本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

ルパン三世はなぜ盗むのか?(豊福きこう)

2006-03-25 10:18:52 | その他
(2006年発行)


所謂、「○○の秘密」・・・といった感じの本。



図書館の新刊コーナーで見つけて表紙のモンキー・パンチの描いたルパンに惹かれて借りてしまった!!



この本の著者は
マンガを隅々まで調べ上げ、それによって得る莫大なデータと深い観察力によってその作品の新たな魅力を発見する”マンガ・データ主義”を確立した人らしい。



そういう考え方もまたひとつの捉え方として読むのも面白いかもしれない。
しかし、私はどちらかというと、
漫画作品自体をそのまま読んだ方が面白いと思うタイプだ。



頑張って色々と調べているのは凄いと思うけどね。
著者には「ごくろ~さまです!」と言ってあげたい。



これを読んで、また原作の「ルパン三世」を読んでみたくなった。

おじさん入門(夏目房之介)

2006-03-24 21:08:23 | エッセイ
(2005年発行)



マンガコラムニスト、エッセイスト、評論家である房之介氏のエッセイ。


一言でいうなら、

みんな、ちゃんとトシとったことを肯定的に認めようよ



という内容の本である。
読んでいて非常に共感を覚える箇所が幾つもあった。



例えばこういう箇所がある。

若い頃、厄介な事態に落ち込み、必要以上に悩み、悲しみ、怒り、文句をいい、ああでもないこうでもないとジタバタあがくことは、それはそれで必要な経験ではある。
でも、必要以上のアガキはかえって解決を遅らせ、自分を心理的に消耗させる。
そのことに気づくと「ムダな抵抗はやめなさい」と、犯人を包囲した警官のような言葉が説得力をもつようになり、あまり悪あがきしなくなる。
こういうのを「トシの功」といってもいいだろう。



こういう気持ちはたぶん若い頃にはイマイチ理解出来ないものだと思う。
しかし・・・トシを取ると・・・そうなんだよね~。と呟いてしまうのだ。
トシをとると「悪あがき」をする体力がなくなるのだ。



房之介氏は

トシをとることは「省エネ化」された生き方をもたらし、効率的で低燃費な人生の送り方を教えてくれる。

と書いているが、まさしくその通り!!
私がいつも思ってる事を、よくぞ言って下さった!!という感じだ。



現在では「若い」といわれることがおじさんの評価になってしまい、おじさん自身がそれを望んでいる。
おじさんは「若い人」の基準から自分の価値をはかろうとしており、ヘタすると自分自身の「トシの功」に気づいていなかったりするのだ。
本当は、若い人にはわからない、目に見えない「なにか」こそが、自分たちがトシをとって獲得した価値であるはずなのに。



私は房之介氏よりはまだ若いし、当然おじさんでもないが、(おばさんだけど・・・笑)
房之介氏の意見に同感である!!
どうも、「トシを取る」ことはマイナスのイメージがあるようだが、
決してそんなことはない!!
肉体的には体力がなくなるとか、すぐ疲れるとか、色々あるけれど、
「思い出」という財産が増えてくるのだ。



過去にすがるようになったオヤジの思い出話とくさすのは簡単だ。
けれど僕らは現在を生きるのをやめてるワケじゃない。
現在に、豊かな過去が加わって楽しいだけなのだ。
それを誇っていいと僕は思うんだけどね。



はい、私もそう思います~~!!



房之介氏はこの原稿を49歳から54歳の間に書いているそうだ。
そして、その間には色々と生活にも変化があり、なかでも一番の変化は30年一緒にいた妻と別れたことらしい。
その件に関しては詳しく書いていないが、大変だったんだろうな~と思う。



あとがきの最後にこう綴っている。

最後に、別れたとはいえ僕の人生に多くの幸せと経験をもたらしてくれた元妻の英子に感謝し、本書を捧げたい。
長いあいだ、ありがとう。
そして、ごめん……。



房之介氏にも英子さんにも幸せになって欲しい。
一読者として、そう願うのみである。

のんのんばあとオレ(水木しげる)

2006-03-07 17:01:16 | エッセイ
(1977年 「ちくま少年図書館37」として刊行)

これは漫画作品ではない。
自分の半生を描いたエッセイ的なものだ。
以前NHKで実写版ドラマになったから知っておられる方も多いかもしれない。



裏表紙の解説文より

授業中は居眠りばかり、休み時間には活躍しすぎて立たされたり、
家へ帰れば、ガキ大将めざす攻防戦に大いそがし・・・
学校の成績こそひどいものだったが、彼の心は上の空。
「のんのんばあ」といっしょに、お化けや妖怪などの住む
目に見えない世界をさまよっていた。
少年時代をたっぷり味わいつくして悔いのない、
漫画家・水木しげるのおかしな少年記。



水木しげるが子供の頃、境港あたりでは神仏に仕えたりする人のことをのんのんさんと言っていたらしい。だから「のんのんばあ」とは神仏に仕えるおばあさんという意味だ。
彼はこの「のんのんばあ」から様々なお化けや妖怪の事を教えて貰い、
そして実際、そういった存在を「感じて」いたようだ。
そういった体験が大人になって漫画を描くときに役に立ったわけだ。


妖怪話だけではない。
水木少年はガキ大将として遊び、イタズラもいっぱいして、
紙相撲に熱中したり、新聞題字集めに熱中したり、「人口とり」ゲームに熱中したり、
実に充実した輝くような少年時代を送っている。


大人になって、なかなか就職が決まらなかったり、
戦争で片腕を失ったりと苦労も多かったが、
40歳すぎて、ようやく漫画家として生活が安定する。


現在、テレビなどでお見かけする水木氏は
人間というよりは「半妖怪」のような気がする。(笑)
決して貶しているのではない。
尊敬を込めて「半妖怪」のようだと言っているのだ。


彼が輝くような少年時代を送ってくれたおかげで、
我々は今、多くの妖怪たちの事を知ることが出来るのだ。
もし、彼が「のんのんばあ」に出会わなかったら
もしかすると妖怪たちは絶滅していたかもしれない。


水木氏、そしてのんのんばあに感謝!!