がん(骨肉腫)闘病記

抗がん剤治療、放射線治療、人工関節置換手術、MRSA感染、身体障害者となっての生活の記録を残します。

MSN産経ニュース 法廷ライブ

2008年12月28日 | Weblog
2008年12月28日 18時16分記載

MSN産経ニュース( http://sankei.jp.msn.com/  )では、「法廷ライブ」と銘打って、公判廷を詳報している。(参照URL http://sankei.jp.msn.com/court/court.htm )



その中の朝鮮総連事件の第27回公判(12月11日)の一部を見てみよう。(参照URL http://sankei.jp.msn.com/etc/081215/etc0812151301000-n1.htm )



「《満井忠男被告の弁護人は、緒方重威(しげたけ)被告が報酬として満井被告から受け取ったとされる金を、逮捕後に朝鮮総連に弁済した際に作成された確認書に関する質問を始めた》
 満井被告の弁護人「緒方被告が1億5000万円を弁済した確認書は何日付けのものですか?」

 B検事「覚えていません」

 満井被告の弁護人「7月12か13日ごろに書類(確認書)が出てきたと思いますが…」


 B検事「その日に取り交わされたものかと思います」

 満井被告の弁護人「取り調べで、その確認書を満井被告に示したことはありますか?」


 《満井被告の取調中に確認書を見せることで、検察側は、緒方被告が1人だけ罪の軽減を図ったかのような印象を満井被告に与え、「情報操作」したと言いたいようだ》

 B検事「逮捕した日の夜の取り調べで、満井被告が『朝鮮総連から金を受け取ったので、被害弁償をしたい』という話だったので…」

 《質問内容とは異なる回答を始めたB検事に、満井被告の弁護人は説明を遮って再び質問した》

 満井被告の弁護人「確認書は満井被告に見せたことはありますか?」

 B検事「あります。満井被告自身も『弁護人を通じて緒方被告から金を返してもらい、総連に被害弁償したい。弁護士が来たらそのように伝えてほしい』と言っていました」

 《B検事は確認書を見せた理由を続けた》

 B検事「確認書を見て『満井被告自身、(確認書が)できあがってるのかどうかを知っているのか』と思い、取り調べで読み上げました」

 満井被告の弁護人「満井被告は知らなかったですよね」

 B検事「書面を見ても知らないようでした。緒方被告が確認書をどういう経緯で作ったのか知らないので、満井被告が『弁護士に聞いてみる』ということで話が終わりました」

 満井被告の弁護人「満井被告は『(自身の)弁護人がこのことを知っている』という前提だった様子でしたか?」

B検事「知っているかどうかは言及していません」

 満井被告の弁護人「『緒方被告が1人だけ逃げるつもりだ』と満井被告にコメントしたのではないですか?」

 B検事「ありません」

 《取り調べが不適切な手法で行われたことを指摘する質問をここでぶつけたが、B検事はよどみなく否定した。弁護人はさらに追及する》

 満井被告の弁護人「『(満井被告の)1人旅になるから、緒方被告に不利になるような供述をするべきだ』と言ったのではないですか?」

 B検事「言っていません」

 《不信感をストレートにぶつける満井被告の弁護人に対し、検事Bは具体的な説明で否定する》

 B検事「『緒方被告だけでなく、満井被告にもかかわることなのだから、(満井被告も)弁護士と(被害弁償のことを)相談したらどうか』とは言いました。『1人旅になる』なんて言っていません」

 満井被告の弁護人「本当は満井被告に『1人旅になるぞ』と言ったのではないですか?」

 B検事「そんなことは言ったことありません」

 満井被告の弁護人「(満井被告の弁護人の)○○弁護士(実名)について、満井被告の方から『信頼できるかどうか』という評価のコメントはありましたか」

 B検事「逮捕の日の夜に満井被告から『○○弁護士にお願いして、緒方被告から金を取り返してもらい、総連の弁償にあてたい』と言われました。その後、『(○○)弁護士がどう動いたかは知らない』という言及があったと記憶しています」

 満井被告の弁護人「取調官か満井被告のいずれかから、『(○○弁護士が)満井被告の弁護人ではなく、(あたかも)緒方被告の弁護人なのではないか』と、取調中にそういう話は出ましたか?」

