本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

ガラスの城 (わたなべまさこ)

2007-05-31 17:24:10 | 漫画家(や・ら・わ行)
(昭和44年1月26日~昭和45年12月6日 週刊マーガレット掲載)

<昭和46年小学館児童漫画賞受賞作品。>

これはリアルタイムで読んでいた。
毎週、どういう展開になるのか気にしながら読んでいた記憶がある。

ストーリーは実にどろどろしている。
聖女の如く心優しき女性マリサと、典型的な悪女イサドラの物語。

とにかく、イサドラの徹底した悪女ぶりは凄い!
今ならこういう話はレディースもの向きなんじゃないのかな?

先日、図書館で見つけて懐かしいと思って借りてきたのだけど、白状すると、全部きちんと読めませんでした~!
ごめんなさい。やっぱり、どろどろした話はちょっと苦手です。

とはいえ、どろどろした話が好きな人には、これはかなり面白く読める漫画だと思うのよね。

背景は、はっきり言って典型的な少女漫画・・・と言うか、デッサンが・・・とか言う人にはメチャクチャ下手だと言われるだろうけど、この話に引き込まれてしまうと、あら不思議!豪華絢爛、ゴージャスなお城に見えてくるのです。
人物の描き方も当然古いのだけど、やはり一旦この世界に入ってしまうとそういう事は全く気にならなくなる筈です。


ひみつのおとうさん (麻々原絵里依)

2007-05-30 09:02:54 | 漫画家(ま行)
(1997年発行)

まあ要するに「バットマン」もどき?

昔、TVでやってたバットマンが好きだったのよね。
あれをリアルタイムで観てたなんていうと歳がばれますか?

映画のバットマンと違って、今観るとと~~~っても安っぽいだろうけどね。
その時のロビンが可愛くて(お耽美系?)とっても好みだったんです。
・・・映画版のロビンはちょっとマッチョすぎますね。

・・・で、この作者、デビュー前にもバットマンのパロディを描いてたからかなりバットマンが好きなんだろうな~。

ストーリーは、まあ・・・だけど、
とにかく<バットマン(もどき)>だぁ♪・・・って、図書館で見つけたので借りてきました。

ブライトの憂鬱・2 (竹宮惠子)

2007-05-29 19:28:09 | 漫画家(た行)
(平成17年発行)

今回はブライトの一応?恋物語。

基本的にはニナと同じパターン。
だけど、相手がダンじゃなくて、あのブライトだから受け止め方が違うのよね。

う~~~ん、
私はブライトのようなタイプよりはダン・マイルドのようなタイプの方が好みだわ♪

普段はぼ~っとしてるようで、何かあった時にはちゃ~んと出来て、
結構お茶目で、それでいて人の心をわかってる・・・。
ダンって、ホント理想的な男だわ♪

ブライトのようなタイプははっきり言って疲れます。。。
若い頃はブライトのようなタイプもいいと思ったかもしれないけど、
自分が歳をとってくると、
一緒にいて疲れる美少年よりは
普段は気にもとめなくていいけど
いざという時は頼りになる便利な男の方が良くなるんですよね~。(笑)

ブライトの憂鬱 (竹宮惠子)

2007-05-27 07:35:50 | 漫画家(た行)
(「メロディ」2000年10月号・2001年10月・11月号)

「私を月まで連れてって!」の続編。
おヤエさんとハリアンとの間に生まれたふたごの兄妹
ブライトとナナの物語。

ブライトは頭も顔も良く、しかも人の心を読む事が出来る。
ナナは性格はいいのだが、ドン臭くて不美人!
全く正反対のふたごなのだ。

・・・で、ナナを守ってやりたいと思うブライトの話っていうわけなのだが、
この作品に出てくるダン・マイルドが前回の「私を月まで連れてって!」の時よりさらにかっこよくなっている!!(今回の主役のブライトよりかっこいい!)
人生余裕を持って生きているってなんていいんだろう・・・って思う。
真剣になる時は思い切り真剣に・・・そして手を抜く時は手を抜いて、常に「遊び心」を忘れない。
そんな生き方が私は好きだ。
そういう意味でダンは「理想の生き方」だと思う。


