本の迷宮

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宵闇通りのブン (高橋葉介)

2007-10-04 19:33:26 | 漫画家(た行)
(昭和55年発行)

<カバー折り返し部分の説明より>
心のさみしい人たちが、ひっそり暮らす宵闇通り。
皮肉な笑いの仮面の下に、生きる哀しみ隠して生きる。
狂気と笑いが暴発する非現実の空間を、ユニークな発想であぶり出す高橋葉介の奇妙な世界。



「宵闇通りのブン」に出て来るブンは毎回、物語の最後に
「ばっかみたい」とか「ばーか」というセリフを言う。

「ばっかみたい」とか「ばーか」などという言葉はあまり好きではない。
特に自分自身が何にも考えずに何にでもとにかく「ばーか」と言ってるような類の人間には
「ばかって言う方がばかなんだよ!」
・・・って、言い返したくなる。(笑)


このブンの言う「ばっかみたい」というセリフ。
皮肉な笑いの仮面の下に、生きる哀しみを隠している・・・そういうセリフだ。
単なる薄っぺらいセリフではない。

だから、そのセリフを言うことの出来ない物語もある。
「One Man's Ceilling is Another Man's Floor」が、そうだ。

人々に笑いものにされても、ひとりで愛と平和を説いて歩く老人の話である。
ある日老人はビルを悪魔がけり倒しに来ると言われ、人々を救うために一晩中ビルが倒されないように壁を両手でしっかりささえ続けるのだ。
それが原因で老人は死んでしまうのだが、最期にブンにこういう言葉を遺す。

「わしが死んだら誰が・・・・・・
誰が人々のために祈るのかね?
誰が人々のために愛を説くのかね?
誰が人々に救いをさしのべるのかね?
いったいこの世の何人が選ばれた者として箱舟に乗れるだろう?
わしゃそれだけが心配だよ・・・・・・」

この老人にはブンは何も言わない。
ただ、心配そうに哀しそうに老人を見つめるだけだ。
くさ過ぎるぐらいくさい話なのかもしれないけれど、何となく心に残る話。



「将軍大いに語る」では、ブンは実に可愛いメイド服を着ている。
肩のフリルが大きくてまるで羽のようにも見えるエプロンだ。
これは1980年の作品だが、今流行のメイドの元祖って言えるかも?(笑)
いや、元祖はやっぱり吾妻ひでお???
ま、どっちにしても、どちらも可愛い♪