゴールして見せた。2-2。同点だ。

 2つのスーパープレイを魅せた首位攻防戦はどちらも譲らず、見所いっぱいの引き分けで終わった。かくて横浜FMは勝ち点43で単独首位を守った。

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【移籍】浦和GK鈴木彩艶、「行くも地獄、残るも地獄」

2023-07-08 12:36:19 | その他の欧州サッカー
英マンUがオファーか

 浦和レッズでGK西川周作(37歳)の控えに甘んじる未来の大器、GK鈴木彩艶(20歳)に「輝ける未来」が見えてきたか? 鈴木の獲得に、英プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドが動いているという。

 マンUは長年レギュラーGKを務めてきたダビド・デ・ヘアとの契約が満了。退団が濃厚なため、インテルの元カメルーン代表GKアンドレ・オナナ(27歳)の獲得に近づいているといわれている。つまり鈴木彩艶はオナナの控えだ。

 鈴木は現状、浦和で西川の牙城を崩せてない。第2GKだ。さりとてマンUの誘いに乗っても、同じくオナナに次ぐナンバー2の地位しか手に入れられない。

 世の中は甘くないのだ。

 西川周作(37歳)の控えがいいか、それともアンドレ・オナナ(27歳)のバックアップか? という「行くも地獄、残るも地獄」状態に差しかかっている。

 27歳の控えよりは、37歳の控えのほうがまだマシか? という笑えない状態だ。

マンUは6年かけて鈴木を追っている

 実はマンUは鈴木獲得に向け、500万ポンド(約9億1700万円)を積んだ正式オファーを提示したともされる。

 しかも彼らは6年かけて鈴木を追っている。つまり2017年U-17ワールドカップを手始めに、先月に行われたU-22日本代表の欧州遠征にもスカウトを派遣している。

 なんと英紙「ザ・サン」によれば、鈴木との契約は「完了し発表間近だ」という。

 もしそれが事実だとすれば、日本の未来を担う大器・鈴木彩艶は「行くも地獄」を選んだことになる。

 確かにトータルで考えればGKの寿命は長いし、西川周作(37歳)の次を待っていてもラチが開かない。万一、レギュラーを獲れたとしても、それは「J1リーグの浦和」にすぎない。

 かたや若いアンドレ・オナナ(27歳)との競争になったとしても、もし勝てばあのプレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッドの正GKの座が転がり込んで来る。となれば、「行くも地獄」を選択するほうがポジティヴに見える。

 たぶん、鈴木彩艶はオナナとの対決に「自信がある」のだろう。

 男だねぇ、鈴木は。

 それでこそ未来の日本代表GKだ。

【追記】

 と、流れで楽天的に記事を結んだが……プレミアリーグでプレーするには、「外国人労働許可証」なるものが必要だ。

 こやつを申請し発行を受けるには(ここで記事・丸2本分くらいの説明が必要な)煩雑な条件がある。鈴木彩艶はこれをクリアする必要があるので要注意だ。

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【J1 第20節】新潟、今季初の2連勝ならず 〜新潟 0-1 神戸

2023-07-08 05:09:49 | Jリーグ
ハイプレスとショートパスの神戸

 J1リーグで第20節が行われ、アルビレックス新潟とヴィッセル神戸が対戦した。最終ラインからグラウンダーのボールでビルドアップする新潟に対し、研究してきた神戸のハイプレスが炸裂した。狙い通りFW大迫勇也のゴールにより1-0で神戸が勝った。

 13位の新潟は前節ホームでサンフレッチェ広島に2-0で勝利、6試合ぶりの白星を稼いだ。その勢いのまま今シーズン初の連勝を目指し、3位の神戸をホームに迎えた。

 試合が始まってなんと驚いたことに、あのロングボール一辺倒だった神戸が、ショートパスを繋いでビルドアップしようとしている。神戸の試合はしばらく観てなかったが、いつの間に芸風を変えたのだろうか? 各チームによるロングボール対策が進んでこうなったのか?
 
