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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(13)安見児得たり

2009年07月25日 | 歴史編
【掲載日:平成21年7月1日】


われはもや 安見児やすみこ得たり
         皆人みなひとの 得難えかてにすといふ 安見児得たり


天智天皇てんじてんのうは ご機嫌であった
宴席は 笑いに満ち 
座を埋める 官人らの 
酔いまぎれの 声が 大きい 
「そこの采女うねめ 大王おおきみの お声が掛からないようであれば わしが 面倒見ても よいぞ」 
「アハハハ あの采女は ダメじゃ だめ とんと おのこに気を懸けぬ」

鎌足は 渋面しぶつらで 杯を重ねていた
(有力な豪族から 寄せられた 采女 
 召す召さぬは 大王おおきみの専権じゃ
 官人ごときが 知ったことではないわ 
 采女に 手を出せば 首の飛ぶこと 
 知らぬでもなかろうに) 

「思いついたぞ」 
天皇てんのうの 声が響いた
「この席の采女 一番は どれだと思う」 
「思い わしに同じなら 下げ渡しても構わぬが」 
一同を 見まわす 天皇てんのう
座は 静まり返った 
「おう 白けたか 座興ざきょうじゃ 座興 誰ぞ 申してみよ」
せきとして 声なく 重苦しさが 立ち込める

眉根まゆねを寄せた鎌足 杯の手が忙しくなる
大王おおきみ たわむれが 過ぎますぞ
 名乗り挙げては 首が無いと みな承知) 

「わしの座興に 付いてれぬと 申すか」
天皇の 声が けわしくなった

ふらり  
鎌足が 立ちあがる 
天皇すめらみこと ワレは 安見児やすみこと ぞんずる」
言うや どっかと胡坐あぐらに組み 杯を突き出す

静かに 杯を満たす 安見児やすみこ

「ウワッハッハッハ・・・」 
「鎌足が言うたか ハハハ わしの 負けじゃ」 
つかわす 安見児を 約束じゃ」
「じゃが ばつがある 気持ち 歌にめ」

われはもや 安見児やすみこ得たり 皆人みなひとの 得難えかてにすといふ 安見児得たり
《わしろた 安見児ろた 誰もみな しいおもてた 安見児ろた》
                         ―藤原鎌足―(巻二・九五)

無骨でならす鎌足の 頬が赤い 

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