本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

池上遼一 (近代日本文学名作選)

2010-07-16 09:36:17 | 漫画家(あ行)
ここまで素晴らしい絵を描かれてしまうと<漫画家>というよりは<絵師>とお呼びする方がいいのではないかと思ってしまいます。

小説などは文字で表現したものを読み手は色々と頭の中で想像して楽しむわけだけど、漫画はそれを<絵>で表現するわけです。
画力のない者が描くと残念ながら文字から想像する方が遥かに素晴らしいものになってしまうのだけど、この作者にかかると圧倒的な絵の迫力に押されてしまって、絵の持つ力に脱帽してしまうのです。

例えばこの本に収録されている「お勢登場」(原作:江戸川乱歩)の場合、格太郎の入っている長持を開けた時のお勢の表情の見事さ!長持の中で苦悶しながら死んだ格太郎の死に顔!!
このインパクト!文章から想像する以上のインパクトでこちらに迫ってくるのです。

ただ・・・原作より先にこちらを読んでしまうとこちらの印象が強すぎて読み手自身の想像力が働かなくなるかもしれない・・・というのは、さて、それで良いものかどうかちょっと悩むところではあります。

谷口ジロー (散歩もの)(作:久住昌之)

2010-07-14 16:13:05 | 漫画家(た行)
主人公の男性が、散歩する話。
特別に何か事件が起こるわけでもキャラが普通じゃないわけでもない。

それなのに何故か味わいがあって面白い。

背景が見事。実際にある場所を写真に撮って描いてあるようだ。
だから現実味がある。

一話がたった8ページほどのストーリーなのだが、主人公が出会う人たちの人生が垣間見えて、実に奥深いものになっている。

こういう作品を興味深く味わえるのは、やっぱりある程度年齢を重ねたものじゃなければ難しいのかもしれない・・・・・・かな?

もぐら (うちのトコでは)

2010-07-13 08:31:30 | 漫画家(ま行)
最近は何でも擬人化するのが流行ってるのでしょうか?
これは<都道府県>を擬人化した漫画。

本屋で見つけてパラパラッと立ち読みしたのだけど、四国四県がなかなか良く描けているなあと思って作者の出身県を見ると、愛媛県。なるほど~とものすごく納得いたしました。(私も愛媛県民です)

早速、図書館で借りて読んだのだけど、絵はかわいいし、読みやすい。
自分の出身県や友人の出身県をみて楽しむのも面白い。

なかでも「夢の架け橋」という特別読みきり漫画が読み応えがあって良かった。

四国に全く関係のない人は四国に三本も橋架けるのは無駄だ・・・なんておっしゃる方もおられますが、四国に住んでると三本の橋はありがたいです。
一般庶民ですので経済効果だとか難しいことはよくわからないけど、
例えば、四国外に住んでいる子供が急病になった時だって橋さえあれば真夜中だってとんで行けます。

数年前の大きな台風が来た時、愛媛県新居浜市と四国中央市の間の道路が土砂崩れのため全ての道路が通行不能になったことがあります。
その日は朝から雨が降ってはいたけど、もともと台風の被害がひどくない地方なのでみんな油断していたんでしょうね、私のダンナも勿論いつもどおり隣の市まで仕事に出かけ、私も知人のお見舞いに隣の市にある病院に行っていました。
ただ・・・その日は川の水かさの増加が普段よりもすごくて、何か嫌な予感がした私は帰りに買い物をする予定をとりやめて、予定よりはやく家に帰ったのです。
すると、家に着くと庭は水であふれ、新居浜市との境の道路は全て通行不可能になったというニュースが流れ、ダンナは会社から帰ることが出来なくなってしまいました。私もあと少し遅ければ帰ることが出来なくなっていました。

我家の場合、ダンナが数日家に帰れなくなっても泊まる場所があるので問題はないのだけど、(三日ほど帰れなかったのかな?)
小さい子供だけ、或いは介護の必要な人を残して隣の市から帰って来られなくなった人たちは、土砂崩れの場所に車を置いて何キロも歩いて帰った人もいます。
また、しまなみ海道を通って、瀬戸大橋から帰った(逆もあります)人も結構いたそうです。(一体何キロ走ったんだ!)

それを聞いた時、ああ、橋があって良かったね!って思いましたよ、ホント。

橋が出来て、フェリー会社が損をしたとか、それは申し訳ないし、その他いろいろ問題があるかもしれないけれど四国に住んでいる人間にとって橋は<安心感>をもたらしてくれる・・・と思うのです。
だから、四国に住んでいない人が簡単に「橋は三本もいらない、無駄だ!」なんて言うのを聞くとちょっと悲しい気分がするのです。

この本のことからまた話が脱線してしまった。(いつものこと?・・・苦笑)

とにかく、この本のなかのキャラでは地元だからっていうわけではないけれど、のほほ~んとした愛媛が気に入ってます。

萩尾望都 (スフィンクス)

2010-07-12 16:52:59 | 漫画家(は行)
以前からこの作者は人間の内面を深く深く考察するタイプだったけど、最近ますますそういう傾向が強くなってきたような気がします。

どうしてそういう風に感じるのかな~?
原因の一つは<目>にあるのかなって思うのです。

少女漫画は<目>が命!なんてこと、よく言われるけど、確かに<目>は非常に大事な要素ですよね。
目に力があるかないかで、作品の魅力も変わってきます。

最近の萩尾望都の描く<目>って独特の力というか、ある意味異様なまでの迫力があるように思えるんですよね。

・・・で、目には関係ないけれど、「世界の終わりにたった1人で」という作品の中で

『世界の最後の日に浜辺にひとりでいると
自分を呼ぶ声がする
振り向くと
あなたの一番会いたい人がそこに・・・
・・・それは誰でしょう?』

という質問があるのです。
最後に一番会いたい人に会えるなら・・・それは誰?
っていうことなんだけど、
死ぬときに誰に会いたいかと言われても・・・結局は死ぬってことだから
家族や親しい友人に会っても哀しいだけだから・・・
いや、世界の最後の日ってことは自分だけでなく皆死ぬってことだよね、
ひとりで死ぬか、好きな人と死ぬか、大勢と死ぬか・・・
ちょっと待てよ・・・自分が好きな人と死にたいと思っても、その人が別の人と死にたいと思ってたらどうするんだ?
それより・・・世界の最後の日って、一体何が起こったんだろう?
世界大戦勃発?小惑星が地球に衝突?原因不明の謎のウィルスとか?
それとも宇宙人が攻めて来た???

あ~、話がかなり脱線してしまったような・・・。(笑)

ヤマザキマリ (テルマエ・ロマエ 1巻)

2010-07-01 08:41:12 | 漫画家(や・ら・わ行)
ダビデ像が手拭いと風呂桶を抱えている!?
このインパクトある表紙の素晴らしさ!(笑)

書店で見つけて思わず手に取りレジに並ぼうかと思ったのだけど
見覚えのない作者の名前・・・中身を見ずに買うのは早計かもしれない・・・
と、後ろ髪を引かれる思いでその時は買わなかったのです。
・・・が、まあ結局後日買ってしまったわけでして・・・。
結論としては買って良かった~~!という本でした。

古代ローマと現代日本を<風呂限定>で行き来する男、風呂の設計技師ルシウス!
話といえば単純なんだけど、ルシウスの性格設定や、現代日本の<平たい顔族>たちの言動に思わず笑ってしまいます。
<平たい顔族>なんていうネーミングからして笑えますしね。

うちの子供たちは「いかにもお母さんが好きそうな話だよね」と言うだろうけど・・・
別に私は男風呂が好きな訳ではございませんので・・・。(笑)