すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【プレミアリーグ 20/21 第19節】高度な戦術がぶつかる極上の上位対決 ~トッテナム1-3リバプール

2021-01-31 07:43:39 | イングランド・プレミアリーグ
リバプールの3トップが大爆発

 プレミアリーグの第19節は、ともに上位をうかがうトッテナムとリバプールの対戦になった。

 フォーメーションが3-4-3のトッテナムは、相手ボールになるとディフェンディングサードまでリトリートして5-3-2のブロックを作る。必然的にそのぶん4-3-3のリバプールは前がかりになり2-5-3に変化する。

 トッテナムが守備時5-3-2なのは、いかにも守備的なモウリーニョ監督らしい。他方、トッテナムはビルドアップ後は3-2-5になって攻める。

プレミアらしい長いボールが芸術的だ

 両チームとも基本2タッチでボールをつなぐが、ショートパスだけでなくダイアゴナルな長いサイドチェンジのボールや、敵のライン裏に測ったように落とすロングボールが非常に正確だ。

 見ていてワクワクする。

 トッテナムはハリー・ケインのポストプレイとソン・フンミンの裏抜けの合わせ技で突破を図る。

 一方、リバプールは偽9番であるフィルミーノの下りる動きが効果的にチャンスを作り、アレクサンダー・アーノルドとマネが大活躍した。

最後に笑うのはマンCか? リバプールか?

 大爆発したリバプールの3点は、まず前半49分。左のマネがライン裏にスルーパスを出し、フィルミーノがこれを決めた。

 続く後半2分にはマネが左45度からシュートし、GKが弾いたリバウンドをアレクサンダー・アーノルドが押し込んだ。

 大団円の3点目は後半20分。右サイドのアレクサンダー・アーノルドからの長いアーリークロスを、左のマネがダイレクトで叩き込んだ。

 リバプールのサラーにはVARでハンドになって消えた幻のゴールもあり、このところ沈黙していたリバプールの3トップが完全復活した。

 こう書くとハデさばかりが強調されるが、その裏で戦術的なコクと駆け引きがいっぱいの濃厚なゲームだった。

 順位表の上位を見ると、今季好調なマンチェスター・ユナイテッドは戦術でなく個の力だけで上位争いをしている。長いシーズン、個人の好不調は必ず出てくる。ゆえにマンUはシーズン終了まで好調を維持するのはむずかしいと見る。

 となれば結局最後に笑うのは、例によってマンチェスターシティかリバプールになるのではないだろうか?

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【ラ・リーガ 20-21】久保はなぜ勝てるのか? ヘタフェとマンUが証明するメンタルの重要性

2021-01-24 08:47:10 | その他の欧州サッカー
この2チームに唯一共通するのは?

 目が覚めたかのように勝ちまくるヘタフェとマンチェスター・ユナイテッド。彼らの間に共通するのは、はち切れんばかりの躍動感だ。それを引き出すモトになるのがメンタルの爆発である。

 つまりこの2チームに一点だけ共通した勝因は、煮えたぎったアグレッシブなメンタルなのだ。

「よっしゃー! ぶちかまそうぜ!」

 サッカー経験のある人にはよくわかるだろうが、メンタルというのはびっくりするほどカラダを動かす要因になる。

 例えば疲れ切ってヘタへたになり「もうダメだ」と思っていても、その瞬間にベンチから「〇〇さん、そこで踏ん張れー!」などと激しい檄が飛ぶと、途端にビックリするほどカラダが動くようになる。

久保とアレニャが起爆剤になったヘタフェ

 もちろんヘタフェとマンUの勝因は、戦術的に分析しようと思えばいくらでも説明できる(最下段の【関連記事】参照)。だが実は最大の勝因がメンタルなのだ。

 新しく久保建英とアレニャがチームに加わったスペイン、ラ・リーガのヘタフェは、「百人力だ! あいつらがいるから勝てるぞ。頑張ろう!」という意気にチーム全体があふれている。

