本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

ブレーメンⅡ (川原泉)

2007-11-27 19:21:19 | 漫画家(か行)
人権教育のテキストにしたら、いいのではないだろうか?・・・という感じの作品。

数の少なくなってきた人類の助けになるだろうと、人間並みの知能を持った動物たちが創りだされたが、大方の人間たちが差別をする。
それでも純粋な動物たちは、真面目に仕事をする。

テーマは「差別」?・・・なのだろうか?
この作者独特のちょっととぼけた感じで押し付けがましくなく、さらりと描いているので、読む年齢や感覚によっては、人権問題を取り上げているとは、あまり感じない者もいるかもしれない。
そういう感じが非常に良い。

絵については、線のタッチとか、顔は好きなのだが、殆ど顔のみのコマが続くのが少々気になる。・・・まあ、個性と見るべきか???

GAME (今市子)

2007-11-27 12:21:49 | 漫画家(あ行)
(2006年発行)

<帯の言葉より>
優等生の兄の”想い人”は、なんと男だった!
「しょうがないだろ
好きなもんは!」

少年が大人になってゆく・・・
ビルドゥングスロマンの傑作、待望復刊!!



男が男を好きになる・・・まあ所謂BLもの。
でも、かなりソフトなので読みやすい。

そっか・・・ビルドゥングスロマンなのね・・・成長物語なんだ。
登場人物たちの顔も性格も服装も、どんどん変化してるのよね。
ま、これが一気に描いた作品ではないって事も一因かもしれないけどね。

登場人物たち、み~~んな好き勝手やってて”青春”だな~~って感じます。
ああ・・・”青春”!!懐かしい響きの言葉だわ~!

絶対安全剃刀 (高野文子)

2007-11-25 12:37:29 | 漫画家(た行)
(昭和57年発行)

これは1982年度 日本漫画家協会賞・優秀賞を受賞している。

収録されているのは17の短編。
それらは掲載された雑誌も内容も絵柄も様々。

細くて、柔らかい線。
まったりと、はんなりと、すんなりと・・・
いつのまにか心の中に侵入してきて、
知らないうちにココロを占領されてしまった~!!っていう感じ。

ある時は幼い少女。
ある時は少年。
ある時は若い女性。
はたまたある時は老女(見た目は幼女として描かれている!)。

彼らは不思議な感覚・奇妙な世界の『高野ワールド』で
自由に伸び伸びと生きている。



この作品集の中で私が一番気に入ってるのは「ふとん」。
手前に横たわっている少女。
少女の足元の障子に映る人・人・人・・・
「葬儀」のシーンをこんなに美しく表現出来るなんて・・・!!
「参りました!」と言うしかないですね。

(死んだ)少女のお迎えに観音さまがやってくる。
観音さまは少女に語りかける。
「おまえ ほしいものなあに
言ってごらん
なんでも 思いどおりに なるよ」
少女はごはんが食べたいと言う。
観音さまは不器用な手つきでごはんを盛りながら、
顔をちょっとしかめて言う。
「わたしごはん盛るのきらいよ
これけっこう むずかしいんだもの」
(非常に人間的な観音さまがカワイイ!)

ラスト、少女が観音さまに言う。
「ねえ ねえ ねえ かんのん
もう一つ あのさあ
めりんすぶとん ほしいな」
「買ってやるよ」
小躍りして喜ぶ少女。


私も死ぬときにはこんな観音様にお迎えに来てもらいたいな~。
そして何かおねだりしたい。
何がいいかな~?
やっぱり「めりんすぶとん」がいいかな~~?(笑)



ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事 (高野文子)

2007-11-22 21:28:25 | 漫画家(た行)
(月刊プチフラワー 1986年11月号~1987年4月号掲載)

