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鳥居さんのフランス

2017-03-03 09:25:37 | 歌う
     鳥居さんのフランス

 現代短歌新聞3月「力詠13首」に鳥居さんの作品が載っている。昨年2月4日のこのブログで初の歌集「キリンの子」を刊行した鳥居さんのことを書いた。姓だけで名はない。年齢も本名も住所もわからない。2歳のとき両親が離婚し、母は自殺、里親に引き取られるが追い出されホームレス生活数か月、夜の街で働く人の歌会で短歌を詠むようになったとか。セーラー服にオカッパの可愛いい女の子だが、女の年齢はわからないほうが面白い。
 
 その鳥居さんの近詠のタイトルが「フランス」 短歌のほかにも舞台「真夜中の鉄腕アトム」のアトム役、「多様な教育機会確保法案」への意見提出などで活躍している。

 ◓ オペラとは駅の名である街にゐて私は朝のパンを買ひゆく

 ◓ 帽子屋の窓は磨かれ晴天に行き交う雲の航路映せり

 ◓ うらがはに回れば時計は逆向きに巴里の都の時を刻めり

 ◓ 樅の樹を背負ひて来たる少年は聖夜の市に裸足で佇てり

 ◓ 靴音は靴をはなれて響きそむ夜の地下道ふかく歩めば

 ◓ タクシーの席より見れば街の灯は左右に分かれとほり過ぎゆく
 
 ◓ 花街の灯をかきわけてゆくタクシーの後部座席にわれは眠りつ

      
 以上、力詠13首「フランス」のなかから7首抄出した。不幸な生い立ち、ホームレスも体験した鳥居さんが聖夜の巴里にいたのだろうか。これらの歌は夢ではないようだ。彼女はいつのまにか舞台女優にもなっていたのだ。まるで中学生のようなオカッパの顔写真は愛らしい。

  鳥居さん 次の力詠は「火星」ですか。 3月B3日 松井多絵子