新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

9月22日 その2 我が国の外交交渉を考える

2015-09-22 13:24:44 | コラム
外交交渉の場で論争と対立を避けるのは美点だが:

(1)国連人権委員会での北朝鮮の暴言:
呆れ果てた下品な言葉遣いだった。公式な席で使うべき表現ではない。以前にアメリカ政府が北朝鮮を”rogue nation”(=ならず者国家)と呼んだのは誠に尤もだと再認識したほどだった。本筋から外れる話だが、私は本心では「UN人権委員会」としたかったほど、「国連」というお為ごかしの訳が嫌いだ。

昨21日、ジュネーブで開催された委員会の席上で、田口八重子さんのご子息の飯塚耕一郎さんと横田めぐみさんの弟さんの拓也さんが意見を述べて切々と穏やかに早期解決を訴えた。

これに対して出席していた北朝鮮の代表が英語で「日本は戦争で罪を犯しながら云々」と我が国を批判しただけに飽き足らずに、何と終わりに我が国に向かって”Mind your own business.”と締めくくったのだった。と、テレビのニュースでは聞こえた)。無礼だし不愉快だった。テレビ局は知らないはずがないと思うが、この無礼千万な表現に何らの解説もせず、批判もしなかった。全くもの足らない。なお、”None of your business.”という言い方もある。

これを強いて日本語にすれば「余計なお世話だ」という辺りが当たっているだろうし「何のかのと言う暇があれば、自分の頭の上の蠅でも追っていろ」との意味もある極めて下卑た表現だ。良識ある者が公開の席で使うなどとは考えられない性質。だから言う訳ではないが、私は英語を話し出して70年は経つが、公式な席で使った記憶などない。だが、解説出来るだけの知識はある。

私はこれを聞いていて、北朝鮮の品位というか品格は別にして、彼等は我が国が反撃してくるとか言い返してくる(”rebut”とか”refute”とを思い浮かべたが)ことはないと読み切って、平気であの下品な表現で応戦してきたと解釈した。後で知ったが、そこには日本の代表者もおられて、その場で反論しておられた。だが、彼らは先手必勝で「これを言うことで失うものはない」戦法に出たと思った。即ち、我が方が彼らに舐められていたと考えたのだ。

ならず者と論戦することに意味は無いという考え方もあるだろうが、私は先ず彼らを押さえ込む論法に出ていくべきだったのではないかとすら考えている。北朝鮮は如何なる場合でも何時もこの先手必勝方式に出て我が国をして言葉を失わせて、そこから先の交渉を有利に進めようとしていると、私は見ている。即ち、綺麗な戦法ではなく言いたい放題で、我が国の真面目且つ真摯な態度に付け込んでくるのだ。

(2)ロシアのラブロフ外務大臣:
ここでもロシア外相が先手必勝に加えて「これを言うことで失うものはない」戦法に出てきたのだった。ラブロフ外相は我が国の岸田外相との会談後の記者会見で、報道によれば、会談内容とは全く異なる「北方領土問題は議題にならなかった」との趣旨の発言を躊躇せずに行い、意表をつかれた岸田外相を憮然とさせ、暫時立ち上がらせなかった由だった。

先程TBSだったかで筑波大の教授がその発言の背景を種々解説しておられた。それも尤もだと思ったが、私はロシア側にもそれなりの事情はあると思うが、あの無礼な態度の裏にあるものは「これを言うことで失うものはない」との手段で、我が国の温和で論争を避ける外交姿勢に付け込んだと解釈する。さらに、今後の日ソ交渉を有利に持っていく為の「先手必勝」作戦もあると見ている。言わば「足元を見られた外務省の甘さ」だと言うこと。

(3)結び:
では、我が国が彼らのような手段で外交交渉に席に臨めば良いかと言えば、私は必ずしもそうではないと経験上も言いたいのだ。即ち、馴れない「これを言うことで~」や「先手必勝」戦法に出ても、そう簡単には事が運ばないのは、20年以上も経験した対日輸出の白熱した交渉の席で見てきたからである。私は仮令彼らに足元を見られていようとも、我が国式の事前に十分に練り上げた正攻法に徹底すべきだと考えている。

何故そう言うかといえば「正義は勝つ」(=Justice will prevail.”)と信じているからであるし、我が国には彼らのような海千山千駆け引きは似合わないし、また彼らを真似ては「同じ穴の狢」と化していまう危険性があるのだから。



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