 いったい、何連勝するのかわからないようなアグレッシブさだ。

 一方、英プレミアリーグで快進撃を続けるマンUも、チームの面々は凶暴な野獣性とでもいえるかのようなアグレッシブさに満ちている。一例として、ポグバのカラダからはほとばしるような熱気が発し湯気が出ている。

 中位のヘタフェはともかく、目下、首位を走るマンUのほうは、このまま活気づくメンタルが続けばそれだけで優勝しそうな勢いである。

 サッカーでは監督があれこれ知恵を絞って戦術を組み立てて勝とうとするが、結局、理屈抜きでチームを勝たせるのがメンタルの力なのだ。これに恵まれたチームは強い。

 いったいヘタフェとマンUは、シーズンが終わればどんな順位にいるのか? 今からワクワクして楽しみでならない。

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【ラ・リーガ】ポゼッション・スタイルへの転換点 2020-21/第19節 〜ヘタフェ1-0ウエスカ

【ラ・リーガ】久保がヘタフェで輝く3つの理由

【プレミアリーグ】幻の首位攻防戦 2020−21/第19節 〜リバプール0−0マンU

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【ラ・リーガ 20/21 第19節】ポゼッション・スタイルへの転換点 〜ヘタフェ1-0ウエスカ

2021-01-21 06:10:11 | その他の欧州サッカー
久保は70点のデキだった

 久保建英のヘタフェ移籍2戦目は、右サイドでの先発になった。前半はウエスカと五分五分の勝負、後半は完全にヘタフェのゲームになり、1-0でヘタフェが堂々シャットアウトした。

 チームとしてはこれまでのストーミングから、ポゼッション・スタイルへの転換点になる記念すべきゲームだった。

 この試合、ヘタフェはフォーメーションを今までの4‐4‐2から4-2-3-1に変えてきた。このへん戦術変更の匂いがする。スタメンはGKがヤニェス。最終ラインは右からスアレス、ジェネ、エチェイタ、ニョムだ。

 セントラルMFはマクシモビッチとアランバッリ。2列目は右から久保、アレニャ、ククレジャ。ワントップはマタである。これで守備時はトップ下のアレニャが前へ出て、4‐4‐2のブロックを作りプレスする。

ビルドアップ&ポゼッションへの挑戦

 前半の立ち上がり。この記事この記事でも事前分析したが、予想通りヘタフェは最終ラインからていねいにビルドアップしようとする。最終ラインがボールを持つと、セントラルMFのアランバッリが2CBの間に下りたり、CBとSBの間に下りたりする。

 これでグラウンダーのボールを前につけ、パスをつなぐのがベースである。唯一、CBのジェネだけはボールをもつと大きく前へ蹴り込むが、それ以外では基本ビルドアップ志向だった。

 これまでヘタフェはボールを握ると前線へ大きく放り込み、前でゲーゲンプレスして攻めるストーミングを志向していた。

 そのチームがバルセロナのカンテラ出身で技巧的な久保、アレニャの加入と同時に、ポゼッション・スタイルに戦術を転換したのだ。おそらく「クライフ主義者」を自称するボルダラス監督としても、本来やりたいサッカーに近づいたのではないだろうか?

70分にアランバッリが決勝点を上げる

 後半、ゲームはややヘタフェが支配した形になり、58分にアランバッリがこぼれ球をシュートしたが惜しくも入らず。ウエスカは5-4-1のブロックを作り懸命に守る。

 続いて70分には、中央のアレニャからのダイアゴナルなパスを右サイドで受けたセントラルMFのアランバッリが豪快にシュート。GKの股を抜いて見事に決めた。

 この虎の子の1点をあげたヘタフェは終盤に久保ほか3人の選手を下げて守備固めし、危なげなくゲームを締めた。ポゼッション・スタイルに転換したヘタフェにとっては、今シーズンを占う大きな1勝になった。

 選手別では、ククレジャは運動量とインテンシティの高さがあるすばらしい選手だ。ワンアシストのアレニャ、久保も及第点のデキだった。

 また得点したセントラルMFのアランバッリも含め、最終ラインの守備は固くウエスカに付け入るスキを与えなかった。

久保はトランジションが甘い

 さて、久保のプレイスタイルだ。彼は中に絞ってライン間でボールを受けたり、サイドで基点になりクロスやスルーパスを入れるなど、明らかに自分のスタイルで伸び伸びプレイしていた。

