湯の字にっき

日々の日記をつらつらと綴っております

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

2013-06-07 | キャラメルボックス辺りのこと
キャラメルボックス2013スプリングツアー
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東京 5/11~6/2 サンシャイン劇場
原作 東野圭吾  脚本・演出 成井豊

[出演]多田直人/筒井俊作/渡邊安理  /  西川浩幸
岡田さつき/前田綾/畑中智行/左東広之/阿部丈二/林貴子/原田樹里
Wキャスト(小林春世/笹川亜矢奈)/(鈴木秀明/毛塚陽介)

【ストーリー】
敦也と翔子と幸平は、同じ養護施設で育った仲間。ある夜、ある家にコソ泥に入り、逃亡の途中で、廃屋になった雑貨店に逃げ込む。すると、表の方で微かな物音。シャッターの郵便口から、誰かが封筒を入れたのだ。中の便箋には、悩み事の相談が書かれていた。この雑貨店は、店主が生きていた頃、近隣の住人の悩み事の相談に答えていたのだ。3人はほんの遊び心から、返事を書いて、牛乳箱に入れる。すると、またシャッターの郵便口から封筒が。そこには、3人の返事に対する、さらなる質問が書かれていた。しかも、差出人は、数十年前の時代の人間らしい……。

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感想?



原作未読で舞台観て→途中で原作読んで→また舞台観て。

とはいえ、観ていたところ偏ってるので真っ当な感想ではないです。
というおことわりを挟みつつ。好き勝手に語ります。

白紙の手紙を敦也が出しに行くところ。
そこが、私の中では一番の物語のポイントだった。
これがあそこに行くのか。そう思った瞬間に
現在が過去と繋がって、何がしかの謎が解けたかのように、
ああ、そうなのか。と思ったのだ。

最初は、あれ、三人が主役という程主役じゃない?
というところで物足りないような気がしたのだけれど、
出てくる人、みんなちゃんと物語を背負っていて
きちんと生きてて、自分の生で
主役三人の背中を押してあげてる話。
と思って観てたり。
更に樹里ちゃんと西川さんの表情に気を取られ
この二人は過去の登場人物のようでいて
ラストシーンで二人が向き合うところは
今なおそこに恋心があるようで。
その日その時々でどちらの表情を見るかでラストの色合いも違って見えた。
さらに音楽が語られない部分も肉付けしてくれてるかのように
加速してここのシーンは勝手にいろいろ想像して胸が熱くなるのだ。

そして、勘違いの話。
綾ちゃんの役の皆月良子さん。丸光園の園長? 館長?。
最初はてっきり独身でお姉さんの後継いだのだと思ってたのだ。
それは、雄治さんの手紙のところでかかる曲の雰囲気と、
手紙を抱きしめた時の強い思い。
それから、姉の暁子の樹里ちゃんに抱きしめられるシーンで。
彼女も雄治さんに片思いしていたのかなと思ったりしたのだ。
出会ったのはその1度きりでも。ずっと恋をしていたのかなと
だから、姉は「ごめんね」って意味で抱きしめてたのかなと
でも後半の苅谷と女社長の会話の中にお母さんの良子さんが
とか娘さん同じ年って台詞が出てくるので、違ったのね。
名字が姉と同じなので婿養子取ったってことなのかしら。

本を読まずに見ていた時に
克郎さんが施設に来るようになったきっかけで
介護士をしてる人から話を聞いたって台詞があって、
ここが、カットされたエピソードなのかなと思ったのだ。
この介護士と克郎さんは恋仲でなんかいろいろあって
「再生」って曲が出来たのかなぁなんてなことを妄想しておりました。
全然違いましたけどね。

原作を読んでみて、カットされた話もうまく吸収されているのだなと思いました。
月のうさぎさんとのやりとりは最初のあれこれに置き換えられてるし。
雑貨屋の前で会う人も別だったり。
友達が絶賛していたビートルズの話は最初あんまり響かなかったんだけど
その分、胸にひっかかってじわじわきた。

