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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(27)二上山を

2009年07月11日 | 歴史編
【掲載日:平成21年7月18日】

百伝ももづたふ 磐余いはれの池に 鳴く鴨を
          今日のみ見てや 雲隠りなむ 

うつせみの 人にあるわれや 明日よりは 
          二上山ふたかみやまを 弟世いろせとわが見む

磯のうへに ふる馬酔木あしびを 手折たをらめど
          見すべき君が ありと言はなくに 
【残照に染まる二上山】

夕暮れ迫る磐余いわれの池のほとり
岸辺に 馬酔木あしび 
たわわな房 こうべをたれるかに咲かせている
水面みなもを 二羽の鴨が行く
静かに 広がる水輪みなわ

(弟も あの鴨を 見たのだろうか 
 鴨は いい 
 人の世の 定め 知らぬげに) 

百伝ももづたふ 磐余いはれの池に 鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ 
                         ―大津皇子―(巻三・四一六)
磐余池いわれいけ 鳴く鴨見るん 今日だけや 定めやおもて この世を去るか》

(弟の 覚悟は 出来ていたのだ 
 こうして 鴨をいつくしむ歌を 残したのだもの)

大伯皇女おおくのひめみこは 西を見上げる
目にうつる あかねに染まる二上ふたかみの山

(弟は どうして あのお山に 移されたの 
 仏の教えに言う 西方浄土さいほうじょうどを望む 西の山だから?
 祟りを 恐れた あのお方の お知恵?) 

(もう いいの 
 私の心では あのお山は お前 
 いいわね 大津・・・) 
うつせみの 人にあるわれや 明日よりは 二上山ふたかみやまを 弟世いろせとわが見む
明日あしたから 二上山ふたかみやまを 弟と おもうて暮らそ この世でひとり》
                         ―大伯皇女―(巻二・一六五)
雄岳おだけ雌岳めだけ鞍部くらぶに 赤い日が沈む
墓所はかしょも 朱に染まっているに違いない

大伯皇女 たたずむかたわら 
馬酔木の花が 揺れている 
磯のうへに ふる馬酔木あしびを 手折たをらめど 見すべき君が ありと言はなくに
《岸に咲く 馬酔木あしびの花を りたいと おもても見せる お前は居らん》
                         ―大伯皇女―(巻二・一六六)



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