 B検事「○○弁護士は満井被告の弁護人ではないでしょうか」

 《満井被告の弁護人は検察側の情報操作により、満井被告が自身の弁護人について不信感を抱いていたということをアピールしたかったようだが、B検事はあっさりかわした形だ。ここで休廷に入った》

《休廷時間中、満井忠男被告は法廷での発言を記録したとみられるノートを熱心に読み続けた。一方、緒方重威(しげたけ)被告は、今日の内容が直接自分と関係していないためなのか、目をつぶっていた。法廷が再開すると、満井被告の弁護人がB検事に細かい質問を続けた》

 満井被告の弁護人「満井被告の供述では、最初に総連から預かった3億円について、どう聞いていましたか?」

 B検事「在宅(任意での事情聴取)の時は、『売買に必要な経費だ』と言っていましたが、身柄拘束した後、途中からは『報酬』と言っていました」

 満井被告の弁護人「『売買に必要な経費』という説明ですが、満井被告は、どちらの負担だと言っていましたか?」

 B検事「満井被告に中身を確認したのですが、明確には説明してくれませんでした」


 満井被告の弁護人「『(共犯とされる)河江(浩司)被告や(出資候補とされた)○○薬品(法廷では実名)から要求があって、朝鮮総連側が負担する経費だ』と説明していませんか?」

 B検事「違います」

 満井被告の弁護人「捜査で河江被告がどう供述していたかは、検事同士で情報交換はしていましたね」

 B検事「河江被告の調書は見ていたと思いますが、中身は記憶にありません」

 満井被告の弁護人「3億円について、河江被告の調書を読んだ記憶はありますか?」


 B検事「正直、記憶にありません」

 満井被告の弁護人「満井被告は一貫して、『河江被告から要求された』と話していませんでしたか」

 B検事「(平成19年7月18日に)再逮捕した際の勾留質問で、『金主が要求したコスト』と話していると読んだ記憶はあります」

 満井被告の弁護人「勾留質問でそうなっているのに、聞かなかったのですか?」

B検事「満井被告は『緒方被告と河江被告に1億円ずつ報酬を渡した』と説明していたので、『(話が)違うのではないですか?』と投げかけました。満井被告は言葉に詰まっていましたが、調書を作成する過程で、『緒方被告や河江被告に対する報酬』という話でしたので、結局、『金主に対するコスト』とする弁解は撤回しました」

 《B検事は、満井被告の供述が撤回された点をふまえて、これらの資金は朝鮮総連中央本部売買の報酬だったことを強調した》

 満井被告の弁護人「7月31日の事情聴取をまとめた調書では、満井被告は(総連から受け取った)3億円は『河江とのいきさつがあった』と強く主張していませんでしたか?」

 B検事「していません。記憶では、満井被告が河江被告の悪口を言っていました。総連側から受け取ったお金を、緒方被告や河江被告に渡した。満井被告は『早期に被害弁償したい』との意向でしたが、河江被告は8000万円は使ってしまい、2000万円しか残っていない』との話でした。(検察側の)捜査で、河江被告が愛人や借金に使ったと分かったのですが、満井被告は『河江被告が使った分を(満井被告らが)弁償するのはおかしい』と言っていました」

 《B検事は、河江被告が満井被告経由で受け取った報酬の一部を、愛人などに使っていたことを明らかにした》

 満井被告の弁護人「金主から3億円要求してきたという発言はNO(なかった)ということですか?」

 B検事「満井被告は河江被告に立腹していたのです。弁償の話では、『河江被告は金を使ってしまい、現実に金が(ほとんど残ってい)ない』という流れで話していました」

 満井被告の弁護人「満井被告の不満については録取したのですか?」

 B検事「調書には入っていないと思います」

 満井被告の弁護人「捜査で河江被告に聴取した結果、分かったということですね。それを満井被告に説明したのですか?」

 B検事「逐一ではないですが、『満井被告が弁償したくても、河江被告はそうではない』と告げたことがあります。『こうこう使っているみたいですよ』と知らせたことはあります」

《満井被告の弁護人は、検察側が取調中に、河江被告の供述内容を満井被告に漏らしたことが不満なのだろう。細かい質問が続いた》

 満井被告の弁護人「満井被告が河江被告に渡した1億円のうち、河江被告が使ってしまった8000万円を、いつ満井被告に返金するとの話は、聞いていませんでしたか」

 B検事「正直申し上げて、そんなやりとりの記憶はありません」

 満井被告の弁護人「4億8400万円が朝鮮総連から満井被告に渡っています。そのことを満井被告が緒方被告に話したのは調書では4月13日となっています。満井被告が、(朝鮮総連側代理人の)土屋公献(元日弁連会長)事務所に最初に行くより前のことになりますが」

