「手のひらの花火」~山崎聡子の第一歌集~
山崎聡子さま 三日前、わが家の郵便受けにあなたの歌集。うれしかったわ。大切な一冊をありがとう。夏が始まろうとしている今、『手のひらの花火』とはタイミングのいいこと。すこし危ない気配の漂う歌集ですね。いま51頁を読んでいます。
★手のひらに西瓜の種を載せている撃たれたような君の手のひら
君は危ない男かもしれない。「気をつけてね。聡子さん」 あなたとの出会いは短歌研究三賞の授賞式、注目の新人賞の山崎聡子、その隣に立った評論賞の私はまるであなたの保護者でした。今、いただいた歌集の三分の一を読み終えて「匂い」の歌の多いとに気づきました。嗅覚が鋭いですね。すぐれた歌人たちは五感が抜群ですから、嗅覚はあなたの武器。
★理科室のホルマリンに似た甘い香が夏の土から匂い立つなり
★雨の日のひとのにおいで満ちたバスみんながもろい両膝をもつ
★演劇部顧問のあまい体臭が照明ルームの暗さににおう
★この部屋は沼の匂いがするよねと、金魚のシャツを着た君が言う
そのほか●死ぬときはプールの匂いを ●ピエロの動物じみた体臭 などなど
さて、今まで読んだなかで私の一番好きな歌は
★終バスに浅い眠りを繰り返しどこにでもゆく体とおもう
ゆったりした調べに私のすべてが解放されて深く眠ってしまいそう。今、気温は22度、このまま時が止まってくれたなら。今日はここまでにします。くれぐれも「君」には気をつけてね。
5月28日 あなたの保護者 松井多絵子
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