本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

漫画家たちの戦争 『原爆といのち』 (著者 : 手塚治虫 中沢啓二 他)

2014-12-31 22:53:16 | 漫画
この本の解説では、<みなさんのような子ども>・・・と、子どもがこの本の読者対象として書かれているようです。
一部抜粋してみます。

「わたしたちは、子どもたちに二度と戦争の悲しみを繰り返させないために、選集『漫画家たちの戦争』をつくることにしました。戦争を実体験として語ることにできる人が年々少なくなる中で、子どもたちが親しみを持っている漫画というかたちで戦争のことを伝えたいと考えたからです。」

この本を子どもだけを対象に編集したとすればちょっと疑問を感じます。
<読書の手引き>とか巻末に<戦時用語集>など、子どもにも理解できるように配慮されていますが、
週刊プレイボーイに掲載された明らかに大人向けの漫画が含まれていたり
今時の子どもが読みたいと思えるかどうかわからないぐらい古い漫画があったりするからです。
<漫画=子ども向け>
と、思い込んでいるのかもしれませんが、そうではないと思います。

趣旨はいいと思います。
・・・が、読者対象を子どもだけ、ではなくすべての人と考える方が良いのではないでしょうか。


この本にある赤塚不二夫の少女漫画「九平とねえちゃん」
懐かしいですね~!このお話自体は記憶にありませんが、赤塚不二夫の少女漫画を昔はよく読んでいたということを思い出しました。
そういえば、昔は少女漫画の登場人物で若くして亡くなる人は広島や長崎出身という設定が多かったように思います。

貝塚ひろしも懐かしい!!
この人の描く漫画も好きでした。

この本、ハードカバーで376ページ、お値段が3200+税!
ちょっと高いな~っていうのが率直な感想。
私は図書館で借りて読みました。


山下和美 (ゴースト・ラプソディ)

2011-06-09 21:11:29 | 漫画
久しぶりにこれを読み返したんだけど、これってまだ感想を書いてなかったようですね。
この作者の作品「天才柳沢教授の生活」や「不思議な少年」など、人間に対する眼差しが温かいのでとっても好きです。
これは1996年~1998年にかけて描かれたものだからちょっと古いんだけど、やはりこれにも今に通じる人間に対する温かい眼差しがありますね。

恋愛モノと言えば男女が恋人関係になるまでを描くのが普通一般的だと思うのだけど、これは結婚の決まった男女が別れるまでを描いてるんですよね。

現実世界においても結ばれるよりは別れる時の方が何倍も多くのエネルギーが必要だと思うのです。
結婚だって離婚の方が大変なことが多そうだし、買い物だって買うより返品する方が手間がかかる。

一度、結婚する方向に物事が進みだすとそれを途中で阻止しようなんて考えるとメチャクチャ大変なのではないかと思うんですよね。

でも、この作品、別れることになる話とはいえドロドロしたものではなくて、主人公の女の子はどんどん素敵になっていくし、相手の男も最終的にはいい男になるのです。

最後の結婚式が壊れていくクライマックスでの彼の長台詞がいい。

「僕が君とつきあっていたのは
僕の優越感からだったんだ
僕は子供の頃から挫折というものを知らなかった
あらゆることにおいてトップでやってきたし
それが当たり前のことと思ってきた
優しくてかわいくて僕の言うことを何でも聞いてくれる女の子
それは僕自身の当たり前をくずさないための自己防衛だった
結局 君が僕より下の人間であればよかったわけだ
でも それが大きな間違いだとわかった時
僕は・・・
壊れはじめたんだ
壊れてしまった僕は僕自身をどうしていいのか
全くわからなくなってしまった
君に対しても・・・・・・だ
生まれて初めての挫折・・・・・・だった
僕は君にどうしようもなくひどいことをした
ごめん・・・・・・」

この台詞、深いですね。
人間同士の付き合い・・・結婚でも友だちでも職場でも・・・そういうことにおいて、
<僕より下の人間>などという考えを抱いていては真の付き合いは出来ない・・・ま、そういうことでしょうかね。

・・・で、この後、ものすごい邪気が守護霊であるロニーを襲うんだけど、
邪気は小さな子どもというか天使のような姿のものの集団なんですよね。
邪気がおどろおどろしい姿をしているのなら何にも思わないのだけど、
何故、天使(?)が邪気なんだろうね?
無邪気なものが一番怖いってことなのかなあ?

