本の読み方の設計図。

本の構造を明らかにしていく。
論拠・主張

論証=事例、引用。

脱「目的なき上昇志向」:松山情報発見庫#227

2005-07-20 00:00:00 | 松山情報発見庫(読書からタウン情報まで)
『希望のニート』,二神能基
「ニートは働く意欲のない若者」というのは誤解である。
筆者の見解は一貫してこのようなものだ。

ニートが生まれる背景となる理由として、
a.若者が企業において取替え可能な消耗品としての性格を強めていること。
→昔は「新卒の学生を育てて年収1000万円にする仕組みみたいなものが会社にありました」(73ページより)といわれるように、新しく若者を育てるという視点が希薄化してきた。
b.「自分らしく働こう」「好きなことを仕事にしよう」とう圧迫が強い。
→まだ仕事をしていない若者に好きなこと、自分らしさはそう簡単にわかることではない。
c.厳しい就職状況
d.劣悪な労働環境
→低賃金、長時間労働
e.大きな会社、良い学校、良い成績というような目的なき上昇志向
→本来は、なぜそうあるべきかという「目的」があるべきなのにただ、目標として「よい」とされるものを追求していこうという姿勢ばかりが強くなってしまっている。
f.親が仕事について語れていない
g.親が過度に子供のことばかりを考えすぎてしまう。
→まずは、親自身が人生を楽しまなければ、子供も人生を楽しめなくなってしまう
h.物欲が極端に少ないの、働くこと自体にやりがい、楽しみがなければ続かない
i.多様な異なる世代間での交流が少なくなったため働くリアルといてのモデルに直接接する機会が少ない。

といったようなことが複合的に重なり合うことで、今のニート、フリーターなどの問題が生じていると著者は分析している。
これまで、多くの本で述べられてきた問題点を実際に彼らと接した経験からわかりやすく端的に述べている本だ。
ちなみに、著者は、松山ではそこそこ有名なあの寺子屋、二神塾と関係のある愛媛出身の方のようだ。

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ちなみにこの本の題名は、
「ニートが定年者と語り合うことで、教えたいという高齢者の欲求の対象になる。
 また、高齢者の経験は若者である彼らにとって羨望の的であり、コミュニケーションの中から、定年者と自分たちの違い、同じ所を感じるところから希望を見出せれば」
「ニートという存在自体が、このように考えれば昨日のある存在じゃないか」
というような著者の願いが込められているようだ。
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