すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【CL 23/24 E組 第4節】鎌田がレギュラーを取れないのは不当か? ~ラツィオ 1-0 フェイエノールト

2023-11-12 05:40:07 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ハイライン・ハイプレスが超絶的だった

 現地時間11月7日に欧州チャンピオンズリーグの第4節が行われ、ラツィオとフェイエノールトが対戦した。試合は1-0でホームのラツィオが競り勝った。右インサイドハーフでスタメン出場した鎌田大地がレギュラー獲りに雄々しく名乗りを上げた。
 
 地味だが、非常に戦術的な醍醐味のあるゲームだった。フェイエノールトの最終ラインがボールを保持したビルドアップ時、ラツィオはハーフウェイラインのすぐ手前に超ハイラインを設定し、なんと前の7枚が敵陣へ入って総がかりでハイプレスをかけた。

 第一陣は4枚、それをプッシュアップする第二陣が3枚だ。この前からの強い圧力に前半のフェイエノールトは苦しみ、ビルドアップの精度を欠いた。

 それでも次第にフェイエノールトはボランチをうまく使ってボールの逃げ道を作り、ラツィオの圧から逃れるようにはなった。だが肝心のゴールを奪うまでには至らなかった。

 かくて前半46分にラツィオのFWチーロ・インモービレがボックス内へ侵入し、ゴール右の角度のない所から素晴らしいゴラッソを叩き込んだ。鎌田はこのとき、きっちりゴール前に詰めてこぼれ球に備えていた。見えないファインプレーだ。

 さて、これでラツィオの勝利は決まった。彼らはこの試合をものにしたことで、2勝1分けのグループ2位となり決勝トーナメント圏内に浮上した。

鎌田は「可もなく不可もなく」だったか?

 では本題である鎌田の話に移ろう。

 この試合における各メディアの鎌田に対する評価は、おおむね「可もなく不可もなく」レベルだった。だが個人的にはまったく解せない。

 鎌田は運動量も多く、守ってはよくプレスをかけ、攻めては攻撃の起点になる重要なパスを何度も展開していた。

 一方、鉄板のレギュラーだとされる左インサイドハーフのルイス・アルベルトはフィジカルが弱く、案外ボールをロストしていた。この試合での鎌田は彼よりデキがよかった。

よさがわかりにくい鎌田大地

 そんな鎌田という選手は、よさが非常にわかりにくい選手である。例えば一見してそれとわかるダイナミックなエネルギー感でもあればわかりやすいが、鎌田はそれとはまったく対極にあるタイプだ。

 逆に、彼はいい意味でカラダの力がすっかり抜けており、決して力まずひょうひょうと軽やかにプレイする。そのサマはまるで道を究めた剣の達人のようだ。

 そんな鎌田のプレイを見て、「躍動感やエネルギー感がないぞ。なんだか気力がなさそうに見えるな。この選手はいったいどこがいいのだろうか?」と疑問に思う人もいるのではないだろうか? そう、鎌田はよさがわかりにくいのだ。だから損をする。

 反対に同じ右インサイドハーフのライバルであるゲンドゥージなどは、プレイに躍動感やエネルギー感があり、一見して「いい!」と感じる。観る者にわかりやすいよさがある。鎌田とは好対照だ。だが、実はどちらもいい選手なのだ。

サッリの戦術さえ十分に理解すればチャンスはある

 そこで疑問に思うのは、鉄板のレギュラーだとされている左インサイドハーフのルイス・アルベルトである。彼はどちらかといえば鎌田と同じで、わかりやすい躍動感やエネルギー感はない。しかもこの試合を観ればわかる通り、案外、重要な場面でボールロストしたりもしている。

 もちろん彼の技術が高いのはわかるが、それにしてもなぜこの選手が「絶対の鉄板」なのだろう? とも感じる……。だがズバリ、鎌田との違いは、彼の過去の長年のラツィオでの実績とチームで果たす役割だ。

 ルイス・アルベルトは2016年から7年間もラツィオに在籍し、その間、セリエA月間最優秀選手賞を取るなどの活躍をしてきた。そしてサッリの着任以来、彼の右腕であり続けてきた。

 要するにルイス・アルベルトが絶対的だとされているのはそうした継続的なチーム内での実績と、サッリ特有のユニークな戦術「サッリ・ボール」を誰よりもよく理解し実践しているからだ。

 とすれば技術面では決して彼に劣らない鎌田がレギュラーを獲るには、少し長い目で見てサッリの戦術をしっかり理解すればいいだけの話だ。そうすれば彼の持つ高い技術がますます生きてくる。こう考えれば、鎌田のレギュラー獲りはそれほど遠い日のことではないかもしれない。

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【EL 23/24 B組 第4節】三笘は明らかに疲れている ~アヤックス 0-2 ブライトン

2023-11-11 07:00:38 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
PLとELの掛け持ちでチームは疲労困憊だ

 現地時間11月9日にヨーロッパリーグのグループB・第4節が行われ、アヤックスとブライトンが対戦した。アウェイのブライトンがアンス・ファティとサイモン・アディングラのゴールで2点を取って勝ち切った。

 特にファティは、1ゴール1アシストの活躍だ。しかもチームはこれで2勝1分けで、決勝トーナメント進出圏内の2位になる大きな勝利をあげた。

 一方のアヤックスは対照的に、0勝2分けのグループ最下位だ。暗いどん底の淵にいる。

 彼らは第1節の強豪マルセイユ戦では、非常にエキサイティングなサッカーで息詰まるシーソーゲームを演じて見せた。結果は3-3の引き分けに終わったが、見ごたえ充分だった。だがその後は1勝もできず浮上の気配がない。

 かたやブライトンも勝ったとはいえ、ケガ人続出でこの試合もデキはいまいちだった。左SBでスタメン出場したジェームズ・ミルナーはあっという間にケガで交代してしまったし、DFルイス・ダンクも負傷して前半でベンチに下がった。

 またケガ明けのペルビス・エストゥピニャンが後半から出場したが、またも故障し試合から退場した。彼ら選手たちはプレミアリーグとリーグカップ、ヨーロッパリーグを掛け持ちし、過密日程で四苦八苦なのだ。

キレがなかった三笘

 なかでも特に三笘薫は、明らかに疲れていた。得意のドリブルは冴えず、途中でブロックされてしまう。インテンシティも低い。大部分、試合から消えていた。

 目立ったシーンといえば、68分にペナルティエリア内から一度シュートを放った場面ぐらいだった。ちなみに彼はフル出場している。

 三笘もプレミアリーグとリーグカップ、ヨーロッパリーグにフル回転で「全試合出場」しており疲労困憊している。そのうち壊れるだろう。

 なのに彼は今度はW杯アジア2次予選に駆り出され、日本とはレベルが段違いに低いミャンマーやシリアと戦わなければならないのだ(国内組でも勝てるにもかかわらず)。

 本人からすれば、たまったもんじゃないだろう。だが口が裂けてもそんなことは言えない。

 願わくば、くれぐれもケガだけはないよう祈りたい。

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【CL 23/24 D組 第4節】久保の存在が敵のゾーンを歪ませる ~レアル・ソシエダ 3-1 ベンフィカ

2023-11-10 05:14:27 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ベンフィカは完全に崩壊していた

 例によって「久保健英が凄かった!」という記事があふれていたので、試しに試合を観た。するとベンフィカが完全に崩壊しており、まったくサッカーになってない。おもしろくもなんともないゲームだった。

 ベンフィカの最終ラインが押し上げてゾーンを圧縮せず、ラ・レアルにスペースをやりすぎた。彼らにスペースを与えると、こういうとんでもないことになる。

 久保の個人技を楽しみたい人にはこたえられないが、拮抗した試合全体のおもしろさを観たい人にとってはまるで無意味なゲームだった。「あっ」という間に20分間で3点入ってゲームは終わった。で、ソシエダの決勝トーナメント進出が決まった。

 ただし、さらに踏み込んで深く思考してみると、ベンフィカが崩壊していたのは実は彼らが「ダメなチーム」だったわけではなく久保がベンフィカを「壊した」のだと考えると非常に興味深いことが見えてくる。

 すなわち久保が巻き起こす「珍現象」だ。

久保がマーカーを引きつけ敵のゾーンを偏らせる

 この試合、久保が右サイドでボールを持ってドリブルを始めると、ベンフィカの3枚のマーカーがそれに引っ張られた。で、この状態で久保は敵を引きつけながら縦にドリブルする。すると何が起こるか?