人間が生きていくうえで一番大切なものは何?「幸せ」って何?
美しい容姿? 頭の良さ? お金? 家柄? 名誉?・・・
そういう事に対する一種の答えというものがこの作品には描かれているような気がする。

一般に思われている「幸せ的なもの」に対する「固定観念」を打破する言葉がこの作品中に時々見受けられる。そこがいい。

私を月まで連れてって! (竹宮惠子)

2007-05-25 14:28:11 | 漫画家(た行)
(1巻 昭和57年発行~6巻 昭和61年発行)

おしゃまなESP(エスパー)少女・ニナとハンサムな宇宙飛行士・ダンとのラブコメディ。

SF、ファンタジー、ラブコメ、ロリータ(?)、などなど・・・
いろんな要素がいっぱい詰まっている。

この中には様々なSF小説のタイトルなどがどんどん出てくるからSF好きにはたまらなく嬉しい作品でもあるかもしれない。
「近所迷惑」(筒井康隆)
「ゆがんだ家」(ハインライン)
「たんぽぽ娘」(ロバート・F・ヤング)
「何かが道をやってくる」(ブラッドベリ)
「農協月へ行く」(筒井康隆)
・・・などなど、いっぱい出てくる。


私も昔はSFが好きだったので多少は読んでいたのだが・・・
近頃、SFってあまり目にしませんね。
以前よりはSF人気っていうものがなくなってるのかな?
ちょっと淋しいですね。

ここに出てくるキャラは実に魅力的。

ニナはESPで、おしゃまで、おせっかいで、かわいい11歳の少女。
ニナの兄はニナ曰く「精神的近視」・・・(この表現は素晴らしい!こういう人っているよね。)
四次元コンピュータの”ガイヤ”はダンに惚れていて、時々いたずらをしたりする。
おヤエさんはダンの家のハウスキーパー(住居管理人)。何でも出来て、家柄も良くて、金持ちで、何事にも動じない。
ダンは26歳。骨董好き。宇宙飛行士。普段はぼーっとしているが、緊急時には非常に頼りになるいい男。


明るく陽気でちょっとほろっとさせたりする話もあって・・・
一話完結で読みやすいし、絵柄が古いのは仕方がないがストーリーはとっても楽しい。

これを読んでいたら久し振りにSF小説でも読んでみようかな?っていう気になってしまった。

チュー坊がふたり (田淵由美子)

2007-05-24 08:02:01 | 漫画家(た行)
(平成10年発行)

田淵由美子といえば、その昔(70年代ぐらい?)乙女ちっくな少女漫画を描く漫画家で人気があった・・・と思う。
私もあの頃読んでいた・・・と思う。

・・・って、イマイチ漠然とした書き方しか出来ないのは、この人の本はたぶん一冊も持っていないからです。ごめんなさい。
先日、図書館でこの本を見つけて、借りてきたのだ。
「あら~、懐かしい。まだ漫画描いてたんだ~!」

この作品は、自分の息子と娘と夫とのごく他愛無い日常の話。
ほのぼのと軽~~く読める。


しかし、あの当時<乙女ちっく>な漫画を描いてた人が、年をとると現実世界を描くようになるのね。
そして、あの当時、そういう漫画を読んでいた読者もまた同じく現実世界にどっしりと根をおろしている。
月日の移り変わりというものは・・・。(ため息)

エルメスの道 (竹宮恵子)

2007-05-21 19:08:51 | 漫画家(た行)
(1997年発行)

この「エルメス」は、あの有名なブランドの「エルメス」である。
私は残念ながら所謂ブランドものというものには興味がない。
まあ、貧乏人には縁が無いからね~。(笑)
それでも「エルメス」の名前程度は知っている。(爆)

