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令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(20)常処女にて

2009年07月18日 | 歴史編
【掲載日:平成21年7月9日】

山振やまぶきの 立ちよそひたる 山清水やましみづ
          みに行かめど 道の知らなく

【河の上の ゆつ磐群<津市一志町波瀬>】


十市皇女とおちのひめみこ 悲しい運命さだめ皇女ひめであった

大海人皇子おおあまおうじ額田王ぬかたのおおきみとの間に生まれた
壬申の乱 
父は 夫大友皇子おうじを死に追いやり
母は 夫の父 天智の御陵ごりょうまもりの後 音信はない
近江朝瓦解がかいの後 父天武のいる浄御原きよみはら
異母弟おとうと 高市皇子たけちのみこのもとに 身を寄せていた
姉を憐れむ 高市との仲は むつまじい

天武四年(675)春二月 
伊勢参宮の途中 ここ波多はたの横山
皇女ひめさま 大きな岩が ほれ ここにも あそこにも」
吹黄刀自ふきのとじは 輿こしにのる皇女ひめみこに 声をかける
波瀬はせ川の河原 嵐の時にでも上流から押し流されて来たか 大岩のむれ
「なんと 神々こうごうしいこと」
河のの ゆつ岩群いはむらに 草さず 常にもがもな 常処女とこをとめにて
《川の岩 草も生えんと 変わりない 姫さんあんたも 変わらずって》
                          ―吹黄刀自ふきのとじ―(巻一・二二)
悲しい境遇の十市皇女 そのつつがなきを大岩に託す 吹黄刀自ふきのとじ

三年後 天武七年(668)四月 
十市皇女を襲う 突然の死 
既にとつぎ 子までなした身に
処女おとめであるべき 斎宮いつきのみやに との話
斎宮となる出立しゅったつの まさにその時の死
親密を加える 高市との仲 
高市の後ろ盾を除く策略 かとの疑念ぎねん
自ら選びし死か・・・ 

山振やまぶきの 立ちよそひたる 山清水やましみづ みに行かめど 道の知らなく
《山吹の 花咲く清水 かえり水 みたいけども 道わかからへん》
                         ―高市皇子―(巻二・一五八)

(守って やれなかった・・・) 
高市の胸に広がる 悔みの思い 



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