すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー戦術論】なぜトランジションが重要なのか?

2019-04-27 08:58:59 | サッカー戦術論
誤解されているポゼッション

 速いトランジション(攻守の切り替え)が重視されるようになってきた現代フットボールでは、正確で鋭い縦パスの重要性がますます重みを増してきた。

 ボールを失っても高い位置でゲーゲンプレッシングをかけ、即時奪回して速いカウンターをめざすゲームモデルの有効性が認められてきたからだ。

 もちろんトランジションの重要性は、高い位置でなくても同じだ。例えば前にかかった敵からディフェンディング・サードで首尾よくボールを奪った。いま攻めに傾いている敵は守備のバランスを崩している。そこで素早く攻守を切り替え、縦への速いカウンター攻撃が決まればビッグチャンスになるーー。

 ショートパスを意味もなく横につなぐグダグダのポゼッションサッカーがよしとされるここ日本では、この点で大きな意識のギャップがある。

 せっかく敵からボールを回収しても、いったんバックパスして一休み。そこからチンタラ横にパスを繋ぎながら、じわじわ全体を押し上げて行く。その間に敵はすっかり守備の態勢を立て直し、ゆえにボールを保持したチームは攻撃をいちからやり直す。

 チャレンジしない横パスが多いため、パスの本数だけはよく繋がる。「これこそがポゼッションサッカーだ」と勘違いしている日本人が本当に多い。

 そんな彼らはチャレンジする縦パスが通らないと、「あのチームは『放り込み』ばかりだ」、「縦ぽんサッカーだな」と皮肉交じりで苦笑する。

 ポゼッション率こそがすべてを決めると考えている彼らにとって、横や後ろへの安全なパスを繰り返すことこそ至上命題であり、トランジションの意味や効力など考えようともしない。

 確かにマイボールにした場合、いったん安全にパスを繋いでしっかりポゼッションを確立させるのはひとつのスタイルだ。だが必然的に遅攻になりがちなそのやり方で、(その間に)守備組織をガッチリ固め終えた格上のチームに日本は勝てるのか?

 これでは強豪揃いのワールドカップで、格下の日本が決勝トーナメントの常連になるなど夢のまた夢だ。意識改革が必要ではないだろうか?

【参考記事】

【サッカー戦術論】「ロストフの悲劇」なんてなかった ~トランジションの重要性

【森保ジャパン】日本にトランジション・フットボール以外の選択肢はない

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【神戸・リージョ監督辞任】「バルサ化」という名の無謀

2019-04-19 08:44:22 | Jリーグ
絵に描いた餅に踊るメディアとオーナー

 ヴィッセル神戸へのイニエスタの劇的な電撃加入から始まり、リージョ監督就任、ビジャ加入、という一連の豪華リレーをずっと冷ややかな目で眺めていたが……今回のリージョ監督辞任である。「やれやれ、やっぱりか」という感じがする。

 Jリーグの1チームを、日本人が三度の飯より大好きなバルセロナに変えようーー。そんな、いかにも電通あたりが考えそうな広告効果の高い無謀なプロジェクトである。いったい実現する可能性なんてあるのだろうか?

 例えばイニエスタの存在ひとつとってもそうだ。

 むろんイニエスタは尊敬すべき偉大な選手である。

 だが例えばJリーグ創成期にアントラーズをチャンピオン・チームにしたジーコや、王者ヴェルディに君臨したビスマルク、ジェフ市原を劇的に変えたリトバルスキーらのようなチームへの多大な貢献を彼が成し遂げたといえるだろうか? せいぜい商売目的でメディアが持ち上げ、ネタにする程度に思える。

 裸の王様・三木谷会長が掲げる「バルサ化」という壮大な絵に描いた餅の行きつく先は、いったいどこなのだろうか? まさか紆余曲折したあげくにクラブ解散、なんてことにならないよう祈りたい。

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【サッカー戦術論】ポゼッションとカウンターはどちらが優れているか?

2019-04-14 06:23:30 | サッカー戦術論
サッカーに「絶対」はない

 もし試合中に一度のミスもなくボールをキープし続けられるチームがいるとすれば、ポゼッション全能主義者たちの言が強まる。

「90分間、ボールをポゼッションできれば失点しない。つまり負けることはない」と。

 だがサッカーにミスはつきものだ。で、にわかにカウンター原理主義者たちが勢いづく。

「奴らは自ら守備のバランスを崩して攻めてくる。そこでボールを奪えばカウンター攻撃のチャンスだ。態勢が崩れた相手の守備のスキを突き、少ない手数で得点できる。だから奴らにわざとボールを持たせるのだ」

 守備に重心を置き、相手にボールを持たせてプレッシングすれば必ずチャンスはくるという。だが一度のミスもなく90分間、守備をし続けられるチームはいない。ほころびは必ずやってくる。とすれば、相手にボールを持たせることは逆に自殺行為ではないか?

 ここで再びポゼッション全能主義者たちが盛り返し、そして議論はひと回りして無限ループする。

 それがサッカーである。

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【森保ジャパン】日本にトランジション・フットボール以外の選択肢はない

2019-04-03 09:57:55 | サッカー戦術論
「三銃士」を軸にするならコンセプトは自動的に決まる

 キリンチャレンジカップ・コロンビア戦、ボリビア戦について過去何回か書いてきたが、今回は結論めいたものを書こう。

 あの2試合を見ただけでも、日本の軸は中島、堂安、南野の「三銃士」であることは誰の目にも明らかだ。とすれば森保ジャパンは今後も彼らをメインディッシュにした料理を提供し続けるしかない。

 ならばあの3人のプレイスタイルからすれば、森保ジャパンのコンセプトはすなわち、前からプレスをかけて素早い切り替えからショートカウンターを狙うトランジション・フットボール以外にはなり得ない。彼らを主軸に使う限り、必然的にそうなるだろう。

 とすればチームコンセプトは自動的に決まる。ならば代表選手の選考も、このスタイルに合う選手を中心に招集すればいい。そう割り切れば話は非常にわかりやすくなる。強化のコンセプトもはっきりする。

日本のポゼッションサッカーは世界に通用しない

 反対に「日本はポゼッションサッカーで行くべきだ」との声も多いが、現実に代表でポゼッションサッカーをすると、結局、ボリビア戦の前半みたいな停滞したサッカーにしかならない。

 あのボリビア戦の前半では、全員が間受けを狙い突っ立ったままボールを待ち、必然的にパスが足元、足元、になり誰も裏抜けを狙わない沈滞したサッカーになった。日本人がポゼッションを志向するとああなることが非常に多い。

 パスをつなぐことばかりが自己目的化し、結果、「ゴールを狙わないサッカー」になってしまうのだ。

 森保監督は、めざすサッカーのコンセプトをあまり語らない。だが森保監督が「三銃士」をメインユニットにする限り、必然的にそこで展開されるのは縦に速く仕掛けるトランジション・フットボールになる。

 まちがってもパスを意味もなく横につないでタメを作るような、日本的なポゼッションサッカーにはならないだろう。

 ならば今後の強化もその路線で行くべきだし、森保監督はハッキリと言葉でこのゲームモデルをメディアに語るべきだ。

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