すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【E-1韓国戦・分析】消極的なリトリート策が裏目に出た

2017-12-17 14:44:06 | サッカー日本代表
引いて守ってカウンターのはずがプッシュアップできず

 この試合、日本は相手ボールになればスルスルと自陣にリトリートして4-5のローブロックを作るゲームプランで臨んだ。おそらくハリルは引き分けでも優勝できるアドバンテージを生かし、引いて守ってカウンター狙いを選択したのだろう。

 だがライン設定があまりにも低すぎ、CBが簡単に自陣ペナルティエリア近くまで下がってしまう。そのためボールを奪ってもそこからのプッシュアップが利かず、カウンター攻撃できない。これで日本は自滅した。韓国が強かったというより、策士が策に溺れた作戦負けだ。

 象徴的なシーンがある。前半5分だ。韓国がGKの短いフィードで自陣からビルドアップしてきたのに対し、日本の前の4人はためらいなく敵陣から自陣へ戻るリトリート対応をした。さらに同13分にも韓国が自陣ペナリティエリアからビルドアップしてきたのに対し、また日本の選手は全員が自陣までリトリートした。

 この2つのシーンから、明らかにローブロックで戦う日本の意図が見えている。だが肝心のライン設定はほぼ自陣ペナリティエリアの近く。あまりにも低すぎる。これでは中盤で韓国に自由にやらせてしまう。ここが敗因だ。

リトリート策が選手を消極的にした

 自陣に後退する作戦は、選手のメンタルをすっかり消極的にした。

 たとえば試合開始33秒。左SBの車屋は高いポジショニングから縦に突破していいクロスを入れた。あれを90分間続けなければいけない。だが(北朝鮮戦でもそうだったが)それ以降の彼はあまりにも消極的だった。やればできるのになぜやらないのか?

 さらに前半8分。韓国は日本の左サイドを起点に単純なロングボールを放り込む。これに韓国FWが反応し、たちまちCB昌子と1対1の形を作られる。ここでボールを奪い返した昌子は、自陣の非常に低い位置で中途半端なショートパスを出す。これを韓国に見事にかっさらわれ、ペナルティエリアまで侵入された。この日の日本の消極性を象徴するようなシーンだった。

 前半25分には日本はシステムを4-1-4-1から4-2-3-1に変え、今野と井手口のダブルボランチにして左インサイドハーフだった倉田をトップ下に上げた。これによりミドルブロックにして押し上げを図ったが、時すでに遅し。韓国へ行ってしまった試合の流れは戻らなかった。

敵をどフリーにした2つの失点シーン

 では流れから点を取られた2つの失点シーンを振り返ってみよう。まず前半13分。韓国の左サイドからほぼフリーの状態で余裕を持ってクロスを入れられた。ゴール前で昌子がこのボールを完全にかぶり、フリーでヘディングシュートを決められた。

 ボールの出所にプレスがかかってもいなければ、ゴール前でもほぼフリー。これではやられる。昌子の近くには車屋もいたが完全にボールウォッチャーになり、敵のヘディングシュートにまったく競ろうとしなかった。

 もうひとつは前半23分だ。韓国のFWがポストプレイから落としたボールを日本の左サイドに展開され、左前にパスを出されて最後はどフリーでシュートを打たれた。直接的には右SB植田が自分のマークする相手が中央へ絞ったためそれについて行き、右サイドをガラ空きにしたのが原因だ。

 だがそれ以前にプレスが充分かかっていなかった。まず日本の左サイドに展開されたとき、ボールをキープする敵の選手に対し車屋の競りが甘く、ボールを簡単に持ち込まれてしまった。またシュートを打ったフリーの選手には近くにいた井手口がついて行くべきだったが、井手口は足を止めてしまった。

川又ー小林の2トップは機能した

 それでも後半25分にFW川又が途中投入され、小林悠とタテ関係の2トップを組んでからは攻撃が少しは活性化された。後半38分には右サイドから途中投入の阿部がゴール前にいいクロスを入れ、川又が決定的なヘディングシュートを放つ。惜しくも韓国GKの攻守に阻まれたが、川又の高さを生かしたいい攻撃だった。日本は川又をもっと早いタイミングで出し、あのサイドからクロスを入れる形をもっと作りたかった。

 また同47分には韓国のクリアボールを拾った途中投入の三竿が相手ゴール前へクサビのボールを入れ、反応した小林がアクロバチックにボールを後ろへ逸らす。受けた川又が胸トラップから振り向きざまにシュート。これは相手GKの正面を突いた。

 川又が入ってからは前線にターゲットができ、日本はやることがわかりやすくなった。A代表でいつもFW大迫が果たしている機能だ。前でボールを収めて攻めのスイッチを入れる働きである。セカンドトップを務めて川又とコンビを組んだ小林もやりやすそうだった。小林はやはりサイドでなくセンターで、かつ2トップでこそ力を発揮する。「たられば」だが、この川又ー小林の絡みを後半頭から見たかった。

 結論としてこの優勝決定戦では、後半終わりのたった20分間で川又ー小林の組み合わせがよく機能するのを確認できたことだけが収穫だった。右WG伊東には期待したが、ケガのせいか力を発揮できなかった。

 A代表はCFの層が薄い。川又と小林は有力なオプションになるのではないか? 「負けてくやしい」で終わらせるのでは負けた意味がない。この日、唯一得られたCFの選択肢は今後に生かしたい。
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