・・・で、この作品なのだが、
「エルメス」の社長から中央公論社へ直接
「馬に乗れる人、馬が描ける人」という条件で社史を描くという依頼があったのだそうだ。
そして、その仕事を引き受けたのが竹宮恵子だったわけだ。

文章で描かれた社史さえも作っていない「エルメス」が、何故突然、日本の漫画でそれをやろうとしたのか?
勿論、営業戦略のひとつとして考えたのだろうが、かなりユニークな発想だと思う。
ああ、そういえば、確かセシールの社史的な漫画を里中満智子が描いてたっけ。
あの本はたぶん非売品だったと思うが図書館に寄贈本としてセシールから送られてたのを読んだ記憶がある。

この作品、もちろんエルメス社の歴史ではあるが、それ以前に欧州の歴史・職人の歴史にもなっている。
綿密な取材や膨大な資料を駆使して描きあげたものはエルメス社にとっても非常に価値のある社史になったと思われる。


これを読んだ後少しエルメスのファンになってしまった。
エルメス製品の(安いの・・・笑)ひとつぐらい買ってもいいかな~~って・・・。

う~~~ん。
エルメス社の社長はこういう風に興味のない人間にも自社製品を買ってもらう為に<漫画の社史>というものを考え出したんだね。
その営業戦略、大いに正解だと思いますね。(笑)

いい言葉は、いい人生をつくる (斉藤茂太)

2007-05-20 09:19:07 | その他
(2002年12月ぶんか社より刊行された『いい言葉は、いい人生をつくる』を再編集したもの)



ご存知の通り、斉藤茂太の父は精神科医であり歌人であった斉藤茂吉。
弟は精神科医であり作家である、北杜夫。
祖父も精神科医。
自分自身も精神科医であり、著書も多数ある。



これだけを聞くと、何だか凄いエリート一家で、野心も人一倍あるのではないかと思ってしまいそうだが、本人曰く「もともとのんきなタチなのか、私は若いころから、人一倍の野心をもつこともなければ、立身出世を夢見て切歯扼腕することもなかった。」そうだ。



昨年、残念ながら90歳で亡くなった。
まさしく「美意延年」をそのまま実行したような人生だったようだ。



蛇足ながら「美意延年」とは『意(こころ)を美(たの)しませれば年を延ぶ』くよくよしては駄目だよ、いつも明るく楽しい心でいよう、そうすれば達者で長生き出来るよ。というような意味である。



<「はじめに」より一部抜粋>

人生、楽しくなくては生きる意味がない。
これが、私の持論である。
私流の「人生の成功」とは、どれだけ楽しく生きたか、どれだけ楽しく仕事をしたかにかかっている。
(中略)
そうした、私の手帳にある言葉をご紹介しながら、人生の楽しみ上手になるコツを伝授させていただきたいと思ってまとめたのが、この本である。



1章 私をささえた「楽天発想」の言葉
2章 私を変えた「人間関係」の言葉
3章 私を強くした「エラー逆転」の言葉
4章 私を明るくした「成功暗示」の言葉
5章 私をラクにした「お金と運」の言葉
6章 私を幸福にした「心身健康」の言葉



何だか、こういう「いいこと」をいっぱい書いているような本には、
胡散臭いものも結構多いような気がする。
何か新興宗教だったり、霊感とか、そういう類だったり・・・。
(そういうもの全てを否定しているわけではありません。)
しかし、この本は勿論そういうものではない。



私など、まだまだ人間が出来ていないものだから、腹をたてたり、くよくよしたり、人を嫌いだと思ったり、とかく物事をマイナス方向へ考えがちだったりする。
たまにはこういうプラス発想になる本を読んでは自分自身を反省してみたり・・・。



この本の中には「いい言葉」がいっぱいあるのだが、ひとつ実行しようと常々思っていることがある。

相手をほめると自分も元気になる。
ほめる習慣はプラス発想の習慣なんだ。



闇の宴 (永井豪)

