本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

大島弓子 (グーグーだって猫である)

2009-01-28 16:32:54 | 漫画家(あ行)
この作品は去年の秋に映画公開されたと思うのだけど、それは観ていません。

以前に1・2巻までは読んでいたのですが、先日図書館に1~4巻まであったので4冊一度に借りてきました。

1・2巻は癌の闘病日記的なものでしたが、その後はただひたすら猫のお話。

子猫の鳴き声が聞こえると夜でも飛び出して探し出し保護するし、
ホームレスの人の連れている猫が猫疥癬だと気づくとその人から受け取って治療したり、・・・。

里子になった猫もいるけれど、
どんどん増え続けて2008年5月現在は13匹だとか!!!

うわ~!スゴイ!!
・・・と私などはただ単に思うだけなんですけどね、
アマゾンのカスタマーレビューなどを読むと
野良猫に去勢せずにエサをやってるだけだとか、13匹飼うのは多すぎるとか、
家の中のみで飼うべきなのに外にだすなんて!・・・とか、
賛否両論あるようですね。

昔の作品に比べると線も雑だし、美しくないし・・・
これもまた賛否両論あるようですが、


癌を乗り越え、命の尊さをより深く感じてる作者の想いっていうものが
この作品に込められてるような気がします。

生きているといろんな事があります。
辛い事も嬉しい事も・・・。

そして、生きているということはいつかは必ず死が訪れるっていうことです。
それなら、前向きに、<生>を慈しみながら生きていけるならそれは素晴らしい事だと思います。

猫がいっぱい出て来る猫漫画と思って読んでもいいし、
命や愛情とかいうものを考えるきっかけとして読むのもいいし、
大島ファンなら作者の人となりを知るものとして読むのもいいし、
まあ一度手にとってみてください・・・っていう感じでしょうか?

とりのなん子 (とりぱん)

2009-01-27 15:49:51 | 漫画家(た行)
出版社からのコメント(1巻)
ちょっと変わってて、少しクールで、割と背が高い、北の町に住んでるイトコからの手紙??そんなような漫画です。
東北の某ベッドタウン在住の作者(30代・独身・女)が、野鳥、ネコ、風物、方言、地元料理など日常のすべてをネタに綴る「身の丈ワイルドライフ」。読む者の自然観をへにゃりと揺るがすモーニングの人気連載、ついに単行本化!
かわぐちかいじ・さだやす圭 両審査員が空前の激賞!
第17回MANGA OPEN大賞作品も完全収録



以前からちょっと気になっていたこの作品、先日図書館に1~5巻まであったので借りてきました。
(2009年1月現在6巻まで出てるはず)

家で読んでるとダンナが何を読んでるのかと聞くので、
「う~~ん?野鳥観察記?」
ダンナはそれで素直に納得したようだけど・・・うちのダンナは漫画など読みません。
だから、内容を聞いてもただ単に意味のない挨拶程度・・・かな?

・・・で、自分で<野鳥観察記>って言ったけど、
それはそれで間違ってるわけではないけれど・・・ちょっとニュアンスが違うかな?って思ったわけです。

昆虫観察記でもあるし、人間観察記でもあるし・・・
自然観察記とか?そんな感じ??

とはいえ、自然を大切にしましょう!とかロハスだとか言ってるわけではなくて、
作者の身の回りのものを淡々と描いているだけ。

そういう感じがいいですね。

自然回帰だ!ロハスだ!エコだ!
と、声高に叫ばれると・・・どうも引いてしまいます。

ありのままに目の前のものを慈しむ。
そういう目線が好きです。

この作品を読んで私も庭にエサ場を作ってパンや果物を用意したいな~!
・・・って、ちょっぴり思ったんですけどね。
鳥のフンの始末や、エサの準備や補充などなど・・・
かなりマメな性格じゃないと出来ないことに気づき・・・
・・・止めました。(笑)

まあ、我家は田舎ですのでわざわざエサの準備をしていなくてもいくらでもいろんな鳥がやってきます。
鳥の種類は雀とカラスとキジバト程度しかわからないんですけどね。
あ、そういえばこの辺りにはいくらでも野生のキジがうろついてるらしいし・・・
気をつけて観察していれば面白い生態観察が出来そうです。

内田美奈子 (アンバランス・トーキョー)

2009-01-20 16:50:18 | 漫画家(あ行)
(1990年発行)

この人の描く線が好きです。
洋服の皺の入り方とか一風代わった趣味の服のデザインとかが好きです。
登場人物たちが全てかなりぶっとんだ性格で、それも気に入ってます。

これは一年ぐらい前に古本屋で見つけたんですけど、
少々傷んでたんです。
でも滅多に見かけることのない本だから仕方ない、・・・とレジに持っていくと、
お店の人が「この本は傷んでるからタダにします。」
って言ってくれたのです。
とってもラッキーでした♪