 ベンフィカの全体のゾーンが右方に引っ張られて偏りができる。

 つまり右に引き付けられて左サイドが空く。この状態でボールを逆サイドにサイドチェンジすれば、逆サイドにいる左WGのバレネチェアや左IHのミケル・メリーノらがフリーになっており彼らがおもしろいようにゴールを決めることができるのだ。

 つまり右サイドにいる久保のドリブルがベンフィカのゾーン全体を右へ引っ張り、左サイドにスペースができる。そのため左にいるバレネチェアやミケル・メリーノらがフリーでボールをもらえるわけだ。

 この久保が作り出す「久保システム」は非常に有効だ。

 日本代表でも使えるかもしれない。

 例えば右サイドで久保がドリブルしマーカーを数人引き付ける。すると逆サイドの三笘がフリーになる。で、サイドチェンジすれば三笘のゴールが簡単に生まれるーー。

 そんな「怪現象」が日本代表でも観られるかもしれない。

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【EL 23/24 第3節】遠藤が移籍後初ゴールだ 〜リバプール 5-1 トゥールーズ

2023-10-27 11:58:59 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
撃ち合いの結果大差がついた

 現地時間10月26日にヨーロッパリーグの第3節が行われ、ホームのリバプールがトゥールーズを5対1で一蹴した。

 遠藤航がアンカーでスタメン出場し、前半30分にはアーノルドからのアーリークロスを受けヘッドで叩き込んだ。移籍後初ゴールだ。54分にもボックス内へ侵入し、右足を振ったが惜しくも左に外れた。

 彼は際どいピンチにうまくスペースを埋めてしのぐなど、対人プレーやパス出しに好プレーを見せた。彼がプレーするたびサポーターからも拍手が起こっていた。

 対戦相手のトゥールーズは自陣に引いて守ってカウンターを狙うような戦い方を選ばず、まともに撃ち合いに出た。その結果が5-1の敗戦だが、後半は押し込む場面も見られた。

 レッズに得点力があるから点差がついただけで、トゥールーズはいいチームだった。スペースを作ってうまく攻め、際どい形を作っていた。ただリバプールの決定力が高いため、モロに打ち合いになり点差がついた。リバプールのポゼッション率は63%だった。

 レッズのフォーメーションは4-1-2-3だ。GKはケレハー。最終ラインは右からアーノルド、マティプ、ゴメス、チェンバーズ。アンカーは遠藤、インサイドハーフはカーティス・ジョーンズとフラーフェンベルフ。3トップは右からエリオット、ヌニェス、ジョッタだ。

 一方、トゥールーズのフォーメーションは4-2-3-1。守備時4-4-2だ。

右SBアーノルドが偽SB化する

 リバプールはビルドアップ時、右SBのアーノルドが一列上がって中へ絞り偽SB化し、遠藤と中央をカバーするのが基本形だ。これで3-2-5のような形で組み上げる。アーノルドはこの形からCBに降りてのプレーも見せた。

 最終ラインでボールを保持するリヴァプールに対し、トゥールーズは中途半端なハイプレスをかけてくる。だが彼らは最終ラインとの間にスペースが開いている。恐れて押し上げてない。ここが狙い目だ。

 レッズの1点目は9分だった。縦パスを受けたジョッタが中盤からドリブルで単独突破しゴールした。これに対しトゥールーズは16分、同点にする。FWタイス・ダリンガが裏抜けしGKの足元を撃ち抜いた。

 これでシーソーゲームになるかと思われたが、違った。レッズの2点目は30分の右CKからだった。ショートコーナーで一度ボールを下げ、受けたアーノルドが斜めの浮き球を出して遠藤がヘッドでゴールした。勝ち越し弾だ。

 続く34分には、フラーフェンベルフが中盤から持ち上がり、ジョーンズにパス。受けたジョーンズはシュートしたが敵に当たって跳ね返り、そのこぼれ球をヌニェスがニア上へ豪快に打ち込んだ。3-1だ。

レッズは3戦全勝でダントツの首位だ

 後半の半ばになると中盤のプレスが消失し、ボールは一方のボックスからもう一方のボックスへと目まぐるしく動いた。だが最後、ゴールを決めるのはレッズだった。

 彼らの4点目は65分だ。ヌニェスが1人かわして独走し、フリーでシュートを放つが右のポストを叩く。天を仰ぐヌニェス。だが、ポストから跳ね返ったボールを拾ったフラーフェンベルフがきっちり詰めた。

 本当に不思議なのだが、ヌニェスはなぜあんなカンタンなシュートを外すのだろう? かと思えば超絶的に難しいシュートをいとも容易く決めたり、謎の多いプレーヤーだ。

 さて締めの5点目は90+3分だった。右サイドからのカウンターでレッズは前進し、ゴール前でサラーがひとつ切り返して右足で軽く押し込んだ。

 かくてゲームセット。リバプールは3戦全勝の勝ち点9でダントツのグループ首位を守った。

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【CL 23/24 E組 第3節】オランダの巨人が首位に立つ 〜フェイエノールト 3-1 ラツィオ

2023-10-26 09:42:11 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ハイプレスを活かすか殺すか?

 欧州チャンピオンズリーグのグループE、第3節が10月25日に行われ、フェイエノールトとラツィオが対戦した。3対1でフェイエノールトが完勝した。ハイプレスへの対処と活用法でハッキリ勝敗が分かれた試合だった。両チームともハイプレスを使ったが、フェイエノールトの方が1枚も2枚も上手だった。

 オランダの軍団は敵最終ラインへのハイプレスで主導権を握り、相手のビルドアップを断ち切りボールを奪う。これで攻撃を成立させ、自分たちだけがおいしい目を見た。エースのCFサンティアゴ・ヒメネスが2ゴール、MFラミズ・ゼルキが1ゴールして試合を決めた。彼らのフォーメーションは4-3-3。守備時4-4-2だが非常にコンパクトな陣形で相手の攻撃を寄せつけなかった。

 フェイエノールトはローマのチームの最終ラインにヒメネス、ステングスら3〜4枚でしつこくハイプレスをかける。ラツィオは1試合を通し、この対処に苦しんだ。プレスを剥がして攻めを続けられない。

 逆にフェイエノールトは、これで敵のビルドアップの1本目のパスをカットしてカウンターを狙う。ラツィオは仮に1本目のパスが通っても、パスの受け手が背中に敵を背負っているためバックパスしかできない。この繰り返しだ。結局、ハイプレスを生かし切ったオランダ人たちが敵を制圧し圧勝した。なお上田綺世は終盤に途中出場している。

 これでフェイエノールトは2勝し、勝ち点6で堂々グループEの首位に立った。一方のラツィオは勝ち点4の3位。2位のアトレチコとは勝ち点1の差だ。

間延びしたラツィオの陣形

 一方、ラツィオも同じように敵の最終ラインへハイプレスをかけた。CFインモービレと左IHルイス・アルベルト、左WGフェリペ・アンデルソンが先鋒だ。だが彼らの場合、第二陣が続かない。しかもラツィオの最終ラインは相手の勢いを恐れたのか、えらく低い。するとどうなるか?

