今日は「'Round Midnight」について・・・。録音は'64年の2月、ソニーロリンズのアルバムに収録されたテイクだ。この頃ハービーはすでにマイルスとギグをこなしている。ソニーとはこの前年頃からちょくちょく一緒にやってたようだ。この頃のソニーのバンドのレギュラーピアニストはポールブレイだ。ブレイを雇ったアルバムもあるけど、この時はなぜかハービーを使った。この点についてはミュージシャンの世界は単純明快だ。ソニーはハービーのピアノが気に入ったのだ。この何年か前だけどドナルドバードもデュークピアソンに変えてハービーを雇っている。ブレイもピアソンも一流といっていいレベルの腕の持ち主だ。でもハービーのピアノはそれ以上にドナルドバードやソニーロリンズの心にヒットしたんだろう。ハービーハンコックというのはそういうミュージシャンなんだ。「'Round Midnight」はマイルスバンドの重要なレパートリーで有名なお決まりのアレンジもある。多分マイルスは十数年クラブギグの時は毎晩この曲をやっていたと思う。ハービーもずっとやらされていた。でもハービーが参加してレコードになったのは、マイルスの死後に発売された「Plugged Nickel」のライブ盤だけだと思う。このソニーのアルバムではアレンジはほとんどというか全然なし!まあソニーロリンズという人はそういう人なんだ。長さもレコーディングサイズでワンコーラス半、それだけだ。でも聞きごたえがある。ソニーのバラードはワンコーラスでお腹イッパイだ。後はハービーがサビ、そして最後の8小節ソニーが吹く。なんといってもハービーのバックでのヴォイシングが素晴らしい。なんという音楽的教養だろう。いろんな評価があるかも知れないけどひとつ言えるのは、ハービーはコードを弾く時もちろん高いレベルでの音楽的イメージを描いているとは思うけど、結果としての「音」はあまり気にしていないと思う。音楽は結果を気にするとこういう柔らかい音にならない。他人との会話として音楽をやっているんだ。ソニーを受け入れ、ロンカーターを受け入れながら、自分の言葉のようにピアノを弾いている。素晴らしい!ソニーロリンズのアルバムの中の短いテイクではあるけど、ハービーハンコックの音楽キャリアの一端としてこのバラードはとても価値のあるものだと思う。