 それでもなぜかボールを握っているのは神戸の方だ。ショートパスの繋ぎ合いなら新潟のほうに分があるはずだが、新潟はなんだか神戸相手にリスペクトがすぎビビりながらやってる感じだ。思い切りが悪い。

 大迫目がけてロングボールをブンブン放り込まれたらやりにくいが、「ショートパスを繋いでくる神戸」なんて怖くないはずなのに新潟は力が出せてない。

 新潟のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが小島亨介。最終ラインは右から藤原奏哉、トーマス・デン、渡邊泰基、新井直人。セントラルMFは高宇洋と星雄次。2列目は右から松田詠太郎、三戸舜介、小見洋太。ワントップは谷口海斗だ。

神戸がハイプレスから大迫の先制点を呼ぶ

 ポジションを見て感じることは、三戸が慣れないトップ下に配置され消えてしまっている点だ。三戸は本来サイドの切れ味鋭い選手であり、トップ下でボールをもち全体を差配するタイプではない。持ち味が殺されてしまっている感じだ。いつもの思い切りの良さがない。

 松橋力蔵監督としては「伊藤涼太郎なきあとのエースは三戸だ」という見立てなのかもしれないが、ポジション的には三戸は真ん中では埋もれてしまって合わない感じだ。

 一方、神戸は守備が堅いだけに、ボールを失うと帰陣が速い。新潟ボールに移った瞬間、神戸による素早いネガティブ・トランジションが発動される。彼らはあっというまにディフェンディングサードまでリトリートする。

 新潟とするとやりにくい相手だ。

 今日のゲームはボール非保持のチームの方が、いったん必ずディフェンディングサードまで下がるシーンが目立つ。

 そんな前半15分だった。新潟のGK小島が出した短い縦パスに対し、神戸の武藤嘉紀と齊藤未月が連動してハイプレスをかけ、ボールをかっさらう。最後は武藤がボックス内の大迫にパスを出し、大迫がいとも簡単にシュートを決めた。大迫は今季13ゴール目だ。1-0で神戸がリードした。

「バックパス症候群」に陥る新潟

 1点を追いかける新潟の攻撃である。ボールを保持する新潟は、ちょっとプレスをかけられるとすぐバックパスしてやり直す。縦パスのコースを作る動きがなく(あるいは神戸に縦を封じられ)、仕方なくバックパスしている。典型的な「バックパス症候群」だ。

 おまけに神戸の守備のやり方との関係で、今日の新潟はボールスピードが遅く、生きたパスが少ない。位置取りをするのが遅く(またはスペースを潰され)、新潟はどうもポジショニングが悪い。

 いつもの縦横無尽に強くて速いグラウンダーのショートパスを繋ぐ新潟ではない。また神戸がスペースを埋めている関係で、新潟はいつものように2タッチ以内でボールを繋げない。

 完全に神戸の作戦勝ちだった。

 そんなこんなで各所で小競り合いが続き、時間が経っていく。新潟は後半頭から星に代えてMF秋山裕紀を投入、同30分にはFWグスタボ・ネスカウとFW太田修介を入れる。徐々に縦パスが通るようになったが、時すでに遅し。ゴールが遠い。

 今季ここまでリーグ最少14失点と、堅守を誇る神戸から新潟は得点が取れなかった。初の2連勝ならず。3試合ぶりの黒星だ。

 かくてスコアは1-0のままタイムアップ。神戸の思うがままだった。新潟は注文通りにやられた試合だ。彼らはなかなか13位から上がれない。

 かたや神戸は暫定2位に浮上した。勝ち点は40だ。勝ち点2差で首位・横浜FMを虎視淡々と追う。

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【J1 神戸】FW大迫勇也を封じるには?