 B検事「私が証言しているのは、4月中旬に緒方被告と満井被告の間で、電話で、『総連から金を受け取る』とのやりとりがあったということです」

 満井被告の弁護人「(4月中旬の)別の日に、満井被告から、『緒方被告に金のことを話した』ということを聞いていませんか?」

 B検事「具体的な時期は記憶にありませんが、満井被告は3回、金を渡していましたが、それを緒方被告に報告していたと記憶しています。ただ、やりとりした日時については、満井被告はあいまいでした」 

 満井被告の弁護人「なぜ、調書に録取しなかったのですか?」

 B検事「あいまいなので、録取はできないと思いました」

 満井被告の弁護人「それは5月15日以降、満井被告が緒方被告に告げたとしても、(緒方被告が)事件の共謀にならないから、意図的に録取をやめたのではないですか?」

 B検事「具体的ではないので、録取はとれなかったということです」

 《満井被告の弁護人は、検察側の事情聴取や調書の取り方が不当だということを、チクリチクリと訴え続けた》

《続いて、満井忠男被告の別の弁護人が満井被告の取り調べを担当したB検事に質問する。不当な取り調べ状況を際だたせようと質問を繰り出すが、検事はこれまで通り、理路整然と切り返す》

 満井被告の弁護人「証人が今回の不動産事件の取り調べの担当に任命されたのはいつですか?」

 B検事「平成19年6月24日の1週間前ぐらいだったと思います」

 満井被告の弁護人「誰から任命されましたか?」

 B検事「(東京地検特捜部)1班の班長から『2班の応援に入ってくれ』と言われました」

 満井被告の弁護人「満井さんの取り調べの専従でしたか?」

 B検事「はい。満井さんの2回目の起訴まで専従でした」

 満井被告の弁護人「専従班の数は?」

 B検事「正確には覚えていませんが、事件を担当した2班と1班から応援にいった3人だったと思います」

 満井被告の弁護人「チームで一堂に会することはありましたか?」

 B検事「ないです」

 満井被告の弁護人「先ほど、(満井被告の別の弁護人による)質問に対し、(朝鮮総連の土地・建物の購入資金を出す金主候補だった)弁護士グループについての証言がありましたが、それはどうやって知ったのですか?」

 B検事「東京拘置所と東京地検の間を行き来する便があって、(別の被告人の)調書の写しはその便を通じ、主任検事によって配布されます」

 満井被告の弁護人「弁護士グループの担当でもないのに、その情報はわかりますか?」


 B検事「(配布された調書を読めば)わかります」

 《満井被告の弁護人は、検事チームが通常の手続きで情報共有を図っていると聞き、質問を変えた》

 満井被告の弁護人「満井さんを取り調べる間、(朝鮮総連責任副議長の)許(宗萬)さんが本件について関係ないという立場で取り調べに臨んでいたのですか?」

B検事「満井さんから話を聞く中で、許さんの発言があり、(許さんの)実名入りで調書に録取していると思いますが…」

 《許宗萬責任副議長をめぐっては、満井被告は取り調べの中で言及しても「検事に取り上げてもらえなかった」などと主張してきたが、検事との認識には相当な開きがうかがえる。この後も、満井被告の弁護人は質問テーマを次々と変えていく》

