新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカは輸出国ではない

2014-10-12 07:37:10 | コラム
アメリカは内需に依存する国:

私は10月7日に「TPP交渉の考察」と題して一向に妥結に向かって進まないこの件を昨年10月4日のエントリから下記のように一部を引用しました。これは「頂門の一針」にも掲載されたのです。

(前略)<これは別途に何度か採り上げたことである。アメリカでは数年前に商務省が業界の申し出でを受けて中国、インドネシア、韓国等から輸入される印刷用紙に(国によって料率が異なるが)総計100%以上の関税をかけて締めだしている。また、ドイツと中国からの感熱紙(キャッシュレジスターから出てくるレシートの薄い紙)にも高率の関税で締め出しにかかっている。事態を現在形で書いているのは「かかる関税を全面的に撤廃した」とは寡聞にして未だ知らないからである。

私には、そういう保護主義の姿勢を明確に打ち出している国が、太平洋沿岸の国がTPPを組んで関税撤廃を大きな柱とした条約を結んだと知って、後から加盟して盟主然として我が国にも加盟を促すかの如き姿勢を示していたのが、何となく違和感を覚えさせてくれた。そこには余り同調者が出てこない私の長年の主張である「アメリカは基本的に輸出国ではなく、内需に依存して来た経済で、輸出は国内の価格よりも有利な場合に打って出ること」という考え方が基本であり、尚且つ「あの労働力の質では世界市場での競争能力には期待できない」という問題点があるのだ。>(以下略)

これに対して「頂門の一針」の匿名の読者からご意見が寄せられましたので、その要点を紹介するとともに、それに対する私の考えも述べておくのでご一読を。

>引用開始
<貿易依存度 国別ランキング統計・推移 http://www.globalnote.jp/post-1614.html

上記を参照されれば判る様に、貿易依存度の(輸出入合計額の対GDP比)高い順にランクされていますが、統計国総数206の内で、日本は196番目で、アメリカが200番目。下から数えた方が早い!。>
引用終わる

上記のように私の論調を正確に統計で裏付けて頂きましたの、御礼申し上げた次第です。

私は22年以上もアメリカの会社で、しかも2社目ではその立地上、対太平洋沿岸の諸国とアジア、就中対日輸出に依存度が高いW社で19年間を過ごしましたので、在職中は貿易統計的なことも弁えて語っておりました。それは、それは数字が多少違っていても誤差の範囲に収まっていれば、十分な迫力がある説得材料になり得るものである信じていたからでした。

アメリカの対日輸出が如何に少ないか、アメリカが如何に輸出国としては力不足かとは承知しておりました。だが、1990年代初めに対日の会社別・産業別輸出統計を見る機会があって、Boeingが断然の1位でW社が2位だったのには、これが我が社にとって好材料と考える前に取りあえず呆れました。これ即ち、如何に対日輸出が少ないかであるからです。W社は当時は売上高の約15%が輸出で、対日輸出は約10%強の1千億円超でした(日本の国内価格は別の計算ですが)。紙パルプ林産物も航空機に次ぐ地位だったのも「何だ、これは」でした。

対日輸出の担当であれば、このような統計を中心に考えていましたので、全米のGDPの中で”consumer spending”が占める比率が70%に近い程度は常識として承知していても、それは経済調査部の月報を読めば何時でも確認できるのだのように考えていました。

それに、紙パ業界だけのことではないと認識していたことに「アメリカの会社の営業部門には輸出の専任の担当がいる訳ではなく、輸出でも輸入でも営業を担当する者が受け持っている」というシステムです。我が国の(紙パでは)貿易担当の特殊技能を持つ専門家がいるという力の注ぎ方とは大きく異なっているのです。W社のように各事業本部が東京にそれぞれ専任の日本担当者を置いている(雇用している)形は、アメリカの企業では寧ろ例外的かとすら思っていました。

回顧談ですが、私の在職中には東京事務所にはマネージャーや秘書等の内勤者を合わせて50名以上もおり、1千億円を超える売上高があったのは、西海岸に主たる生産設備を置く装置産業であれば太平洋沿岸の諸国、それも我が国に主力を注ぐのは当然だったのです。しかし、「現在のように紙パルプ産業が印刷媒体がインターネットに圧されて後退しその影響をまともに受けて衰退」しては、今は昔の物語かと嘆くのです。



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