 キープ力も非常に高く、敵3人に囲まれてもボールをしっかり保持できる。

 また守備になればチェイシングやプレスバックもする。ただ守備時のインテンシティがそう高くないのは今後の課題だろう。

 一方、明らかに修正すべきなのはオフ・ザ・ボールの動き、特にトランジションへの対応だ。この試合ではポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)の甘さが見えた。

 例えば逆サイドにボールが入ると(自分には関係ないなと)途端に足を止めてしまう。また敵ボールを味方が鋭くカットした瞬間、せっかくの速いショートカウンターのチャンスなのに足が完全に止まっていたりする。

 もちろん選手には武器もあれば欠点もある。それは今後、おいおい詰めて行けばいい。むしろこのゲームではそれよりチームとしてビルドアップ&ポゼッションという新しいゲームモデルに挑み、リフォームに成功したことが大きい。

 今季のヘタフェはおもしろくなりそうだ。

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【ラ・リーガ】バルサ化するヘタフェ、久保は伸び伸び自分を出せる


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【極私的J1見どころ】今年はJリーグを観るぞ!

2021-01-20 05:55:30 | Jリーグ
話題沸騰のおいしい観戦ポイントだらけ

 今年は個人的に話題沸騰のJリーグを集中的に観ることにした。いや、なにしろとても気になるポイントがたくさんあるのだ。

 ザッと思いつくツボをあげると……。

「超絶補強をした名古屋は優勝できるか?」

「横浜FMは『ハイライン裏』問題にどう挑むか?」

「鹿島の上田綺世は何点取り、どこまで成長するか?」

「ロティ―ナ監督は清水をどう変えるか?」

「昨年最終節を見て『いいな』と感じた下平監督の横浜FCはどうか?」

「徳島を昇格させたリカルド・ロドリゲス監督の浦和はどこまでやるか?」

「昇格組の徳島はJ1に定着できるか?」

 どれもワクワクもんの見どころばかりだ。

 なお徳島ヴォルティスは、新型コロナの影響で来日のメドが立っていないスペインのダニエル・ポヤトス新監督が心配される。早期に解決することを祈りたい。

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【ラ・リーガ 20/21】バルサ化するヘタフェ、久保は伸び伸び自分を出せる

2021-01-19 05:58:26 | その他の欧州サッカー
監督「自分のスタイルでやれ」

 ヘタフェに加入した久保建英が18日にオンラインで入団会見を行った。注目すべきは先日のエルチェ戦前にボルダラス監督から指示された内容だ。

 久保は「監督とはあまり話せませんでしたが、自分の知っていることをやりなさいと言われました」という。

 この記事でも指摘したが、やはり久保は「自分のスタイルでやれ」と言われていたのだ。続けて久保は言う。「ククレジャともアレニャともプレーしたことはなかったが、彼らとは最初から理解し合えた」

 明らかに監督はチームの戦術を変えようとしている。ククレジャとアレニャ、久保というバルセロナのカンテラ(下部組織)育ちの選手が生きるように、だ。

 ヘタフェは過去、ストーミングをゲームモデルにしていた。前線にとにかくロングボールを放り込み、そのボールに群がってマイボールにし高い位置から攻撃するスタイルだ。

 となれば必然的に、敵にボールを持たせてカウンターを狙うコンセプトだった。

 それがいま180度転換しようとしている。自陣からていねいにビルドアップし、バルサ仕様のボールをつないでポゼッションするスタイルにおそらく転換するのだろう。

 つまり久保が伸び伸び自分を出せるチームに変わろうとしている。もともと「クライフ主義者」のボルダラス監督としても、自分の本来やりたいサッカーに回帰しようとしているのだろう。

 とすればヘタフェは、実際にはどんなサッカーを見せてくれるのか? そして久保はそのなかで持ち味を出し切ってプレイできるのか?