 満井被告の弁護人「(満井被告の取り調べの中で)“形式詐欺”のことを言いましたね?」

 B検事「はい」

 満井被告の弁護人「具体的にどんなことを言いましたか?」

 B検事「相手にうそを言って金を得たり、不動産登記をすること…」

 満井被告の弁護人「聞いているのはそういうことではなくて、具体的な事例は示しましたか?」

 B検事「私は満井さんに対し…」

 満井被告の弁護人「あなたは(収賄容疑で逮捕された)佐藤栄佐久・前福島県知事の取り調べをしたことはありませんか?」

 B検事「(佐藤前知事の収賄事件に絡む脱税事件で立件された)水谷建設について取り調べたことはあります」

 満井被告の弁護人「水谷建設の事件はどうなりましたか?」

 B検事「脱税は起訴されました。贈賄容疑は時効でした」

 満井被告の弁護人「水谷建設の詐欺事件はありましたか」

 B検事「助成金詐欺が…」

 満井被告の弁護人「それを証人は担当しましたか?」

 B検事「していません。私が担当したのは水谷建設の脱税事件です」

 満井被告の弁護人「助成金詐欺はあったのですか?」

 B検事「容疑事実はありました」

 満井被告の弁護人「結果として起訴されましたか?」

B検事「されていないと思います」

 満井被告の弁護人「水谷建設の助成金詐欺が起訴されていない話と絡めて、形式詐欺の話を満井さんにしたことはありませんか?」

 B検事「いえ。水谷建設の件が形式詐欺とは言っていません」

 満井被告の弁護人「直接言わずとも、『検察のストーリーに従って供述すれば、起訴しない』と言っていませんか?」

 B検事「そんなことは言っていません」

 満井被告の弁護人「(満井被告に)『検察には絵姿がある』と言ったことはありませんか?」

 B検事「言っていません」

 満井被告の弁護人「『さぬきうどんをこねるように供述を作る』といった趣旨のことを言ったことはありませんか?」

 B検事「ありません」

 満井被告の弁護人「さぬきうどんについて…」

 B検事「私がさぬきうどんのことを言ったのは、私の父が海上保安庁に勤務していたころ、高松にもいたことがあり、その際、(名物の)さぬきうどんの話をしたことはありますが、『うどんをこねるように調書を作る』とは言っていません!」

 《冷静な様子を一貫して保ってきたB検事は、ここで語気を強めた》

 満井被告の弁護人「証人は(広島県)呉市の出身ですが、満井さんが昭和19年に父とそこで最後の別れをしたという話がでましたね」

 B検事「ありました。満井さんを逮捕したとき、(満井被告から)『父がガダルカナル島で戦死した』という話がありました」

 《戦死した父親の話がでると、満井被告は目を閉じたまま天井を見上げていた。鼻はいつもより赤く、込み上げてくるものを抑えていたのだろうか》」



馬鹿馬鹿しいくらいのリソースの無駄である。取り調べ過程を全部録音・録画しておけば、それで済む話である。



捜査当局には、こんな時間の無駄遣い・税金の無駄遣いをしなくて済むよう、すぐに取り調べ過程の全部録音・録画を行うよう求めたい。

日本国憲法第38条第3項

2008年12月28日 | Weblog
2008年12月28日 15時25分記載

「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。」




YOL配信記事(参照URL http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20081227-OYT8T00840.htm )


記事タイトル:取り調べ録画で攻防


「勝木容疑者あいまい供述

 東金市の保育園児、成田幸満(ゆきまろ)ちゃん殺害事件で、捜査当局は、殺人容疑で再逮捕した勝木諒(かつきりょう)容疑者(21)を鑑定留置する方針だ。一方、担当弁護士は勝木容疑者について「取調官に迎合して話す傾向がある」などとして、供述の任意性を疑問視し、取り調べの全面可視化を求めている。来年5月から始まる裁判員制度をにらんで捜査当局と弁護側のつばぜり合いが展開されている。(東金女児殺害事件取材班)


■乏しい物証

 「風呂場に行き、水に沈めたいきさつは?」


 「現在捜査中」


 「被害者が着衣を身に着けていなかった理由は?」


 「分からない」


 「被害者が容疑者の部屋に入った経緯について供述は?」


 「『気がついたら玄関にいた』と話している」


 勝木容疑者を再逮捕した26日、東金署で記者会見した藤崎雄一・県警捜査1課長は報道陣の質問に対し、「具体的な供述はない」「分からない」と繰り返した。

 もっとも、殺意については「『殺すつもりで水につけた』といった趣旨の話はしている」としており、殺人罪で立件できると判断したものとみられる。

 捜査当局は既に勝木容疑者の簡易鑑定を行い、「刑事責任能力が認められる」との結果を得ている。殺人容疑の物証は乏しく、捜査関係者は「供述によるところが大きい」と明かす。