2023-07-07 11:12:13 | Jリーグ
ロングボールを潰せ
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新潟・渡辺 CBで3戦連続完封だ 今日ホームで神戸戦(スポニチアネックス)

 現在3位の神戸には得点ランキング2位で12ゴールを挙げている元日本代表FW大迫や、8得点で6位のFW武藤らタレント揃い。

(中略)

 大迫については「シュート力もあるがポストプレーで受けるタイミングが上手。全てにおいてレベルが高いので自由にさせないようにしたい」(渡辺)と大迫封じに意欲を見せる。
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 本日7日、アルビレックス新潟は、ヴィッセル神戸と対戦する。

 上記のように新潟のCB渡辺泰基は「大迫を自由にさせないようにしたい」というが、神戸をまったく研究してないことが丸わかりだ。

 大迫は敵DFがマークについてもムダだ。まるでフリーでいるかのように平然とアクロバチックなポストプレーをしてくる。

 大迫封じをするには、神戸の最終ラインが彼めがけて放り込んでくるロングボールを、大迫に出させないようにするしかない。ロングボールが大迫に届いたらジ・エンドだ。

 それを防ぐにはボールを保持する敵の最終ラインに強くプレスをかけ、ロングボールを蹴らせないようにすること。ミスキックか、バックパスさせればOKだ。そうすれば神戸はビルドアップできなくなる。

 神戸のビルドアップは、ロングボールを前線に放り込むやり方一辺倒だ。 第一にそれを防ぐ必要がある。詳しくは以下の記事を参照してほしい。

【J1神戸 攻略法】こうすれば神戸に勝てる

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【移籍】複雑な心境になる古橋のセルティック残留

2023-07-06 10:06:23 | その他の欧州サッカー
井の中の蛙で終わるのか?

 昨シーズン、スコットランドリーグのセルティックでリーグ得点王とMVPを取ったFW古橋亨梧(28)が、セルティックと新たに2027年6月までの4年契約を結んだ。

 トッテナムやバーンリーなどへの移籍のウワサが報じられていたが、どうやら成立しなかったようだ。いや噂に過ぎなかったのかもしれない。

 あるいはセルティックが設定した2500万ポンド(約46億円)もの移籍金がネックになったとも言われている。

 無責任な第三者としては、どうにも複雑な心境になる契約締結である。なぜならこの契約はいわば、古橋による「セルティックの星になります宣言」といえるからだ。

 28才の古橋とすれば、今回がステップアップのラストチャンスといえた。もし4年契約を満了すれば、彼は32才だ。もう遅い感じがする。

レンジャーズに勝つことだけが人生の目標になる

 古橋はリーグ得点王でMVPといっても、セルティックとレンジャーズFCの2強体制でしかないスコットランドリーグのなかでの結果だ。全体のリーグレベルは2強を除き、客観的に言って低い。

 そんななかで実質的にレンジャーズに勝つことだけが目的のセルティックのファンやOBとすれば、今回の古橋の契約締結は天にも昇る心境だろう。その環境で古橋が勝てば、スコットランドの人々にとって英雄にはなれる。

 だが遠くから見守る同じ日本人とすれば、やはり「どうにかならなかったのか」という思いがつのる。並外れた才能と能力がある選手だけに、大舞台で勝負してほしかった。ひとことで言って、「もったいない」という感じがする。

 おまけにセルティックは監督が変わったので、戦術も変わる可能性がある。それが必ずしも古橋に合うとは限らない。もちろんチームも新監督のもと、いままでと変わらず「勝てる」保証などどこにもない。

 一方、古橋は日本代表での地位も固めたとはいえず、中途半端な存在だ。同じく所属チームでもスコットランドリーグという中途半端な(失礼)場所で、お山の大将で天下を取って選手生命を終えるのだろうか。

 もちろん自分の人生をどう生きるかは、本人しだいだ。

 この選択が彼にとって最良のものになることを祈りたい。

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【サッカーメディア】欠点だらけのU-17日本代表を誉めそやす「気持ち悪さ」