2007-05-19 21:21:05 | 漫画家(な行)
酒天童子は誰か?という事をテーマに、膨大な資料を調べ、推理した漫画。

読んでいくうちに、ふんふん。成る程。へー。そうなのか。そうかもね。
・・・という具合にどんどん作品世界に引きずりこまれていく快感を味わう事が出来ました。

最後に正体はこの人物だ!と結論付けるのだけど、
作者と共に心地よい「達成感」のようなものを味わっていたのに、「あとがき」を読むと、頭の硬そうな「鬼伝承の研究者」が、「このコミック作品を『学術論文』に書き直したら、それこそ研究者の集中攻撃を受けるのは目に見えています。」なんて、味も素っ気もない事をかいてるんですよね。
途端に心地よい達成感も吹っ飛んで、何かいやーな気分になってしまいました。

読者と一緒に作品世界を楽しめるような人に「あとがき」を書いて欲しかったなー。と思いますね。

スローターハウス5 (カート・ヴォネガット・ジュニア 伊藤典夫・訳)

2007-05-18 08:57:27 | 小説
(1978年発行)


<裏表紙のあらすじより>
時の流れの呪縛から解き放たれたビリー・ピルグリムは、自分の生涯を未来から過去へと遡る、奇妙な時間旅行者になっていた。
大富豪の娘との幸福な結婚生活を送り……異星人に誘拐されてトラルファマドール星の動物園に収容され……やがては第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となり、連合軍によるドレスデン無差別攻撃をうけるビリー。
時間の迷路の果てに彼が見たものは何か?
現代アメリカ文学の旗手が描く不条理世界の俯瞰図



この作品は彼の戦時中の体験にもとづいた半自伝的小説だと聞いていたので、
そのつもりで読み始めたのだが、最初は一体どんな話なのか上手くつかめなかったのです。



実は私は本を読む時に奇妙な癖がある。
最初の部分を読んで、ラストを読んで中間部分を読んで、また最初の部分の続きを読んで・・・という風にバラバラな順序で読むのだ。
そんな読み方して、よくわかるもんだ、と呆れる人もいるが、何故か最初から順番通りに読むのはガマンできないのです。一瞬のうちに全てのストーリーを知りたいんですよね。(笑)
・・・で、この本もいつもの調子でバラバラで読み始めたのだけど、ストーリー展開がイマイチよくわからない。
当たり前である。
この作品は、時間の経過を順番に書いているのではなく、バラバラに分断させていたのだ。
要するに、いつもの私が読んでいる方法と同じように書いてたのです。



なるほど、そうだったんだと納得したのだけど、その後素直に順序よく読めばいいものをやはり、バラバラに読んでいったんだけどね。(笑)



<戦時中の体験にもとづいた半自伝的小説>なんだから、普通に事実をありのままに書けばいいようなものなのに、この作者はそういうことをしない。
何故なんだろう?と思ってたら訳者が、それに対する答えのようなものをあとがきで書いていた。
非常に納得のいく説明だったので、ここに少し抜粋してみる。

ヴォネガットはメイン・テーマをストレートにうちだすような能のないことはしていない。
というより、それを正面きって書こうにも言葉がないのだ。
彼が戦時ちゅう捕虜として体験したドレスデン爆撃は、個人の理性と感情では測ることもできないほど巨大な出来事なのである。
(中略)
しかし彼は作家として、この言葉に表すことの不可能な出来事を小説にせずにはいられなかった。
予備知識を何も与えられずに読まされたら、こんなにめんくらう小説もないだろう。
時間的経過にのっとった物語形式をわざと分断させた(読みづらくはないけれども)奇妙な構成、
事実とファンタジイの渾融、空飛ぶ円盤、時間旅行といったSF的趣向、ほとんど無性格に描かれた登場人物たち・・・しかしヴォネガットには、このようなかたちでしか自分の体験を語る方法はなかったのだ。



恥ずかしながらわたしは<ドレスデン無差別爆撃>というものを知らなかった。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ドレスデン爆撃(ドレスデンばくげき、独:Luftangriffe auf Dresden、英:Bombing of Dresden)とは
、第二次世界大戦において米軍と英軍によって1945年2月13日から14日にかけて、ドイツの都市ドレスデ
ンに対して行われた無差別爆撃を指す。この爆撃でドレスデンの85%が破壊され、3万とも15万とも言われ
る一般市民が死亡した。第二次世界大戦中に行われた都市に対する空襲の中でも最大規模のものであった