朝日新聞で「ねたあとに」(長嶋有)の挿絵を高野文子さんが描いてますね。
どういう話になるのか、どんな挿絵になるのか楽しみです。

この作品、良質のアニメーションを観てるっていう感じがする。
構図とか人物の動きが実にいいんですよね。

ピンポット公国とかカルト帝国とか秘密諜報部員とか・・・ちょっぴりレトロな雰囲気の楽しい作品。

この貧しき地上に  (佐藤史生)

2007-11-20 22:26:41 | 漫画家(さ行)
(1985年発行)

この作者に関しては結構深いところまで考察されるファンがおられるのではないだろうか?
私も読んでいてもっと深読みするべきなのかな~~?と、思ってしまうのだが、
残念ながら知識がついていかない。
この作品のモチーフとして使っているミノタウロスの話ぐらいは当然知っているのだが、
もっと何か”深い意味”が隠れているのではないかと思うのだ。
だいたい、タイトルの”この貧しき地上に”というのも、
何かの言葉を借用しているのではないのか?
と、思うのだが原典を知らない。
自分がモノを知らないという事を思い知らされてちょっと悔しい。

この作者がよく描く、知的で端正な顔立ちの男たちに、
軽い軽蔑のこもった眼差しで見られているような気がしてしまう・・・。

そんな事を考えながら読んでいるからか、
ラスト、十年間行方不明だった(或いは死んだかもしれないと思われていた)
清良(きよら)を見つけた安良(やすら)が涙を流すシーンも、何となく考え込んでしまうのだ。
単純にハッピーエンドだと喜ぶべきか?
いや、登場人物それぞれの気持ちは・・・?
今後どう展開していくのか???

えぇ~~っ!単純に面白ければいいじゃない?
・・・と、耳元で囁く自分がいるのだけれど、やっぱりちょっと考え込んでしまうのだ。


……と、以上が昨日久し振りにこの作品を再読して感じたこと。
今日、この文章を書いていて、また違った感じを受けた。
(コロコロと変わる自分が、自分自身何だかおかしい。・・・笑)



まあ、一言で言えば、
”幼い時から天才だの神童だのと
大人たちに言われ自分自身も有頂天になっていた子どもが、
自分自身の実の父親の正体を知り、
初めて挫折感を味わう。
そして自分を心配してくれる人たちの事も考えられず、
ただただ、『自分』の事しか考えられなかった・・・。
・・・そういう『ひとりよがりで傲慢な子ども』が自己を再構築する話”



この本に同時収録されている「おまえのやさしい手で」
という作品にも、何もかも知っているという顔をした人物が登場する。
夏彦の哀しみを単純に哀しみとして捉えるべきか?
それとも、”ひとりよがりの傲慢さ”と捉えるべきか?



それは読む者がそれぞれ考えればよいのだと思う。


エデン2185 (竹宮惠子)

2007-11-20 09:07:40 | 漫画家(た行)
(昭和60年発行)

<表紙折り返し部分の説明より>
目的地は”エデン2185”。
新しい星を求め、100年もの長い旅に出発した宇宙船は、さまざまな人間模様をくり広げる”世界”を乗せて今日も飛び続ける…。
宇宙船の乗務員シド・ヨーハンを通して、人間の心を繊細かつ克明に描いた、SFヒューマン・ドラマ。


新しい星を求めて、何世代も後に到着する予定・・・という設定の話は多い。
いつの日か人類は本当にそういう風に新しい星を求めて旅立つ時がくるかもしれない。
・・・そういう思いがいろんな人にこのテーマでお話を作らせる原動力になってるんだと思う。

この作品では5000人が巨大な宇宙船に乗って新しい星”エデン2185”を目指している。
5000人というと、小さな町ぐらいのサイズかな?
もし、20歳で乗り込んだとしたら本人は新天地に到着する前にたぶん死んでいる。
それなのに乗り込むのはやっぱり勇気がいるよね。
そこで、いろんな人間のいろんな葛藤が生まれてくるのだ。