 しかし、女児を風呂の水に沈めたとする動機について、勝木容疑者の供述は「女の子に『帰れ』と言った。でも家にいた。頭に来た」などというもの。

 「それが果たして殺害に結びつくのか」

 戸惑いを隠さない捜査関係者もいる。


■新制度の影響

 本格的な精神鑑定をする鑑定留置の狙いは、殺人罪で立件されれば、裁判員制度の対象事件となる可能性が高いからだという見方がある。

 精神鑑定に詳しい中谷陽二・筑波大教授は「裁判員制度の導入を控え、捜査側が早めに正式鑑定を行う潮流にある」と指摘する。そのうえで、「捜査段階の鑑定は、捜査側の意向に沿った内容になりやすい」と問題視する。


■可視化求める

 勝木容疑者の弁護を担当する副島洋明弁護士は「本人に『捨てたの』と尋ねると『捨てた』、『捨てなかったの』と聞けば『捨てなかった』と答えるなど、最後の言葉をオウム返しする」と話す。

 副島弁護士は「取り調べに刷り込みや誘導が行われる可能性が高い」として、取り調べをすべてビデオに録画する、いわゆる全面可視化を捜査当局に求めた。

 一方、捜査当局は全面的な録画には否定的だが、公判では勝木容疑者の供述の任意性と、責任能力が争点となる可能性があり、正式な精神鑑定を行うことで、事前にこうした疑念を払拭(ふっしょく)しようとの狙いもうかがえる。(2008年12月28日 読売新聞)」



本件においては、興味深い点がいくつか見られる。



まず、捜査関係者及びマスコミは憲法38条3項の意味を理解せず、戦前の「自白は証拠の王様」という古臭い、採用してはならない考えに、現行憲法施行後60年以上も経つというのに、固執しているということである。



マスコミは、必死に捜査関係者から被疑者が何を喋ったかを聞き出そうとし、先を争って聞き出した情報を報道している。しかし、被疑者が何を喋ったかは最も重要なことではない。最も重要なことは自白以外の物証があるか否かであり、確たる物証の無い若しくはまだ秘匿されている段階で被疑者を犯人視する報道は厳に慎むべきである。(もちろん物証があっても無罪推定が働いているので犯人視してはならないのだが。)



次に、簡易鑑定の性質についても興味深い。



上記YOL配信記事中で中谷陽二・筑波大教授が述べているように、「捜査段階の鑑定は、捜査側の意向に沿った内容になりやすい」ため、簡易鑑定の結果は懐疑的に見るべきである。捜査段階の簡易鑑定で責任能力が否定された事案を私は寡聞にして知らない。簡易鑑定で責任能力が否定されるようであればそもそも逮捕されない。

しかし、そのことを知ってか知らずか、マスコミは簡易鑑定の結果が、さも正しく被疑者の責任能力を肯定するかのような報道をしている(下記YOL配信記事参照)。非常に問題のある報道姿勢である。



最後に、相変わらず、捜査当局が頑迷に取り調べの全過程を録画・録音させないことである。

そんなに見られては困ることをしているのであろうか。(しているのであろう。してないのであれば、全部録画・録音したものを法廷に証拠として出せばいい。任意性を争う手間がなくなり、訴訟経済の効率性が上がる。)

全部録音・録画をさせないで、法廷で長々と任意性を争うことは税金を無駄遣いしていることであるとの認識が捜査当局には足りない。そして何より冤罪の温床となる。直ちに改めるべきである。



以上、簡単にではあるが、本件について気に掛かったことを述べた。本件については今後も注視していきたいと思う。



~参考記事~

YOL配信記事(参照URL http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081223-OYT1T00446.htm )



記事タイトル:勝木容疑者「刑事責任能力認められる」…簡易鑑定

「千葉県東金市の保育園児成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5歳)の死体遺棄事件で、逮捕された同市東上宿、無職勝木諒(かつきりょう)容疑者(21)に対する簡易鑑定が行われ、刑事責任能力が認められるとの結果が出ていたことがわかった。

 東金署捜査本部は、鑑定結果などをもとに、勝木容疑者について、拘置期限の26日までに殺人容疑での立件が可能かどうか判断するため、慎重に調べを進めている。

 これまでの調べに対し、勝木容疑者は「女の子(幸満ちゃん)を風呂の水に沈めたら、動かなくなった」という趣旨の供述をしており、捜査本部は勝木容疑者の自宅マンションの浴室から採取した毛髪をDNA鑑定するなどして裏付けを急いでいる。(2008年12月23日20時58分 読売新聞)」