本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

坊っちゃん (夏目漱石)

2006-01-29 11:15:12 | 小説
今年は夏目漱石が「坊っちゃん」を発表して、100年にあたるらしい。
そのせいか、愛媛では何かと漱石の話題で盛り上がっているようだ。

私は大学の卒業論文で夏目漱石をテーマに選んだこともあり、彼の作品はたいてい読んでいる。
漱石の文章はリズム感が非常に心地好くて大好きなのだ。
読んでいて、引っ掛かるような文章はいくら内容的に面白くても興ざめしてしまう。
漱石の文章にはそれがない。
かつては、冒頭部分を覚えたりしていたが、あのリズム感の素晴らしさは今でも感動ものだとさえ思っている。

さて、今回取り上げた「坊っちゃん」。
この作品は中学校の教科書に出てたりするから知っている人は多いと思う。

話はそれるが、(私ってすぐに話が別方向に行ってしまう・・・苦笑)
私の子供たちが中学生の時、ある日全員「坊っちゃん」の本を持ってくることになった。
私は勿論持っているが、一冊しか持っていない。(双子なので二冊いるのだ。)
確か慌てて買いに行ったが小さな田舎なので本屋は二件しかない。
それが町中の中学生が同じ本を買わねばならないのだ!(一学年200人ぐらいかな?)
そんなにたくさんの「坊っちゃん」があるわけがない!
そういえば・・・去年私の友達が子どもが学校で使うからと「坊っちゃん」を探して走り回ったという
話をしていたな・・・という事を思い出した私は最初から隣の市にある大きな本屋でその本を手に入れた。
それにしても教師は一体何を考えているのだろう?
毎年のように「坊っちゃん」を教材にするのなら一クラス分、学校で買って置いてもいいのではなかろうか?お金の問題でそれは出来ないというのなら、4月の時点で○月に「坊っちゃん」を教材として使うから用意しておいて下さい。という風にしていたら保護者が必死で本屋めぐりをする必要はなくなるのではなかろうか?
現在、どういう風にしているのか知らないが、今も同じようにしているとしたら、
この町の殆どの家庭に一冊「坊っちゃん」があるという事になる・・・。
何となく・・・面白い・・・。(笑)


昔、子供の頃初めて「坊っちゃん」を読んだ時、舞台である松山の事を思い切り田舎だと馬鹿にしてるじゃないか!!と思った。ちょっと腹も立った!
しかし、愛媛県(特に松山市)では、「坊っちゃん饅頭」とか「坊っちゃん列車」とか何かと色々なものに「坊っちゃん○○」という具合に「坊っちゃん」という言葉を付けている。
そして、みんなで夏目漱石を持ち上げているのだ!
「ね~みんな!!思い切り馬鹿にされてて腹がたたないの~!!??」
・・・と叫びたいぐらいだった。
松山の人たちは「坊っちゃん」を読んだことがないのか?いやいや、そんなことはないだろう・・・。
商売になるから腹は立つが「坊っちゃん」の名前を拝借しているだけなのだろうか???
そんな風に若い頃は考えていた。

しかし、歳をとった今、松山の人たちが「坊っちゃん」を愛する気持ちが何となく分かってきた。
今思うと、坊っちゃんって「青臭い正義感溢れる若者」に過ぎないのだ。
そんな若者がぎゃあぎゃあ喚いてる事に対して本気で怒ってどうするんだ。
そういう若者には「よしよし、まあ、そう怒らんでもちょっと一緒に飯でも食わんか?」
・・・という感じなんだろう。
要するに松山の人は「おおらかでゆったりした気持ちの優しい<大人>なんだ」
・・・今ではそう思える。たぶんそれが正解なのだろう。
大人になって初めてわかる感情というものもあるようだ。
そう考えると歳をとるっていうのも悪い事だけでもないようだ。

この文章を書いていると何だか無性に松山に行きたくなった。
そして、漱石の時代に走っていた「マッチ箱のような汽車」を復元したという
所謂「坊っちゃん列車」に乗ってみたくなった。


椿山課長の七日間 (浅田次郎)

2006-01-18 16:12:50 | 小説
(2002年発行)


死んだ人間が現世に思いを残し、再び舞い戻ってくる・・・
というストーリーは映画、小説、漫画などに数え切れない程ある。
この小説もそういう類のものだ。


設定自体は目新しいものではないと言えるが、こういう設定は結構好きなのでつい読んでしまう。
世の中にこういう類のものが多いという事は、こういうのが好きな人が多いと言う事なのかもしれない。
もし、自分の身近な人が亡くなったら、どういう形であろうとも再び現れて欲しい。
或いは、自分自身が死んでしまった場合、後に遺された愛する者が心配で現世に舞い戻りたい。
・・・と、考えている人が多いのかもしれない。



この小説では亡くなった人は
「お役所」のような「あの世」に行き、そこで極楽往生するための講習を受けた後
ほとんどの者が極楽往生していくというシステム。
「死んでも死にきれない」という者は再審査を受けて
「現世特別逆送措置」を受けられる。
そして、逆送用の仮の肉体を用意して貰って死後七日間、所謂「初七日」まで現世にいられるのだ。



なかなか面白い設定である。
自分と全く別の身体になり、現世の人に正体をばらさないで思いを遂げる。
結構、難しいことだと思うが三人の死者たちが、現世に戻っていく・・・。



死後の世界がこういう風になっていたら面白いかもしれない。
私はさっさと極楽往生の道を選ぶか、
それとも、「初七日」まで現世に舞い戻りジタバタするか・・・?
それは死んでみないとわからないな~~。(笑)