しかし・・・考えてみると、実際私の行動範囲なんてせいぜい半径20kmぐらい。
たまに旅行に出掛けることはあるけれど普段はそのぐらいで十分だ。
付き合う人間の数だってほんのわずかだし・・・
5000人の巨大宇宙船で生活しているのと、そう変わりはないのかもしれないね。


やがて、この宇宙船の中で、パイロット(フライング・マン)と一般市民との間に境界線(国境)が出来る。
そうなんだよね、人間っていう生き物は主義主張が違ってくると何故か<境界線>を作ってしまう。
<境界線>は国境であったり、差別心であったり形は違うけれどもどれも自分と違う者を避ける心だ。



シドは言う。
「・・・・・・空を見上げて星を見たことがあるかね?
なければ
いま見るがいい
ふるような星も・・・・・・
見ようと思って見なければ
その半分の光もわれわれの目はとらえない
人間とはそういう主観の動物なのだ
だから・・・
見ようと思いさえすれば
ふる星のごとく可能性が・・・・・・」



心に残るいい言葉です。

バンパイアハンター D 1巻  (作画:鷹木骰子)(原作:菊地秀行)

2007-11-16 14:48:36 | 漫画家(た行)
(2007年発行)

11月14日が全世界同時発売でした。
(アメリカ・ドイツ・イタリア・フィンランドなど・・・)
・・・が、この辺では昨日発売でした。(田舎はつらいですね)
昨日、買って即読みました。
内容はアニメ第一作と同じです。
あのアニメはかなり古いのでキャラも古くDもイマイチ・・・でした。(ごめんなさい)
今回の漫画版ではイマイチだったキャラが今風になってて良かったと思います。
雰囲気も作者が一生懸命に天野喜孝の挿絵の雰囲気を表現しようとしているのがわかります。
そして、ドリス・ランの胸が実に立派な巨乳!
これはアメリカでも発売されるから意識したのかな?
いや、日本でも巨乳ファンは多い?(笑)

全体的に作者の作品に対する”愛”が感じられていいと思います。

・・・で、正直なところ・・・私の脳内のDとは、申し訳ないけどかなり違うんですよね。
私の脳内のDは、天野喜孝が「夢なりし」の表紙を描いた頃のDです。

そういうビジュアルでDの漫画を描ける人は・・・たぶんいない?
天野喜孝本人でさえ随分絵柄が違ってきたから、あの頃のDは描けないと思うんですよね。

だから、完璧には私の理想のDではないんだけれど、Dがコミック化されたというだけでとっても嬉しい。
この作者もたぶん今後もっともっと上手くなると思うから、(現在、下手だと言ってるわけではありません)それに期待したいと思ってます。
頑張って、小説になったDを全てコミック化して貰いたいです!
応援しています♪



学校へ行くクスリ (萩尾望都)

2007-11-16 09:17:20 | 漫画家(は行)
(ビッグゴールド 1994年16号掲載)

「イグアナの娘」に同時収録された40ページの短編。


夏休みが終わって、
高校一年の二学期さいしょの登校日。
いつになく目覚めが悪かった。
ダイニングへいくと、
父さんはワープロ、
母さんは電気ジャーになっていた。
・・・という具合に始まる。

自分以外の人間の顔が人間の顔に見えない。
・・・ん~~~~何かどこかで見たぞ~!
あ~~!手塚治虫の「火の鳥」にあったよね~~~。
他にもどこかで見た覚えがあるが、ま、それはどうでもいい。

多感な高校生の心象風景をシュールに表現した作品だ。


・・・で、この作品には直接関係ないのだが、
私も人間の顔をたぶん「そのまま」に見ていないんだろうな~~~って思う。
勿論、ワープロとか電気ジャーに見えているわけではないけどね。

家族の写真などを見ると、
「えぇ~~~~~!?こんな顔してたっけ!!??」って驚くことが結構ある。
思わず、実物の顔をまじまじと眺めてみたりするのだが・・・どうもイマイチ写真と違うような気が・・・写真修正をしてるわけでもないんだけどね~~~。(笑)

