あぁ、湘南の夜は更けて

腱鞘炎やら靭帯断裂やら鎖骨骨折やら…忙しいッス。
自転車通勤往復100kmは、そんなこんなで自粛してました。

もったいないねぇ、いちご2000万円分(≧◇≦;)

2007年02月02日 | 雑記

10円玉 in TRY-BAG

こんなニュースで騒がしかった一日でした。


 イチゴ「とちおとめ」から基準値超える殺虫剤検出
 栃木県の上都賀(かみつが)農協(鹿沼市)が出荷したイチゴ「とちおとめ」から、
 食品衛生法で定めた基準値の約9倍に当たる有機リン系殺虫剤を、新潟市保健所が
 検出していたことが1日、わかった。

 同農協は1月31日以降に出荷した約4万パックを回収、安全が確認できるまで出荷を停止、
 栃木県も検査を始めた。同保健所は、大量に食べなければ健康被害は生じないとしている。

 同保健所が1月16日、新潟市内に出荷されたイチゴ2パックを無作為抽出して検査、
 有機リン系殺虫剤「ホスチアゼート」が0.44ppm(基準値0.05ppm)検出された。
 新潟県の検査では、0.6~0.7ppmだった。
【2007.2.1 読売新聞】



ブログ巡回をしているとこの事故を巡って、様々なエントリーがある。
危ない危ないとか、いちごは農薬漬けだとか、
うちの子どもがもしかしたら食べたけど不安だとか…。
下手すりゃ「栃木のいちごは駄目だよ」とまで…、う~ん。
で、つまんない話ですけど、その辺をつらつらと書いてみましょう。退屈ッスよ(^^;
分からない語句(農業用語や基準に関する用語)はWikipedia

この事故は大きかったけど、その本質とリスクを見誤っちゃいけないッスよ。
このいちごは一握り(恐らく1名)の生産者の無理解から起きた事故であり、
もちろん今廃棄しているいちごは恐らく問題はない。
ましてや違反のいちごをばくばく食っちゃっても健康被害が起こるとは思えない。
そういう安全係数がかかってるんですね。
 ※農薬は発ガン性があるものは現在日本では登録されていません。
  2000年を最後に不純物として極々微量のダイオキシンを含むものも失効しました。
  そういった意味では優秀な道具という側面もあるのです。
  IARCの発ガン性の分類では、グループAやB1に農薬はないんですね。
  グループAにはアルコールや"喫煙"、相当数の抗ガン剤などが入っています。
  発がん物質には閾値(この量だったら大丈夫)がない、と言われていますが、
  僕、毎日のようにアルコールを飲んでるしね。
  急性毒性という点で言えば、カフェインはホスチアゼートと同じ劇物ですが、
  お茶には200ppmくらい入っている。
  今回のいちごには0.44ppm。
  急性毒性っちゅう問題もない(急性毒性は事故や生産者の曝露のリスクですね)。
  ちなみに0.44ppmっていうのは、1000万分の4.4。
  日本人1億2000万人を集めて50人ピックアップするくらいのものです。
  宝くじの年末ジャンボが0.1ppmくらいです。あたらないッスよ(^^


いちご栽培は苗作りから始まって1年半以上。農薬なしで栽培することはまずできない。
僕が一生の間に風邪薬や虫刺されの薬、傷薬、湿布薬なしではすまないようにね。
うちの農産物は慣行栽培よりはるかに農薬を抑えているけど、まぁ使います。

まずは当該のいちごの危険性の話…、
ホスチアゼートの許容一日摂取量は、ADI=0.001mg/kg・bodyweight/day。
50kgの人であれば毎日114g食っても大丈夫だ。毎日生涯に渡ってですよ。
毎日365日いちごを食える身分ってのは却って羨ましいぞ。

他の食品にも残留してるかもしれないじゃない!という心配はあまりしなくていいッス。
ホスチアゼートって何かというと殺センチュウ剤で、
販売されている商品は全て播種時や定植時に株元に粒剤を置くか液剤を土の中に灌注するんですね。
いちご栽培では定植前に粒剤を圃場に混和します。栃木では7月下旬くらいかな。
作物にはかけない、普通は。
で、一般にはあまり検出されない農薬です。
時折小カブや大根から検出されますが、微量ですねぇ。
「検出器よ、よく見つけたな!」という程度。

さて、基準値ですけど、ホスチアゼートは0.05ppm。
これは農薬登録保留基準値というものを基にした食品衛生法の暫定基準値です。
農薬登録保留基準は作物残留試験を行い、適切に使用する基準
(休薬日数や濃度、量など)を定める際に使用されます。
つまり、いちごに対して適切に決められた通りに使用していれば、
どう転んでも0.05ppm以上は残留しないのですね。
これ以上残留するなら農薬としてのいちごに対する登録を取り消されちゃう。

つまり0.44ppm残留していたってことは、「何かの間違いがあった!」

僕はこちらの方が問題だと思っている。
現在JAでは農薬の適正使用と記帳運動というものが進められ、一定の進歩があったと思う。
だけど、中には"わかっていない"生産者がいる。
また、トレーサビリティシステム(追跡調査の仕組み)を作り上げている。
想定しない事故商品が届けられた場合、生産現場までさかのぼり、
また危害の拡大を防止するために消費者まで辿れる仕組みですね。
今回は生産者まで辿れなかった
(本当は収去した県の職員がいちごの箱の生産者名を控えなかったからじゃないかな)。
よって原因の追究に難航し、JA全体のいちごの出荷自粛となってしまった。
でかいねぇ、この損失。

うちの扱う農産品はすべて仕様管理されているし、生産者の記帳もばっちりです。
僕の出張っていうのは産地でその記録がきちんとなされていて、
法に沿って点検されているのかを確認するものです。
万が一の食品事故の際には、消費者危害だけでなく産地の損失も小さくなるのですね。

重ねて言うけど、いちごはそれほど危険なものではなかった
(法律違反は違反だけどね)。
問題はそこにはないのです。今のご時勢に言う、管理の甘さでしょうね。

食べちゃった人、大丈夫ですよ(^^
僕なら食べちゃうな。いちごだぜぇ!
ただ、この生産者のものだと分かったら食わない。
それは、この生産者に
「安心できる食べ物を喜んでくれる消費者のために作っている」
という意識が恐らくないからです。ふざけるなよ、と。

◇本日の自転車◇
今日はお休みなさい...zzZ

0.00km

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