すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ハリルジャパン】​2トップをオプションに持つべきだ

2017-11-20 09:59:56 | サッカー日本代表
大迫はゴールゲッターでなくスイッチャーである

 ロシアW杯をめざす道程も大詰めに入ってきた。そこで今回は見えてきた選手別の現在位置と、レギュラー争いのゆくえについて見て行こう。

 ハリルジャパンは相手からボールを奪い、大迫に縦パスが入った瞬間に攻撃のスイッチが入る。ただし大迫はポストプレイは鉄板だが、自分でそうは点を取れないことがわかってきた。とすればリードされて点が欲しいときのオプションとして、攻めのスイッチャーとしての大迫と、ゴールゲッターとしての(武藤嘉紀か、本田または岡崎)との2トップを選択肢として持っておきたい。その場合のシステムは4-4-1-1だ。

 ハリルジャパン最大のアキレス腱は得点力だ。守備はこれまでの積み上げが利いて粘り強くなってきたが、圧倒的に得点力が足りない。しかも守備からのカウンターを狙うこのチームの特性上、少ないチャンスを確実にモノにする必要がある。ならば足りないところ(トップのポジション)にテコ入れするのは当然だ。

 そこで点が欲しいときには4-4-1-1にし、1-1はポストプレイヤー(大迫)とゴールゲッターの組み合わせにする。大迫と組み合わせる第一選択は武藤嘉紀だ。

 個人的には、武藤を外すのはありえないと思う。彼はドリブルによる突破力がある上にポストプレイもできるため、そのぶん大迫にシュートチャンスも来る。2人のコンビネーションにより局面を打開することが期待できる。

本田を生かすにはトップしかない

 さて最前線の第二選択だが……ハリルジャパンでシュートがいちばんうまい選手は、まちがいなく本田だ。ゆえにシンプルに最前線で使う方法もある。逆にいえばこのチームで彼を生かすには、このポジションしかない

 個による単独突破ができずスピードもない本田は、右サイドではよさが生きない。また彼を右SHやトップ下で使えばバックパスを多用して攻撃をスローダウンさせてしまう。加えてショートパスやワンツーに極端にこだわる「小さなサッカー」をやってしまう。ゆえに守備からの速いカウンターと大きな展開力が身上であるハリルジャパンのスタイルに、本田は合わない。

 だが4-4-1-1の下り目の1をやらせれば彼のこれらの欠点はすべて消え、(1)チームでいちばんシュートがうまく、(2)前線でボールをキープでき、(3)決定機であわてない氷の心臓をもつチーム唯一の選手である、本田のよさが生きる。また彼は守備に粘りもあるのでファースト・ディフェンダーとしても機能するはずだ。

 ハリルは監督としての戦術構築力はあるが、こと選手起用に関しては非常に頭が固く頑迷(自分の考えを絶対に曲げない)ので採用する可能性は低いかもしれないが、有力な第二選択として本田を推しておく。

 また岡崎を4-4-1-1の下り目の「1」で使う意味は説明するまでもないだろう。彼はハリルが求めるストライカー像とちがうため使われてないが、本田の起用と同様、もしハリルが自分流に固執せず柔軟思考ができれば採用される可能性はある。なお杉本健勇はガタイもあり大器の雰囲気は漂っているが、彼が成長するのを待っていたらW杯が2大会くらい終わってしまうだろう。

乾は先発でこそよさが出る

 さて次はサイドアタッカーだ。どうやら原口と久保は確変していた旬の時期が過ぎたようだ。一時からくらべ彼らの威力は半減してしまった。もちろん選手にはバイオリズムがあるので一概には言えないが、このへんで両サイドに手を入れるべきかもしれない。

 まず左に関してはデュエルに優れる原口の守備力は大きいが、彼は生真面目なあまり(?)上がってくる敵のSBについて最終ラインまで下がってきてしまうクセがある。そのため5バックになり、いったん下げたラインの押し上げが利かないことがある。もしかしたらハリルはチームの約束事としてこのやり方を原口に求めているのかもしれないが、マークは受け渡さないのだろうか?