家族以外の顔も、「私の目」というフィルターを通して見ているせいか、
実際の姿とは微妙に違っているような気がする。

他の人も多かれ少なかれ、それぞれの「フィルター」を通して実際とは違ったものを見ているのかもしれない。

好意を寄せている人には実際より美しく、
敵意を感じている人には実際より醜く見えているのかもしれない。

・・・というような事を考えていると、
人に少しでもきれいに見られたいと思うなら、内面を磨いて
人から好かれるような人間にならなければいけないんだな~~~って思ったわけなんですよね~~。



午後の日射し (萩尾望都)

2007-11-14 09:10:51 | 漫画家(は行)
(ビッグゴールド 1994年14号掲載)

これは「イグアナの娘」の単行本(小学館発行PFコミックス)に収録されている作品。(だから画像は「イグアナの娘」の表紙になってます)
「イグアナの娘」も、この「午後の日射し」も50ページの短編だ。
長編が上手い作者は短編も非常に上手い。
たぶん最初に考えたストーリーを練りに練って余分なエピソード部分を削っていって描くのだろう。だから、これらの短編はきっと長編にしようと思えば長編でも十分描いていくことの出来る作品になっているように思う。


さて今回取り上げた「午後の日射し」、
中年の夫婦の何気ない会話から始まる。

居間でテレビの前で新聞を読みながら片手にテレビのリモコンを持ってごろりと寝転がっている夫。
妻はそんな夫の後ろで家計簿をつけている様子。
テレビの中では芸能人の離婚会見らしきものをしている。
妻:ねえ あなた。
夫:んー。
妻:16年も夫婦でいて、
さっぱり別れられるものかしら、
ねえ。
夫は妻の顔を見ようともせずにビールを飲みながらつまらなそうに、当然のように答える。
夫:夫婦なんて他人だよ、
結局。

次のページをめくると、
凍りついた妻の表情・・・。
そして妻の心の中・・・。

そのとたん
さあっと世界の色彩がはがれおちた。

ページ全体に広がるどこにでもあるような住宅街の風景。
しかし、そこには誰もいない。
”色彩のはがれおちた世界”なのだ。


導入部分の2ページで、ここまで表現してくれるのかと思うと、嬉しくなる。
倦怠期を迎えた夫婦の話・・・と言ってしまえばそれまでなのだが、
妻の心の揺れを見事に描ききっている。
そしてまた”絵”に関しては、
”中年”と言われる年代をリアルに表現しているのだ。

夫の頬のたるみ、脂ぎった吹き出物のある顔、頭頂部から白髪が増えつつある頭。前頭部の髪は後退しつつある。体はでっぷりと所謂”中年太り”
妻は二重あごになりつつある顔。体全体も若いころに比べるとかなり肉付きがよくなってきている。
髪型は若いころとあまり変わってないが、それがある意味古臭さも感じられ自分自身が年を取ったことを認めようとしない(したくない)女心を表現している。口元、目の下など時々年を感じてしまう表現になっている。
細かく見ていると、作者がいかに隅々まで計算しつくして描いているかがよくわかる。


不倫願望がほんのちょっぴり顔を覗かすが結局今が一番いい。というラスト。


主人とわたしは他人だけど、
いちばん近い他人だわねえ。


何気ないどこにでもある光景だが、キラリと光る小品だ。

イシス (山岸凉子)

2007-11-08 23:20:30 | 漫画家(や・ら・わ行)
(2003年発行)

山岸凉子の作品は長編もあるが短編が多い。
そして・・・いろんな出版社からいろんな編集で本が出されている。
だから、この作品は持ってるけど、この中のひとつだけ持ってない・・・なんてことも結構あるんですよね~~~。