ソ連軍の侵攻を空から手助けするという一応の名目はあったが、実際は戦略的に意味のない空襲であり、
国際法にも違反していたことから、ナチスの空襲を受けていたイギリス国内でも批判の声が起こったとい
う。



この作品の中では「広島をうわまわる規模」という表現が用いられている。
実際には死者数など、ドレスデンも広島も諸説あるようなので、一概には言えないが、とにかく物凄い惨状だったことは間違いない。



この作品中に出てくるトラルファマドール星人の物の捉え方が実にいい。

「わたしはトラルファマドール星人だ。
きみたちがロッキー山脈をながめるのと同じように、すべての時間を見ることができる。
すべての時間とは、すべての時間だ。
それは決して変ることはない。
予告や説明によって、いささかも動かされるものではない。
それはただあるのだ。
瞬間瞬間をとりだせば、きみたちにもわれわれが、先にいったように琥珀のなかの虫でしかないことがわかるだろう」



「今日は平和だ。
ほかの日には、きみが見たり読んだりした戦争に負けないくらいおそろしい戦争がある。
それをどうあ、われわれにはできない。
ただ見ないようにするだけだ。
無視するのだ。
楽しい瞬間をながめながら、われわれは永遠をついやす・・・ちょうど今日のこの動物園のように。
これをすてきな瞬間だと思わないかね?」
「思います」
「それだけは、努力すれば地球人にもできるようになるかもしれない。
いやな時は無視し、楽しい時に心を集中するのだ」



すべての時間を見ることが出来るというこのトラルファマドール星人は主人公に
「哀しい時は無視して、楽しい時のみをながめる」
と語る。



ドレスデン爆撃を経験した作者は、そういう風にすることでしか哀しみを乗り越えることが出来なかったのかもしれない。
私は、ごく普通の人生しか経験したことはないが、それでも、フト思うことがある。
「あの時、あの場所にいる私は永遠にあの時空間では幸せな気持ちでいるんだろうな・・・」
とか、或いは「あの時空間にいる私はその瞬間では永遠に哀しい気持ちでいるんだよな~」
とか・・・。
悲しんでいる過去の自分を慰めに行く事は出来ないが、
トラルファマドール星人の言う通り、
そういうものは無視して楽しい瞬間瞬間だけを見て生きるっていうのがいいのかもしれない。



この作品中で何度も何度も繰り返し使われる言葉、

「そういうものだ」



この短い言葉の中に含まれる深い深い想いが読むものの胸に迫ってくる。




主人公ビリーが新聞社に投書するために書いた文章を一部抜粋してみる。
物語の最初の方に出てくる文章だったので、
一番最初に読んだ時にはわかったような、わからないような・・・という感じだったのだが、
二回目に読むと実によくわかった。この部分が一番作者が言いたかったことなのかもしれない。

わたしがトラルファマドール星人から学んだもっとも重要なことは、
人が死ぬとき、その人は死んだように見えるにすぎない、ということである。
過去では、その人はまだ生きているのだから、葬儀の場で泣くのは愚かしいことだ。
あらゆる瞬間は、過去、現在、未来を問わず、常に存在してきたのだし、常に存在しつづけるのである。
(中略)
トラルファマドール星人は死体を見て、こう考えるだけである。
死んだものは、この特定の瞬間には好ましからぬ状態にあるが、ほかの多くの瞬間には、良好な状態にあるのだ。
いまでは、わたし自身、だれかが死んだという話を聞くと、ただ肩をすくめ、
トラルファマドール星人が死人についていう言葉をつぶやくだけである。
彼らはこういう、”そういうものだ”。



先日、作者のカート・ヴォネガットは亡くなられたが、過去ではまだ生きている。
だから、私もこうつぶやかせていただこう。
”そういうものだ”