 そんなわけでそろそろ乾を先発で使うべきではないか? ハリルは「先発は原口」と決め込んでおり(このへんがハリルの頑迷なところだ)、乾は途中起用して流れを変える駒として使っているが、乾は先発で使ってこそよさが生きる選手だと思う(途中起用で試合に入って行けないシーンも目立つ)。

 おそらくハリルは試合の入り方として「まず無失点で粘り強く」をめざしてるんだろうから原口の先発は理解できるが、順番を逆にして「乾で先行し原口で逃げ切る」パターンも試していい。思わぬ解が見つかるかもしれない。

 一方、右サイドは決定的な切り札がなく悩ましい。久保は先発が続いているが沈黙したまま。かたや浅野はスピードが魅力だが、トラップやクロスの精度などの完成度に欠け粗削りだ。前回の記事で解説した通り、もっともっと決定力もほしい。もし武藤嘉紀が左SHやトップで構想から外れてしまうのなら、彼を右サイドへもってくるのはどうだろうか? あるいは岡崎をここで使うのも有力なオプションだ。

中盤の3センターは決まりか?

 アンカーの長谷部、それから両インサイドハーフの井手口と山口蛍という中盤の3センターは決まりだろう。彼らで失点することなく試合に入り、点がほしいときには途中から長澤を使うのもおもしろい。オールドスタイルな10番タイプの森岡は起用法がむずかしいが、選択肢としてはもっておくのもいい。

 ちなみに香川の攻撃での貢献度より、井手口の守備での貢献のほうがはるかに大きい。香川はもう構想外だろう。確かにもっている技術レベルこそ高いが、そのもてる力を10試合に1試合しか出せない彼はチームの足枷にしかなってない。

 ハッキリ断言しておくが、最終的に香川を切れるかどうかでハリルはスポンサーに気を使うだけのビジネスマンなのか? それとも本物の監督なのかがわかる。なおGKと最終ラインはいじりようがないだろう。特に酒井(宏)の成長ぶりはめざましい。うれしい限りだ。

バックパスに逃げるな

 最後に一点だけ、戦術的に気になる点を書いておく。

 アジア予選が終わって以降、急にバックパスが劇増した。そこを狙われている。日本がバックパスした瞬間に敵にラインを上げられ、プレスのスイッチを入れられているのだ。

 ハリルジャパンは相手ボールを奪ったらタテに速く攻めるはずが、最近はボールを取ったらまずバックパスして「ひと休み」してしまっている。で、速いカウンターがめっきりなくなった。

 バックパスが多くなるのは、ポジティブ・トランジション(守備から攻撃への切り替え)が遅いからだ。ボールを奪った瞬間に味方が爆発的な動き出しをすればバックパスなどせずにすみ、前へボールを運ぶことができる。つまりバックパスに逃げるのは、オフ・ザ・ボールの動きが足りないからだ。

 ここは絶対に修正してほしい。

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【ベルギー戦・分析】日本は「個の力」が決定的に足りない

2017-11-18 10:13:17 | サッカー日本代表
守備戦術はいいが技術に欠ける日本人

 前々回の記事で、「あとは個の力をどこまで上げられるかだ」と書いた。端的な例がFWの浅野だ。彼は「個の力」さえあればベルギー戦で3点取れた。相対的に日本はハリルが育てた「戦術力」はいいが、圧倒的に「個の力」が欠けている。ここが最大の課題だ。ロシアW杯まであとわずか。本大会での成否は「個の力養成ギブス」をどこまでパワーアップできるかにかかっている。

 そこで今回はベルギー戦の前半を題材にし、日本が「個の力不足」を露呈した決定的な場面をモデルケースとしてピックアップしてみよう。(以下、【】内は時間)

随所に見られる「個の力」不足によるミス

【1:20】長澤の中盤での絶妙なダイレクトのポストプレイ(胸トラ)から、右サイドを抜け出したFW浅野が決定的なシュートチャンスを迎える。だが彼はシュートをためらい、左に切り返してチャンスをフイにした。あの狭いコースを決め切る個の力があるかどうかが世界との差だ。世界レベルは、あの切り返した0.1秒の「遅れ」を見逃してくれない。

 浅野はシュートコースがないと判断したのだろうが、まだ前半の立ち上がりだ。あそこは切り返さず、そのまま思い切ってシュートを打っておくべきだった。そうすれば仮に敵プレイヤーにボールが当たっても、あんな高いゾーンでスローインやCK、うまくすればハンドによるPKなどをゲットできるのだ。あそこで「シュートを打たない」というのは最悪の選択である。

【12:00】山口蛍は中盤の底でリスキーな横パスを出してカットされ、カウンターを食らった。アンカーとしてはありえないミスだ。彼はこのゲームで2度、危険な横パスを出している。

【20:00】酒井(宏)が右サイドをドリブルで駆け上がり、敵陣の中ほどで左横へパスした。だがそのボールは長澤と大迫のちょうど真ん中を通り抜け、ミスパスになった。パスの角度とスピードが極めて中途半端で「だれにも通らないパス」だった。これも個の力である。

