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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(23)われ立ちぬれぬ

2009年07月15日 | 歴史編
【掲載日:平成21年7月13
日】

あしひきの 山のしづくに 妹待つと      

     われ立ちぬれぬ 山のしづくに


【大津皇子墓 二上山雄岳頂上】

(遅いぞ 郎女いらつめ
大津は 待っていた 
(いつも こうだ 
 わしが 待たされる) 
山のを離れた月が 中空なかそらに懸ろうとしている
(来るのか 来ないのか) 
木々の葉は 山の湿りを吸い 露と化し 大津を濡らす 
あしひきの 山のしづくに 妹待つと われ立ちぬれぬ 山のしづくに  
《お前待ち 夜更けの露に 濡れてもた お前待ってて しずくに濡れた》
                         ―大津皇子―(巻二・一〇七)

飛鳥随一の美貌 との誉れ高い 
  石川郎女いしかわのいらつめ
質実剛健 自由闊達 人望豊かな 
  大津皇子おおつのみこ
結ばれるべくしての二人 

大津の歌に 郎女いらつめは応える
われ待つと 君がぬれけむ あしひきの 山のしづくに 成らましものを 
《うち待って あんたが濡れた 山雫やましずく 成りたかったな その山雫やましずく
                         ―石川郎女―(巻二・一〇八)

大津は たかぶりを覚えた
(「わしの肌を濡らした露に 自分の肌も濡らしたかった」と 言うのか 
 あの面差しと同じに 蠱惑的こわくてきな歌)
待ちぼうけの 悔しさはせ 
逢瀬は重なる 

この石川郎女いしかわのいらつめ じつは
政敵 草壁皇子くさかべおうじの思い人でもあった

鵜野讃良うののさららの命を受け
大津の行状を探るは 津守つもりとおる
探索は執拗極め ついに密会現場は押さえられた 
窮地に立つか 大津皇子おおつみこ

大船の 津守のうらに らむとは まさしに知りて わが二人
《見つかんの 分かってたんや 始めから 知ってた上で 二人寝たんや》 
                         ―大津皇子―(巻二・一〇九)

豪胆大津は 揺るぎもせず 



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