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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(15)木幡の上を

2009年07月23日 | 歴史編
【掲載日:平成21年7月3日】


青旗あをはたの 木幡こはたうへを かよふとは
        目には見れども ただに逢はぬかも




倭姫王やまとのひめみこ(後の倭大后やまとのおおきさき)は 
天智天皇の病床にいた 

わたしは 天涯孤独てんがいこどくであった
父も 兄弟たちも 母の顔さえ 覚えていない 
そんな私を 育てくれた 今は亡き 皇極こうぎょく女帝
あの方が られればこその 私
あの方の お力添えで 皇后の身に 
もっとも 天智帝の おきさきでは 血筋は通っていたけれど
でも なんという 運命の皮肉 
天涯孤独の 私にしたのは ここにられるかた
古人大兄皇子ふるひとのおおえのおうじ 弟たちを手に掛け 母は自害

でも今は このかたの 回復が ただ一つの願い

あまの原 振りけ見れば 大君おほきみの 御寿みいのちは長く あまらしたり
《空見たら 広がりずうっと 続いてる まだ安心や あんたの命》 
                         ―倭大后やまとのおおきさき―(巻二・一四七)

天智の回復は 捗々はかばかしくない
倭姫王やまとのひめみこは 許波多こはた神社に詣でる
皇極女帝勅願社での 平癒祈願へいゆきがん・・・
ふと仰ぐ 木幡こはた山 立ちのぼる雲に 天智の面影
青旗あをはたの 木幡こはたうへを かよふとは 目には見れども ただに逢はぬかも
木幡山こはたやま あんたの霊魂みたま ただようて 見えてるけども もうわれへん》
                         ―倭大后やまとのおおきさき―(巻二・一四八)


とうとう お亡くなりに なられた 
わたしには 忘れようとて 忘れられないおかた

人はよし 思ひむとも 玉蔓たまかづら 影に見えつつ 忘らえぬかも
ほかの人 忘れてもえ うちだけは まぶた浮かんで 忘れられへん》
                         ―倭大后やまとのおおきさき―(巻二・一四九)

夕べ 倭姫王やまとのひめみこは 湖畔にいた 
鯨魚いなさ取り 淡海あふみの海を 沖けて ぎ来る船 附きて 漕ぎ来る船
 沖つかい いたくなねそ つ櫂 いたくな撥ねそ 若草の つまの 思ふ鳥たつ

《琵琶湖をとおる 沖の船 岸辺漕いでく そこの船 どっちも ばしゃばしゃ がんとき あの人の 好きやった(霊魂たましい宿ってる)鳥 飛び立つやんか》
                         ―倭大后やまとのおおきさき―(巻二・一五三)

岸に寄る 波の音 しみじみと 倭姫王やまとのひめみこの胸に迫る