2023-07-05 06:00:09 | サッカー日本代表
彼らはニュースソースと「ナアナア」だ

 私は記事『【U-17アジアカップ決勝】評価が難しい雨中の「凡戦」だった 〜U-17日本 3-0 U-17韓国』の中で、

「この優勝で日本の御用メディアはハデに日本賛美を報じるだろう。そして私がこの記事に書いたような日本の深刻な問題点は覆い隠され、戦勝ムードのなか消えて行くのだ」

 と書いた。

 そしたら案の定、笑ってしまうくらいその通りになっている。

提灯記事連発のスポーツ紙

 7月3日にはアジアカップで優勝したU-17日本代表が凱旋帰国し、スポーツ紙がまるで芸能人を持て囃すかのような提灯記事を連発している。

アジア杯で大会史上初連覇達成のU―17日本代表が帰国 MVP&得点王の名和田「得点王は狙っていた」(スポニチアネックス)

アジア杯史上初の連覇達成、、U―17日本代表が帰国 森山監督「一番いい状態で決勝に挑むことができた」(スポーツ報知)

U―17アジア杯Vの森山監督 チームを評価「決定力がある」「韓国にデュエル勝率60%」(東スポWEB)

アジア得点王&MVPのU―17日本代表FW名和田我空「得点王争いも楽しめた」…帰国しW杯へ意気込み(スポーツ報知)

 まあスポーツ紙は一般向けだから、こうなるのもわかる。彼らも商売だ。だが問題はサッカー専門誌である。

サッカー専門誌は業界とナアナアだ

 U-17日本代表は優勝したアジアカップで、インドに4点も取られたり、かと思えば準決勝のイラン戦では「まるで人が変わった」かのように完璧な試合をした。

 デキ不出来が非常に激しいのだ。

 そして決勝になった韓国戦の前半では、U-17日本代表は冒頭に挙げた私の記事のなかでしつこいくらい指摘した、多くの問題点を露呈した。

 だが驚いたことにサッカー専門誌は、こうしたネガティヴな要素をまったく報じない。例えば以下のような感じだ。

【サッカーマガジンWeb】【U17アジア杯リポート】日本優勝の要因になった意識改革。世界で勝つために共有した「待つのではなくアタックする守備」(文・川端暁彦氏)

【FOOTBALL ZONE】U-17日本代表、アジア杯で「株を上げた10人」 攻守で多士済々“06ジャパン”の有望株(文・河治良幸氏)

 どの記事もU-17日本代表の「いいところ」「特徴」ばかりを列挙している。肝心の「問題点」に触れる記事などまったく見当たらない。

 だが問題点はどこにあり、それを修正するにはどうすればいいのか? を分析してこそ、サッカーの強化につながると私などは考えるのだが、どうだろうか?

いまや「報道機関」はジャーナリズムを知らない

 まあサッカー専門誌といえど商売だし、専門誌だけに「サッカー業界」とは癒着の構造にある。

 だからふだんコメントを聞いている選手や「サッカー業界」にマイナスになるようなことは書きにくい、自分の物書き仕事(商売)にも差し支えるし、という人間的な心情もわかる。

 そもそもサッカーメディアは「ほめる記事」でサッカー人気を煽り、媒体が売れたりアクセスアップすれば商売繁盛で言うことなし、てなスタンスだ。

 しかしジャーナリズムはそれではまったくダメなのだ。

 昔はサッカー界にも、毎日新聞記者(当時)の荒井義行氏のような気骨のあるジャーナリストがおられたが、いまは昔だ。

 現在のサッカージャーナリズムの取材姿勢は、いまやすっかり堕落した政治メディアの世界とそっくり同じだ。岸田官邸にベッタリおべっかを使い、「よいしょ記事」しか書かない大マスコミを想起させる。

 そう、いまや日本には政治であろうがサッカーであろうが、上から下まで「正しいジャーナリズムのあり方」なんぞを知っている人間自体が少ない。そもそも先輩から取材や原稿書きのセオリー、あり方を継承してない。

 あるいはたとえ正しいあり方を知ってはいても、「ウチの社は商売優先で差しさわりのないやり方をしたいので」というところが多い。つまり、すべての機関がニュースソースと「ナアナア」の構造で癒着しているのだ。

 だから既存メディアは「本当のこと」を報じない。

 ゆえに日本という国はもう終わりかけているのだ。

韓国戦での日本のデュエル勝率が「60%」だって?

