とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『目の見えない人は世界をどう見ているか』(伊藤亜紗・著)

2016-03-01 17:57:25 | 読書
 タイトル通りの内容の本です。そしてそれはたくさんのことを私たちに教えてくれ、大切なことを考えさせてくれます。

 大学生のころから働いて数年の間、10数年テレビのない生活をしていました。ラジオが友達です。テレビの音声を聞くことができるラジオでテレビの音声を聞くこともありました。スポーツ中継など、見えないからこそさまざまな想像をしていたことを思いだします。今、テレビでしかスポーツ中継は見ませんが、逆に集中力が落ちて何も見ていない状態になっているかもしれない。この本を読みながらあのころのことを思い出し、目の見えない人のものの見方を想像するとともに、目が見えることが逆に見えなくしているのかもしれないと思いました。

 この本で学んだことをいくつか書き残します。

 「視覚がないからこそ死角がない」
目の見える人にとって視覚があまりに大きな情報であるために、見えない部分がないものとして考えてしまします。しかし目の見えない人はこの「視覚バイアス」とでも呼んでいいものがないため、物事を俯瞰して見るようになります。逆に冷静に判断できる場合もあることがわかります。

 「『見る』を目から切り離す」
「読む」という行為は視覚の行為のように思われますが、点字を「読む」ことも読むことであり同じ行為です。すると「読む」という行為は五感の行為ではなく脳の活動であることがわかります。同じように考えると「見る」という行為も実は視覚だけを使っているのではないと考えることができます。さまざまな感覚を使って私たちはみているのです。目の見えない人の見かたを知ることによって、目の見える人のものの見かたも改めて考えさせられます。

 「自立とは依存先を増やすことである」
 「自立」というのは他人に依存しない生き方のように思っていましたが、実は逆なのではないか。依存できることが実は自立なのではないかという新たな示唆です。「目からウロコ」的な名言です。

 「障害の原因は社会にある」
 目の見えないことが障害なのではない。見えないから何かができなくなる、それが障害なのだという考え方が示されます。これも「目からウロコ」です。

 他にもこの本を読みながらたくさんのことを考えました。考えさせられました。

目の見えない人のことを知ることは、目の見える自分自身を知ることです。当たり前だと思っていたことが実は当たり前でなかったということがわかり、大切なことが見えてきます。そんな本です。

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