 フェイエノールトはこの3人による第一陣さえすり抜ければ、ぽっかり開いた中盤のおいしいスペースを手に入れられる。あとはご想像の通りだ。

 なぜかラツィオはセリエAでのゲームがウソのように、この日はラインが低かった(セリエAでの彼らはラインを押し上げ非常にコンパクトな陣形を組んでいる)。

 そしてボールを失うと、ディフェンディング・サードまでリトリートしていた。これでは敵の攻めを受けると、バックラインがほとんどゴールのすぐ前になる。事実、この日の彼らはゴールエリア内で守備するシーンが頻出した。

 これだけ前線から最終ラインまでが間延びし、アコーディオンのように伸びきってしまっていては戦えない。一度、攻めを弾き返してもまたボールを拾われて攻めを喰らう。結局、サッリ監督はここを修正できなかった。

エースのヒメネスが堂々の2Gだ

 さてフェイエノールトの先制点は31分だった。エースのヒメネスがボールを受け、マーカーを背負い回転しながらゴールに押し込んだ。

 続く2点目は前半アディショナルタイム2分だ。彼らは右サイドでボールを繋ぎ、右ポケットを取ったMFゼルキがゴール左に叩き込んだ。

 3ゴール目は74分だった。中盤で何本もパスを回し、最後は左サイドへボールを振ってから中へクロスを入れた。GKプロベデルが触ったが、こぼれ球をヒメネスが押し込んだ。彼はこの日、2ゴールだ。

 一方、ラツィオの唯一の得点は82分、PKによるものだった。フェイエノールトのマルコス・ロペスがファウルした。キッカーのペドロはゴール左スミにきっちり決めている。

鎌田はサッリの構想外か?

 さて、日本人としては気になるのがラツィオの鎌田大地の動向だ。彼は10月21日に行われたセリエAのサッスオーロ戦で、終盤に途中出場しただけだった。

 で、てっきり続く25日のCL・フェイエノールト戦には先発するものだと思っていたが、途中出場さえしなかった。ちなみに鎌田のライバルと目される同じインサイドハーフのゲンドゥージは途中出場している。

 これはいったい何を意味するのか?

 不吉な話だが、鎌田もリバプールにおける遠藤航と同じような立場に立たされつつあるのかもしれない。

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【CL 23/24 D組 第3節】ソシエダが1点で逃げ切りグループ首位を守る 〜ベンフィカ・リスボン 0-1 レアル・ソシエダ

2023-10-25 11:28:48 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
久保がマン・オブ・ザ・マッチに

 欧州チャンピオンズリーグは10月24日、グループDの第3節が行われベンフィカ・リスボンとレアル・ソシエダが対戦した。アウェイのソシエダが1点を守り切り、グループ首位を死守した。久保健英はマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。

 ハイライン・ハイプレスのソシエダは終始コンパクトな陣形を保ち、敵に圧をかけてサッカーをさせなかった。

 彼らは前線でボールを失うとカウンタープレスを発動し、すぐボールを奪い返してはまた攻める。守っては相手にスペースと自由を与えないプレッシングで敵を単発の攻撃に抑えた。横綱相撲に近い完勝だった。久保はクロスとドリブルからのフィニッシュでベンフィカを脅かした。

 ソシエダのフォーメーションは4-1-2-3。スタメンはGKがレミロ。最終ラインは右からトラオレ、スベルディア、ル・ノルマン、ムニョス。アンカーはスビメンディ。右IHはブライス・メンデス、左IHはミケル・メリーノ。3トップは右から久保、オヤルサバル、バレネチェアだ。

ブライス・メンデスが虎の子の1点を上げる

 ラ・レアルはベンフィカのビルドアップに対し前からプレスをかけ、攻撃を制限した。これでアバウトなロングボールを蹴らせて回収する。試合の立ち上がりはベンフィカのボールだったが、逆にソシエダが敵陣内にプレスで押し込んでいた。このシーンが試合を象徴していた。

 前からのプレスが利けば、そのぶん最終ラインを上げられる。で、彼らはラインを高く保ち、敵が攻撃に使えるゾーンを圧縮した。そのためベンフィカの攻撃はアバウトで単調なものになった。対するソシエダはよくボールを保持し、決定機を作った。

 バスクのチームは前線でボールを失うと、リトリートせずにその場でプレスをかける。カウンタープレスだ。これにより高い位置でボールを奪い返して二次攻撃につなげる。一方、ベンフィカはボールを失うと、いったんミドルサードかディフェンディングサードまでリトリートしブロック守備に入るスタイルだ。

 ソシエダの得点シーンは63分だった。ボックス内でバレネチェアが1人かわして左からマイナスのクロスを入れ、受けたブライス・メンデスが押し込んだ。

 一方、久保は35分にボックス内へドリブルで切り込み、シュートを放った。ボールはDFの手に当たったがハンドのコールはなかった。また67分には右サイドからのドリブルでカットインし、ボールを浮かせたフィニッシュをしたが惜しくもバーを叩いた。久保の得意形だ。これは惜しかった。

 そして70分台になるとソシエダは1点を守り切る狙いで、時間を使うプレーが多くなる。敵陣へ押し込んでも安全にパスを繋いであえてフィニッシュに行かない。彼らは後半に失点して引き分け、または逆転されるケースが多いのだ。とはいえまだ20分もあるのに大丈夫か? と思わせたが、うまく無難に試合を終わらせた。

 これで彼らは勝ち点7とし、得失点差でインテルを抑えてグループ首位を守った。

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【CL 23/24 E組 第2節】CLデビューの上田綺世がOG誘発弾を放つ ~アトレチコ・マドリード 3-2 フェイエノールト

2023-10-10 09:03:43 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
スペイン強豪の厚みと手堅さ

 チャンピオンズリーグ(CL)のグループE第2節が10月4日に行われ、アトレチコ・マドリードとフェイエノールトが対戦した。フェイエノールトはFW上田綺世がオウンゴールを誘発し先制したが、強豪アトレチコに3-2で逆転負けした。

 フェイエノールトはストライカーのサンティアゴ・ヒメネスが今季のCLで開幕から2試合の出場停止になっており、上田にお鉢が回ってきた。チャンスである。

 その上田が開始7分に早くも得点に絡む。ティンバーのスルーパスで上田が裏抜けしてワンタッチでシュートすると、GKヤン・オブラクに防がれた。だがこぼれ球がマリオ・エルモソに当たりオウンゴールになる。先制点だ。上田はこの日、チーム2点目のきっかけにもなったほか、前からのプレスとさかんに裏抜けを狙う動きで躍動した。

 フェイエノールトのフォーメーションは4-1-2-3。彼らは右肩上がりの3枚回しか、両SBを高く上げ2バックでビルドアップを行う。

 一方、アトレチコのフォーメーションは5-3-2だ。ブロックを非常にコンパクトに維持している。ビルドアップは3-1-3-3、または3-1を基本にフレキシブルに行なう。

グリーズマンとモラタ、サウールが前からプレス

 前半のアトレチコはフェイエノールトに対し、グリーズマン、モラタの2トップと左IHサウールの3枚が前からプレッシングし、フェイエノールトの右SBが前に出られないようにしていた。

 そして12分には裏抜けを狙ったアトレチコのデ・パウルが縦パスを入れ、敵が引っかけたこぼれ球にモラタがワンタッチでシュートを放つ。

 これには直後にサウール・ニゲスのオフサイドが宣されたが、VARでゴールが認められた。アトレチコが1-1と追いつく。

 そして18分にはアトレチコが右サイドからグラウンダーのラストパスを入れたが、これはクリアされる。続く19分には再びアトレチコが右サイドからアーリークロスを入れ、フリックしたボールがポストを叩いた。