 ああ話が逸れた。

 で、いちばん問題だと思うのは、韓国戦における日本のデュエル勝率が「60%だった」などという「風聞」が定着しつつある点だ。

 そもそも韓国は前半で退場者を出しているのに、その韓国と11人の日本との一試合を通じたデュエル勝率なんぞを鬼の首を取ったように掲げるのがおかしい。条件が同じじゃないんだから。

 韓国は後半は1人少ない10人で戦っているのだから、「一試合を通した」デュエル勝率が低く出るのは当然だろう。統計のマジックだ。

 それと同じ意味だが10人対11人で戦い、圧勝した後半の日本をいくらほめても意味がない。条件が同じじゃないんだから、2点取った後半は「参考外」だ。評価の対象にならない。

 むしろ11対11だった「前半」の日本は韓国の激しいデュエルに気圧され、ビビって球際で競らなかった。これこそを問題にすべきだろう。
 
 と、まあ、力みかえってみても……しょせん世の中に存在するメディアなんて、それぞれどこかしらの業界やら人脈、つまりニュースソースと「ナアナアの関係」なのだから暖簾に腕押しだろうが。

 やれやれ。

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【J1 第19節】新潟、三戸が1G1Aで「エース宣言」 〜新潟 2-0 広島

2023-07-04 06:17:09 | Jリーグ
立ち上がりは広島のプレスが効いていた

 立ち上がりから、新潟は広島に押し込まれる苦しい展開だった。新潟は彼らの弱点を突く、広島のプレッシング・フットボールにやられていた。

 すると前半10分に、右SHダニーロ・ゴメスがピッチに倒れ込んでしまう。彼は担架で運ばれ、代わって松田詠太郎が投入された。

 14分には、広島が左コーナーキックを得る。キッカーが右足でクロスを上げると、ニアでクリアされる。だが、すぐこぼれ球を拾い、再びクロスを上げる。これに佐々木翔が頭で合わせるが、ヘディングシュートは枠を外れた。

 新潟のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが小島亨介。最終ラインは右から藤原奏哉、トーマス・デン、渡邊泰基、新井直人。セントラルMFは星雄次と島田譲。2列目は右からダニーロ・ゴメス、三戸舜介、小見洋太。ワントップは鈴木孝司だ。一方、広島のフォーメーションは4-1-4-1だ。

三戸が爆発、完璧なワンタッチの抜け出し

 続く16分には、新潟の三戸がフリーでボールを受け、ボックス手前の中央から右足を振った。だが、このシュートは敵にブロックされる。

 徐々に新潟が勢いを得て、押し返してきた。一方の広島は非常に安定感のあるどっしりしたサッカー。五分五分だ。

 25分、途中出場の松田詠太郎が、右サイドからからダイアゴナルなパスを出した。そこへ三戸が縦に走り込んでパスを呼び、完璧なワンタッチで抜け出しボックス内の右から見事なシュートを決めた。

 28分、三戸がボールに絡み、縦パスのクサビと落としのコンビネーションが2度続き、三戸がラストパスを出して新井が右足で最後を締めた。2-0だ。

 試合はこのスコアのまま終了した。

 特に三戸が起点になった2ゴール目の連携は鮮やかだった。強くて速いグラウンダーのボールを2タッチ以内で繋ぐ新潟スタイルの面目躍如だ。

 また途中出場で1アシストした松田詠太郎も、すばらしいパスを出していた。彼はスタメンのメドが立ったのではないか? エースの伊藤涼太郎が抜けたいま、選手層が厚くなるのは朗報だ。

