まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

『悪童日記』または学校ってなによ?

2009-06-18 11:27:02 | 教育のエチカ
新カテゴリー「教育のエチカ」です。
エチカというのはエシックスの元になったラテン語で、
「倫理」ないしは「倫理学」という意味です。
「教育の倫理」とか「教育の倫理学」でもよかったのですが、
まあなんとなくオシャレな感じなのでエチカにしてみました。
これも前々から狙っていたテーマだったんですが、
こんなニュース↓に出会ってしまったので、急遽立ち上げることにいたしました。

「敏腕女子高生スナックママ逮捕」

16の頃からスナックでホステスとして働いていた通信制高校生が、
食品衛生責任者の資格を取るなど勤務態度を評価されてママに昇格し、
年上のホステス7人を使って店は繁盛していたんだけど、
経営者の男が公安委員会の許可を取っていなかったので、
風営法違反で逮捕されてしまった、というニュースです。

こういう話、痛快で好きだなあ。
「生きる力」を感じるなあ。
彼女はこのところ高校を休学状態で、
「働いているうちに学校が面倒になってしまった。今はちゃんと高校を卒業したい」
と反省しているそうだけど、
でも彼女は高校に戻って、いったい何を学べばいいんだろう?
高校で風営法のことなんて教えてくれないし。

教育のエチカというのは、
教育に関していろいろなレベルの倫理学的な問いを立ててみようという試みですが、
その中でも最もラディカルな(根本的な)問いというのは、
そもそも教育するというのは善いことか悪いことか?
そもそも学校という制度は善い制度か悪い制度か?
といった問いでしょう。
よい教育者や、一般的な教育学者はこんなことを問題にしません。
善いという前提のうえで、よりよくするにはどうしたらいいかを考えるわけです。
倫理学者はその前提の部分まで(いちおうは)疑ってみるのです。

この問題を考えるうえで、すごーく考えさせられるのが、
アゴタ・クリストフの『悪童日記』です。
高校の図書館司書の方に「お奨めの本は?」と聞いたら、
間髪を入れずにこの本を答えてくれたので早速読んでみたところ、
ムチャクチャ面白かったので、今私のイチオシです。
双子の兄弟が田舎で貧乏暮らしをしているおばあちゃんのところにあずけられるという、
『佐賀のがばいばあちゃん』と似たようなストーリーですが、
ああいう明るさがまったくありません。
ズシーンときます。
でも痛快なんです。
そして、教育ってなによ? 学校ってなによ? って考えさせられます。

あまり本の中身の話はしたくありません。
とにかく読んでほしいのですが、
この2人は今流行りの「自己教育力」「自己学習力」がずば抜けていて、
学校なんかまったく行かずに、
自分たちでどんどん「生きる力」を身につけていってしまいます。
その代わりに常識とかモラルは欠如したままです。
常識的な倫理学者ならば2人の行動に対して突っ込みどころ満載なんでしょうが、
非常識な倫理学者である私の目には、2人はとても素晴らしく映るのです。
痛快なのです。

もうすぐ教採(教員採用試験)を受けようという人にはちょっと酷かもしれないけれど、
まだ教採はしばらく先だという人、
教採に受かってもう「先生」をやっている人にはぜひ読んで、
教育とは何か、学校とは何か、を考えてみてほしいと思います。
そして自分なりの答えをコメントでもメールでもいいので教えてください。
私も折に触れてこの問題について書いていこうと思います。

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