モラタが決勝弾を放つ

 続く25分にアトレチコのコケがワンタッチで難しいロングシュートを放つが外れる。

 また34分にはフェイエノールトが攻めた。長いフリーキックからファーで抜け出したダヴィド・ハンツコが右足ワンタッチでシュート。GKが弾いたボールをハンツコが左足で押し込んだ。再びフェイエノールトがリードだ。

 だがアトレチコも粘る。前半アディショナルタイムだ。アトレチコは右CKから流れて来たボールをサムエウ・リーノが左足でシュートしブロックされた。だがゴール前の混戦でグリーズマンがオーバーヘッド気味に、後ろ向きで足を振り上げシュートを決めた。同点に追いつく。

 かくて47分。アトレチコは右サイドからナウエル・モリーナがアーリークロスを入れ、モラタがバウンドにうまく合わせて押し込んだ。これが決勝点になり試合が決まった。

 全体にアトレチコは5-3-2をうまく使った手堅い戦術と厚みでフェイエノールトを追い詰めた印象だ。フェイエノールトは強豪相手によく善戦していた。

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【EL 23/24 E組 第2節】レッズはやっぱりカウンターのチームだった 〜リバプール 2-0 ユニオン・サン=ジロワーズ

2023-10-07 05:11:08 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ポゼッションしたがゴールは2点とも裏返しての攻めだ

 ヨーロッパリーグのグループE第2節で現地時間10月5日(日本時間6日)、リバプールはホーム・アンフィールドでユニオン・サン=ジロワーズと対戦した。フラーフェンベルフとジョタの2ゴール、かつクリーンシートでリバプールが勝った。

 サン=ジロワーズはアウェイで敵は格上とあって守備的に戦った。だが攻撃に移っても特に組織立った動きは見られない。散発的な花火に一瞬、火が灯るような感じだ。

 一方のリバプールもプレミアリーグで勝ってはいるが内容がよくない試合が続く。彼らは守備の仕事ができるMFが足りない。試合を締めるタイプの選手だ。遠藤航がまさにピッタリなのだが、まだ彼は新しい環境に慣れる必要がある。それまでレッズのてんやわんやは続きそうだ。

 この日は敵が「ボールはいりません」てなゲーム運びをしているため、たまたまリバプールがポゼッション率を高めている。ゆえにレッズが試合を支配しても圧倒的な感じはない。それ以上に相手が非力だった。内容はともかく勝つことに意味がある試合である。彼らの目的はあくまでEL制覇だ。

 サン=ジロワーズのフォーメーションは3-5-2、守備時5-3-2だ。この日は多くの時間帯5-3-2で戦った。結構高い位置からアムラとニルソンの2トップがプレスをかけてくるが、ほかは組織立ってはいない。ボールが回ってくれば攻撃しようとするが形になってない。

 一方、レッズのフォーメーションは毎度おなじみ4-1-2-3だ。スタメンはGKがアリソン。最終ラインは右からツィミカス、クアンサー、コナテ、アレクサンダー=アーノルドだ。中盤はアンカーが遠藤航、右IHがハーヴェイ・エリオット、左IHはフラーフェンベルフ。前線は右からサラー、ダルウィン・ニュネス、ジョタである。

難しいシュートほど得意な不思議の国のヌニェス

 リバプールのビルドアップは右SBアーノルドが上がっての3枚回しのほか、ツィミカスとアーノルドがともに偽SB化した2-3-5もある。また両SBを高く張り出すストレートな2-3-5も見られた。

 開始10分。グラーフェンベルフがシュートを放ち、こぼれ球をヌニェスが押し込んだがオフサイドになる。続く17分にはサラーにスルーパスが入り、彼はワンタッチで折り返す。

 受けたヌニェスがシュートを打ったが外してしまう。ただ押し込むだけの決定機なのにあり得ない。彼はプレミアリーグの第6節でこんな超絶的なシュートを決めていたというのに。むずかしいゴールは取るがごく簡単なシュートをミスしてしまう。安定感がない。継続して決め続けること。ここが彼の課題だ。

 そもそもこの日の対戦相手とはチーム力が違うので、レッズは容易くボールをキープできる。彼らが保持している時間が圧倒的に長い。だがその間に有効な攻めがあったかといえば、簡単なチャンスを多く逃している。

 また彼らは引いた敵ブロックの外周を単にボール回しする時間帯が長い。典型的な「ダメな攻め」のパターンだ。引かれて前にスペースがないため、裏を取る動きや劇的なスプリントがない。煮詰まった状態だ。彼らはシティのようにポゼッションから何かを生み出すタイプじゃない。

 たとえば擬似カウンターのような形で敵を前に引っ張り出せればいいが、ブライトンと違ってリバプールの辞書にはそのテのウンチクはない。相手がボールを放棄しているので、彼らはひたすらボールを保持して自然なカウンターを待つだけだ。

アーノルドが爆発的なスプリントでチャンスを作る

 右IHエリオットは例によって自由気ままに動いている。逆の左サイドに開いて攻撃したりもしている。アーノルドも右サイドを上がったり、中に入って偽SB化したり奔放だ。

 ️そんなレッズの先制点は43分だった。ロングカウンターからアーノルドが右サイドを長駆ドリブルし、ヌニェスとパス交換しボールを返してもらって左45度からシュートを放つが相手GKモリスが弾く。

 それをフラーフェンベルフがきっちり詰めた。1-0だ。半分以上はアーノルドのゴールだった。やはり彼らはカウンターのチームだ。本ゲームのレッズは、この時のアーノルドのような爆発的なスプリントが今までなかった。ただしカウンターの局面になればそれは発動されるのだ。

 かくて前半が終了。ポゼッション率はレッズ68%、サン=ジロワーズ32%だった。相手が引いているので必然的にレッズのポゼッション率が高いが、あまり意味のあるポゼッションではなかった。彼らは裏返しての攻めにこそ本領がある。

遠藤のプレイは地味ながらハマっていた

 後半はリバプールが頭からメンバーチェンジした。遠藤にかえてマクアリスター、サラーに代えてカーティス・ジョーンズ、ヌニェスに代えてルイス・ディアスを投入した。遠藤は目立ったミスもなくスムーズにこなしていた。これを地道に続けていけば必然的に出番は来るだろう。この交代はデキが悪かったからじゃない。チームの事情だ。

 さて52分、前にパスが入り、ジョタがヘディングシュートをバーの上に外す。これも考えられないミスだ。続く57分頃には、レッズはハーフウェイラインの敵陣側に2CBを置き、試合を完全にハーフコートマッチ化した。だが以後、互いにパスが通らず煮詰まった小競り合いが続く。

 そして61分にはフラーフェンベルフが狙いに狙った素晴らしいコントロールショットを放つが、わずかにバーの上を越える。これは惜しかった。その2分後、今度はアーノルドに代えて右SBジョー・ゴメスを投入する。ミスター偽SBだ。

 66分、右サイドをドリブルで上がる敵に、アンカーのマクアリスターがカンタンに抜かれてシュートまで持ち込まれる。やれやれだ。またやらかした。彼は技術はあるが明らかに守備的な仕事は向いてない。まちがってもアンカーじゃない。そして続く79分には、クロップはフラーフェンベルフに代えてソボスライを投入した。

 トータルで見て、今のレッズにはソボスライ以上に信頼できる選手はいない。それだけ彼は頭抜けている。赤いチームに来るまで彼はずっと生粋の攻撃的MFだった。なのに、クロップに守備の仕事を押し付けられて(笑)、しかし一夜漬けで守備的なMFをやっている。それで立派にこなしているのだからすごい。千両役者の登場だ。

 ゆえに遠藤には十二分にチャンスがある。自分はマクアリスターのような「致命的なやらかし」は絶対にしない、とクロップに見せつけてやればいいのだ。で、今の環境に慣れたら遠藤がアンカーを務め、マクアリスターとソボスライが両インサイドハーフをやるのがベストだ。