 この大きな1勝でチームは13位へと順位を上げた。今季、新潟は13位から、なかなか上に上がれない。下位グループを脱するため、次節・神戸戦で連勝したいところだ。

 神戸攻略のカギは、前線ですべてのプレーの起点になるFW大迫勇也を消すことだ。神戸攻略のキモはこの記事にまとめてある。ご参考まで。

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【J1神戸 攻略法】こうすれば神戸に勝てる

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【U-17アジアカップ決勝】評価が難しい雨中の「凡戦」だった 〜U-17日本 3-0 U-17韓国

2023-07-03 09:32:43 | サッカー日本代表
球際で競らない日本

 雨でボールが走らない上に、対戦相手に退場者が出るーー。評価が難しいゲームだった。それらの要素を差っ引いても、日本は立ち上がりから内容が最悪だった。

 球際で競らない。パスコースを作る動きがない。ゆえにパスが繋がらない。ないないづくしだった。前半終了間際に韓国に退場者が出るまでは、明らかに勝者にふさわしいのは韓国だった。

 だが43分に韓国が1人退場になり風向きが変わる。日本は得た直接FKを直後の45分にゴールして先制。その後、2点を加えて試合を終えた。

 これで日本は大会史上初の連覇で4度目の優勝だ。肩書だけは立派である。だが日本は単に優勝した「だけ」の試合だ。特に11対11で戦った前半の内容はひどかった。

 U-17日本代表は、デキ不出来の差が非常に激しいチームだ。決勝とは5人スタメンが違う、ひとつ前の準決勝・イラン戦では(何でもかんでも遅攻にしてしまう以外は)文句のつけようがないデキだった。その次の試合が「これ」である。

 球際で激しく競らない。パスが繋がらない。パスコースを作る動きをしない。1人多かったから3点取れた、というだけの試合だ。10人になるまでは、明らかに韓国が演じるプレッシング・フットボールの方が優れていた。

 ちなみにフリーライターの川端暁彦氏はこの記事のなかで、「終わってみれば、このデュエルの勝率は日本59.3%、韓国40.7%と約20%上回ることに」と記述され、「デュエルは日本が勝っていた」とする。

 だがこの数字は「一試合を通して」のものだ。後半は韓国が1人少ないのだから、1試合通してならデュエルで劣勢にもなるだろう。これに対して私が「日本は球際で激しく競らない」と書いているのは、まだ11対11のイーブンだった「前半の話」だ。

 韓国は退場者を出す44分までは日本を圧倒していた。だが退場のほんの2分後に日本が先制点を取り、事実上、これで試合が決まった。あとは11人対10人なので「参考外」だ。

 日本のフォーメーションは4-4-2。スタメンはGKが後藤亘。最終ラインは右から柴田翔太郎、本多康太郎、土屋櫂大、小杉啓太。セントラルMFは中島洋太朗と矢田龍之介。右SHは佐藤龍之介、左SHは吉永夢希。2トップは道脇豊と名和田我空。韓国のフォーメーションは4-3-3だ。

10人相手に取った3点の重みは?

 44分、左SBの小杉が出したダイアゴナルなパスを前線で道脇がキープしたが、そのときチャージした韓国CBコ・ジョンヒョンが2枚目のイエローカードを受け退場になる。

 この局面で得た直接FKを名和田が右足で蹴る。ボールは美しい曲線を描きながら、韓国GKホン・ソンミンの手を弾きゴール左スミに飛び込んだ。

 66分、佐藤がきれいな縦パスを入れる。密集の中で受けた望月が絵に描いたような密着ワントラップから、ボールを前に送る。最後は飛び込んだ名和田がGKを見ながらきっちり決めた。