まあ、いいんだけどね、他の作家でもそういう重複作品ってあるんだけどね。
ただでさえ、どの本を買ったか忘れてしまう私は非常に悩むのです。
長編作品で何巻まで買ったか・・・或いは買ってないのは何巻だったのか・・・
メモがなければわかりません!(涙)

・・・で、メモを持っていない時に限って、買ってるかどうか忘れている本を見つけたりするんです~!
年をとればとるほど、忘れる事が多くなってきたような・・・。
困ったもんです。。。(ため息)

この本に同時収録されている「雨の訪問者」は、確か持ってたような気がしたのだけど、「イシス」と「ハトシェプト」はたぶん読んでなかった筈だ!!・・・と思って買いました。(笑)

山岸凉子お得意の古代エジプトが舞台の作品です。
妖しい雰囲気の女性たちが実に魅力的に描かれています。

HUNTER×HUNTER 24巻 (冨樫義博)

2007-11-07 20:00:06 | 漫画家(た行)
(2007年発行)

う~~~~ん。。。
この作品の感想は実に難しい。

一応、これ新刊が出る度にすぐに買って読んでいるのです。
でもね~、ご存知の通り、連載時などはメチャクチャ手抜き・・・と言うか、下書き状態だったりする。
単行本になる時は、描き加えてるけどね。

・・・で、連載が再開されたんですね。
雑誌は最近読んでないんですけど、やっぱりいつも通りなのかな?

ストーリーも面白いし、キャラも魅力的だし、絵も上手いから人気はあるんですよね。
でもね、人気があれば下書き状態でも載せて貰える・・・っていうのは、どうかな~?
って、思うんですよね。

必死で丁寧に描いても人気がなければ、こういう扱いはして貰えないのが普通。
漫画界というのは実力の世界だ。人気のある者の勝ちだ・・・と言われるとその通りなんですけどね。

それでもやっぱり
何だかな~~~~~・・・って思ってしまうんです。

・・・と、言いつつとりあえず読んでいる私です。

週刊誌の連載が難しいのなら、連載じゃなくて単行本描き下ろしっていう風にした方が気持ちいいんだけど、雑誌に載せる方が雑誌の売り上げが増えるんでしょうね・・・たぶん。

まあとにかく、きちんとラストまで上手く纏め上げて欲しいな~~って思います。

異郷の草 (志水アキ)

2007-11-06 17:11:17 | 漫画家(さ行)
(2007年発行)

<裏表紙の説明文より>
時は2世紀末、
広大な中国大陸には群雄が割拠し、
覇権を争い日夜 戦に明け暮れていた。
日本人にもなじみの深い三国志の世界を、
志水アキが描く連作集。
曹操・劉備・孫権ら英雄たちの下で、
それぞれの思いを抱いて戦乱を生きた、
ささやかだが思いの深き
5人の人生がここにある。
黄中・鍾会・甘寧・猛獲・簡雍ら
5人の「三国志」を描いた
読みきりコミック5作収録。


シャープなタッチで、三国志ではちょっと脇役的存在の男達をリアルに描いている。
もしかして、本当にこういう男だったのかも・・・って思えるぐらい生き生きと描いてるところが素晴らしい!

ほとんどがむさい男しか出てこない。
・・・だけど、面白いんですよね。(笑)
女性といえば、猛獲の妻になる祝融ぐらいか・・・。

どの人物も目が生きてるんですよね。
それが、この作品をより輝かせている。

「三国志」のファンがこれを読むとますます「三国志」が好きになりそうだし、
「三国志」をあまり知らない人が読むと、「三国志」のファンになってしまいそうな・・・
そんな感じの作品。

生霊 (ささやななえ)

2007-11-05 20:32:09 | 漫画家(さ行)
(1986年 ASUKA9月号、11月号掲載)