 おそらくクロップは遠藤を獲ったとき、その「3人構想」が頭にあったはずだ。だが遠藤が思ったより環境に慣れる必要があったため、その計画は今のところタナ晒しになっている。クロップのそんな構想を具現化させるのは、いまや遠藤のプレイいかんにかかっている。

 そういうことだ。

またロングカウンターからジョタがカマす

 86分、今度はカーティス・ジョーンズがドリブルからシュートするがワクを外す。まただ。こう拙攻凡退が続くとカラダの力が抜けて行く。だが、これがサッカーなのだ。

 そんな諦めと倦怠の90+2分だった。待望の2点目が入る。自ゴール前からの長い超カウンターだ。得意の形である。

 縦パスが出てルイス・ディアスが競って粘り、ボールを残した。そのこぼれ球をジョタが左足で押し込んだ。締めて2-0。今度もやっぱりゴールはカウンターだった。ポゼッションじゃない。

 それが判明しただけでも意味のある試合だった。そして最後の最後はやっぱり自力の違いが出た。

 悪いながらも勝って行く。そうすればいつかは内容も伴ってくるーー。そんな「王者の秘訣」をまざまざと見せつけられた平凡ながらも意義あるゲームだった。

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【CL 23/24 D組 第2節】久保健英がCLで初アシストする 〜ザルツブルク 0-2 レアル・ソシエダ

2023-10-06 05:00:05 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
ハイライン・ハイプレスが冴えた

 チャンピオンズリーグ(CL)のグループD第2節が10月3日に行われ、レアル・ソシエダはアウェーでザルツブルクと対戦した。彼らはオヤルサバルとブライス・メンデスのゴールで2-0と快勝した。インテルと引き分けたグループ初戦に続き、これで合計勝ち点4の首位である。

 ハイライン・ハイプレスのソシエダは、立ち上がりから前線で敵に圧をかけた。そしてボールを奪うと少ないタッチ数でパスを繋ぐ。非常に集中しており、コンパクトな陣形を維持し続けた。久保健英には2枚のマークがついたが、彼は1アシストした。

 特に前半はザルツブルクに何もさせず、完璧に押さえ込んだ。自分たちだけがサッカーをした。ただ後半に崩れるパターンが多い彼らは、このゲームも例によって後半には押し返されて苦戦する。そこをクリーンシートで終えられたのは大きい。

 レギュラーと控えの力の差が大きいラ・レアルは、どうしてもスタメン固定になる。ゆえに後半は運動量が低下し、力の落ちる控え陣が途中出場するためどうしても試合の締め方が課題になる。

 ソシエダのフォーメーションはいつもの4-1-2-3。守備時4-4-2だ。スタメンはGKがレミロ。最終ラインは右からトラオレ、スベルディア、ル・ノルマン、アイエン・ムニョスが構える。

 中盤はアンカーがスビメンディ。右IHはブライス・メンデス、左IHはミケル・メリーノという不動のメンツだ。前線は右から久保、オヤルサバル、バレネチェアである。

オヤルサバルが先制ゴールだ

 ソシエダは立ち上がりから、前線で激しくプレスをかけた。ライン設定も高い。

 ザルツブルクが最終ラインでボール保持の時、久保とオヤルサバルがそれぞれ敵CBに、左のバレネチェアが敵の右SBにプレスした。相手の左SBには右SBトラオレが前に出て当たる。そしてボールを奪うと、素速いポジティブトランジションから攻撃する。その攻めは暴力的だった。

 逆にラ・レアルの攻撃時、久保には敵の左SBテルジッチと左SHキェアゴーが2枚がかりでマークに来た。だが久保はその包囲網を突破し、特に前半輝いた。

 さて試合開始7分。オヤルサバルがブライスメンデスからパスを受け、1〜2タッチしてボックスのすぐ外からゴール左にインサイドで軽くシュートを決める。1-0。さっそく先制点だ。

 ソシエダはテンポよくボールを繋ぐ。一方のザルツブルグはなかなか形にならない。

 そして27分、ラ・レアルは自陣でボールを奪った。久保とワンツーをかまして自陣から飛び出したブライス・メンデスが長駆ドリブルで独走する。彼は左足でゴール右にショットを叩き込み、追加点を奪った。これが久保のCL初アシストになった。2-0だ。

 ザルツブルクは両SBを高く上げ、アンカーが最終ラインに降りて3バックでビルドアップする。だが中盤とその前はあまり組織だった動きはない。中盤で誰を誰が捕まえるのかはっきりしない。前半のポゼッション率はソシエダ56%でシュート9本と圧巻、ザルツブルクは同44%でシュート3本だった。

後半はザルツブルクが追い上げた

 一方、後半の立ち上がりは、逆にザルツブルクがボールを保持する展開になる。彼らは前半とはガラリと変わり、左サイドからアーリークロスを入れたり、SBがロングボールを蹴り前線に当てて再展開した。

 48分には彼らの左サイドから前線にボールが入り、飛び込んだFWシミッチをソシエダGKレミロがPA内で倒したとしてPKが宣された。だがVARの結果、取り消しになる。

 続く53分、ザルツブルクの右サイドから前線に鋭いアーリークロスが入り、ひやっとしたが事もなし。彼らは途中交代のラトコフとシミッチの2トップがかなりアグレッシブな動きをしている。大人しかった前半が嘘のようだ。

 ザルツブルクの2トップは前半と違い、ボールを保持するソシエダの最終ラインにしつこくプレスをかけてくる。彼らは中盤も前半よりかなり機能的になった。久保にはボールが入らなくなったため消え気味になる。こうしてソシエダは後半に点を取られるケースが多い。今日はどうなるだろうか。

 かくて63分、久保に代えてチョを、バレネチェアに代えてカルロス・フェルナンデスを投入する。これでフェルナンデスをCFにし、オヤルサバルは右WGに回った。チョは左WGだ。こうして彼らは後半に控え組を出すたびパワーダウンする。大きな課題だ。

 だが90分になっても、今日はオヤルサバルが守備に走り回っている。まったく頭が下がる。ソシエダはボールをキープして時間を使いたいが、すぐボールロストしてしまう。

 91分、ザルツブルクのシミッチが右足で低いシュートを打つが、ゴール左に外れる。立て続けに95分、ザルツブルクの決定的なチャンスをGKレミロがパンチングする。そしてゲームセット。ソシエダは失点ゼロで逃げ切った。彼らは今季、チャンピオンズリーグ初勝利だ。約20年ぶりにCLで勝った。大きな勝ち点3が手に入った。

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【攻撃は最大の防御なり】久保が巻き起こす珍現象 ~マドリー戦とインテル戦で起こったこと

2023-09-23 05:04:17 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
久保という存在が相手の力を奪い取る

 レアル・ソシエダがラ・リーガ第5節で経験したレアル・マドリード戦(1-2の逆転負け)、またチャンピオンズリーグ第1節のインテル・ミラノ戦(追いつかれて1-1の引き分け)においては、とても興味深い現象が見られた。

 試合に先発で出ていた久保建英がバテて試合から消える、もしくは途中交代でいなくなると、たちまち相手チームに勢いが出てソシエダは劣勢になった。

 つまり久保という名の「攻撃こそが最大の防御なり」が実証されたのだ。

久保によって敵は自陣に張り付けにされる

 これら2試合とも、ソシエダの対戦相手は久保に2人のマークを付けてきた。その久保が消えるということは、敵の守備の負担が軽くなることを意味する。そのぶん攻撃に力を割ける。

 それだけじゃない。いままでは久保にさんざん攻められ、自分たちは全軍が自陣に張り付けにされていたのだ。そのイヤな相手がいなくなれば、「これからオレたちは攻撃に出られるぞ」ということになる。