四字熟語ひとくち話 (岩波書店辞典編集部編)

2007-05-17 09:17:42 | その他
(2007年4月20日発行)

最近、クイズやゲームの類で<四字熟語>を取り上げたものをよく目にする。
四字熟語っていうものは結構面白くて奥が深い。
たった四つの漢字で人生の機微、浮世のからくり、人の心の奥底までぴたりと表現するのだから、恐れ入る。
学校で習った程度の四字熟語程度ならわかるのだが、それ以上に驚くほど四字熟語っていうものはいっぱいある。

<四字熟語>って、漢字が四つ並んでたらそれでいいというわけでもないだろうが、それでは、どういうのが四字熟語っていうのだろう?
「弱肉強食」はいいが、「焼肉定食」はどうなんだろう?(笑)
・・・て、四字熟語の定義を考えている項もあるけど、堅苦しくなくて実に面白い。

四字熟語をもっと知りたいと思っていたけど、四字熟語とその意味を書いただけの本なんて、今更受験勉強をするわけじゃあないし、つまらない。
読んで真面目な解説で、更に面白いものはないのかな?と探してて見つけたのがこの本。

私が求めていた条件に見事に当てはまる。


長女に「これは面白い!」と言ったら、
「岩波書店~?堅苦しそう~~!!」
と、眉をひそめるのよね。
でもね、全然堅苦しくなんてないのです。
ま、騙されたと思って読んでみて欲しいものです。
四字熟語にはまる事、間違いありません!

神々の山嶺 (作画:谷口ジロー 原作:夢枕獏)

2007-05-11 20:54:32 | 漫画家(た行)
(ビジネスジャンプ2000年~2003年 掲載)

今、読みかけの本、読んだけど感想を書いていない本が山ほどあるのよね。
真面目に感想を書こうとしている本ほど、なかなか感想が書けずにいる。
これも、そういう本のひとつ。
原作の方は何年か前に読んでいるのだけど、かなり前に読んだので細かい所は忘れている。
それに原作は後で出た文庫版と最初の本ではラストが違うらしいいし、
漫画版も原作のラストとは違うようだ。


・・・で、全部目を通してから感想を書きたいと思ってたんだけど…。
まあ、そんな事しているうちに、漫画を読んだ直後の感動を忘れかけている自分がいる事に気がついて、まずは漫画のみの感想を書こうと思ったのです。
原作との比較は今回はナシで・・・。

漫画版、いろんな人からいい作品だと聞いていたが、本当に素晴らしい作品です。

私は登山などはしたことがないので、山に登るという感覚が実際にはわかりません。
エヴェレスト級登攀の感覚などと言われると・・・もうお手上げです。
ありったけの想像力を駆使して思い描いても・・・イマイチよくわからない。

・・・が、谷口ジローの画力で表現されたエヴェレストは凄い!
目もくらむような高さ、空気の薄さ、空気の冷たさが、直に伝わってくる・・・圧倒的な迫力で、読むものにぐいぐいと迫ってくるのだ。
私のような者にさえ、まるでそこに自分もいるような錯覚に陥る事が出来るのだ。

そして、深町や野性味溢れる羽生など、山の男達はいかにもそういう顔だろうな、っていう感じで全く違和感がない。


原作の中で一番、私の記憶に残っている<羽生丈二の手記>のシーンは鳥肌が立つぐらい素晴らしく表現されている。


さびしいのか
きしよう
いってやっても いいけどな
でもな まだな なっとくが
できないような気がしてな
まてよ
もう ちょっと
きし
きしよう
そんなにかなしそうな
かおするな


夢枕獏の文章も非常にいいのだが、それに更に谷口ジローの絵がつくと最高に素晴らしいシーンとなって読者の眼前に迫ってくる。
夢枕獏って、幸せな小説家だなあって思う。
自分の作品をさらに高めるような漫画家に出会うことが出来たのだから。

