【掲載日:平成21年7月2日】
君待つと わが恋ひをれば
わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く
【犬養孝揮毫<簾動かし>歌碑・東近江市本町・市神神社】
天智八年(669)中臣鎌足 死去
中大兄皇子 天皇即位の 翌年であった
大化改新以来の盟友
自分の妃 鏡王女を 正妻として下げ渡し
采女 安見児を 与えて優遇した
その死にあたって
最高冠位 大職冠に任じ
大臣の位 藤原の姓を授けた
最も信頼すべき 相談相手を亡くし
天皇は 近江大津宮での 政務に掛かりっきりであった
久しく お越しはない
額田王は 張りのない日々を 送っていた
(空は澄み 山は 赤や黄にもみちしている
もみち狩りの お誘いでもあれば 気も晴れように
そういえば 昔 前触れなしの突然のお越しがあった もしや そんなことも・・・)
君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く
《あっすだれ 動いた思たら 風やんか あんまりうちが 焦がれるよって》
―額田王―(巻四・四八八)
「えっ 風のせいと間違えたの 額田王」
風をだに 恋ふるは羨し 風をだに 来むとし待たば 何か嘆かむ
《羨まし 風と間違て うちなんか 待つ人おらんで 嘆かれへんわ》
―鏡王女―(巻四・四八九)
「鎌足公は 亡くなられたもの」
鏡王女は さびしく つぶやく
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