・・・って、今回は作品の内容が全然伝わらない感想ですね~!(笑)

斎藤岬 (ひなたの狼)

2009-01-19 15:58:02 | 漫画家(さ行)
新選組を題材にした漫画です。

表紙は誰かと言いますと・・・土方歳三なんです。
普通、この顔だと沖田総司ですよね。
沖田の顔はこの漫画の中ではブサイクではないけれど可愛い感じでもないのです。
土方より男っぽい沖田なんて!?(笑)

男らしくてビシッとしているというイメージの土方が沖田風の中性的な男になってるなんて~!
ちょっとイメージが違いすぎる~~!!
と、ちょっと文句を言いたい気もしないわけでもないけれど、結構こういう感じも好きな私です。


見かけは中性的だし、この時点ではまだまだ精神的にもそれほど強くはないんだけど、
そういう男が少しずつ少しずつ成長していく様を描いていて、
読んでるうちにこういう感じの土方さんにもそれ程違和感がなくなってきました。

芹沢鴨が暗殺されるシーンまでの話なのでこれからもっと面白くなるのだろうけど今の所続きはまだ描いてないようです。
今後この土方さんがどう変わっていくかその成長する姿が見たいので
是非続きを早く描いて欲しいものです。

谷口ジロー (凍土の旅人)

2009-01-16 09:11:33 | 漫画家(た行)
(2005年1月一日発行)

短編が6話収録されています。
動物もの、ヒューマンドラマ、どれもいい。

凍土が舞台だと読者はその凍った冷たい空気を感じ、
熊が現れるとその荒々しい息づかいをすぐ傍で感じたような気になり、
アラスカの海では鯨と共に泳いでるかのような気分、
瀬戸内の小さな漁村が舞台だとその潮の匂いを肌で感じるような気にさせられる。

それは何故か?

おそらく緻密に描かれた背景や動物たちが読者をその世界に引きずりこんで行くのだと思うのです。

背景だけを見るとかなり描き込んでるのがよくわかります。
でも、人物の邪魔にはなってないんですよね。
読んでいる時にはあまり気がつかないけど、
人物或いは動物達がどういう場所にいるのか、
そこは寒いのか暑いのか、潮の匂いがするのか、
そういう事を緻密なタッチで描かれた背景が作品世界を薄っぺらなものにしていないのです。

この本に収録されているもののなかでは特に「海に還る」が印象に残りました。

年老いたクジラがゆっくりとクジラの墓場に下降していく様は圧巻です。
それにしても、クジラってこんなにも至る所に傷跡・・・
尾がサメやシャチに噛みつかれてギザギザになってるなんて知りませんでした。
絵や写真で見るクジラのイメージでは傷跡ひとつない綺麗な姿ですものね。

あぁ、生きてるんだな~。生きていくってことは大変なんだなって心底思いました。

谷口ジロー (晴れゆく空)

2009-01-15 09:35:01 | 漫画家(た行)
(週刊ヤングジャンプ2004年33号~39号、41号~43号、48号~50号掲載)

交通事故で死んだ男、久保田和広の魂が車をぶつけた相手の小野寺卓也の肉体に入る。

別の肉体に別の精神が入り込むっていう話は小説やドラマ、少女漫画などでも使われてきたテーマだと思います。
そういうテーマを個々の作家がどのように料理していくか。
それが重要。

谷口ジローのあとがきによると、
「ひとりの死を受けとめることの嘆かわしさや、死にゆくものがどのようにしたら心を残さぬように出来るものなのか。
そんな心の葛藤が漫画表現出来ればと思って挑戦してみました。」
と書いている。

この作者は他の作品でも、
人が愛する者の死に接した時の心の揺れ、そして再生を描いていることが多いような気がする。

<死>というものは、残された者にも大変悲しいことなのだけど、
死んでしまった当事者にも大変悲しいことなんですよね。
ただ、死んでしまった当事者の気持ちは残された者にはわかりません。

この作品では他者の肉体に入る事で自分の気持ちを残された家族に伝えることが出来るわけなんですけど、まあ現実には普通ありえないですよね。

私自身、死ぬ前にきちんと子供たちに残す物、伝えたい事を書いておかなくちゃって思うんですけど、
思うだけで、まだ何にも手をつけてません。

私が死んだという事を知らせて欲しい人たちの名簿とか、葬式の事とか・・・。
ああ、そんなことより大事な事が!
私の大量の漫画の蔵書をどうするか、それが問題だ!!!(笑)

ま、とにかくこの作品、
谷口ジローの得意とするヒューマン・ドラマです。
生きる意味とか死ぬ事とかを改めてじっくりと考えさせてくれます。