 さらには久保が敵に与えていた心理的脅威からも彼らは解放される。すなわち対戦相手は、心身ともに伸び伸びと攻撃に専念できるようになるわけだ。

 ひるがえって味方はどうか? 久保という頼みの綱がなくなり、実質的にチーム力が激しく落ちる。またメンタル的にも「もう彼はいないぞ」と思うと気持ちが下がる。

 何もいいことがない。

久保への警戒が相手の攻撃力を削ぎ落す

 久保がスタメン出場したマドリー戦とインテル戦はどちらも、ソシエダが先制点をあげてリードしていた。だがマドリー戦では後半に逆転負けを食らい、インテル戦でも後半に巻き返されて引き分けに持ち込まれた。

 すなわち久保が消耗して運動量が落ち試合からいなくなる(前者)、もしくは途中交代で試合から退場すると(後者)、とたんに対戦相手が有利になっている。

 これは決して偶然の一致じゃない。

 いま絶好調の久保が途中で消えるということは、将棋でいえば飛車を落とすようなものだ。将棋の対局中にいきなり飛車落ちになれば、相手が有利になるに決まっている。

 それだけ久保という大きな攻撃の駒が敵を守備に注力させ、相手の攻撃力を削ぎ落しているのだ。久保という存在そのものが、黙っていても相手の力をトータルで弱らせる。

 非常におもしろい現象である。

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【CL 23/24 D組 第1節】久保建英がCLデビューする 〜レアル・ソシエダ 1-1 インテル・ミラノ

2023-09-22 05:00:40 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
完全に試合を殺し切れ

 欧州チャンピオンズリーグ2023/24のグループD、第1節が9月20日に行われた。ホームのレアル・ソシエダは前回準優勝したインテル・ミラノと対戦し、激闘の末、1対1の引き分けに終わった。この試合で右WGの久保建英が先発CLデビューした。

 試合開始4分、ソシエダは相手ボールを奪い、カウンターからMFブライス・メンデスが先制点を上げる。以後しばらくインテルにボールを握られたが、その後は彼らに何もさせずに終盤へもつれ込んだ。

 一方、ゴールがほしいインテルは、FWアレクシス・サンチェスらを途中投入し必死の反撃。どん詰まりの87分にFWラウタロ・マルティネスが同点弾を放ち、辛くも引き分けに持ち込んだ。ソシエダが幾度かあった決定機をモノにして試合を殺し切っていれば、まったく違った結果が出るはずだったが。

 彼らは現地時間17日に行われたラ・リーガ第5節のマドリー戦と同じメンバーで臨んだ。一方のインテルは、16日のACミランとのミラノダービーで大勝したメンバーからスタメンを5人も変えてきた。しかも、うちFWマルコ・アルナウトビッチや左WBカルロス・アウグストら4人は初スタメンだ。対照的である。

 マドリー戦と打って変わって、非常に緊張感のある締まった試合だった。ソシエダはマドリー戦とは一転し、大人のサッカーをした。開けっ広げに撃ち合うのではなく、相手の良さをうまく消しながら自分たちだけがおいしいところを取ろうとしている。まるでイタリアのチームみたいだった。またマドリー戦では久保への依存度が非常に高かったが、この試合における久保は11分の1の機能を果たした。

インテルは久保を消しに来た

 ソシエダはラ・リーガでも好調な左ウイングのバレネチェアが利いている。彼らのフォーメーションは4-3-3だ。一方のインテルは3-5-2で、守備時5-3-2に変化する。

 開始4分。中央でボールを保持するインテルのDFバストーニを、ブライス・メンデスとFWオヤルサバルで挟撃した。そしてボールを奪い取り、メンデスが左足でゴールする。早くも先制弾だ。

 だがその得点後は14分までずっとインテルがボールを握り、スペイン人たちがプレスをかける展開が続く。彼らは献身的にボールに圧をかけている。だがいざソシエダが自陣でボールを持つと、今度はイタリアの軍団がすごい勢いでプレッシャーをかけてくる。

 ソシエダは勝つために非常に辛い試合運びをしている。インテルに何もさせてない。今日の彼らはいままで観たことがないほど強度が高い。プレスがよく利いている。

 一方、インテルは久保に細心の注意を払っている。久保がいる右サイドには豪勢な人垣ができ、彼にボールが入るとMFムヒタリアンとDFカルロス・アウグストがダブルチームで守備対応してくる。

オヤルサバルに絶対的な決定機が

 37分、ソシエダの左SBティアニーが超ファインプレーをする。彼らは前線でボールを奪われ、同時に上がっていた数人の選手が置き去りにされたのだ。自陣には広大な無人のスペースがある。完全なインテルのカウンターになりかけた。

 だが、そのときティアニーが弾けるように前へ飛び出しボールを強奪した。すばらしい守備だ。しかも失点を未然に防いだだけでなく、彼はなんとシュートまで行った。

 インテルはラ・レアルにゴール前まで迫られると、自ゴール前に7〜8人の城砦を築いて守備をする。いかにもイタリアのチームらしく、こういうところは徹底している。

 そんな44分、どフリーだったオヤルサバルのシュートがバーを叩く。あれは絶対に決めなきゃいけない。試合後に判明するわけだが、あれさえ決めていれば…………勝ち越し弾になっていた。

 続く45分、久保が抜け出し、スルーパスを受けてワンタッチで左足を振るがGKゾマーに防がれる。前半が終わった。シュート本数はソシエダ8本、インテル1本。ポゼッション率は双方50%づつ。前半、彼らはインテルにほとんどサッカーをさせなかった。

ミケル・メリーノのヘッドがバーを叩く

 試合は後半に入り46分だった。ブライス・メンデスの中央でのFKは実に惜しかった。インテル・ゴールの左を狙ったが、GKゾマーが横っ飛びで辛くもセーブした。48分のチャンスもそうだ。左コーナーキックを久保が蹴る。ミケル・メリーノが頭で流し、後ろのオヤルサバルがヘッドでジャストミートしたが、GKゾマーが倒れながらセーブした。

 また51分には久保にも際どいチャンスが来る。彼が右サイドでボールをもらい、マーカーと1対1になったのだ。久保は左から巻くシュートを狙ったが、軌道は惜しくもゴール上方に外れた。

 54分、インテルはアルナウトビッチに代えてテュラム、アンカーのクリスチャン・アスラニに代えてダヴィデ・フラッテージ、またバストーニを下げてディマルコを投入してきた。メンバー交代後の彼らは、ムヒタリアンがアンカーを務めて中央でボールの配給役をしている。

 続く69分には、久保の左CKからミケル・メリーノのヘッドがバーを叩いた。これもギリギリだった。一方、インテルはムヒタリアンに代えて攻撃的なアレクシス・サンチェスを中盤に投入してきた。ソシエダも活発に選手交代する。オヤルサバルに代えてウマル・サディク、また72分には久保を下げてアルバロ・オドリオソラを入れた。

「攻撃こそ最大の防御なり」を実現していた久保がいなくなり、これでシモーネ・インザーギは攻撃のことだけ考えて指揮すればよくなった。久保のマーカーだった2人も解放され、最大限、攻撃に専念できる。守備の負担が減った。インテルが後半に巻き返し反撃できたのは、こんなふうに久保が消えたことにも一因がある。

ソシエダは試合を殺し切るべきだった

 インテルの79分の一発は際どかった。アレクシス・サンチェスが裏のスペースにスルーパスを出し、受けたカルロス・アウグストが左サイドをドリブルで独走して折り返しを入れる。テュラムが右足のワンタッチでゴールへ叩き込んだ。だがこれはオフサイドだった。

 幾度かの攻撃的な交代の後、明らかにインテルに流れが来ている。それがはっきりしたのは87分だった。右サイドの遠目からフラッテージが打ったシュートがゴール前を抜けてラッキーなスルーパスになる。これを受けたラウタロ・マルティネスが、逆サイドから倒れながら左足ワンタッチで流し込んだ。同点弾だ。

 このあと6分のアディショナルタイムを経て試合は終わった。前半は完全にソシエダのゲームだったが、後半にインテルが選手交代で盛り返しチャンスを作った。彼らは後半アディショナルタイムにも攻めっ気マンマンで盛り上がっていた。その流れからいえば、逆にソシエダは引き分けで済んで幸運だったのかもしれない。

 だが何度もあった絶対的な決定機を確実にモノにしていれば、彼らが快哉を叫ぶ運命にあったことは確かだ。好機にしっかり決め切り試合を殺してさえいれば、インテルがゾンビのように蘇ることはなかっただろう。その意味ではバスクのチームには、いいクスリになったゲームだといえる。

 さて今大会は、果たして世界が久保建英を「発見する大会」になるのだろうか? マークが厳しいなか、それでも久保には輝く義務が課せられている。

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【CL・インテル戦】明日は世界が久保建英を「発見する日」になるか?