 今季のヘタフェは見物である。

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【プレミアリーグ 20/21 第19節】幻の首位攻防戦 〜リバプール0−0マンU

2021-01-18 19:09:12 | イングランド・プレミアリーグ
マンUが暫定首位を守る

 低レベルな混戦になっている今季のプレミアリーグ。第19節の首位攻防戦は押したり引いたりで両者無得点の引き分けに終わった。

 マンチェスター・ユナイテッドとすれば、強豪相手に引き分けで首位を守れてニンマリ。かたやリバプールとしても、怪我人がいるなか最小限の被害で済んで痛み分けだろう。

 負傷者続出の上に得点力不足のリバプール、ピリッとしないシティとチェルシー、という突出する者のいない構図の中で、マンUはスルスルと「個の力」だけで危うく首位をキープしている。

 さて、この脆い均衡はいつ崩れるのか? 

 また崩れるとすればその要因は何か?

 マンUは変に失点するようになったりすれば危ういが、案外このまま行けば精神的なまとまりやモチベーションが出てズルズル行くかもしれない。

 いやはや。

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【ラ・リーガ 20/21】久保がヘタフェで輝く3つの理由

2021-01-15 07:48:55 | その他の欧州サッカー
ボルダラス監督は意外に柔軟だ

 スペイン1部のヘタフェへ移籍したばかりの久保建英が11日、エルチェ戦に途中出場して2得点に絡み、3-1の勝利をもたらした。そんな久保は果たして、ヘタフェで輝けるのだろうか?

 ヘタフェはアグレッシブな守備が特徴のチームだ。敵の選手を体ごと根こそぎ持っていくような激しい(ファウルまがいの)デュエルが特徴である。いわば「肉体労働者」のチームといえる。

 で、移籍前から「ヘタフェは久保に合わないのでは?」との見方が一般的だった。だがデビュー戦でその憶測は見事に覆された。これには理由がある。監督のタイプだ。

セレクター型の監督は選手の特徴を生かす

 サッカーの監督には2種類いる。フィロソフィ型とセレクター型だ。

 前者のフィロソフィ型は自分の哲学(フィロソフィ)をもっており、それを頑なに実現しようとする。つまり自分の理想とする戦術やシステムがまず先にあり、集めた選手をその鋳型にハメ込むようにしてチームを作る。「俺の言うことを聞け」というわけだ。

 一方のセレクター型は、まず優秀な選手たちを選び、集めた選手それぞれの特徴やスタイルに合うポジションを考え、その結果として「うちのチームはこういう戦術とシステムで戦うのがベストだ」と結論を出すタイプの監督だ。

ボルダラス監督は臨機応変な理想主義者だ

 ではヘタフェのボルダラス監督はどちらのタイプか? 事前情報ではガチガチに守備的でフィジカル勝負のスタイルだとされていたので、てっきり頑迷なフィロソフィ型だと思っていた。

 ところが実際に久保のデビュー戦を見て、予想は覆された。ボルダラス監督はフィジカルがなく線が細い久保に、「敵の選手を体ごと持っていくような激しいデュエル」などは求めてない。つまり柔軟なセレクター型の監督だ。

 その証拠にボルダラス監督は、本職がサイドバックのマルク・ククレジャを、運動量やアグレッシブさを買ってMFで使っている。また同じくサイドバックのアラン・ニョムを、そのスピードとフィジカルを見込んでウィンガーとして起用している。

 おまけにボルダラス監督は、実はクライフ主義者である。つまり理想(フィロソフィ)はそこだ。だが一方、ヘタフェの戦力や順位、選手のタイプを考え合わせ、勝つために理想とはまったく別の「デュエルで勝負するカウンターサッカー」という現実路線を取っているわけだ。非常に臨機応変な監督である。

久保は個性に合うプレイを求められるはず

 ところがそこに、バルサのカンテラ(下部組織)出身の技巧的な選手が2人も降ってわいた(移籍してきたアレニャと久保)。しかも、もとからいるバルサ・カンテラ出身のククレジャを合わせて3人だ。