 そして試合終了間際の96分だ。佐藤が送ったライン裏へのスルーパスを受けた道脇が、ワンフェイク入れて右足でシュートを決めた。これで3-0だ。

 MVPと得点王に輝いたFW名和田我空が2ゴール。1ゴールしたFW道脇豊のパフォーマンスも光っていた。

 日本は欠点だらけだが、決定力だけはあるのが救いだ。

 ただし日本の全得点は退場を受けてのFKと、後半に韓国が10人になりスペースができてからの2点だ。絵に描いたように、11対11では無得点だった前半の日本はデキが悪かったことを示している。

 世間は、1人少ない韓国を相手に躍動した「後半の日本」を見て錯覚しているのだ。

韓国に前プレを受けてタジタジの日本

 日本は立ち上がりから、最終ライン発のビルドアップや中盤での要所など、「ここ」というところでボールが繋がらない。あるいは前にパスコースがあるのにバックパスしている。見えてない。「バックパス症候群」だ。

 前半の日本は韓国に前からプレスをかけられ、最終ラインからビルドアップできない。パスコースがなく、ロングボールを放り込んでばかりいた(これは雨中のゲームでのセオリーという側面もあるが)。日本の最終ラインに対するプレッシングは、明らかに韓国の方が優れていた。

 それに対し、韓国の最終ラインがボールを保持した時の日本のプレスは効いてない。ただ立ってるだけだ。意図を持ち、どのコースを切るのかの判断ができてない。日本は内容では劣っているので、あとは求めるのは「結果」だけだ。

 36分。韓国がチャンスで前がかりになり、日本のゴール前に殺到した。そこで日本がボールを取り返す。韓国の選手は前にかかっているため、韓国陣はスカスカで人がいない。日本は速いカウンターを打つ絶好のチャンスだ。

 この場面で、日本はなんと横にボールを繋いだ。その間に上がっていた韓国の選手がすべて自陣に戻りチャンスは潰えた。U-17日本は典型的な遅攻のチームであり、遅攻しかできない。勝負の勘所をわかってない。ただ漫然と10人の相手から点を取っただけだ。

数多い日本の課題はこれだ

 前半の韓国が伸び伸びやっているのに対し、日本は「受けて立って」しまっていた。メンタルが弱い。韓国のプレッシングに圧倒され、気圧されて縮んでしまっていた。少なくとも相手が10人に減るまでは。

 そして44分に韓国のDFコ・ジョンヒョンに2枚目のイエローカードが出て退場になる。これで名和田が直接FKをゴール左スミに決めて先制。日本は1人多い上に先制できた。この時点で勝負は決まった。あとは「どういう勝ち方をするか?」だけだ。

 そんな問いかけに応えるように、日本は10人を相手に後半2点を追加した。そして優勝だ。

 この優勝で日本の御用メディアはハデに日本賛美を報じるだろう。そして私がこの記事に書いたような日本の深刻な問題点は覆い隠され、戦勝ムードのなか消えて行くのだ。

 最後にもう一度、日本の課題を書く。

 球際での激しい競りのなさ。守備の粘りの欠如。判断ミスの多さ。プレーのミスの多さ。インテンシティ高く闘うことの欠如。敵のパスコースを切るポジショニングのなさ。味方のパスコースを作る動きと受けるための動きがない。

 遅攻ばかりになる体質を改善すること。速いカウンターが効く場面では、素早いポジティブ・トランジションから速攻を打つこと。常に「自分たちのサッカー」をするのでなく、局面に応じた臨機応変なプレーをすること。

 日本は得点力だけはあるように見えるが、足りない部分が実に多い。

 U-17日本代表はこれらの問題点を改善しない限り、11月にインドネシアで開かれるU-17ワールドカップでの健闘は期待できないだろう。

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【サッカー攻守4局面】いまや「0局」の時代に突入している?

