すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【キリンカップ総括】清武のための大会だったが修正点はある

2016-06-11 10:04:08 | サッカー日本代表
パスが自己目的化する傾向も

 キリンカップはまるで清武のための大会だった。彼はチームの中心になり、結果を出した。だがもちろん修正点もある。

 ややもすると彼はストレートにゴールを目指さず、パス自体が自己目的化するようなところがある。特に香川と組ませると短いダイレクトパスを4~5本交換したあげく、だが「前には進んでない」みたいな現象が起こる。シンプルにプレーせず、むずかしいことをやろうとしてしまう。

 清武はずっと控えの位置づけだったため、ハリルが標榜する「まずタテへパスをつける速い攻め」、「可能ならひとつ飛ばして遠くを狙え」というコンセプトがまだ血肉になってない感じがする。他のメンバーと目的意識が完全には共有できてない。

 もちろん清武レベルならスタメンで何試合かこなすうち擦り合わせはできると思うが、現状ではそこが少し気になった。

 また単なるパッサーで終わるのでなく、みずからも大胆に前へ飛び出しゴールを狙ってほしい。自在に点も取れるトップ下になれば、レギュラーはグンと近づくだろう。

 もうひとり、気になるのは柏木だ。彼は敵のプレッシャーのない状態でなら自由自在にプレイできるが、厳しいプレスを受けると何もできなくなるようなところがある。また相手ボールのとき、強度のある守備ができない。対戦相手が引いてくるアジアレベルでなら通用するが、W杯本大会を考えた場合にはまだまだだ。

 長谷部の相方選びは、ハリルジャパンの浮沈を決める重要課題になりそうである。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【キリンカップ決勝】「世界レベル」とやれた意義あるゲーム ~日本1-2ボスニア・ヘルツェゴビナ

2016-06-08 08:48:12 | サッカー日本代表
後半のガス欠を修正したい

 本田と香川のいない形を試せた意義のある試合だった。結果は「手応えアリ」だ。日本はリズミカルにパスが回り、いいリズムでチャンスを作っていた。両チームのストロング・ポイントが噛み合い、緊迫した好ゲームになった。

 清武は中盤の核となり、短いダイレクトパスを織り交ぜながらゲームを作った。宇佐美はキレまくりだ。独特のリズムをもつドリブルでチャンスを作った。浅野も一瞬の飛び出しでウラへ抜け出す能力を示した。欲をいえばもっとタテに速い鋭い攻めを見たかったが、清武がいるぶん普段のハリルジャパンと違いややポゼッション寄りの展開になっていた。

 ただし日本は後半、ガックリ運動量が落ちる。シリア戦やブルガリア戦でも見られた現象だが、走れなくなったら低めにブロックを作って前から行かない守備をするなどメリハリを利かせたい。ハリルは多発する後半のガス欠を分析し、しっかり修正してほしい。

 フィジカルで完全に負けていたのも大きな課題だ。日本の選手はカラダを入れられるとボールが取れない。この点は一朝一夕には無理だが、例えばフィジカルにはフィジカルで対抗するのでなく、必ず2対1の形を作って組織で行くなど代案を考えるべきだ。簡単に2失点した守備面もゼロから見直す必要がある。

ボスニアは非常にいいチームだった

 ボスニアはカウンターが鋭いシャープなチームだった。中盤のプレスも速く、アタッキングサードでは積極的にクロスを入れてくる。ディフェンスラインはきれいなフラット4で、ボールがオープンか、クローズかによって機敏にラインを上下動する。

 特に目を引いたのはトランジションのよさだ。彼らのディフェンスは寄せが速く、日本の選手はボールを持っていったん後ろを向いてしまうとすぐ囲まれていた。またイーブンなボール(こぼれ球)に対する反応がすごく速く、(ブルガリアなどと違って)非常に意欲的な好チームだった。

 リードされた終盤、日本は何度もチャンスを作って粘ったが、あそこで1点取れるかどうかが、世界を引き寄せる分水嶺になるのだろう。

 選手別では、途中出場の遠藤航は、敵ボールホルダーの背後にぴったり張り付き絶対に振り向かせないタイトなディフェンスが光った。彼はいい縦パスを何本も入れていたし、存在感を示した。また試合後、肝心な場面でシュートを選択できなかった浅野の涙もファインプレイだった。あそこで「悔しがれるかどうか?」がすごく大事だ。若い2人の熱さに打たれた。

 ハリルは本田と香川の穴をうまく埋めながら若い選手を試すトライをした。試合内容だけでなく、選手起用もアグレッシヴな好ゲームだった。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【キリンカップ分析】厳しいプレスを受ける中でどれくらいやれるか?