2023-09-20 19:18:23 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
チャルハノールが忘れられないように

 いまいちばん気になることは、あのトルコ代表のハカン・チャルハノールは明日の朝に行われるチャンピオンズリーグ・インテル対ソシエダ戦に出るのかどうか? だ。

 彼は日本対トルコ戦後、「小柄で左利きの選手がいたよね。名前は難しいけど」と言ったらしいが、もし明日試合に出るなら「久保建英」という名前をイヤでも覚えて、一生忘れられないようにしてやれよ久保! と思う。

 死ぬまで忘れられないようにしてやれ、と。

 さて明日は、世界が久保を発見する日になるのだろうか?

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【CL 23/24 E組 第1節】奇跡のゴールで崖から落ちずにすんだ 〜ラツィオ 1-1 アトレチコ・マドリー

2023-09-20 09:25:14 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
後半アディショナルタイムの劇的な幕切れ

 欧州チャンピオンズリーグ2023/24が開幕し、9月19日(日本時間20日)にグループEの第1節が行われた。日本代表MF鎌田大地が所属するホームのラツィオ(イタリア)と、アトレティコ・マドリード(スペイン)が対戦した。

 アトレチコが前半29分に先制し、かたや、無得点のラツィオは崖に追い詰められていた後半アディショナルタイムだった。直前に行われた最後のコーナーキックに上がって参加していたラツィオのGKイバン・プロベデルが、なんとクロスに合わせた点取り屋さながらの豪快なヘッドを叩き込む。ラツィオは劇的な幕切れで引き分けに持ち込んだ。彼らは崖から飛び降りずにすんだ。

 グループEは彼らのほかにフェイエノールト、セルティックが同居する。ラツィオは第1節で負けず、勝ち点1を取れたのは限りなくデカい。なお彼らのポゼッション率は51%だった。

 スタメンは鎌田がいつもの右インサイドMFだ。ほかにマティアス・ベシーノがアンカー、10番のルイス・アルベルトが左インサイドMFを務める。

 3トップはフェリペ・アンデルソン、チーロ・インモービレ、マッティア・ザッカーニが先発。最終ラインは右からアダム・マルシッチ、パトリック・ガバロン、アレッシオ・ロマニョーリ、ルカ・ペレグリーニだ。

前半12分に鎌田が初シュートを放つ

 ゲームの立ち上がり。戦術家・サッリ監督が指揮を執るラツィオはうまくボールを運んでいるが、なかなか前線に槍の切っ先が入らない。彼らのフォーメーションは4-3-3。一方のアトレティコは5-3-2だが、彼らは3-1-4-2でビルドアップする。また2-3-4-1のような形からも組み上げる。

 まずラツィオが攻勢を強める。前半12分、ルイス・アルベルトからのダイアゴナルなパスを鎌田がフリックし、インモービレとのワンツーからミドルシュートを放つ。だがGKオブラクが止める。鎌田の初シュートだ。

 この流れで15分頃、いったんアトレチコは完全に自陣に引いた。28分にはラツィオのマルシッチからのアーリークロスに、ルイス・アルベルトがワンタッチで痛烈なシュートを打つ。これはゴール右に外れた。

 続く29分だった。スペインの軍団に思わぬ幸運が訪れる。アトレチコが敵ボックスの左外からボールを落とす。呼応したパブロ・バリオスが強烈なシュートを放つと、鎌田が出した足にボールが当たってゴールに入ってしまった。シメオネのチームが先陣を切って勝ち名乗りを上げた。

 しかしその後も相変わらずサッリの配下がボールを握り、39分頃にはアトレチコを押し込んだがゴールは取れず。パスミスが多くうまく行かない。かたやアトレチコは攻撃が終わるといったん帰陣し陣形を整える。こまめにその作業を繰り返す。かくて前半が終わった。ラツィオの前半のポゼッション率は60%だった。

サッリの辞書にはプレスがない?

 後半に入ってまず47分だ。ラツィオのボールになると、アトレチコはまた完全に自陣に引いた。そしてボールを奪うと遠路、攻め上がってくる。これはこの日のイタリアチーム対策なのか? それとも彼らのゲームモデルなのだろうか?

 ならばラツィオは逆に敵を引きつけている時の自陣でボールを奪い、すぐ速いカウンターをかけたい。なぜならこのとき敵陣はお留守だからだ。だが、なかなかうまく行かない。というよりおそらく彼らにはそういうカウンターのノウハウがないのだ。ああ、また敵に完全に引かれてしまった。

 サッリが考えるサッカーは基本的にはポゼッションスタイルだが、攻めが個人による単発でなかなか形にならない。連動した二の矢、三の矢のメカニズムがなく、チームがどうも機能してない。セリエAのときと同じだ。敵を崩す劇的で有効な動きがない。集団としての機能がまだ未完成なのだろう。

 52分、セットプレー崩れから、ボックス外で鎌田が左足からミドルシュートを放つが入らず。こぼれ球をボックス右のチーロ・インモービレが保持し、一連の流れでパトリシオ・ガバロンが右足を振った。だが右外側のサイドネットに当たって入らない。

 アトレチコ陣でラツィオの選手が複数人数でボールへプレスに行くと、ポーンと一発でサイドチェンジされた。彼らはプレッシングのいなし方に慣れているようだ。続く55分には敵GKのボールをアンデルソンがカットし、ボックス内からインモービレが至近距離でシュートするもGKにセーブされた。

 ラツィオの選手は、敵ボールホルダーの足元へもっとプレスに行けばいいのに行かない。なぜかプレスがゆるい。そして62分にサッリ監督は鎌田に代えて、同じポジションのマテオ・ゲンドゥージを投入した。

カウンターが身についてない遅攻のラツィオ

 66分には、アトレチコのセットプレーから得点機を作られる。グリーズマンが左足で浮き球のクロスを入れたが、ボールは跳ね返された。だがそのこぼれ球を回収したモラタが至近距離でシュートを放つ。しかしディフレクションしたボールはポストを叩いた。

 ラツィオが一度攻められてからのカウンターの場面だ。ボールを奪った。速く攻めたい。だが前にボールを出すところがあるのに出さない。なぜか敵がすっかり帰陣するのを待ってからパスを出している。これがサッリの教えなのだろうか? というよりその教えがまだ未消化で、迷いながらプレイしているのだろう。

 また彼らはアトレチコがディフェンディングサードに組んだ守備ブロックの外周を、「コ」の字型にボールを回している。いちばんダメな攻撃のパターンだ。攻めが停滞している証拠である。そもそもブロックを作られる前に攻めたいし、もっとゴールに向かってワンツーをかますなどして直線的に崩したいのだが…………。