2023-07-02 07:00:27 | サッカー戦術論
現代サッカーは保持・非保持に関係なく常にボールに関わる

 例によってサッカー・サイトを散歩していたら、すごい珍説にめぐり合った。

 ケルン体育大学サッカー専門科を経てアナリストの庄司悟氏による言説だ。それは以下の通りである。

『現代サッカーは、ボール保持・ネガティブトランジション・ボール非保持・ポジティブトランジションという「4局」の循環ではなく、ボール保持・非保持にかかわらず常にボールに対して能動的かつ組織的に動く「0局」の時代に入り始めている(図2)。

「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」という現象を、単なる汗かき仕事のように分類し、とらえる時代はもはや過ぎ去っているのだ』(『マリノスとFC東京に共通する「0局」の概念。4局面では説明できない現象とは【Jの十字架】』フットボールチャンネル)より

 サッカーを「0局」なるユニークな視点で論説しておられる。

 まず庄司氏のおっしゃる「ボール保持・非保持にかかわらず常にボールに対して能動的かつ組織的に動く」のは、いうまでもなく現代サッカーでは常識だ。

 それを言葉で言い表せば「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」などとなる。そしてこれらの行為を「単なる汗かき仕事のように分類」し、とらえている人は今でもけっこういる。

 しかし逆に「汗かき仕事だ」と思ってない、「それが普通だ」という人だって多い。単に「汗かき仕事だ」と思っている人がいるからといって、現状を「0局」と言ってしまうのは違う気がする。

 あえて4局面に引き付けていえば、確かに60年代とか大昔のサッカーは、攻撃の選手がボールに関わるのは「ポジティブトランジションとボール保持の間だけ」だった。それ以外の時間はウインガーとかCFは、ピッチをのんびり歩いてボールのゆくえをただ眺めていた。

 だが、いまは4局面すべてでプレイヤ―がボールに関わるのは常識だ。「ネガティブトランジション」時にボールを取り戻そうとしたり、カバーシャドウで敵のパスコースになりうるルートを切るのは当たり前だ。また「ボール非保持」時にボールに対しプレスしないなんてありえない。

 そんなことは4局面があろうとなかろうと関係ない。

 いまや4局面の有無にかかわらず、現代のセントラルMFはボックス・トゥ・ボックスで活動するし、それ以外の選手もボールに対してハードワークする。ただそれだけのことだ。

 そもそも4局面というのは、あくまでサッカーの試合におけるプレーの変遷・移行を言葉で示しただけのものだ。特に「ボールとの関係」をどうこう言ってるわけじゃない。

 それなのに「今のサッカーは常にボールに関わるのだから『0局』だ」などと言い始めるから、おかしくなるのだ。

 おそらくだが、4局面を庄司氏は「ボールとの相関関係」か何かだと誤解されているのだと思う。

 いや、「ボール非保持のときもやるのが当たり前だからハードワークじゃない」といえば、それはその通りなのだが。

 しかしそのことと4局面なる表現の「存在価値」とは関係ないし、「0局」などと言ってしまうとプレーの遷移が言い表せなくなる。単に不便だろう。

 だって「素早いポジティブトランジションからのショートカウンター」という表現って、「切り替えが速かったんだなぁ」ってアリアリと目に見えるようじゃありませんか?

 アナリストにとっては「0局」でも、言葉をあやつる表現者にとってこういう表現をできなくなるのは致命的なのだ。

【補稿】

 例えば「素速いポジティブ・トランジションからのショートカウンター」という言葉がある。

 これは、ボールを奪ってからダラダラとバックパスしたり、ボールを受けられる位置に素早く移動せずのんびり歩いていたりするのでなく、「切り替え速くカウンターを打った」ということを「ひとこと」であらわしている。

 それを上記のように長くだらだら説明するのでなく、「たったひとこと」で言いあらわすには「素速いポジティブ・トランジションからのショートカウンター」という表現以外にないのだ。

 ゆえに表現者にとって、4局面の遷移をあらわす言葉は必要なのである。

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