 とすれば、戦力に合わせた戦術を考えるクライフ主義者のボルダラス監督としては、ある程度の軌道修正を行うのではないか? もちろん優美で華やかなサッカーに切り替えるなどということはないだろうが、選手の個性に合わせた微調整はするはずだ。

 例えば現有戦力を8割の「肉体労働者」と2割の「貴族」に分け、点を取る仕事をする貴族の久保には他の選手にさせているようなファウルまがいのデュエルまでは求めない可能性がある。

 とすれば久保は、自分の持ち味に合ったスタイルでプレイできるのではないか?

 アグレッシブなデュエルとカウンターサッカーという泥臭い花壇の上に、久保が鮮やかな大輪の花を咲かせるかどうか? 見物である。

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【コロナ禍】スカスカの緊急事態宣言、結局は自己責任だ

2021-01-07 07:21:53 | 政治経済
菅政権は窮乏する民を見捨てる

 地域限定で業種も一部限定の、スカスカでおよそ実効性が期待できない緊急事態宣言が出るようだ。十分な補償もない。

 ふつう欧米の先進諸国なら、「わが社はコロナ禍でつぶれそうなんです」といえば政府から十分な補償が出る。

 ところが菅政権は「なら、どうぞつぶれてください。逆に強い企業だけが生き残り競争力が増して丁度いい」という政権だ。
(過去記事「【コロナ禍】菅政権のショック・ドクトリンを止めろ」参照)

 これは法人だけでなく個人もそうだ。「外出を避けたい。毎月10万円の給付金を」などと具申しても完全スルー。「勝手に死ね」という話である。

 日本はこれでもう完全に保証や安心のない、恐怖の自己責任社会になったのだ。

 今後は細心の注意を払い、足をすくわれないようにしなければならない。

 新型コロナなんぞにかかったらおしまいだ。働けなくなり、そのまま死んでいくしかない。

 本物の弱肉強食社会の到来だ。

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【横浜FM】頑なに理想にこだわるガラスの城

2021-01-04 05:26:57 | Jリーグ
ラインを下げるのはタブーか?

 ハイライン・ハイプレスをまるで修行僧のように突き詰める横浜FMを見ていると、チームが掲げるフィロソフィ(哲学)と、勝ち点はどちらが重いのか? という芸術の世界ではよくある問いを思い出す。

 すなわち芸術家として崇高なポリシーを貫き通すと作品が売れない。逆に売りやすいポップな作品を作ると、それは必然的に自己のポリシーを妥協したものになっている(商業主義)、と言うような永遠のパラドックスである。

 おそらくアンジェ・ポステコグルー監督にとっては、売れることよりポリシーの方が重いのだろう。いや、というより、自己の哲学(ハイライン)を押し通すことこそが勝利につながると確信しているのだ。

プレスを強化することでハイラインを維持する?

 今季の横浜FMは、高いディフェンスラインの裏を狙われて失点を続けた。前でプレスがかかってなければ、ラインを下げるのがふつうだ。だが横浜FMはあくまで下げない。

 ラインを下げて対応するのでなく、前でのプレスのほうをより強化することでハイラインを維持しようとした。

 だが人間はフルタイムでプレッシングできるほどインテンシティを堅固に保つのがむずかしい。で、どうしてもプレスが緩む瞬間は出てくる。

 その緩んだ瞬間に要所にパスを通され、ハイラインの裏を狙われて失点する、というのが負けパターンだったように思う。

 結果的にポステコグルー監督という芸術家は、ポリシーを貫き通し、そのために作品がたとえ売れなくてもいい、という選択をしていることになる。

来季はラインを下げる妥協をするか?

 無責任な外野としては、作品を売るためにはある程度ポリシーを妥協してはどうか? と思える。だがポステコグルー監督にとってはあくまで哲学の貫徹=勝利なのだろう。

 よく言えば崇高な、悪くいえば青臭いそのメンタリティによって今季は負けた。

 果たして来季も、プレスがかかってなければ妥協してラインを下げる、という選択をしないのだろうか?

 来シーズンの横浜FMの浮沈はそこにかかっているように思える。

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【コロナ禍】菅政権のショック・ドクトリンを止めろ

2021-01-02 06:50:02 | 政治経済
改悪される中小企業基本法

 新型コロナウイルスという災厄もろとも2021年の年が明けた。

 コロナに対する菅政権の無策ぶりは目を覆うばかりだ。ただ国民に行動の自粛を呼びかけるだけで何もしない。まるでジェットコースターに乗って「ギャー」と叫びながらただ坂を転げ落ちるかのような惨状である。

 国民に自粛を呼びかけるなら、「自宅にいろ。カネなら出す」というのが自国通貨発行権をもつ政府の正しい対応だ。当面、コロナがヤマ場を越えるまで国民全員に毎月10万円の給付金を出すべきだ。

 問題はインフレ率だが、それくらいの補償規模ならインフレ率2%などには到底達さない。やるべきだ。

中小企業の40%が「1年以内に廃業を検討」

 と、あの自助・自己責任で新自由主義な菅政権が「やるわけないよなぁ」と思いながらこれを書いている。なんせ国民への補償どころか、逆に菅政権はコロナ禍を奇貨として経営の苦しい中小企業をつぶしまくるショックドクトリンを画策しているのだ。

 東京商工リサーチによれば、昨年1月~8月に全国で休業や廃業、解散した企業は3万5816社(前年同期比23.9%増)だった。このペースが続けば年間5万3000社を超える勢いだ。

 また同社が昨年12月17日に発表した新型コロナウイルスに関するアンケートによれば、中小企業8056社のうち40%が「1年以内に廃業を検討する」と答えている。

 全国の中小企業は約4万社あり、国内企業のなんと99.7%を占める。つまり日本の体力と雇用を支える存在だ。それがいまや瓦解しつつあり、追い打ちとして菅政権のショックドクトリンが実施されようとしているのだ。

中小企業の定義を狭め補助金をカット

 日本では中小企業基本法が、中小企業の定義を業種別に定めている。例えば製造業なら資本金3億円または従業員300人以下だ。この定義に合えば中小企業と認められ、補助金をもらえたり税の優遇を受けられる。

 ところが新自由主義の菅政権はこの中小企業基本法を改悪し、「中小企業」の定義を狭くして補助金等をカットしようとしているのだ。

 これにより自由競争に晒し、経営が苦しくなった企業はバンバンつぶす。あるいは国際金融資本や大企業に売り渡す企業の統廃合を画策している。そのためM&A(合併・買収)で生じる買収費用の一部を税優遇するほか、設備投資額の最大10%を法人税から控除し「中小企業を買いやすく」する。お題目は、統廃合で「生産性」を上げるため、である。

 この政策の骨子は、菅首相のブレーンである元ゴールドマン・サックス証券アナリストで小西美術工芸社社長、デービッド・アトキンソン氏の主張そのままだ。

 だが補助金カット等が目的なのはミエミエだし、企業を買いやすくして外資に売却するというのがうさん臭い。また竹中平蔵のようなレントシーカーが暗躍するのは目に見えている。

 なにより国内企業の99.7%を占める中小企業は国民に膨大な雇用を保証する存在であり、それがつぶされては路頭に迷う人がいよいよ増える。

財政出動し「毎月10万円」の補償を

「ショック・ドクトリン」とは、社会に壊滅的な惨事が発生したとき、人々がショック状態に陥って茫然自失のまま抵抗力を失っているのを好機ととらえ悪用する政策手法だ。

 まさに菅政権はコロナ禍で死亡者が増え、企業が転廃業し人々が呆然自失なのに乗じ、中小企業基本法の改悪というショック・ドクトリンを行おうとしている。

 しかも竹中平蔵のような「企業統廃合ブローカー」への利益供与を含みに入れて。

 なんとしてもこのショック・ドクトリンを止める必要がある。

 そして繰り返しになるが、政府は「自宅にいろ。カネなら出す」政策を大々的に推進すべきだ。いま財政出動せずにいつするのか? 補償なしで自粛だけ呼びかけても何の意味もない。カネがなければ自粛などできない。菅政権はもっと実効性のある政策を打ち出すべきだ。