 ラツィオは攻めが遅いので、常に引いた敵のブロックの外側から攻めることになる。もっと速い攻めが欲しい。前からプレスをかけるなど、工夫したい感じだ(それともサッリの辞書にはないのだろうか?)。

ポジティブトランジションが致命的に鈍い

 アトレチコは1-0で勝つつもりだから帰陣が速い。これに対しラツィオは遅攻オンリーなので、いつも敵が全員引いてから作ったブロックを相手にすることになる。これでは不利だ。ハマっている。

 また彼らは撤退守備しかしない。前から行かない。前からハメられる局面はたくさんあるのに、そのすべを知らないのだろうか。彼らは単純なブロック守備しかしない。

 そして84分頃からオープンな展開になり、ラツィオが攻めた。だが可能性のないボックス外からのシュートで終わった。

 彼らは負けているのだから、ボールを奪ったら爆発的なスプリントをして押し上げないとダメだ。ポジティブトランジションが鈍い。遅攻に偏っている。そのため敵ブロックの外周でボールを回すか、遠目から効力のないシュートを打つだけに終わっている。この点は改善しないとダメだ。

 かくて後半アディショナルタイムだ。ついにサッリのチームがゴールを攻略する。劇的な幕切れだった。最後のコーナーキックははじき返されたが、ルイス・アルベルトがゴール前にダイアゴナルなクロスを入れる。ラストプレイのコーナーキックのために上がっていたラツィオのGKイバン・プロベデルが、前に飛び込みヘッドで豪快にゴールへ突き刺した。

 まるで奇跡のような引き分けだった。おそらく鎌田は「持っている」のだろう。続く第2節は10月4日(日本時間5日)に行われ、ラツィオは古橋亨梧ら5人の日本人選手がいるセルティックと対戦する。

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【EURO2024予選】スパレッティのイタリアが初白星、2位に浮上 ~イタリア 2-1 ウクライナ

2023-09-16 08:19:20 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
フラッテージのドッピエッタで競り勝つ

 EURO2024予選・グループC第6節が日本時間13日に行われ、前回大会王者のイタリア代表がスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァでウクライナ代表と対戦した。

 ルチアーノ・スパレッティ監督がスタメンに抜擢したダヴィデ・フラッテージのドッピエッタ(1試合2得点)でイタリアが2-1と競り勝った。

 先月、イタリア代表監督を電撃辞任したロベルト・マンチーニがサウジ代表監督に就任し、大論争になったイタリア国内である。

 それを受け昨季ナポリでスクデットを獲得したスパレッティが任を継いだが、第5節で北マケドニア相手に1-1のドローを演じてまた騒動が勃発。

 そんな暗雲を吹き飛ばしたスパレッティ新体制での初白星だった。この勝利でイタリアはグループ2位に躍り出た。

ハイプレスを起点にイタリアが先制

 イタリアのフォーメーションは4-1-2-3だ。彼らは右SBを高く上げ、アンカーが適宜、最終ラインに降りてビルドアップする。

 一方、ムドリクが怪我でベンチスタートとなったウクライナは、4-2-3-1だ。ジンチェンコが左のCMFに入っている。彼らは両CBが大きく開き、SBを押し上げる形でビルドアップしている。

 先制点を取ったのはイタリアだった。前半11分、ショートカウンターの形だ。イタリアがハイプレスを仕掛けると、ウクライナがビルドアップ時にボールを保持した右SBがスリップし倒れてしまう。

 このボールをかっさらったマッティア・ザッカーニがボックス内に侵入し、右にパス。受けたダヴィデ・フラッテージがワントラップしてからゴール左スミに叩き込んだ。

 ウクライナはこの1失点をして以降、相手ボールになるとディフェンディングサードまでリトリートしてブロック守備をするようになった。

2点目のラッキーゴールは29分だった

 そしてイタリアが29分に2点目を獲る。

 中盤のニコロ・バレッラがボールを大きく右に開いてニコロ・ザニオーロに届け、彼がカットインからシュートを放つ。

 するとボックス内のフラッテージに当たったボールが敵DFにも当たって跳ね返り、またフラッテージのもとに戻ってくるというラッキーチャンス。これをフラッテージがきっちりゴールに詰めた。

 このあと押し込まれたウクライナは5バック~6バックになりながら必死に守る。そして一度ウクライナが右サイドからのカウンター攻撃になりかけたが、イタリアは右サイドに人数をかけて分厚く守り切る。

 この流れでウクライナのゴールが生まれたのが41分だった。長い縦パスにアタッカーが抜け出し、ボックス左へ。アルテム・ドヴビクがシュートを打つが、GKドンナルンマが弾いた。そしてイタリアが短くクリアしたボールをアンドリー・ヤルモレンコが拾って詰めた。これでウクライナが2-1と追いすがった。

 だが後半は両チームとも攻撃の機会を得ながらモノにできず。これで試合は2-1のままイタリアの勝利に終わった。

 イタリアは立ち上がり、組み立てが雑でパスが繋がらず暗雲が漂ったが、味方がシュートしたボールの跳ね返りがフラッテージに戻ってくるという僥倖で試合をモノにした。次節は10月15日、ホームでのマルタ戦だ。

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【EURO2024予選】ジンチェンコが先制、ウクライナのゲームプランがハマる ~ウクライナ 1-1 イングランド

2023-09-15 08:09:39 | CL/EL/EURO(世界規模のサッカーリーグ)
イングランドの連勝は4でストップした

 EURO2024予選・グループC第5節でイングランド代表はウクライナ代表とアウェイで対戦し、1-1で引き分けた。グループCはイングランドとイタリア、ウクライナが同居する注目の組だ。

 ホーム・ウクライナの国内情勢により、ポーランドのヴロツワフ市立競技場で試合は行われた。ここまでグループCはイングランドが4戦全勝で首位を走っている。

 イングランドはケインやサカ、マディソンを3トップに置いた4-3-3だ。ベリンガムやライスらもスタメン出場した。一方のウクライナはジンチェンコやムドリクらが出場している。

 ウクライナはイングランドをリスペクトし、がっちり守備ブロックを敷いた。相手にボールを持たせ、イングランドが攻める展開だ。だがウクライナも隙を見て抜け目なく反攻を狙っている。

 攻めあぐねるイングランドを尻目に、26分。鋭いカウンターからウクライナのコノプリアが右サイドを疾走し、クロスを入れる。これに走り込んだジンチェンコがきれいに合わせた。先制弾だ。相手に攻めさせ、守備のバランスを崩させて反撃する。ウクライナが作ってきた設計図通りの得点だ。

ケインのロングパスからウォーカーが同点弾

 先制点を取られて焦るイングランドは、ミスが多くなかなかゲームを組み立てられない。いかにもイングランドらしい。彼らはボールは保持するが、エースのケインにここぞのパスが入らない。

 そんな41分だった。ケインが中盤の低い位置まで下りてボールを受け、ボックス右にロングパスを刺し込む。これにオフサイド間際で飛び出したウォーカーがボールをひとつ触ってから、冷静にゴール右に押し込んだ。同点だ。

 かくて試合は後半に入り、59分のことだった。イングランドが攻める。ケインのポストプレイからボックス右でボールを受けたサカが、左足で痛烈なシュートを見舞った。だがGKブスチャンがワンタッチしたボールは、クロスバーを叩いた。あわやのシーンだった。

 どうしても勝っておきたいイングランドは66分にベリンガムとマディソンを交代させてラッシュフォードとフォーデンを入れるが、なかなか勝利へのドアは開かない。ウクライナも勝ち越しゴールを狙ったが果たせず。

 結果、1-1の引き分けで両者は勝ち点1づつを分け合った。ウクライナにすれば格上相手に勝ちに等しい勝ち点1。イングランドは負け同然の引き分けだった。ウクライナはゲームプラン通りにうまく試合を進め、相手にボールを持たせてしっかり試合を終わらせた。

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