最終話<未踏峰>は、漫画のみの話らしい。
ネタバレになってしまうので、どういうラストかは書かないが、実にいいラストだと思う。

この本は何日かかけて寝る前に数ページずつ読んだのだが、ラスト読み終えた時の充足感はまるで高い山を登りきった時の達成感を思わせるような気持ちだった。



「人は何故山に登るのか?」
「人は何故本を読むのか?」



その答えが何となくわかったような気がする。

AKIRA (大友克洋)

2007-05-10 08:38:57 | 漫画家(あ行)
(ヤングマガジンにて、1982年12月20日号から1990年6月25日号にかけて連載)

1984年(昭和59年)度、第8回講談社漫画賞一般部門受賞

AKIRA(28号)は鉄人28号のオマージュ。
主人公の金田は(金田正太郎)。
島鉄雄は『鉄人28号』に登場する敷島博士の息子、敷島鉄雄を由来としている。また、鉄人を捩っている。
大佐の苗字は敷島。『鉄人28号』で鉄人計画に関わり鉄人28号を開発した敷島博士。


まあ、とにかく全編、破壊、破壊、破壊・・・。
これはビル崩壊シーンの緻密な描写の出きる大友克洋にしか描けない漫画かもしれない。

脇役だがチヨコおばさんが結構気に入っている。
初めて登場した時は、割烹着を着たいかにも<おばさんルック>それが、メチャクチャ強い!!
そういうギャップが面白いと思っていたら、その後は普通の戦闘ルック。
まあ、いいけどね。
とにかく性格がいいよね。
私は、こういうキャラがお気に入りなのです。

大佐も好き。
ハゲの大男!!・・・考えてみたら何故か私が好きな男性キャラにはこの手のタイプが多い。
何故なんでしょうね~?(笑)

ミヤコもなかなかいい味出してるよね。
こういうタイプも結構好き。

・・・って、どれもちょっと一癖も二癖もあるタイプかな?

静かなるドン (新田たつお)

2007-05-08 16:43:30 | 漫画家(な行)
この漫画、71巻まで買ってたのだけど、ふと買い忘れたまま、しばらく放っていたのよね。

すると、いつのまにか81巻まで出ている!!
出るの速すぎ~~~!!

長女が「お母さん、続きが読みたい~~!!」
・・・と、うるさいので先日古本屋で10冊一挙購入!!

あっという間に読んでしまった。
こういう娯楽に徹した作品は、あっという間に読めるのがいいね。

新しい登場人物として、斉藤始なんていう<イケメン男>が出てきてるし、
一時期、ちょっとつまらないと思った頃もあったけど、最近読まなくなった間に随分面白い展開になってきているみたい。

これは今後の展開が楽しみだ。
次回新刊が出たらすぐに買わなくっちゃ♪


漫画の名セリフ-おたのしみはこれもなのじゃ (みなもと太郎)

2007-05-07 20:59:54 | 漫画家(ま行)
(「マンガ少年」1976年9月~1979年8月号 掲載)

和田誠のイラスト入り映画評論「映画の名セリフ-お楽しみはこれからだ」のパロディ。

様々な漫画作品を取り上げて、その似顔絵を和田誠風に描いて
名セリフと共に文章もまた和田誠風に似せて書くという素晴らしいパロディ!

作者本人は、
「ひとのフンドシで、ひとの土俵で、ひとのチャンコをくいながら相撲をとりつづけるようなものだ。
ぼく自身のものなどなにもない。
やたらと肩身がせまいのである。」
なんて謙遜しているが、なかなかどうしてここまでやってると実にすばらしい!

パロディのお笑いでなく、マジなマンガ評論としてうけてしまったことに作者は驚いているが、本当に素晴らしいマンガ評論なのだから驚くことはないのだけどね。

この作者は私よりも一世代上の年代なのでかなり古い漫画を取り上げていて残念ながら読んだ事のない漫画もいくつかあるのだが、とにかく切り口が面白い。

私もこういう風にマンガ評論とやらを書けたらいいのにな~と、密かに目標にさせて頂いている作品なのです。