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【サッカー観戦術】ひとクラス上になるサッカーの見方

2021-01-01 08:48:50 | サッカー戦術論
4つの局面での挙動を観察する

 みなさんはどんな風にサッカーを観ているだろうか? もちろん酒を飲みながら楽しんで観るのがいちばんだが、ときには分析的な見方をするのも楽しい。今回はそんな観戦術を見ていこう。

 まずはフォーメーションの確認だ。で、それが攻撃時、守備時それぞれにどう変化するのか観察する。例えば攻撃時4-2-3-1だが、守備の時は4-4-2に変化し敵のビルドアップを牽制する、など。

 一方、一例として基本フォーメーションは4-2-3-1だが、ボールを持ってビルドアップする時にはセントラルMFの1人が2CBの間に下りて3バックを構成し、そのぶん両SBを上げる3-1-3-3になる、みたいな例も。

 サッカーチームはこんなふうにそれぞれ自分たちの型をもっており、それがわかると観戦がグッとおもしろくなる。

ビルドアップのパターンは?

 また上にも書いたが、ひとくちにビルドアップといってもいろんなパターンがある。

 例えば前記したセントラルMFが2CBの間に下りてSBを上げる形もあれば、そのほかにもセントラルMFがCBとSBの間に下りることもある。

 また左(右)のSBが高く上がり、2人のCBと逆サイドのSBが左(右)にスライドして3バックを形成する形。

 さらにはスペースがあれば、ボールを保持したCBがドリブルで持ち上がるなど、いろいろだ。

 あなたがサポートするチームはどれに近いだろうか?

サッカーにおける4つの局面とは?

 さて冒頭ではザックリ攻撃時、守備時で分けたが、もっと細かくいえばサッカーには4つの局面がある。

 それは(1)攻撃中にボールを失い、(2)守備の態勢に切り替えて(3)守備に移行する。そこから(4)ボールを奪ってまた攻撃する、という遷移だ。

 つまりサッカーでは、攻撃→ネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)→守備→ポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)という4つの局面が無限に円環構造を描いて続いている。つまりポジティブ・トランジションの次は冒頭に戻ってまた「攻撃」の局面を迎える。で、以下、無限ループだ。

 すなわちこの4つの局面それぞれに、チームがどんな挙動をするのかを観察するのだ。

 例えば攻撃時からボールを失ったらその場でゲーゲンプレッシングし(複数の選手がボールに襲いかかる)、ボールを奪取したら高い位置からショートカウンターをかける、というぐあい。

 あるいは逆に攻撃時からボールを失えば、まずミドルサードまでリトリートし、4-4-2に変化してミドルプレスをかける、というパターンもある。さらに守備的なチームなら、ボールを失うとディフェンディングサードまで後退し、自陣深くで5-4-1や5-3-2の組織的守備からロングカウンターを狙う、という例もある。

プレー原則がちがえばスタイルが変わる

 上に書いた前者はボールを失うと、その場で足を止めず失ったボールに嵐のように襲いかかって(ストーミング)、ボールを奪取したらカウンター速攻に移る、という「攻撃的な守備」からの反攻だ。このタイプのチームはトランジション(切り替え)を重視し、4つの局面が素早くシームレスに連続する。

 一方、後者はボールを失えば逆に後退し、いったん態勢を整えてから組織的守備に移るパターンだ。ミドルプレスでボールを奪えればそう遅くないカウンターを打てる。

 またディフェンディングサードでボールを奪ったら、最前線のターゲットマンに一発でロングボールを入れるダイレクトな攻撃もあれば、いったんビルドアップし直してじっくり遅攻にするパターンもある。

 このように攻撃時にボールを失えば前者をプレー原則として選択するチームもあれば、後者をプレー原則として採用するチームもある。

 こんなふうに4つの局面における挙動を観察すると、それぞれのチームカラーがわかっておもしろい。

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