2016-06-06 10:43:35 | サッカー日本代表
ノー・プレッシャーならできて当たり前

 ブルガリア戦(7-2)の大勝に世間は沸き返っているが、「ああ、またか」という感じだ。メディアは大見出しで景気のいい記事を書けば売れるから毎回イケイケ・ドンドンになる。そもそもキリンカップという花試合で、日本が相手を内容的に蹂躙した例など枚挙にいとまがない。

 確かに日本のデキはよかったが、あの大勝には隠れたアシスト役がいるのを忘れてはいけない。観光気分のブルガリアだ。

 日本の得点シーンで、ブルガリアがどんな守備をしたか?

 1度切り返されたらあきらめてもう追わない。あと1歩足を出せばカットできるのに棒立ち。自陣ゴール前でシュートがくる寸前なのに足を止めてボーッと眺めているだけ(完全なボールウォッチャー)。そんなシーンのオンパレードだった。

 そもそも日本ボールのとき、彼らの中盤でのプレスはユルユルだった。あれなら去年、親善試合で戦ったイラン代表のほうがはるかに激しかった。あのとき日本はまったく何もできなかった。

 相手のプレッシャーさえなければ、できて当たり前だ。昔とくらべ技術レベルが上がった日本代表はもうトルシエ・ジャパンのころから、プレスさえなければあれぐらいはできていた。

 問題は、相手の厳しいプレスの中でどれくらいやれるか? それがW杯本大会での戦いだ。キリンカップ決勝のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では、そこを見たい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【キリンカップ】観光気分のブルガリアを撲殺した参考外のゲーム ~日本7-2ブルガリア

2016-06-04 09:55:22 | サッカー日本代表
まったく強化にならない試合

 前半、ブルガリアDF陣は「秋葉原へ行ったら何を買うか?」で頭がいっぱいだった。観光気分の彼らは守備がまるでユルく、球際の激しさどころかカバーリングさえサボっていた。なんと彼らは5点取られるまで眠りから覚めない。結局、この日の試合が始まったのはブルガリアが後半に1点取り、本気になってからだった。

 しかも前半の日本は少なくとも2回、観光気分のブルガリアに致命的な決定機を作られた。彼らがまだ寝ていてくれたおかげで失点しなかったが、あれを両方決められていたら試合はどうなっていたかわからない。

 日本は5点取ったあたりで目に見えてメンタルが緩み、その後ミスがらみで2失点したが、きっちり無失点で抑えなければ意味がない。スポンサーがらみとはいえ、あんな弛緩した試合をやっていたのでは強化にならない。アウェイでの真剣勝負が必要だ。

清武は日本の秘密兵器になる

 日本は最終ラインをしっかり押し上げコンパクトにやっていた。連動したプレスの掛け方やマイボール時の距離感もよく、ブルガリアが眺めているだけの守備だったせいもあり気分よく試合を進めた。おかげで柏木はほとんどドフリーでボールを持てやりたい放題。「厳しいプレッシャーの中でどこまでやれるか?」が彼のテーマだけに、楽勝したチームともどもなんの目安にもならない試合だった。

 そんな参考外のゲームではあるが、7点目のPKを呼びこんだスピードあふれる浅野の突破には未来の光を見た。また途中出場の宇佐美が必死で粘り強い守備をやっていたのも印象に残った。「やっと彼にも危機感が芽生えたか」という感じだ。

 そのほか清武の正確無比な七色のパス出しや、香川が3点目で見せた超絶トラップもさすがと思わせた。清武と香川は非常にコンビネーションがよく、案外彼らを同時に組み合わせるテは日本の飛び道具になるかもしれない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする