ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Bye Bye Blackbird Ⅱ

2009-01-09 03:21:22 | Weblog
インプロヴィゼーションの題材探しは難しい。いくら名曲でも即興演奏には向かない曲がいっぱいある。またその逆もある。たいした曲ではないのにどこかいいところがあり、ジャズミュージシャンがうまくクッキングすることによってジャズスタンダードと呼ばれて名曲の仲間入りをすることもある。音楽を作るというのは12個の音を組み立てる、コンポーズするということではあるけど、それがあまりにも緻密で強固だったら、インプロヴィゼーションの入る余地がなくなってしまう。ジャズという音楽が初期の頃その演奏の素材として、親しみやすいポップ曲を選んだのはもちろん聴衆にとっての分かりやすさというのもあったけど、純粋に音楽的な理由もあったのだ。歌いやすいメロディーと美しいコード進行、これは音楽を組み立てる上で土台だけがしっかりあってその上に好きなものを好きなように建築してくださいと言っているようなものだ。ジャズスタンダードとしての資格はその点にある。これは実は作曲家は常にやっていることで、大シンフォニーももとをただせばこういう過程で作られている。ただジャズという音楽は即興でそれをやる。人間だからミスをする。他人がやっても自分がやってもそのミスを寛容の精神で許す。これがジャズが20世紀の前半から世界中に受け入れられ偉大な文化を形成してきた理由だ。確かに商業音楽としては下火になったかもしれないけど、ジャズから人間が学ぶべきことはまだまだいっぱいある。

Bye Bye Blackbird

2009-01-06 00:51:28 | Weblog
この曲はジャズミュージシャンが作ったジャズインプロヴィゼーションのための曲ではない。作曲はRay Hendersonだ。歌詞の内容や時代背景を解説するつもりはない。それはもっと詳しい人がいる。ジャズミュージシャンが作曲したジャズインプロヴィゼーションのための曲に絞って書いてきたのはその枠をはずすとスタンダード曲一般になってあまりにも膨大な範囲になると思ったからで、このブログもこんなに続けられるとも思っていなかったこともある。ジャズミュージシャンが作曲した曲は他にも無数にあるけどあまりなじみのない曲のことを書いても何の意味もないので、この際ボクが薀蓄をある程度語れるスタンダード曲に範囲を広げて自分自身の解釈の確認も含めて書いてみます。
Bye Bye Blackbird、こんな曲といったら失礼かもしれないけどよくこの曲をインプロヴィゼーションの素材に選んだなというのが正直な感想だ。この曲をスタンダードにしたのはマイルスだ。50年代から60年にかかる頃までさかんにやってたようだ。サッチモもやっていた。マイルスはそれを聞いたのかもしれない。当時のジャズミュージシャンのレパートリーの選び方から想像するとその可能性が高い。サッチモはマイルスのアイドルだ。サッチモの独特の感性で選んだ曲がマイルスの心にヒットしてマイルスのやり方でモダンジャズの世界に広まった。そういうことにしておこう。これはボクの想像の世界ということで許してもらって・・・。もしマイルスの演奏を聞いてなかったら、この曲を自分のレパートリーにする勇気はボクにはない。アドリブの素材には無理だと判断してしまう。素材選びのセンスは音楽の才能に直結する。そういうことだと思う。インプロヴィゼーションの素材としてのスタンダード曲という視点で次回からこの曲について書いてみます。