えくぼ

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おぴにおん・浜美雪

2017-03-01 09:39:09 | 歌う
        おぴにおん・浜美雪の「甘さ」 

 
 今日から3月、朝刊・朝日のリレーおぴにおん「甘さと日本人」ライター・編集者の浜美雪のご意見である。彼女は1955年生まれ。旧日本興業銀行勤務を経て編集者に。現在は伝統芸能や映画などについて執筆している。著書に「落語師匠噺」など。

 ✿ 絨毯の上で骨折したなんてアナタは甘いメリーウイドゥ  松井多絵子

「落語にはいろいろな魅力がありますが、近頃、とみにしみるのが「甘さ」です。噺のなかに甘い物はあまりでてきません。「まんじゅうこわい」や「長短」のまんじゅうか「、花見小僧」の桜餅ぐらい。「甘さ」をいちばん感じるのは人間関係です。今の日本人とは対照的に落語国の住人たちは、のべつけんかしています。でも心底憎みあっているわけではありません。勘当された若旦那であろうが、ばかな与太郎であろうが「落ち着けゃ一人前」の超そそっかしい亭主であろうが、決して彼らを全否定するところまで追い詰めません。

 口うるさく文句を言いつつも、駄目なところも一つの個性として受け止めるし、さりげなく助け舟をだすこともある。甘えと人情、照れとのんきさが混ざって醸し出す、えもいわれぬ「甘さ」を含んだ人間関係、。そんな気のおけない人づきあいが減ってきているような気がします。ふとした発言や書き込みでネットが炎上するなんてことは、いま日常茶飯事です。

 面倒で厄介だけれど甘さたっぷりの関係を守り続けているのが落語の子弟関係。師匠はどんなにできが悪かろうが弟子にした以上は、一人前になるまで自腹で面倒を見ます。弟子は入門後、数年は師匠の身の周りの世話にあけくれた後は生涯、師匠と親子以上に濃い絆、、。

 一時はエンターテインメントの主流から外れた感のあった落語ですが、何度かのブームを経て人気が定着しつつあります。みんなどこかで落語の甘さを求めているからではないでしょうか。落語では甘さをどんなに摂取しても大丈夫、笑いは血糖値を下げてくれるはずですか。ここで浜美雪の「おぴにおん」は終わっている。

 浜美雪さま あなたも落語をなさったら、私を弟子にしていただきたいです。

         笑いながら長生きしたい。松井多絵子