新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

私のスポーツ論

2022-12-07 09:13:22 | コラム
何故我が代表が世界の8強に上がれなかったのか:

これについては色々な考え方があると思うが、私が以前に論じたことは「我が国では余りに多くの種目に進出し過ぎているのではないか。それでなくとも少ない一級品の素材が方々に散っているのでは」があった。このコインの裏側は「アメリカのようにベースボール、フットボール、バスケットボールのように3大スポーツに集中していないので、人材がバラケてしまっている」という主張である。

次には「サッカーでヨーロッパや南アメリカ勢(例えばブラジル)に及ばないのは、彼らは野球にのみ過剰に優れた人材を投入していないから」という見方がある。最後に、アメリカの会社で同僚だった日本人のスポーツ通がいみじくも言った「我が国で女子の競技種目が世界に通用するほど強いのは、プロ野球と相撲がないからだ」を挙げたい。この見方には反論もあるだろうが、私は尤もだと思って聞いていた。

私は今回の、と言うか、現在進行中のW杯でも我が国の代表選手たちは優勝経験があるランキングが格上のドイツとスペインに勝ってグループリーグを勝ち抜けるという非常に立派な成果を挙げて見せた。前回の準優勝国でFIFAのランキングでは格上のクロアチアに対しても、90分間では1対1の引分けだった。このクロアチアを始めとして8強に勝ち上がった国に野球王国はないが、World seriesを開催しているアメリカの姿もない。

私が言いたいことは、ヨーロッパの諸国は、アメリカは言うに及ばず、中国やインドやインドネシアのような億を超える人口を抱えているのではない。しかも、プロになれば超高額の年俸を稼ぎ出せるような野球国ではないので、UKを発祥の地とするアソシエーションフットボール(=サッカー)やラグビーフットボール等に集中できているというか、優れた人材がフットボール系に集まっていると言えるのだと思っている。

一方の我が国ではアメリカのMLBには大谷翔平、鈴木一朗、松井秀喜、松坂大輔、ダルビッシュ有等々の人材を送り込んだし、近年ではNBAに八村塁や渡辺雄太も採用されるようになった。言うまでもないが、この傾向をマスコミが先頭に立って喜んでいる。柔道やレスリングフィギュアスケートやスピードスケートのような個人種目の分野でもオリンピックや世界選手権の勝者が出てくるようになって、マスコミを感激させている。

サッカーだって、UKのプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガ、スペインのリーガエスパニョウラ等にも先発メンバーで使えている人材が増えてきて、今回の代表メンバーでも国内組よりも遙かに数が多い。素晴らしいことであると言って良いと思うが、未だこの分野には大谷翔平や鈴木一朗に比肩されても良いような世界的選手が出ていない。

私の見方は(僻んでいると言われるかも知れないが)「矢張り、どの分野に行っても世界的な選手になれる素材は野球に獲られている」なのだ。「獲られている」とは何だと言われるだろうが、プロ選手としての報酬は未だ未だサッカー界では野球に及ばないとも言えるだろうし、我が国のサッカー選手の中からは未だ大谷翔平級の世界的にも優秀な存在は出ていないのではないのか。

但し、野球界には糸井嘉男のような「希に見るような優れたアスリート」が何名もいるようだ。だが、彼らがその持てる素質を活かしきったMLBに行っても通用するほどの成長を見せた者は、未だ多いとは言えないと思う。MLBのように北と南のアメリカからあらゆる競技を経験した上で「野球を職業として選んだ超一級品が集うのだから、我が国での一流のアスリート程度が参加しても、容易に大谷翔平が成し遂げたような実績は残せないのだ。

それでも、MLBである程度以上の成功を収め、収入が確保できた連中は一向に自国に帰ってこないではないのは何故か。それは「アメリカではMLBの選手としてある程度以上の収入があれば、引退後も十分に面白おかしくとまでは言えなくとも「良い生活を楽しめる環境がある」のだから、子供たちも現地の教育に委ねているのだと見ている。

報道によれば、ヨーロッパに出ていったサッカー選手たちの年俸では、引退後にはMLBの成功者のような生活をエンジョイ出来なるような水準には至っていないようだ。

私がここまでで指摘したかったことは「人口が増えている訳でもなく、国土の面積に限界がある我が国で、何かと言えば『世界に進出して成功した』と騒ぎ立てるのではなく、種目を絞って選手を養成する方が『世界で名を為す』為には早道ではないのか」ということ。それでは不公平で機会均等ではなくなるという批判も出るだろう。それならば、指導する立場にいる者が、若者たちの素質と向き・不向きを適切に診断して最適の種目に志向させたらどうだろうか。

私は大谷翔平がサッカーかバスケットボールの世界に入っていたら、どれほどの選手になってかと想像するだけでも楽しいし、フットボールをやらせてQBなどをやらせてみれば「投げて良し、走っても良し」の凄い存在になったと思うのだ。また、イチロー君がテニスをやっていれば、全てのメイジャー大会を制覇していたのではないかなどと考えている。

昔話になるが、昭和25年に湘南高校に近所の中学から凄い投手として評判だった衆樹資宏(故人)が入学してきて、早速野球部に入った。我々もその速球には度肝を抜かれた。その練習振りを見た我らがサッカー部の監督さんに我々3年生一同が大目玉を食らった。「お前らの目は節穴か。あれほどの逸材をおめおめと野球部如きに獲られたのか」と。その直ぐ後で、衆樹が体育の時間にサッカーをやって蹴って見せたシュートの凄さには、我々サッカー部員は声もなかった。

その衆樹ほどの素材でも慶応大学では投手失格で外野手にされ、NPBでも遂に一流選手にはなれなかった。この一例だけを以て「野球に最上級の素材が集まっている」とまで論じようとは思わないが、そういう傾向は否定出来ないと見ている。そう言えば、産業界に「選択と集中」なんていう経営方針があった。

だが、子供たちの人気が高く、少年サッカーやJリーグの下部組織等に子供たちが集まる傾向があると聞いている割りには、私の目にはサッカー界にはNPBやMLBに集まっているような非常に優れた(敢えて「アスリート」を使うが)アスリートが集まっていないように思えてならない。久保建英などの上手さは一級品かも知れないが、MLBに行っても通用するほどの素材ではない気がする。堂安律も同様。ましてや前田大然などは・・・なのだ。