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梅内美華子の推敲法

2016-02-01 09:32:42 | 歌う

               ・・・ 梅内美華子の推敲法 ・・・

  角川「短歌2月」は歌人の推敲法特集。一匹の蜘蛛から「黒歴史」に発展する梅内美華子の歌はふと思いついた1首ではない。そのプロセスを彼女は次のように書いている。

 ① 曇り日の窓は一面ねずみ色 蜘蛛が一匹旅をしている (原作)

 ② 嘆きつつ熔けゆくやうな友がゐて冬の窓辺に身を傾ける (原作)

 ①はこのままでよい気がしたが 曇りとねずみ色が同系色で単一な感じだ。「ねずみ色」のねずみと「蜘蛛」はどちらも動物で、イメージがかえってバラバラになる。蜘蛛が這うことを擬人的に「旅をしている」と表現したが、なんか幼稚な気がしてくる。

 ②は自分の失敗を問わず語りしている友人の、力がぬけてゆくような様子を書きとめた。が 嘆いている友人をもっとインパクトがあるように描きたかった。「酔いつぶれて非常階段で寝てしまった。それを男の先輩に起こされた」 ことを 「私の黒歴史」 とメールに書いてきた友達がいた。

 ✿ 黒歴史告げて去りゆく友のよう冬の窓辺をよろぼふ蜘蛛は (推敲後)

 「落ち込んでいる友人を蜘蛛の弱々しい様子に重ねた。原作①と②をミックスさせて1首にした。推敲のときに心掛けているのは、関連した語の重なりを避けること、ありがちな擬人法や比喩を避けること、現代的な言葉を取り込むこと。考え直すときに足し算、引き算をしているようなものだとおもう」と。ベテランの梅内でも推敲は字余り、字足らずにも注意している。

 短歌を始めたばかりの頃、あれもこれもと1首のなかに盛り込み、歌会でセンパイから短歌は小さな器、ほんの一言しか言えないと注意された。私は言葉の減量を心がけたら「あっさりさりしていて物足りない」など言われたり、1首を作るには「足し算」「引き算」をしなければならない。オシャレだって装飾過剰では見栄えがしないし、あっさりしすぎても、、ね。(了)

                             

       短歌速報

☀第67回読売文学賞{詩歌俳句賞} 小池光歌集「思川の岸辺」 (KADOKAWA)

 小池光さま  おめでとうございます。お隣の家の池の光りを眺めています。

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