ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Willow Weep For Me Ⅱ

2009-09-04 23:33:21 | Weblog
「音楽」を作るための「音」という素材、これをどういうふうに整理し人間が分かりやすい仕組みにするか?これが数百年前までの人類の課題だった。それを解決したのが12音平均律だ。これは数学のポアンカレ予想が解かれたようなものではなく、いわば妥協案をみんなで納得したようなものだ。オクターブの中に12個の音が整然とならんでいたら音楽をつくるのに都合がいい。この案は実は何千年も前からあった。でも確定させるのに大変な時間がかかった。この案のいいところはひとつの音が絶対的な権力を持つのではなく、状況しだいでそれぞれの音が独立して中心になれるところだ。転調だ。でもその代わりに12個の音の間の音はその近くの音に吸収されてしまった。派生音や導音、そしてブルーノートも似たような扱いを受けている。ピアノを学習すると初期の頃から先生に言われることはみんな同じ「歌いなさい、歌いなさい」、12段階に区切られた無味乾燥な音を歌のように弾いて12個の間の音までも感じさせて音楽に潤いを与えなさい。これがピアノの演奏技術のイロハであり最終目的だ。ここにブルーノートが加わるともっと技術がいる。ブルースを弾くためにジャズピアニストはいろんな工夫をしてきた。「ブルースらしさ」を感じさせるためにたくさんの新しい技術を開発してきた。ジャズは人間のいじらしいほどの工夫がつまった音楽だ。