「朝日歌壇5月27日」 ~独りになりたい男たち~
3・11以来「絆」という言葉が氾濫している。にんげんは一人では生きていけない。人と人との絆あってこその世ではあるが、人との関わりはときには重荷にもなる。今週は独りになりたい男の歌を4人の選者の入選歌から、1首づつ取り上げてみる。
<馬場選>
★校長を終へにし友が真昼間の温泉に深々と瞑想してゐる
(行方市) 額賀 旭
定年退職した校長が温泉に浸かりながら瞑想しているのを妨げないように見ている作者。在職中は、教師、生徒、父兄などの人間関係で気苦労が絶えなかったであろう。
<佐佐木選>
★お笑いの内に潜める個を想う「ああ、いやんなっちゃった」牧伸二逝き
(町田市) 富山 俊朗
人を泣かせるのは易しいが笑わせるのは難しい。牧伸二は高齢にもかかわらず人を笑わせる仕事をしていた。辛かったのではないか。「ああ、この世がいやになっちっゃた」が遺書?
<高野選>
★二次会へゆく人達に見送られわれは一人で二次会へ行く
(東京都) 近藤 しげを
二次会は本音で話せる場である。とはいうものの気安く離せない場合もある。気を遣いながら飲む酒は酔えない。一人の二次会とは気が利いていますね。
<永田選>
★枕木に歩幅あはせて歩みたり廃線となりし一駅区間
(長野県) 沓掛喜久男
廃線になった線路の一駅区間はまるで一行の詩。枕木は言葉か。線路を歩く男の孤独、
春の野の男の孤独、長野県の。 5月27日 松井多絵子
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