【20:46】アンカーの山口蛍から、FW大迫へすばらしい長い縦パスが入った。パスコースはドンピシャだったが、なぜか大迫はトラップミスし、ロストした。これもありえないミスだ。

【22:22】自陣ペナルティエリア手前という危険なゾーンで、CB吉田が頭の高さのボールを近くにいた山口蛍に中途半端なヘディングでゆるいパス。後ろから敵にそのボールをかっさらわれ、致命的なピンチに。セーフティ・ファーストが求められるエリアで、ああいうハッキリしない軽いプレイは深刻な危機を招く。あの不安定なCBが不動のレギュラーというのは皮肉だ。

【24:17】山口蛍から前線の浅野にすばらしい縦パスが通るが、後ろから敵にカラダを寄せられた浅野はトラップミスし、ボールを失う。世界レベルでは相手の激しいプレッシャーを受けた状態で「それでも正確にプレイできるか?」が死命を制する。この試合、浅野は自分に入ってくる縦パスに対し、同様のトラップミスを繰り返していた。彼は持ち前のスピードで何度もチャンスを作っていたが、ワンタッチコントロールの精度をもっと上げる必要がある。

【25:24】右サイドの酒井(宏)からゴール前にアーリークロスが入るが、大迫のヘディングシュートはゴールから大きくそれた。あれを決め切る個の力が必要だ。この試合、大迫はコンディションが悪いのか、シュートだけでなく持ち前のポストプレイも冴えなかった。

【30:21】味方DFの後ろからの大きなクリアボールに反応し、浅野がライン裏へ鋭く飛び出し浮き球をダイレクトでシュート。当たり損ねのような中途半端なシュートが相手GKの正面へ飛んだ。浅野はスピードでチャンスを作るところまでは非常にいいが、自分で作った絶対的な局面を決め切れない。彼の大きな課題だ。

【39:42】ゴール前へ飛ぶ右からのフリーキックを吉田が頭で合わせたが、シュートはゴールの上へ外れた。飛んできたボールには充分勢いがあるのだから、吉田はあんなに頭を振り切ってシュートする必要はない。軽くボールの角度を変えて当てるだけでいい。力みすぎだ。

凡ミスをなくし攻撃力アップをめざせ

 どうだろうか? 前半を振り返っただけでも、これだけ単純なミスが随所にあるのだ。これらを直しただけでも充分試合に勝てる。しかもその多くが「個の力」不足に起因するものだ。

 日本はハリルの仕切りで、全体戦術に関してはレベルが上がった。特に守備力の伸びはめざましい。あとは攻撃で違いを見せられるかどうか? そのためにも「個の力」を上げて凡ミスをなくし、決定機を決め切る力を身に付けたい。

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「どこからプレスをかけるのか?」問題にハリルはキッチリ結論を出した

2017-11-16 08:25:30 | サッカー戦術論
ベルギー戦で修正されたプレスに行く位置

 それは日本代表で歴代随一の「無能監督」だったジーコ率いる日本代表の練習中に起こった。「どこからプレスをかけるのか?」をめぐり中田ヒデと福西が練習中に口論になったのだ。

 アタッカーである中田は前から行きたい。だがセントラルMFの福西は守備のバランスを考え、前からでなく安全策を取りミドルブロックを作りたいーー。そんな行き違いだったように思う。そのうちに監督のジーコまで論争に介入してきたが、無能なジーコは何の役にも立たずさっさと現場放棄していなくなった。

 あのときのクソの役にも立たないジーコと、ベルギー戦でキッチリ「そこ」を修正してきたハリルの姿はいかにも対照的だ。

 ちなみにこの論争は、何もジーコジャパンで始まったわけでもなんでもない。ゾーンプレスを掲げた加茂ジャパンでもそうだったし、岡田ジャパンでもそれは起こった。日本代表は歴代ずっとこの「永遠のテーマ」に悩まされてきた。そして現在も同じだ。

ブラジル戦でまたも露呈した「永遠のテーマ」

 例えば先日のブラジル戦では、プレスをかけ始める位置が意思統一できず日本は崩壊した。

 前だけが行っても2列目が付いてこず背後にスペースを作ってしまう。または1列目はプレスに行ったが最終ラインの選手がブラジルをこわがりライン設定が低すぎる。で、中盤にスペースを作ってしまい、そのスペースを敵に使われる。あるいは逆にハイプレスをかけるべき局面なのに、積極的に前が行かないーー。選手たちがフィールドでの状況を見て自己判断できず、ひどい現象が起きていた。

