アジアの手仕事~生活と祈り~

アジア手工藝品店を営む店主が諸国で出逢った、愛すべき”ヒト・モノ・コト”を写真を中心に綴らせていただきます

”ルンタヤ・アチェイク”とマニプル(インド)の織物

2010-06-12 06:58:00 | 染織






製作地 ミャンマー・アマラプラ  
製作年代(推定) 19世紀後半
素材/技法 絹、天然染料 / 綴織

ビルマ中部の宮廷染織に、絹を素材に緻密な”綴織(つづれおり)”の技巧で流麗な波状の文様を表現する”ルンタヤ・アチェイク”と呼ばれる織物があります。

ルン-タヤ(lun-taya)は、百の杼(シャフト)を意味するものであり、数十~百を超える小型の杼に文様を描く絵緯の色糸が配され、一織り一織りの中で、この多数の杼を左右に小刻みに動かしつつ、隣同士の色糸をインターロックする綴織により文様が織り進められます。

画像のような19世紀当時の作例、細手の絹糸が用いられ文様のパターンが複雑かつ流麗なものになると、1日あたり織り進めることができる長さは、ほんの数cm程度であったとされます。

この”ルンタヤ・アチェイク”は、国境を接するインド東部マニプル州の織物がビルマ側に伝わったものとする伝承(記録)が残されており、”マニプリ・サリー”の名前でも知られる”縫取織&綴織”の織物(上画像)が、原型にあったものとも考えられます。

しかしながら、技巧面・意匠面ともに、そのディテイルは大きく異なるものであり、ビルマに伝わってから独自の発展を遂げた染織作品であることも間違いないように思われます。残念ながら今では衰退の一途にある伝統織物の一つです。






●インド・マニプル伝統の”縫取織&綴織”技巧のパターン”インナフィ(innaphi)”

※上画像はPrakash Books刊「Textiles and crafts of India」より転載いたしております

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