このタイトル「生霊」と書いて<いきすだま>と読む。
意味は同じだが、<いきすだま>と読んだ方が何となく、より怖く感じるような気がする。

根暗で無口、思い込みの激しい女子高生<浅茅優子>が
生霊になって次々と人を襲う・・・という話。


こういう女性に好きだと思い込まれる男は災難だろう。(逆も同じ)
こういうタイプは望月峰太郎の「座敷女」にも似ている。
・・・が、「座敷女」はストーカーではあるが<生霊>にはなっていない。

<思い込みが激しい>・・・ということは<思う>パワーが強いんだろう。
実際に行動に出てストーカーでもするのならパワーはそちらに発散されるが、
そこまで出来ない場合、魂が身体から離れるのだろうか?

そういえば、「源氏物語」でも六条御息所が生霊になる話は有名だ。

行動に出て<ストーカー>になるのも、
行動に出ず<生霊>になるのも、
どっちも怖いが・・・少し哀れな気もする。

パイナップルARMY (漫画:浦沢直樹 原作:工藤かずや)

2007-11-04 19:08:14 | 漫画家(あ行)
この作品は原則として一話完結なので、非常に読み易い。
絵は最近の方がシャープなタッチになっているので、それに慣れている人が初めて見たら少し違和感を感じるかもしれない。

ジェド・豪士という元傭兵が、戦闘レクチャーをする。
基本的に彼は戦い方を教えるだけで、実際の戦いはレクチャーを受けた人物がする。という設定。
ただし、結局は豪士が直接手伝う方が多い気もするけどね。ま、それは仕方ないでしょう。
普通、元傭兵とかいう設定だと、安易にボディガードという設定にしそうなものなのに、戦闘レクチャーというのが少々ユニークで面白い。

レクチャーを受ける人たちは老若男女様々な理由で戦う訳なのだが、中高年の男性が圧倒的に多い。
イヤになる程、おっさん、じーさんばっかりが次から次へと登場して来る。
それがいい。(さっき、「イヤになる程」と言ったじゃないか?と突っ込まないように!「イヤになる程」良いのだ!)(笑)

おっさん、じーさんたちは、それぞれ暗く哀しい過去を背負っている場合が多い。
若い頃読んだら、ふーーん。ぐらいで、それ程感じることもなかったかもしれないが、
人生の折り返し地点を過ぎたと思える歳になって読むと、何だか身につまされるような気もする。
勿論、私に壮絶な過去なんてあるわけないし、戦闘レクチャーを依頼しなくちゃならないような事もないんだけどね。
何となく、登場人物たちの「悲哀」とか「思い」とかを、
若い頃よりは深く感じることが出来るようになった。って事かな?

「戦争」なんていうものは、遠い絵空事のようにしか感じる事の出来ない私だけど、
実際、世界には、毎日「死」の恐怖に怯えながら暮らしている人間も多く存在するわけで…。
自分には一体何が出来るのか、わからないけれど、
せめて最低限、私の周りにいる人達を不幸にしない、そんな人生を送りたい。
…と、この作品には直接関係はないんだけど、思ったわけだ。

何となく自分の「人生」を考えてみたくなる。そんな作品だ。

神の左手悪魔の右手 (楳図かずお)

2007-11-03 19:26:10 | 漫画家(あ行)
怖い!めちゃくちゃ怖い!!ここまで怖い漫画は他にはちょっと思いつかない。
・・・強いてあげれば、小学生の頃読んだ楳図作品ぐらいか?
・・・って、結局同じ楳図作品だよ~!(笑)

「錆びたハサミ」・・・これが「ナイフ」ではないということがある意味怖さを増しているのかもしれない。
何故なら、ナイフは例え錆びていても、スパッと切れるが、ハサミはジョリッと切る。・・・という感じがするのだ。
この「スパッ」と「ジョリッ」の違いは大きい。
しかも、ナイフは「切れる」がハサミは「切る」・・・つまり、切ろうという意思が感じられるのだ。
だから、怖い。