 なんと、それをハリルはあのブラジル戦からたった中3日やそこらでキッチリ修正してきた。あのジーコとは大違いだ。それほどベルギー戦での日本代表はプレッシングに迷いがなかった。ハイプレスに行く場面と、ミドルブロック、あるいは低くローブロックを組んでじっくり守る局面とーー。状況に応じてしっかり意思統一ができていた。

 しかも興味深いのは、ベルギー戦の前日会見でハリルがこう言い放ったことだ。

「どこからプレスをかけるのか、だって? それは私が決めるのではない。状況による」

 チャンチャン。お見事、である。得点差や残り時間、そのときの敵味方の配置はどうか? サッカーにおいては、すべてが「状況による」。こんなカンタンなことを、我が偉大なる日本サッカー界はああでもない、こうでもない、と長年結論を出せずに来た。それを一刀両断してみせたハリルのひと言は実に痛快だった。

不毛な二元論が大好きな日本サッカー界

 例えばトルシエ時代に起きた「個か? 組織か?」の不毛な議論もそうだ。そんなものは状況によるし、どちらも必要に決まっている。

 あるいはザックジャパン時代に巻き起こった「アクションサッカーか? リアクションサッカーか?」の議論だって同じだ。それは状況に応じて「使い分ける」のだ。こんなふうに日本のサッカー界は「状況に合わせて臨機応変にプレイする」という発想がなく、常に「自分たちのサッカー」一本やり。で、バカみたいな意味のない二元論にハマってしまうのだ。

 私は何が言いたいのか? それはハリルという監督は少なくともジーコより何倍も優秀だし、歴代の日本代表監督とくらべてもそれは同じだ、ということである。

 なぜ私がこんなことを改めて言い始めたかといえば、ベルギー戦をめぐるあまりに不当で見当はずれな与太記事が世間にあふれ返っているからだ。目を覆うばかりのひどさに黙っていられなくなった。日本のサッカージャーナリズムは「いかに叩くか?」ありき。公平で客観的な分析をしない。

 ジャーナリズムがこの有り様じゃあ、日本のサッカーは100年たってもベスト8なんて夢のまた夢だ。

(大胆に言ってしまうが)ベルギー戦で発揮されたハリルの修正能力を見て、私なんぞはロシア後の4年間も彼に任せればおもしろいかも? と思えてきたのだが。

 以上である。

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【国際親善試合】粘り強い守備で相手を自由にさせない 〜ベルギー1-0日本

2017-11-15 08:06:35 | サッカー戦術論
あとは「個の力」がどこまで上がるか?

 日本は前半の立ち上がりからハイプレスで入り、後半27分に失点するまで組織的な守備がよく効いていた。ベルギーに自由にやらせなかった。相手におびえていたブラジル戦とは打って変わって「戦う気持ち」が感じられた。ハリルジャパンに光明が見えてきた。あとはチャンスをきっちりモノにできるかどうか? 世界レベルではそこで試合が決まる。

 日本のシステムは4-3-3。スタメンは大迫のワントップに前線は左に原口、右に浅野。中盤は山口をアンカーに、インサイドハーフを井手口と長澤が務めた。4バックは左から長友、槙野、吉田、酒井(宏)だ。

 日本は意欲的で落ち着いた立ち上がりで、ブラジル戦のようにパニックに陥ってなかった。ベルギーの最終ラインがボールを持つと、大迫、井手口がファーストディフェンダーとしてプレスをかけた。彼らの背後の2列目も高い位置を取りスペースを消した。これでラインを高く構えて全体で圧力をかける。

 日本はこのやり方が徹底しており、後半に失点するまではベルギーにほとんど決定的なチャンスを作らせなかった。これでボールを奪ったら、今までと違いタテに急ぐのではなく、いったんバックパスしてタメを作り組み立て直すシーンが目立った。残るはゴール前での決定力だろう。初招集で先発したMF長澤和輝(浦和レッズ)もパスセンスが光った。

 逆に日本に足りないところは、ファーストタッチでぴたりとボールを止め次のプレイをしやすい位置に瞬時にボールを置くワンタッチコントロールの精度だ。特にブラジル戦ではそこの差が甚だしかったが、この試合でも日本はボールを弾いてロストしてしまうシーンが散見された。

 もうひとつは、狭いところでもパスカットされないボールスピードだ。日本人のパスはぜんぜん緩くて遅い。ワールドクラスのチームを相手にした場合、あれではパスがつながらない。ワンタッチコントロールもボールスピードも、Jリーグでは通用していたものが世界レベルでは通じない。「速く、強く、正確に」が死命を制する。

 日本は組織的にしつこく守備する粘り強い戦い方ができるようになってきた。次の課題は「個の力」をどこまで上げることができるか? だろう。

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