新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

1月21日 その2 トランプ大統領の就任演説を聴いて

2017-01-21 17:24:56 | コラム
アメリカは面白い国で本当は力があるのだ:

トランプ大統領の就任演説ではそれほど露骨にイスラム教徒排斥に触れていなかったが、諸外国というのかアメリカを脅かしている所に対しては俗に言う「上から目線」的な威圧的な表現が多かったと聞こえた。アメリカという国は生い立ちからしてインデイアンの先住民がいたとは申せ、移民が中心になって出来上がったのである。「元々我が国が建設された頃にはイスラム教徒などは1人もいなかった」とまで言って嫌悪感を示す人もいた。

私が近頃強調していることに人口が何時の間にか3億2,000万人にも達し、その分だけ国力というのかGDPも成長したかの如くである点だ。しかも、私の在職中の1994年までと決定的に違う点は嘗ては少数民族(minorities)だったヒスパニック、アジア系、インド系、中近東系が急速に増加し、遠からぬ将来に白人が少数派に転落してしまうだろうとの推測が成り立っていることだ。

しかも、相変わらず全人口の極めて微細な部分を占める(1%とも言うが、私は5%説を採っている)人たちが90%以上の富を独占する差別社会であり続けているのだ。そこにはアメリカを理想の国乃至は“Land of Dream”と見なして、東西南北から合法非合法を問わず、大きな数の者たちが連日連夜流入してきてるのだ。解りやすい例を挙げれば、カリフォルニア州にあるKoreatownであり、方々ににあるChina townが形成されている事実だ。

それだけに止まらず、あの国は豊かな者から恵まれていない者たちの数多くの層で形成されており、その多くの層の間での縦横だろうと上下だろうと、移動は先ずあり得ないのが文化であるのだ。また、ビジネスの世界には、我が国にはあり得ない階級制度のようなものも厳然として存在しており、先ず地位と身分の垂直上昇を期待出来ない人たちが働いている現実もある。

前任者のオバマ大統領は民主党政権であった以上、1~5%を占める富裕層の支持を受けて当選したのではなかったが、“Yes, we can.”と言われた割には支持層を満足させる結果を8年かけても残せなかったのだった。その間隙を突いて出たのがトランプ氏だったようで、意外にも本来はオバマ前大統領を支持していたはずの所謂プーアホワイトやブルーカラー等の支持を取り付けて30州で勝って46%もの(?)得票数でヒラリー・クリントンを退けてしまった。

トランプ大統領が何処までその彼を支持したであろう恵まれざる豊かならざる多くの層の人たちの為になる政策を打って出る予定か知る由もないが、“job”の数を増やしただけでは彼らを救うこととは結びつかないだろうと私は危惧するのだ。アメリカの産業界では「先ず人を雇ってから教育して育てて仕事(=job)を与える文化」はない。彼らは業容が拡張したか、新規事業に進出したか、空席が出来たかの際に、その空白を埋めるべく必要なだけの人材を雇用するのだ。

自動車メーカーに「メキシコに工場を建設するな。アメリカ国内に設けてjobを与えよ」と号令をかけられたが、その産業に適した(経験済みの)事務職員や製造現場(アセンブリー現場?)に馴れた人材を集めないことには、工場は回っていかないのではないのか。既に指摘したが、オバマ大統領が空洞化して出ていった産業界に「アメリカに戻れ、雇用せよ」と号令をかけたが、その業界の労働組合員は既に他の業種に出ていった後か、引退してしまっていた。

そうかと言って、誰でも良いからと言って集めてminoritiesを主力に採用してみれば、1994年にカーラ・ヒルズ大使が指摘した「識字率と初等教育の充実」の問題と、元FRB議長のグリーン・スパン氏が指摘した基本的計算能力(numeracy)の向上の難関にも突き当たりはしないかななどと考えてしまう。

私はトランプ大統領が目指すべき重要な事柄の一つには「如何にしてアメリカ製品の国際市場での競争能力を世界最高にまで高めるか」があると思うのだ。そこを如何にして認識させ、往年の実力を発揮出来るようにするのが側近や参謀(スタッフのこと)や主要閣僚の仕事だという気がしてならない。「アメリカファースト」とだけ叫んでいても製品の質は改善されないのだ。本来は計り知れない底力がある国なのだから、そのアメリカを取り戻すのが急務ではないのか。



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