ラストもとってもいい終わり方なんですよね。
いい作品はやっぱり何年経ってもいいですね。

入江亜季 (乱と灰色の世界 1巻)

2010-06-01 09:25:27 | 漫画
この人の描く<線>がいい。
強弱はっきりしていて、力強く生き生きしている。
最近の漫画は線が細いものが多いから、もしかするとこういったペンタッチは古臭く感じてあまり好みではないっていう人もいるのかもしれない。
でも、私は好きです。
所謂<24年組>が好きな人たちはこういうタッチが好きかもしれない。

ストーリーは魔女っ子物語?

早く続きが読みたいです!


けんかはよせ腹がへるぞ (水木しげる)

2006-06-22 14:53:55 | 漫画
(2003年発行)


帯の言葉より

人間世界は一体なんじゃ
妖怪世界は楽しいぞぉ

思わず脱力心の蘇生間違いなし

水木ワールドの魅力炸裂珠玉の100名言



水木しげるの漫画の中で使われたセリフをピックアップした本。
見開きにして左ページに取り上げた名言、右ページにそのセリフが載っている漫画ページを白黒反転させたものを載せている。
そして左ページ右隅にその言葉の説明など一言コメントがある。



漫画作品そのものを読んでいなくてもそのセリフに含まれている意味がよくわかる。
なかなか本の作り自体が凝っていて非常に楽しめるものになっている。



<名セリフ>は、どれも「うんうん、ナルホドね。」・・・と思わずにやりとしてしまうようなものばかりだ。



作者の水木しげるは

”妖怪名言集”ということだが、これは日頃思っていたことが偶然出たまでで、その時どうこうというものでもない。

と、書いているが、それだからこそ
<思わず脱力心の蘇生間違いなし>
という感じの実に魅力的な言葉になっているのだろう。
作られた言葉では人の心を打つことは出来ない。
様々な体験をしてきた作者から自然に出てきた言葉だからいいのだ。



・・・で、私が好きな言葉を少しピックアップしてみる。

「人間の”幸福度”は思ってるほどの差はないものだョ」

「利用するときだけ先生とよぶのは日本人のわるいくせです」

「人間は地球人なんだ
わずかな境界線をまもるために
どれだけの人間が死んだことだろう」

「なんてこう世の中ってイカサマが多いんだろう」
「すべておまんまのためよ」

「人間にはいや生物には満ちたりない不足感が常に必要なんだなあ」



誰がどの作品中で言った言葉か全部わかる人は凄い人です!(笑)
因みに私は注釈がないとわかりません。

エンゼル・シャーベット・タイム (寺山修司・萩尾望都 編)

2005-10-05 08:46:43 | 漫画
(1978年発行)

これは、新書館「あなたのファンタジー」に入選した漫画が載っている。
選者は、寺山修司と萩尾望都。

今、読んでみると確かに絵柄等は古い。
内容は好き嫌いがあるだろうが、新しいとか古いとか関係ないようなものは今でも読める。
当時の流行の絵柄・内容のものは、逆に今読む気がしない。
結局、「残る作品」というものは「流行」に関係ない独自の世界を持っているものなんだなーと思う。

この「あなたのファンタジー」に入選した人でプロになった人は、他にもいるのかもしれないが
私は鳥図明児(ととあける)しか知らない。

当時これに応募した少女たちは、今何を考え何をしているのだろうか?
自分がかつて少女漫画なんていうものを一生懸命描いていた時期があったなんてことを忘れて現実世界で生きているのだろうか?
それとも、たまには夢の世界の住人になるときもあるのだろうか?