入れようがなかったけど女社長の切り捨てる面が入ってなかったのは残念かな。
敦也がどうせ切り捨てるくせにって言葉が
舞台で見ると女社長は最初っから迷える子犬なので
いい人にしか見えないんだよね。
だから、彼女を責める前にもうちょっとちゃんと
調べてあげてわかってあげてと思ってしまう。
でも彼女も突き進み過ぎてて、空の上からみてる暁子さんが
ここらで止まって自分をきちんと見直しなさいという
警告を与えた場でもあるんだしとかちらほら思ったり。
そういう意味では暁子さんが全編通して主役ってわけかもしれんが。
やはし、三人+西川さんだなぁ。
西川さんの最後の白紙の手紙の返事を読む時の
ナミヤ雑貨店からふわりとにじみ出たように現れる姿とか
ここで、魂は地上を離れるのだなと思えるするりとした感じなのだけど
またその時の濁った目というか。
そのくせ最後の炎みたいにぎらぎらしてる感じとか。
茶の間の枯れた雰囲気とか。「そうでもないぞ」というお茶目さとか
暁子さんをみる時の血が通ったような瞬間とか
息子にもう時間がないと言う時の、頼まれた側は頷くしかない弱り切った姿とか
西川さんのナミヤユウジでよかった。
お茶の間の西川さんの姿にほっとしてた。

サカナヤミュージシャンが手紙を中途半端にシャッターの口に入れたせいで
過去と現在が繋がって音楽が敦也達の耳に届いたこと。
これ単にシャッターのこっちと向こうで繋がってると思ってたけど
あの半端な手紙の起こした奇蹟だったんだというのは、本読んでわかった。
まぁ、奇蹟の出所なんて見たままの感じたままでいいと思うんだけど。

もう一つ。
9/13の朝にナミヤユウジが逝き、ナミヤ雑貨店の魔法が解けて
外観の雰囲気が変わっているというのも、本読んでわかった。
迷える子犬さんが手紙を入れに行って首を傾げてるんだけど
手紙の内容に首ひねってるんだと思ってたんだよね。
それに、ここはその後登場するアベジョーに心かっさらわれてたからな。
そういえば、ここのアベジョー、
80くらいで逝ったナミヤユウジの息子なんだから
結構なお歳のはずよね。
それなのに、すずしげな雰囲気にどうにもときめいてしまう。

サカナヤミュージシャンは父があの父なので
雑貨店に相談しなくても音楽の道を進んだと思う。
でも9年も頑張れたかどうか。
最後の最後まで頑張れたかどうか。
セリちゃんに出会ってその音楽が届いたことで、遠くまで響き出した。
そんな風に彼の曲が歌い継がれることがなくても
家族としては生きていて欲しかったかもしれない。
それがいいことなのかわからない。と敦也たち三人も言ってる。
でも。これはお守りなんだな。
信じて頑張るための。

グリーンリバーさんの手紙は約束なのだなと思ってみてた。
彼女は近くに相談出来る人が本当に誰もいなくて
心細くて、でも。ナミヤ雑貨店からの返事を見るたび
自分自身との約束、覚悟を胸に頑張っていけたのかな。と。
ここの綾ちゃんが相談の手紙を読むとこ
前々作の「キャロリング」でらぶらぶだった二人なので
アベジョーがそっけなくて意地悪く感じちゃう。
いや、まぁ、関係ないけど。

「駆け落ち、しませんか」
という時の樹里ちゃんの口元が好きだった。
最後に見つめあう二人が手に手を取って駆けていくようなことはないけど
もう一度出会うところを見られてよかった。
彼女の意志の強さならもしかしたら上手く逃げおおせたら
幸せに暮らせたのかもしれない。
そして、ナミヤユウジの33回忌のその日までそこに留まっていたってことは
暁子さんは既に33回忌で極楽に行く時を逃してるってことよね。
彼女はこれからもずっと丸光園の子供たちやナミヤユウジの子供たちを
見守っていくのだろうか。
拠り所となるナミヤ雑貨店はそのまま残しておいてくれたらいいのにと思う。
でも奇蹟は一度だけなのかもな。

たくさんの奇蹟が一つに合わさる瞬間。
それが私にはあの白紙の手紙だった。

神戸公演は明日から。6/9~16 新神戸オリエンタル劇場
東京公演のように行けたら行くという距離じゃないのがせつない。
新幹線で一本とはいえ、新幹線までが遠いのでな。